NEWS 01:第7次エネ基が閣議決定 パブコメは過去最多の4万件
政府は2月18日、第7次エネルギー基本計画を閣議決定した。昨年末に示された原案から大きな変更点はなかった一方、パブリックコメント(意見公募)の多さが際立った。経済産業省によると、今回の意見公募は約4万件に達し、前回の約6000件を大幅に上回った。福島第一原子力発電所の事故後で、過去最多だった第4次の約1万8000件の記録を更新し、「原発回帰」を鮮明にした今回のエネ基への国民の関心の高さを示した。
原発回帰に対する関心の高さが浮き彫りに
「エネルギー政策に対する国民の強い関心の表れ」。武藤容治経産相は同日の閣議後記者会見で、今回寄せられた意見公募についてこう見解を示した。
意見公募では、福島第一原発事故を踏まえ、有事の際の避難計画や最終処分方法が確立していない中、原発を推進すべきでないといった意見が多かった。
こうした指摘を踏まえ、原子力政策の原案から大枠自体は変更しなかったものの「原子力の安全性やバックエンドの進ちょくに関する懸念の声があることを真摯に受け止める必要がある」との文言を追加した。武藤経産相は、「懸念の声があることも事実として受け止め、不安を払しょくできるよう、なぜ原子力が必要なのかを今後も丁寧に説明していく」と強調する。
業界からは賞賛する声が多かった半面、環境派からの反発が顕著となった。こうした対立の構図はいつまで続くのか。
NEWS 02:容量市場の約定額過去最高に 制度の妥当性に疑問符も
将来の供給力を確保する手段として、果たして最適な仕組みになっているのか―。2020年度に初回オークションが実施された容量市場。1月29日には、28年度を実需給年度とする5回目のメインオークションの結果が公表されたが、同制度を巡っては、その妥当性に否定的な意見が常につきまとっている。
電力広域的運営推進機関によると、今年度の約定総容量は前年度比0・7%減の1億6621万kW。1kW当たりの約定単価は同41・8%増の1万1134円で、約定総額は同40・8%増の1兆8506億円に上り、過去最高に達した。
これにより、28年度に小売電気事業者が負担する拠出金額は1兆6935億円と試算され、26年度の7734億円、27年度の1兆1986億円からさらに増大することになる。
この結果については、「限界電源の維持管理費用の高騰を反映したものだろう」というのが電力業界関係者の大方の見方。新電力関係者も「小売事業者の多くが、単価が上がること自体は不可避だと認識している」と言い、必ずしも否定的ではない様子だ。
むしろ問題視するのは「現行制度のままでは、容量市場が需給ひっ迫を回避することに貢献しそうにない」という点だ。実際今年度は、容量市場と需給調整市場が全面開始となったにもかかわらず、夏季には、広域予備率低下に伴う供給力準備通知が発出されたり、インバランス料金が高騰したりといった事態に陥った。
前出の新電力関係者は「小売りの負担が増大しているにもかかわらず、供給力・調整力を確保できないツケを回されているような状況だけは勘弁してもらいたい」と、早急な制度設計の改善を求める。
NEWS 03:関電が新ロードマップ公表 福井県の容認は得られるか
関西電力が2月13日、福井県内の3原発に貯蔵する使用済み燃料の新たな搬出計画(ロードマップ)を公表した。県外搬出を求める杉本達治知事は2023年10月、同社が提示した旧ロードマップを容認していたが、昨年8月に青森県の六ヶ所再処理工場のしゅん工時期が延期になったことで、見直しを迫られていた。
新ロードマップの最大のポイントは、再処理工場への具体的な搬出量と時期を明示した点だ。
各電力会社からの搬出は28年度に始まる予定だが、関電は30年度までの3年間で同工場での再処理量の約6割に相当する198tの搬出を見込む。自民党のベテラン県議は「カルテル問題などで他電力との関係性が難しい中、よく交渉してくれた」と評価する。また使用済みMOX燃料の研究目的のためのフランス搬出容量枠を従来の200tから400tに増やし、各サイトでの貯蔵量が32年度をピークに減少する見通しをグラフで示した。今後、杉本知事は県議会や自治体の意見を聞いた上で認否を判断する。
本来、県外での中間貯蔵やサイト内での乾式貯蔵は核燃料サイクルの枠外で、サイクル実現までの「つなぎ」の役割に過ぎない。17日の県議会全員協議会では、再処理工場の審査のさらなる延長を懸念する声が与野党から相次いだ。
「国策のアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状況だ」「これまでの審査では次々と新たな論点が出てきて、ゴールポストを動かされていた。しゅん工は他力本願的なのでロードマップの実効性担保には足りていないのでは」─。
現在、原子力規制委と日本原燃はこれまで以上に進ちょく状況を丁寧に管理しながら審査を進めている。「26年度中のしゅん工」に期待するほかない。
NEWS 04:地層処分巡る不適切発言 “バイアス報道”の真相
「話にならない…。政府の責任者として深くおわびを申し上げる」
高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定を巡る不適切発言問題は、石破茂首相が2月3日の衆議院予算委員会で謝罪する事態にまで発展した。
ミスリードの報道は瞬く間に広がった
事の顛末はこうだ。原子力発電環境整備機構(NUMO)が1月23日、東京都中央区で対話型全国説明会を開催。地層処分に関する説明を終えた後、参加者とNUMO職員らが九つのグループに分かれて質疑を行った。問題となったのは報道陣に公開された三つのグループのうち、経済産業省の幹部が参加した質疑だ。最も報道陣に近く、内容が聞こえやすい位置にあった。参加者からの「北方領土に建設してはどうか」との意見に対して、NUMO幹部が「一石三鳥四鳥という趣旨か」、経産省幹部が「魅力的な提案だが実現は難しい」と発言した。
しかし、現場では問題にならず、北海道新聞による第一報は5日後の28日だった。後日、同紙の記者が録音した音声を聞き直して記事化したのだという。
当初マスコミの多くは発言部分について、「一石三鳥四鳥だ」とNUMO幹部が提案に賛同しているかのように報じていた。だが、実際は「一石三鳥四鳥という趣旨ですね」と質問者に確認するための発言だった。多くのメディアが「だ」を訂正したが、原子力報道のバイアスを再認識した一件だった。