A 昨年9月に開かれた内閣府の第15回再エネ規制総点検タスクフォース(再エネTF)の会合で、反対運動を展開するNGOの代表が出席し、当時の規制改革担当相だった河野太郎氏に「悪質事業者が全国で違法伐採を繰り返している」として法改正の必要性を訴えた。これに対し河野氏が「一部の病理的な事象」との認識を示したことには、あきれて言葉もなかったね。そもそも再エネTFは現状認識が正確性に欠け、危機感も弱いことが問題。そうした中、今通常国会では自民党の高市早苗政調会長や公明党の山口那津男代表が、太陽光の乱開発に関する問題提起をしたことで動きは進んできたが、まだまだ認識の低い政治家、官僚の皆さんも多いと思う。
B 2012年から14年ぐらいにFIT(固定価格買い取り制度)で認定された、買い取り価格が高い時代の案件が問題だ。当時は、森林を伐採しても経済的にはペイできたと思うが、今の買い取り価格では伐採開発していたら経済的に合わない。つまり、新規認定の太陽光発電だと乱開発は起こりようがない。自治体側でも条例を整備しており、新規案件は地域と共生するのが大前提。悪質な事業者は厳しく取り締まる一方、真面目に取り組む事業者をサポートする仕組みが必要だ。
C 屋根の上に付ける小口は別として、いわゆるメガソーラーなどの大規模太陽光については、大手エネルギー事業者に集約しインセンティブ規制を作るべきだ。私が知る限りエネルギー系以外では金融屋さんがほとんど。ファンドを組成して、ある程度手数料を得た瞬間に興味がなくなる人たちなので、電気事業の世界にはふさわしくない。既設のものは大手に集約し、新設も大手に限定するような事業許可制を敷くべきだよ。
A 電力は日本経済、国民生活に直結するライフライン。東京電力や関西電力などの大手が国の事業法の下で、その基盤を支えてきた歴史がある。今はFITで金融商品化してチンピラのような企業が雨後のたけのこのように生まれてきて、日本全国で乱開発し地元住民らとトラブルを起こしている。その原因は各種関係法令の違反行為だ。昨年7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流のような災害が全国的に多発する危険が高まっている。地域共生とよく言われるが、その共生が果たせていないから問題が起きるわけだ。
B 環境省が科学的根拠に基づいていると考えると、駄目と言われて当然なのだろう。事業者は計画を全面的に見直すか、中止するということになる。法令上の範囲で取り締まられて駄目だと言われたわけなので、事業者としては従うべきだ。全国にどう波及するかは分からないが、法令違反、条例違反になる開発行為はそもそもあってはならない。
C これは、皆さんご存じの通り結構やばい案件だ。産業廃棄物の関係で熱海の盛り土のような問題も絡まって「いくらなんでもこれは駄目だ」と、環境省は厳しいことを言っていた。いくら自然エネルギーとはいえ、やり方が悪ければ、石炭火力の時と同じような環境アセスの意見書が出される。再エネ開発事業者へのある意味、一罰百戒的なものになればいい。今後この手の問題を事前に認識するという点で効果は期待できる。
A 環境省の対応は当然だ。環境省、経産省、林野庁とそれぞれ意見交換する中で感じるのは、関係省庁との連携と言いながら、実はあまりできていないことだ。FITは経産省が始めた事業。もっとリーダーシップを取って、悪質事業者の排除に取り組んでほしい。また再エネ利権を巡っては反社勢力が介在している。その意味では、警察庁とも連携すべきだ。今は無法地帯になっているので、やはり警察庁がこの問題に介入しないと、この再エネ地獄は収まるどころか、まだまだ大きくなって国民が被害を受ける。再エネTFは規制緩和ありきの組織だが、今後は方向性を修正して国民の命と暮らしを守るという視点に立って、再エネ規制改革を推進してもらいたい。
降雨で土砂崩れが発生した山間部の太陽光発電所(茨城県笠間市)
――再エネ開発問題に対する政府の姿勢をどう見ているか。
C 再エネという言葉に幻想を抱いている人が多いよね。30年ぐらい前の原子力や天然ガスと似ているかも。私が若いころ、原子力や天然ガスには魔力があった。つまりは善。今は太陽光、風力が善。EUのタクソノミーやウクライナの危機で、少し見直しの機運が出ているが、再エネの名目が付けば何でも許される風潮は相変わらず。政府も2050年カーボンニュートラルの御旗の下で、再エネ関連の予算や補助事業を展開しているわけだ。その方向修正は容易ではないと思う。
B 私はややCさんと違うかもしれない。太陽光にしても風力にしても、期待し過ぎはもっての外だが、ただ過小評価してもそれはそれで不幸になる。特に太陽光の場合はずっと過小評価されてきた。今でも太陽光に関しては、国内で過小評価されているという認識で、森林開発しなくても、建物の上だとか空き地とか、未利用の土地・場所は日本に数多くある。そこに導入すれば現在の60GWの5倍も6倍も入る。コスト的には10円を切る水準になってきたわけだから、この実力を適正に評価して日本のエネルギーの中に組み入れていく方策を考える必要がある。
A 野党が「再エネ100%を目指す」と、実現可能性のない話を平気ですることも問題だよ。国会を見ていても、与党が進めている再エネ政策の問題点を、野党が誰も指摘できない。野党のある党首に、原発の再稼働はやむを得ないという話をしたら「絶対駄目だ」。じゃあ火力を増やすのかと言ったら、「火力も駄目」。それでは日本のエネルギー供給を支えられないと言ったら「そんなこと言っても、駄目なものは駄目」と、全く議論にならない。こんな政治家が国会の中で一定の規模の活動をしていると思うと悲しくなる。エネルギー問題はヒステリックに議論するのではなく、冷静にベストミックスの解を見つけていくという姿勢が極めて大事だね。