原子力の「羅針盤」を刷新 安定供給で果たす役割重視

【インタビュー】上坂 充/原子力委員会委員長

うえさか・みつる 1985年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2005年同大学院工学系研究科原子力専攻教授。20年12月から現職。

原子力利用について「羅針盤」の役割を果たす「基本的な考え方」の策定を行っている。

エネルギー安定供給、温暖化防止などの観点から原子力発電の重要性を明記する考えだ。

 ―原子力委員会が5年ごとに行っている「原子力利用に関する基本的考え方」の策定が今年、行われます。現在、各分野の専門家などからヒアリングを行っている。5年前と比べてエネルギーを巡る国内外の情勢は大きく変化しています。どういう点に留意していますか。

上坂 ウクライナ侵攻により世界規模でエネルギー危機が深刻化し、日本でも電力需給のひっ迫、料金値上げなどが起きています。一方、豪雨などの異常気象が頻繁に起こるようになり、地球温暖化問題への対策も急ぐ必要があります。当然、そういった状況を踏まえて、原子力の果たす役割について議論を深めていきます。

 エネルギー以外の分野での利用にも留意しています。原子力は医療、工業、農業の分野でも重要な役割を果たしています。福島第一原子力発電所の事故で国民の原子力に対する信頼は大きく損なわれました。そういった非エネルギー分野で果たしている役割を示すことは、国民の信頼回復にもつながると考えています。

―8月24日のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議において、岸田文雄首相は安全性の確保を大前提に、①原子炉設置変更許可を取得した原発の再稼働、②運転期間の延長など既設原発の最大限の活用、③次世代革新炉の開発・建設―などについて年末に結論が出るよう検討を加速するよう指示しました。

 指示を受けて経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で具体的な方策について検討が進んでいます。

最大限の活用・運転期間延長は重要 利用と規制それぞれに進言

上坂 8月のGX実行会議での議論については、9月13日の原子力委員会の会合で資源エネルギー庁から報告を受けました。その場で、エネルギーの安定供給、カーボンニュートラルの観点から、既設の原子力発電所の最大限の活用、また運転期間の延長などは重要であると申し上げました。

 しかし、安全性の確保が大前提であることから、原子力の利用と安全規制の側がそれぞれの立場で今後の在り方を検討することも重要であると申し上げています。資源エネルギー庁は原子力利用の立場、原子力規制委員会、原子力規制庁は安全規制の立場でそれぞれ検討していただきたい。

 資源エネルギー庁には、検討した結果を委員会に報告するよう求めています。また、原子力規制委員会とは意見交換の場を持ちます。原子力政策を進めるのに当たり、原子力発電の効率的な利用と安全性の確保は、両立させる「解」を見出さなければなりません。原子力委員会は俯瞰的、中立的な立場から発言ができますから、解を見出すのに調整の役割が果たせると思っています。

―資源エネルギー庁が検討結果をGX実行会議に報告し了承されるのと、原子力委員会の基本的考え方の委員会決定はどちらが先になりますか。

上坂 資源エネルギー庁の検討結果の報告を受けてGX実行会議では決定などがなされると思いますが、当然、原子力委員会の基本的考え方を策定する中での検討、もしくは委員会での取りまとめの結果も踏まえていただけるものと考えています。

 GX実行会議は年内に方向性を決めると聞いています。基本的な考え方もそれに合わせて、年内に取りまとめを行おうと考えています。しかし、どちらが先になるかは決まっていません。

基本法での役割を重く認識 エネ庁の検討結果に意見も

―原子力利用の在り方は、本来は原子力委員会がリードして行うべきものではないですか。

上坂 現行法の中では、エネルギー基本計画の策定など、原子力を含めてエネルギーの利用などは経産省が検討することになっています。そういう役割分担はありますが、原子力基本法で示されている役割も重く認識しています。

 ですから、資源エネルギー庁での検討結果をうのみにする気はありません。意見は申し上げます。原子力委員会の重大な使命は原子力の利用について俯瞰的視点から中立的な立場で議論を行い、意見を述べ必要なことを決定することです。資源エネルギー庁がカバーできない点を指摘していくことは、われわれの役割です。

―具体的には。

上坂 東京電力柏崎刈羽発電所で、所員がIDを不正に使用するなどセキュリティーの面で不祥事が起きています。福島第一原子力発電所の事故から11年がたち、安全文化はかなり醸成されたと思っています。しかし、そういった不祥事が起こり、またロシアのウクライナ侵攻を見て分かるように、海外からのサイバー攻撃などの心配も出ています。

 原子力委員会には外務省出身の佐野利男委員がいます。原子力セキュリティーには国際的な取り決めがあり、国際原子力機関(IAEA)などの勧告があって、各国が規制を行います。それらについては佐野委員が国内の動向をチェックしています。

 非エネルギーの分野で原子力利用は約4・5兆円の規模の産業になっています。その軸になるのは診断・治療薬など薬剤の開発です。これはエネルギー基本計画を超えた分野であり、原子力委員会が中心になり進めるべきことです。

―基本的な考え方で、原子力発電についてはどういう記載になりますか。

上坂 わが国は50年カーボンニュートラルを目指しますし、同時に豊かな生活も守らなければなりません。そのためには、まずエネルギー基本計画にある30年のエネルギーミックスを堅持することが大切であり、50年を考えた場合は、安全の確保は大前提ですが、運転期間延長、革新型炉などの新増設・リプレースの検討が必要なことは明白だと思います。基本的な考え方の中では、今後の原子力発電の在り方について具体的な内容は記載しませんが、エネルギー安定供給の中での重要性は明記する考えです。

聞き手:佐野 鋭

風雲急告げる革新炉開発 大型を軸に官民の動き加速

革新炉開発を巡り、政府・民間の動きが加速している。

まずは政府―。経産省は7月26日に開催された総合資源エネルギー調査会(経産省の諮問機関)原子力小委員会の革新炉ワーキンググループ(WG)で配布した資料で、革新軽水炉から核融合炉までの技術ロードマップを提示。あくまでたたき台に過ぎないが、同WGの黒崎健座長は本誌の取材に対し、「大きな一歩だ。いろいろな物事が動き出すキッカケになるのではないか」と期待を寄せる。

高温ガス炉も有望視されている(高温工学試験研究炉)

9月26日には経産省が高速炉開発会議の戦略WGを開催し、「戦略ロードマップ」の改定案を提示した。2023年夏には炉概念の仕様と中核企業を選定する。

次に民間―。同月29日、三菱重工が関西電力など電力4社と120万kW級の革新軽水炉「SRZ―1200」の共同開発を発表した。30年代半ばの実用化を見込む。三菱重工はこれまでの加圧水型原子炉(PWR)のプラント技術を基本に、19年から革新軽水炉の検討を開始。概念設計が完了し、基本設計が固まってきたタイミングでの発表となった。担当者は「世界最高水準の安全性に加え、既設炉(新規制基準への対応費を考慮したもの)と同等のコスト実現を目指す」と語る。

専門家は革新炉開発について、革新軽水炉と高温ガス炉が有望とみる。ともに大型で、前者は技術成熟度が高く、後者は700℃以上の熱を取り出し水素製造が可能だ。一方、小型モジュール炉はスケールメリットが小さく、「大規模リプレースが必要な日本には向かない」(大手電力関係者)と見る向きも。やはり現実的なのは、革新軽水炉の建設計画に大手電力が共同出資する形か。

派遣。夏場の電力不足回避のため大飯3・4号機の再稼働を実現させた。来年4月に統一地方選が控える中、果たして岸田首相は重い腰を上げるのか。

日本原子力産業の瀬戸際 規制と利用政策の峻別を

【インタビュー】鈴木淳司/衆議院原子力問題調査特別委員会委員長

すずき・じゅんじ 早稲田大学法学部卒。瀬戸市議会議員を経て2003年衆議院議員(当選6回)。経済産業副大臣、自民党副幹事長、総務副大臣などを歴任。

GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を機に原子力政策の見直しが進み始めた。

原子力問題のキーマンとなる自民党の鈴木淳司衆院議員に直面する課題や今後の展開を聞いた。

 ―岸田文雄首相が原子力で政治決断すべき項目を示すよう指示し議論が動き始めた時機に、衆院原子力問題調査特別委員長に就任しました。

鈴木 首相発言は政策転換と報じられましたが、むしろ決意表明でしょう。ロシアのウクライナ侵攻と世界的なエネルギー危機のインパクトは絶大で、世界も一気に原子力政策の見直しに動き始めました。日本はこの10年間、新規制基準を打ち立てましたが、いまだに再稼働が10基という状況は看過できません。規制と利用は表裏一体ではあるものの、それぞれの役割を正しく認識することがまず重要です。同特別委員会の基本的役割は規制の監視であり利用政策ではありませんので、それを踏まえた安全規制の在り方を論じたいと思います。利用政策も含めた問題としては、福島第一原発事故後、その反省からか日本の原子力は「角を矯めて牛を殺す」ような状況に陥りました。世界的に原子力回帰が進む中、どこも単独で原子力推進の総合力を持ち得ず、日本への期待も示されています。日本では再稼働における規制審査の長期化が課題の一つですが、5月に党の原子力規制に関する特別委員会がまとめた提言でも、規制を緩和すべきとは主張していません。原子力規制の本分は炉を止めることではなく、いかに安全に動かすかであり、長期間稼働しないリスクを考えるべきで、「規制の最適化」の観点が必要です。

運転延長問題に新展開 まずは国家の意思表示から

―原子力規制委員会の10月5日の会合で、経済産業省は利用政策の観点から運転期間延長を検討する方針を表明。これを踏まえ規制委は高経年化した原発の安全性をどう確認していくか、法的な枠組みの検討に入る意向です。

鈴木 2012年に原子炉等規制法を改正し40年・60年ルールなどを設けたのは当時の政治決断でした。条文規定がある以上、法改正は必要ですが、これは原子力の利用政策であり規制側から言うべき話ではありません。かねてわれわれが注目してきた点は、利用政策は経産省、安全規制は規制委と規制庁の所管で、この峻別の重要性です。その上で経産省が利用政策の観点から運転期間などの方針を明示し、規制側は安全性の厳格な審査に徹する。そして原子力委員会は国家的観点から総合調整に務めるべきでしょう。従来この点が曖昧で、ともすれば原子力を巡る諸課題に腹を据えて向き合ってこなかった国に、反省すべき点は多いと思います。個人的には40年・60年という運転期間のタイミングに技術的・本質的な意味はなく、一定期間ごとの検査で合格すればその先も使えばいいし、世界的にも定期的な安全性確認の上で長期運転を進める流れになっています。運転停止期間のカウント問題も、安全規制の観点からは、その間の中性子照射脆化の有無だけではなく、他の経年劣化の状況とともに、検査時点での徹底した安全性判断に置き換え得るものかと思います。

―新規制委員長の山中伸介氏への期待は。

鈴木 山中新委員長は原子力プラントの第一人者ですから、厳格ではあるが安全に動かすための最適な規制の在り方を追求してほしい。特に規制側と事業者側がうまくコミュニケーションを取り、互いに安全性を高め合わなければなりません。事業者側も待ちの姿勢ではだめで「こういう工夫で安全性が高まるのではないか」という提案もしてほしい。自社の炉の特性に一番詳しいのは事業者のはずですから。

待ったなしのタイミング 17+19基の再稼働に道筋を

―再稼働では東日本、特に東海第二や柏崎刈羽に関して政府が前面に立つとしています。

鈴木 30㎞圏内のUPZ(緊急防護措置計画範囲)に94万人の住民が住む東海第二に関する一番の課題は避難計画。各市町村任せにせず、計画づくりを含めて国の関与が重要です。もう一つ、法的な決まりではないが、事業者が約束した周辺自治体の事前了解の問題もあります。首相や経産などの担当大臣はもちろん、場合によっては、規制委員長も地元立地地域で審査状況などを丁寧に説明することも必要でしょう。柏崎刈羽については、核物質防護の不備が発覚した東電への地元の不信感がすぐ回復するとは思えませんが、まずは国が再稼働にコミットし、東電の信頼回復に向けたサポートを続けるべきです。また、三つの検証結果が出るまで再稼働を議論しないと言う新潟県に対しても、政府の各責任者が説明を尽くすことが重要です。

 加えて、長年多くの事業者が新規開発に携わっていない事態は憂慮すべきです。新設・増設・リプレースと、それぞれに必要な施策の整理も必要でしょう。ただ、新増設・リプレース、さらには将来的な革新炉開発も重要ではあるものの、喫緊の課題は既設原発の再稼働を着実に進めることです。一部メディアは経年原発を「老朽原発」と称しますが、交換できない圧力容器や格納容器等以外の配管などの設備は適宜交換された、いわば「リニューアル原発」で、そうした概念の浸透も重要です。国民の理解を得て再稼働が進んだ先で、新型炉への転換など将来的な課題に対応できるようになるかと思います。

―ついに諸問題の解決の道筋がつきますか。

鈴木 再稼働済みと設置変更許可済みの17基に加え、それ以外の19基稼働の道筋を付けられなければ、日本は産業がさらに衰退し、国力を失う瀬戸際にいます。厳しいエネルギー制約下であっても、原子力は他国に左右されない貴重な自前電源です。新規制基準により安全性は格段に高まっており、丁寧に説明を重ねていけば多くの国民に理解されるはずです。実際、若い世代を中心に原発の必要性を認める人は確実に増えていると感じます。エネルギー安全保障と脱炭素社会への転換の鍵たる原子力の活用について、今こそ政治はしっかりとメッセージを発して基盤整備に努める。ただしその安全性については、独立した規制当局が厳しくチェックの責任を果たす。原子力の安全確保と利活用に努めていきます。

聞き手:井関 晶

電気・ガス・水道のデータ利活用 自治体のインフラ整備へ連携

【中部電力】

 中部電力は9月26日、静岡県湖西市や豊橋技術科学大学、サーラエナジー、東京設計事務所、第一環境の6者で、電気やガス、水道の検針データ利活用を検討・推進する包括連携協定を結んだ。調印式には6者の代表が参加。産学官の連携としては全国初となる。

中部電力など6者の代表者が調印式に出席した

インターネットとさまざまなものがつながる「IoT」の技術発展に伴い、水道などの検針値がデジタル化され、多くのデータ取得が可能となった。データ利活用による地域基盤の安定や市民生活の安定に、今回の協定が貢献すると期待されている。

湖西市では、市による各種データや地域の課題、市民のニーズなどの情報を提供し、中部電力が電力、サーラエナジーがガス、第一環境が水道と、各分野における検針データを集約する。豊橋技術科学大学が研究成果から助言・提案などを行い、東京設計事務所はコンサルティング、プランニングで協力支援を行う―など6者が協力。提供を受けたビックデータをもとに、AI(人工知能)・IoTの最新技術を活用して、湖西市のサービス向上やインフラ維持の効率化を目指す。将来に向けて産学官の連携協力による「電気ガス水道検針データ等利活用促進会議」を11月にも立ち上げて、データ利活用の施策立案につなげていきたいとしている。

連携期間は25年3月まで 需要予測や見守りに活用へ

連携の期間は調印した9月26日から、2025年3月31日までとなっている。具体的なデータを利活用する方法としては、AIによる電気、ガス、水道の将来需要の予測や、高齢者世帯などの生活パターン推定を行い、見守りやフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)の予防に向けたサービス提供を想定している。情報提供の分野では、検針作業や管工事など、スマートフォンアプリを用いて情報を見える化し、各社共同で一元化するサービスも検討する。10月からは、水道の時間別料金制度を検討する国内初の実証実験も開始した。

地方自治体では、少子高齢化に伴う人口減少が水道事業などの経営に悪影響を及ぼしている。今回のビックデータ利活用の検討は、事業の経営合理化や需要の予測に重要な役割を持つとされる。中部電力ではスマートメーターの普及が進んでおり、通信機能を備えた機器の導入、データ集約に知見を持つ。湖西市と同様の取り組みは今後、全国の自治体でも加速すると言われており、中部電力の経験がこれからのビックデータ利活用を推し進めていく。

原発運転延長ルール見直し 炉規法と電事法束ねで改正へ

原発の運転期間「40年・60年ルール」を巡り動きがあった。10月5日の原子力規制委員会の会合で、経済産業省の松山泰浩電力・ガス事業部長が運転期間の上限見直しや、長期停止期間を運転期間から除外する「カウントストップ」について、利用政策の観点から法的整備を進める考えを説明。これに対し山中伸介・規制委員長は「利用政策側の判断でなされるべきもので、規制委から意見を言うことはない」「(原子炉等規制法の運転期間に関する記述の)その部分は抜け落ちることになるかと思う」と述べた。

経産省が規制委会合で説明した10月5日、記者会見する山中伸介・規制委員長(提供:朝日新聞社)

現行規定は福島事故を受け、2012年に旧民主党政権が炉規法改正を提案し、全会一致で成立。それまでは運転期間の上限はなく、高経年化対策として運転開始30年以降に適宜安全性をチェックする方針だった。

今後の法改正はどう進むのか。「改めて運転期間は安全上の規制で決めるものではなく、利用政策であり、経産省が電気事業法に書き込むと線引きした」(政府関係者)。来年の通常国会で、炉規法と電事法の改正が束ね法案として提出される見通しだ。

焦点は電事法改正の中身。①運転期間は原則40年で、現状1回限りとしている20年延長を複数回できるようにする、②40年、60年ルールは踏襲し、ここにカウントストップの規定を加える―のいずれかになりそうだ。当然①の方が長期運転の可能性が高まり、経産省はこちらの方向で検討を進めると見られる。ただ、「公明党、特に創価学会婦人部に受け入れられない可能性があり、折衷案として②になる可能性もある」(同)。カギを握るのは岸田文雄首相の「政治決断」の本気度か。

電力値上げで需要家が迷走 料金巡る情報格差で大混乱も

燃料費高騰を受け、新電力各社が燃料費調整制度の見直しに踏み切り、家庭の電気代負担増は避けられない様相だ。

料金を巡る情報格差が、需要家の間に混乱を生じさせかねないとの懸念も指摘されている。

 「これでは暗に、ほかの電力会社に移れと言っているようなもの。少し探してみたが、どこも値上げラッシュで状況は似たり寄ったりだ。一体どこを選べばいいのか」

10月上旬、東京都内で妻と2人で暮らす50代の男性会社員は、契約している新電力からの通知を前に途方に暮れていた。

男性が契約しているのは、楽天エナジーが供給する「楽天でんき」。11月以降、燃料調整(燃調)制度の調整単価を現行の燃料価格連動から日本卸電力取引所(JEPX)連動に変更するのに伴い、今よりも電気代の負担が増大する可能性があるというのだ。

ためしに市場価格を反映した8月の電気代をシミュレーションしてみたところ、実際に支払った料金よりも4000円以上高くなったという。電気の使用量が増える冬場にJEPXスポット価格が高騰すれば、それを上回る負担増は避けられない。

逆ザヤ解消へ 燃調見直し相次ぐ

燃調制度は、燃料価格の変動を迅速に料金に反映させるために設けられている。新電力の燃調の設定に制約はないが、楽天に限らずこれまで多くの新電力が、大手電力会社の規制料金メニューに準じる形で急激な燃料価格上昇による家計負担増を防ぐための上限を設けてきた。

ところが、昨今の燃料費の高騰により大手各社の調整単価が軒並み上限に到達。これに伴い新電力各社は、今の料金体系で供給し続けていては赤字の拡大が避けられない状況に陥ってしまった。さらなる燃料費とスポット価格高騰が予想される冬を前に、顧客離れを許容してでも逆ザヤ解消を急がなければ、会社の存続さえ危ぶまれる。このため一斉に、燃調制度の変更に踏み切ったのだ。

その手法は主に、①引き続き大手電力会社の燃調制度に準じつつ上限を撤廃、②JEPX連動に変更、③自社の電源構成に合わせた独自燃調を採用―の三つのパターンに分かれ、今後の家庭の電気料金負担は、契約先の電力会社がどのような燃調を導入しているかで大きく変わることになりそうだ。

例えば東京エリアでは、東京電力エナジーパートナー(東電EP)の規制料金メニュー「従量電灯B」の11月の調整単価は上限の1kW時当たり5・13円、上限撤廃後の調整単価は9・72円で、その差は4・59円。電気代にすると、標準的な使用量(月300KW時)の世帯で約1400円と大きな差が付く。

契約を見直さなければ、冬の電気代が大変なことになる―。冒頭の男性のように、新電力からの通知を見て新たな契約先を探す動きが一部で始まっている。

燃調が電気代を左右 賢い選択肢は

中でも人気なのが燃調上限を維持している新電力で、東電EP系の新電力PinTが供給する「PinTでんき」や、コスモ石油が供給する「コスモでんき」などに申し込みが殺到しているという。とはいえ、上限を設けたまま供給量が増えれば、新電力側の逆ザヤは拡大する一方。そのため今後は、こうした新電力も新規申し込みの受付け停止や燃調の見直しに着手せざるを得なくなる可能性は高い。

燃調見直しで電気代はどうなるのか

新電力から新電力への切り替えに加え、一度は離れた大手電力会社の規制料金に戻ることも一つの選択肢だ。実際、大手電力会社の自由料金メニューや他社から、規制料金に切り替える家庭も徐々に増えていて、現在の燃調上限が維持される限りは最良の選択肢だとも言える。

東電EPでは、電話でのみ規制料金メニューへのスイッチングを受け付けしており、「規制料金メニューには燃料調整単価に上限があること、一方で自由料金には上限はないがさまざまな付帯サービスがあることを説明し選んでいただいている」(広報企画グループ)。需要家保護の観点から選択肢として提示はするものの、逆ザヤの供給になることは間違いなく、規制料金には戻ってほしくはないというのが本音のところだろう。

前出の男性は、東電EPの規制料金メニューに戻ることも考えたが、結局、同社の「アクアエナジー100」への切り替えを決めた。基本料金は高いが、燃調がない分、今回の電気料金高騰の原因となっている燃料価格上昇の影響はないはず」との判断だが、「東電がこれから予定している料金改定で値上げされる可能性も否定できない」と、一抹の不安をぬぐい切れない様子だ。

電力会社の比較サイトを運営するエネチェンジの曽我野達也取締役は、「電気代高騰に備えようと見直しに動いているのは、あくまでも一部の需要家と見ている。多くの人が、新電力の料金体系の変更が、自分が支払う電気代にどう影響するのか、まだ気が付いていないのではないか」と危惧する。

というのも、新電力の燃調の変更は10月、11月分から。このため、電気代に反映されるのは12月以降なのだ。そのタイミングで高額の請求に驚き、新電力に問い合わせが相次ぐことは想像に難くない。そのような混乱を避けるためにも、事業者側がより一層の周知徹底を図るとともに、需要家側も契約時と料金体系が変わっていないか、契約先がどのような燃調制度を導入しているのか、事前に確認しておく必要がある。

電力自由化の狙いは、多様な参入者を呼び込み競争を促進することによる料金の低廉化のみならず、需要家のライフスタイルや価値観に合わせ、電気の売り手やサービスを自由に選べるようにすることにあったはずだ。それが、今回の燃料高騰による規制メニューと自由メニューの価格の逆転により、その狙いは有名無実化してしまったと言って過言ではない。

来年4月に向け、大手電力会社の規制料金の値上げが検討され始めている。規制部門の赤字を放置するべきではなく、値上げは当然の流れだが、そもそも自由化を阻害するような規制料金を今後も存続させるべきなのか。補助金でお茶を濁さず、これを機に、電気料金制度の在るべき姿を改めて考えるべきだ。

電気ガス負担軽減は燃原調で 需要家の不満避けられず

「前例のない思い切った対策を講じる」。10月3日の臨時国会の所信表明で、岸田文雄首相がぶち上げた電気料金の負担軽減策。経済産業省幹部いわく「方法論を後回しにして政治の思惑先行で浮上した、前例のない愚策」が、紆余曲折を経て燃料費調整額で対応することが決まった。都市ガス料金も電力方式にならい、原料費調整額で対応する方向だ。早ければ来年1月から実施する。

岸田首相の所信表明から「負担軽減騒動」は始まった(10月3日の臨時国会)

西村康稔・経済産業相は10月21日の閣議後会見で、電気料金について「毎月の料金請求の中で直接的かつ実感できる形で負担軽減策を講じていけないか。燃料費調整の欄を利用することも含め方策を詰めている」と言及。都市ガス料金についても「事業構造などを踏まえて、電気とのバランスを勘案し検討を急いでいる」と述べた。またLPガス料金については検討を急いでいるとして、何らかの対策導入をにおわせた。

それにしても、今回の負担軽減策を巡る政府部内のドタバタは異様だった。首相発言以来、資源エネルギー庁の担当課は徹夜体制で方策を検討。「大手電力、新電力も含め、全ての利用者が実感できる形で負担を軽減する」という厳しい条件が付く中で、託送料金を免除する方式、再生可能エネルギー賦課金を凍結する方式、石油石炭税を減免する方式などさまざまな案が浮上した。また一方では、政治家や業界関係者から、「都市ガス料金も対象にすべきだ」「LPガス料金はどうするのか」といった声が急激に高まった。

簡易ガスやプロパンは? 突っ込みどころだらけか

こうした動きを踏まえ、政府の「新しい資本主義実現会議」が17日に取りまとめた総合経済対策の重点事項は、「エネルギー価格高騰への対応と安定供給確保」を筆頭項目に位置付け、次のような書きぶりになった。〈電気と同様に社会経済活動の基盤となるガスについても、ガスの特性も踏まえつつ、ガス料金の高騰に対する対策を講じるなど、電気とのバランスを踏まえた対応を進める〉 

資源エネルギー庁関係者によると、今回の料金対策には大きく二つの狙いがある。一つは、来春に予想される大手電力の規制料金値上げの影響回避。もう一つは、今冬に向けて上昇中の電気・ガス料金の負担軽減だ。いずれも燃・原料費の上昇が主因という実情を踏まえれば、その費用負担への補助は筋が通るのだが……。

「卸電力市場価格連動や再エネ電気の料金メニューを使っている需要家は不満だろう。月額2000円の上限にも補助が少ないという批判が出ている。ガスについては事情がより複雑だ。国産ガスやLPガス原料の都市ガス事業者のほか、簡易ガス事業者やプロパン販売事業者をどうするのか。もし除外すれば、需要家からの批判は避けられない。政治も黙っていないはずだ」(エネルギー業界幹部)

10月24日現在、対策の最終的な着地点は見えていないが、先行した石油燃料の補助金が問題を抱えているだけに、突っ込みどころだらけだろう。出口戦略の不在も今後の混乱に拍車を掛けそうだ。

【マーケット情報/10月28日】原油上昇、品薄感強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。米国原油の指標となるWTI先物、および北海原油を代表するブレント先物は10月28日時点で、それぞれバレルあたり前週比2.85、2.27ドル上昇した。 

OPECプラスによる11月からの減産計画に加え、欧州連合によるロシア産原油に対する制裁措置の強化が近く実施される見通し。さらに前週末に発表された米国の2022年第3四半期の経済成長率が年率換算2.6%に転じたことも価格を持ち上げた。

世界経済の停滞、とりわけ中国政府によるゼロ・コロナ政策が来年まで解除されないとの見通しから、石油需要は伸び悩むとの観測が広がっている。ただ、供給の減少が、需要後退の影響を上回るとの見方が強いようだ。

中東原油を代表するドバイ現物も、需給の引き締まりを映して、前週比で2.35ドル上昇に転じた。

【10月28日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=87.90ドル(前週比2.85ドル高)、ブレント先物(ICE)=95.77ドル(前週比2.27ドル高)、オマーン先物(DME)=92.25ドル(前週比3.49ドル高)、ドバイ現物(Argus)=92.68ドル(前週比2.35ドル高)

「日本一速い男」が設立 モータースポーツの最前線走る

【carenex TEAM IMPUL】ホシノインパル

 IMPUL(インパル)は、元レーシングドライバーで「日本一速い男」と呼ばれた星野一義氏が立ち上げたブランドだ。1980年に母体となる「ホシノインパル」を立ち上げ、83年にレーシングチームを設立。国内トップフォーミュラ、全日本GT選手権(現SUPER GT)などに参戦し、国内モータースポーツの最前線を約40年走り続けている。

逆転でのタイトル獲得を狙う(提供:TEAM IMPUL)

今年8月に栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた「全日本スーパー・フォーミュラ選手権」第8戦では「これぞTEAM IMPUL」というレースを見せた。所属する2人のドライバー(関口雄飛選手、平川亮選手)がレース中盤で1位、2位に立つも、安全策のチームオーダーを取らず真剣勝負を繰り広げた。担当者は「これまで厳しいレースが続き、特に2人は悔しい思いをしてきたと思う」と話す。最後は関口選手が1位を守り、平川選手が2位。14年ぶりのワン・ツーフィニッシュを果たした。

チームを支えるパートナーとしては、伊藤忠エネクスが2015年からスポンサー活動を開始。16年にはスーパー・フォーミュラ部門でメインスポンサーに参入した。TEAM IMPULは今年から、ピットの照明などを動かす発電機に、同社の「リニューアブルディーゼル」を導入。廃食油や動物油などを原料としており、レース関連で国内初の試みという。ホシノインパルの冨永正志氏は「伊藤忠エネクスと共にレースを盛り上げ、環境問題への取り組みに賛同してくれるファンを増やしたい」と将来のビジョンを語る。

環境問題に対し積極的に取り組む理由を「モータースポーツと脱炭素は相反すると思われがち」(冨永氏)と話す。これまでモータースポーツは、レースによる脱炭素に関わる技術、安全性などの開発や、市販車へのフィードバックで貢献してきた。さらにチームで直接的な脱炭素への取り組みを行うため「IMPULでんき」の販売を開始した。100%再生可能エネルギー由来の電気を提供し、脱炭素実現に貢献する。「モータースポーツの活性化とは切り離せない環境問題への取り組みとして行う」(冨永氏)とモータースポーツ業界が行う意義を強調した。

現在は鈴鹿サーキットで10月29日、30日に行う第9戦、最終戦に向けて調整を続ける。チームランキングで2位につけるTEAM IMPULは「最終戦までチャンピオンを諦めずに戦う」と逆転でのタイトル獲得へ、これからも突き進む。

ホシノインパル(carenex TEAM IMPUL):1980年、母体となるホシノインパル設立。2016年よりスーパー・フォーミュラ部門で、伊藤忠エネクスがメインスポンサーを務める。22年9月末時点のチームランキングは2位(113ポイント)。

次代を創る学識者/小宮山涼一・東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻教授

数百もの要素からエネルギーシステムの最適解を導く研究がライフワークだ。

足元の危機も踏まえ、脱炭素化シナリオの判断材料となり得る研究を意識する。

 エネルギーをはじめ社会全体の変革が求められるカーボンニュートラル(CN)では、シナリオを誤ると自国経済を傷めかねない。そして目下の〝世界同時エネルギー危機〟はトランジションの難しさを際立たせた。先行きが一層混沌とする時代、小宮山教授の専門はまさに今求められる研究分野の一つと言える。

主題はエネルギーシステムの分析だ。「要素技術だけを見るのではなく、多様なシナリオを展望し、システム全体を最適化する」(小宮山氏)。電気、ガス、石油のあらゆる技術を対象に、CN実現のシステム、その構成技術のベストミックスを分析。開発したツールの一つは300以上もの要素を加味する点が特徴だ。例えば電力では、系統を考慮した上でどんな燃料や電源を活用すべきか。原子力では新増設をするか否か、運転期間はどの程度か。マスタープランに基づく系統増強は再エネ主力化のベストな道なのか。そして電気料金の行方は……。中立的視点で経済合理的なシステムを模索する。

とはいえイノベーションには不確実性がつきものだ。水素・アンモニアやCCUS(CO2回収・利用・貯留)、DAC(CO2直接空気回収)など以前はあまり注目されなかった技術への関心も高まっている。小宮山氏は主題を数理モデル化し最適解を導く「数理計画法」を用いるが、手法の特性上、不確実性の数理的な対処が課題となる。政策面の不確実性も大きい。さらに数値化が難しい雇用状況や産業政策、国民の受容性などの要素を別途検討する必要もある。「政策に役立つ研究を意識し、より実用的で効率的な手法への見直しを進めていく」考えだ。

謙虚さ常に忘れず 理論の理解も重要

文部科学省「原子力システム研究開発事業」に採択され、共同研究として小型モジュール炉(SMR)を活用したシステムの分析も手掛ける。ただ、SMRは話題先行感が否めず、具体的な活用方針は定まっていない。「まずどこに建設するのか。大型炉跡地なら次世代軽水炉の方が現実的だ。米国では石炭火力跡地での小型炉建設が提案されたが、日本でも検討の余地はあるだろう。ただ、SMRの安全規制がなければその判断もできない」。事業化の課題をあらかじめ列挙した上での戦略でなければ、SMRをはじめ次世代炉戦略は絵に描いた餅になりかねない。

修士課程で当時珍しかったエネルギーシステム全体の分析研究に興味を持って以降、一貫してこの分野に従事。最近になって注目度が高まってきたと実感する。モデリング技術だけでなく、活用するモデルにまつわるさまざまな理論を理解することも欠かせない。他方で「モデルはあくまで理論に基づき構築したもの。予期しない結果が出ることもある。この研究では主観を持たず、常に疑問を抱き、謙虚に結果と向き合うことが重要だ」と強調する。

常に自問自答しつつ、引き続きCNの最適解を探る道を歩む。

こみやま・りょういち 2003年東大大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了、博士(工学)。日本エネルギー経済研究所主任研究員、米ローレンスバークレー国立研究所客員研究員、カリフォルニア大バークレー校客員研究員を経て、13年東大大学院工学系研究科准教授。22年より現職。

【メディア放談】GX会議での首相発言 「原発回帰」宣言に期待と諦観

<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ/4名

首相はGX実行会議で原発再稼働に意欲を見せ、次世代革新炉の検討も要請した。

業界内には期待する声がある一方、実現性を疑問視する向きもある。

 ―岸田文雄首相が8月24日のGX実行会議で、「原発回帰」と受け止められる発言をした。再稼働を国が前面に立って進めるとし、次世代革新炉の新増設・リプレースの検討を要請している。電力業界は「ようやく政府が動いてくれる」と思ったはずだ。

電力 まぁ、ありがたいと思っている。だが、どこまで本気で政権が取り組むかだ。首相が言う冬までの9基の稼働はほぼ確実だった。ただ、来年夏以降に運転開始を目指す7基は分からない。

 特に柏崎刈羽6、7号機と東海第二は、地元同意のハードルが高い。首相が現地を訪れて、地元の人たちに再稼働の必要性を訴えるしかないと思っている。

―次世代炉についても首相発言で関心が高まった。

電力 新増設・リプレースもSMR(小型モジュール炉)や高温ガス炉に期待する声が強まりそうだ。経済産業省も原子力小委員会を開いて革新型炉の開発を打ち出している。だが、役所と業界の本音はABWR(改良型沸騰水型炉)、APWR(改良型加圧水型炉)を改良した大型次世代軽水炉の開発を加速させて、国内に建設することだ。

マスコミ SMRが海外で建設されるようになれば、製造に参加している日本メーカーも潤う。それは歓迎だろう。しかし、原子力産業の将来を考えると、屋台骨の三菱重工、東芝、日立とそれらの傘下企業が生き残ることを考えなければいけない。

 そのためには実績があるABWRと、美浜1・2号のリプレース、敦賀3・4号増設に計画があるAPWRを軸にした原子炉の建設を優先すべきだ。経産省の判断は間違っていない。政策的な支援も当然、考えているはずだ。

―朝日、毎日などは新増設・リプレースなどに反発しているが、国際大学教授の橘川武郎さんもプレジデントオンライン(9月11日)で「どれも雲をつかむような話ばかり」と批判していた。

石油 大分反響があったようだ。橘川さんは、革新炉について「誰が何をどこで造るか決まっていない」と指摘している。確かにその通りだ。言いたいことをいう性格だから、思っていることを書いたのだろう。ただ、電力さんの言う通りならば、業界、メーカーが国内に造るのはABWRとAPWRの改良型になる。

マスコミ 影響力のある人の主張だけにインパクトがあった。「『次世代革新炉の開発・建設』を本気で行うのであれば、『既設原発の運転延長』を行う必要はなく、両者を同時に掲げるのは論理矛盾」と指摘している。これには首を傾げた。本気でカーボンニュートラルを目指すならば開発・建設と延長を同時に進めないと、とても間に合わないと思うよ。

毎日の目立った記事 首相発言の舞台裏を暴露

―首相発言についての記事はほかにもあった。

ガス 一連の記事で際立ったのは、毎日の「原発こそ新しい資本主義、首相の原発回帰宣言、舞台裏と打算」(9月6日)だ。首相発言を聞いて、これは経産省のいつもの文章と書きぶりが違う気がした。

そう思っていたら、首相が自ら「『政治決断が求められる項目を明確に(私に)示してもらいたい』と指示。原発を所管する経産省幹部さえ『寝耳に水』のサプライズだった」と書いてあった。それで合点がいった。

マスコミ 複数の記者が政府関係者に突っ込んだ取材をしている。「気候変動対策とは資本主義の在り方自体を見直すこと。政権中枢には早くからこうした問題意識が共有されている」との経産省幹部の話しは、是非は別にして参考になった。

―政府と歩調を合わせたのか、日経新聞が編集方針を見直したようだ。社説「エネ・環境戦略を問う」(8月18日)で、「原発新増設へ明確な方針打ち出せ」と主張している。

ガス 日経新聞のトップは連日のように財界幹部と顔を合わせている。その場で、「(再エネ偏重の)最近の紙面はなんだ」と言われることが多いらしい。それで、トップダウンで原発について方針の見直しを指示したようだ。

石油 編集・論説委員クラスも「最近、『脱炭素新聞』とやゆされる」とこぼしていた。ただ編集の現場のマインドは、そう簡単には変わらないと思うよ。

―日経は社説の後、連載「原子力政策転換の行方」(9月6日)を始めている。

マスコミ よく取材して原子力政策を巡る課題をまとめていると思う。ただ、「基本的なスタンスは前と変わってないな」と思うところもある。

日経の連載に違和感 基本的立場変わらず

―例えば。

マスコミ 「政府・与党内には規制を緩めれば、再稼働を早められる原発はあるとの見方もある」と書いている。特重(特定重大事故等対処施設)の完成が原子力規制委員会が定めた5年間の猶予期間に間に合わず、そのために止まっている原発を動かすことだ。

 テロや自然災害などに対応する特重は、万一の場合に備えるもので原発の安全運転に不可欠ではない。工事の現場での不可抗力に近い理由で工期が遅れる場合に、稼働させることは、決して「規制を緩める」ことではない。

電力 原子力に理解のある与党議員や電力業界は、規制委に審査の効率化を求めるが、「規制を緩めてほしい」とは絶対に言わない。そんなことを言えば、世間から袋叩きになることは分かっている。ただ、マスコミに書かれたら仕方がない。

―結局、電力業界は泣く子とマスコミにはかなわないんだよ。

食品廃棄物をリサイクル バイオマスプラントで課題解決へ

【リレーコラム】熊谷智孝/ビオストック代表取締役社長

 食農分野における脱炭素(カーボンニュートラル)や循環経済(サーキュラーエコノミー)を実現していくにあたり、日々大量に発生している食品廃棄物を有効に活用することは重要なテーマの一つである。食品廃棄物を単純に焼却処理するのではなく、資源として利活用することは、資源の有効活用という観点に加えて廃棄物処理に関わる社会コストの削減という観点でも効果的である。

これまで食品廃棄物のリサイクル手法としては、「飼料化」「肥料化」の二つの手法が一般的であったが、昨今どちらの手法も事業環境は厳しい状況にあり、近年注目を集めているのが「メタン化(バイオガス)」である。

メタン化は、有機物をメタン菌の作用により発酵・分解し、その過程において創出されるメタンを主成分とするバイオガスを回収する技術である。回収したバイオガスは、専用の給湯器・ボイラーにて燃焼し温水として熱利用できるほか、発電機を通じて電気としても利用できることから、リサイクル後の製品需要に困ることがないことが最大の特徴である。FITにおける優遇や、カーボンニュートラルに向けた官民の取り組み強化の追い風を受け、昨今急速に活用が進みつつある。

超小型プラントで廃棄物を資源に

ビオストックは、ヴァイオスと共同で、超小型バイオガスプラントを開発した。この超小型バイオガスプラントは、①コンテナ格納で取り回しが容易である上、②遠隔監視システムが備え付けられており無人運転が可能であるという二つの特徴があり、食品廃棄物排出量が1日当たり1tから対応可能である。

食品工場などでは、1工場当たりの食品廃棄物排出量が1~5t程度であることが多く、従来は原料や設置スペースの確保の観点から、工場内にオンサイトでバイオガスプラントを設置することは困難であったが、本プラントであれば可能である。

従来外部へ委託していた廃棄物処理を工場内で完結することで、食品リサイクル率を向上させながら廃棄物処理コストを削減できる上、再生エネルギーも回収できることで、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献をPRすることも可能である。

また、廃棄物処理施設や下水・し尿処理場の維持運営費増加に悩む自治体においても、本プラントは有効なソリューションになると考えている。超小型バイオガスプラントは、再エネ創出・リサイクル・廃棄物処理の分散化(廃棄物輸送削減)の観点から、まさに時流に即したソリューションであり、今回の実証を契機に、全国への普及拡大に努めていく。

※次回はフォレストエナジー執行役員の勝山猛さんです。

【需要家】既築住宅の省エネ化 設備の技術開発支援を

【業界スクランブル/需要家】

 4月に建築物省エネ法の改正案が可決され、2025年から全ての新築住宅に省エネ基準の適合が義務付けられることとなり、それ以降は断熱水準の乏しい住宅は新築市場から退場することとなった。

一度建てた住宅は何十年もストックとして残るため、性能の乏しい住宅を将来に残さないためには、このような政策の効果は意味があると考える。しかし同時に、性能の乏しい既築住宅にも目を向ける必要がある。

21年に開催された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」の資料を基に計算すると、13年時点で省エネ基準以上の断熱性能を有する住宅がストックに占める割合は戸建に2・4%、集合住宅3・7%、そこから対策を講じ、30年には戸建に28・5%、集合住宅30・7%と見込む。

見方を変えると30年時点でも70%程度の住宅は断熱水準が低いままということになるが、断熱改修は費用の観点から実施は容易ではない。住宅側だけでなく、設備側も既築対策は容易ではない。特に既築集合住宅での設備更新はスペースなどに制約が多く、ヒートポンプ給湯機は設置のハードルが極めて高い。こうしたところには新たな設備開発が求められる。

先日ニューヨーク市住宅局は、公営住宅向けに低コストで設置が簡単な新型ヒートポンプの技術開発と3万台の供給を行うメーカーをコンペで選定し、集中投資を行うと発表した。

この方法であれば初期需要が確保されるため、メーカーの開発リスクを小さくできる。同市は過去にもこの方法で集合住宅用冷蔵庫も調達した。困難はあるだろうが、わが国でも既築住宅向け設備の技術開発のための政策が必要だろう。その際にこのような事例は参考になるのではないか。(O)

【中野洋昌 公明党 衆議院議員】「エネルギー安定供給、災害時も」

なかの・ひろまさ 2001年東京大学教養学部卒。同年国土交通省入省。米コロンビア大学国際公共政策大学院修了。12年衆議院議員初当選(兵庫8区)。19年~20年経済産業大臣政務官。当選4回。

防災・災害対応を専門に新潟県中越沖地震や東日本大震災など、現場の最前線を走り続けた。

経産大臣政務官として電事法改正に携わり、災害とエネルギー安定供給で存在感を示している。

 東京大学卒業後の2001年、中央省庁再編で誕生した国土交通省に1期生として入省した。「国交省は生活に身近なインフラや街づくり、地域に密着した政策が多く、魅力を感じた」と入省の決め手を話す。省内のチームワークや省庁再編後の風通しの良さも後押しし、国交省でインフラ政策のほか防災、災害対応で活躍。世界初の地震予報「緊急地震速報」の導入などに携わった。

政治家を志すようになったきっかけは、国交省在籍時代に国交相を務めていた冬柴鉄三氏との出会いだ。「東日本大震災後の政治の混乱を役所の中で感じていた。そのタイミングで縁があり、冬柴先生に声をかけていただいた」。冬柴氏の後継として出馬し、12年に34歳の若さで初当選を果たした。以来、専門分野の防災、災害対応だけでなく大学生などへの給付型奨学金創設など、若者を対象にした政策も進めている。自身も大学時代に肉体労働のアルバイトと勉学との両立に苦労した過去があり「教育や若い世代向けの政策は、日本の未来のために必要だ」と語る。

地域活性化の活動にも尽力し、選挙区のある兵庫県尼崎市では中小企業の支援、商店街の空き店舗対策などに奔走。尼崎市内の各種団体と意見交換を行い、地域との共生に取り組んできた。「政治家として、応援をしていただいた皆さんのためになる仕事をしたい」。経済安全保障や税制度改革など、与党内で意見が分かれ、決断力が問われる政策にもしっかりと声を上げる。

電力自由化に伴う旧火力発電廃止 大手電力会社の予備率低下を危惧

現在は衆議院の経済産業委員会や原子力問題調査特別委員会の理事を務める。エネルギー分野に関しては「脱炭素社会の構築と日本の経済成長、エネルギーの安定供給を両立させるのは政治家の仕事」と話す。東日本大震災ではガソリンなど燃料を輸送、被災地に届けるなど、防災の専門家としてエネルギー安定供給の重要性を熟知。電力自由化で、大手電力会社が経営合理化を図り、古い火力発電などを休廃止し、それに伴う予備率低下を危惧する。岸田文雄首相による今冬までの最大9基の原発再稼働については、「エネルギーの安定供給という意味では、当面の手として(再稼働を)しっかりやるしかないと思う」と理解を示している。

エネルギーの安定供給と自身の専門である防災との関わりについて、18年9月に襲来した台風21号による大規模停電が印象深いと話す。関西電力によると、当時は管内で延べ約220万件が停電。自身も被災した中で「実際に停電や被災しなければ分からないことがあった」という。電力会社の停電情報システムでは、高圧線が復旧し停電解消と表示されても、高圧線から個別需要家をつなぐ低圧線や引込線が破損した場合、認識できず隠れ停電が発生することを目の当たりにした。解決にはスマートメーター導入など個人情報を含むデータの活用が必要だが、当時の電気事業法では「情報の目的外利用の禁止」が定められていた。経産大臣政務官として電気事業法改正に携わり、20年6月にデータを有効活用する制度を整備する改正案が成立。「エネルギーの安定供給は災害時でも重要。有効な対策のブラッシュアップをしなければならない」と話す。

再生可能エネルギー導入については「太陽光発電は国土の狭さから、既に面積当たりで世界1位になっている」と無秩序な再エネ乱開発に警鐘を鳴らす。地域と再エネの付き合い方についても、当初はうまくいっていたが、現在は事業者と開発に反対する地元との軋轢が生まれていると指摘。環境省とも協力して「いかに地域で再エネを受け入れてもらうか、新しいフェーズに入っている」と、再エネ促進のためには地域社会との共生が不可欠との認識を示した。また、燃料価格高騰を原因とする電力のスポット価格の高値推移により、新電力の経営が圧迫されていることにも触れ「エネルギー価格は非常事態だ。電力自由化の在り方も含めて、今の状況を変えていくのは政治の力だ」と訴える。

電力ひっ迫問題に対しても、まず今冬の電力危機を乗り切るために、火力発電の重要性を改めて提唱。追加供給公募による火力発電稼働と予備率の確保、ロシア産石油・天然ガス輸入の対策を臨時国会で議論を進めるとしている。一方で中長期的な視点では「革新炉の開発、原発新増設・リプレースなど、原子力政策の在り方は非常に大事になる。エネルギー政策全体の議論として、経済産業委員会でも話し合っていく」とエネルギー問題の解決に意気込む。

座右の銘は「基本は力、持続は力」。災害現場の最前線で、国民の幸せに尽くす信念を貫き通してきた。これからも国民の安心安全、国土を守るため走り続ける。

【マーケット情報/10月21日】米国、中東原油が続落、需給緩和感強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、米国原油を代表するWTI先物、および中東原油の指標となるドバイ現物が続落。米国の供給増加、中国の経済減速見通しで、需給がさらに緩んだ。

米国は、エネルギー価格低減のため、さらに1,500万バレルの戦略備蓄放出を計画。また、米エネルギー情報局は、主なシェール層からの11月産油量が、前月比で増加すると予測した。また、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表する先週の原油リグ稼働数は、前週から2基増加で612基となり、WTI先物、ドバイ現物を下押した。そんななか、中国政府が、7~9月GDPの発表を延期。同国経済の先行き不透明感と、石油需要減少の懸念が一段と強まった。

一方、北海原油の指標となるブレント先物は上昇。足元の需要回復見通しが上方圧力となった。フランスでは、一部製油所でストライキが終了し、原油精製が再開する見込み。また、中国では、10月の海上原油輸入が前月比で増加。ブレント先物の支えとなった。

【10月21日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=85.05ドル(前週比0.56ドル安)、ブレント先物(ICE)=93.50ドル(前週比1.87ドル高)、オマーン先物(DME)=88.76ドル(前週比3.30ドル安)、ドバイ現物(Argus)=90.33ドル(前週比1.43ドル安)