COP26の見通しに暗雲 1.5℃目標達成断念も


【ワールドワイド/環境】

11月初めのCOP26まで2カ月を切ったが、議長国英国の意気込みとは裏腹に、1.5℃目標、2050年カーボンニュートラルに向けた強力なメッセージを発出することは難しそうだ。

米国やEUは気候外交において1.5℃目標と50年全球カーボンニュートラルを強力にプッシュしている。6月に英国で開催されたG7サミットではCOP議長国でもある英国の強い意向で1.5℃目標、50年カーボンニュートラル、石炭火力への公的融資の停止などが共同声明に盛り込まれた。

しかし7月のG20気候・エネルギー大臣会合ではそれらのメッセージは盛り込まれなかった。欧米の理念主義的な気候外交に中国、インド、ブラジル、インドネシア、ロシアなどの新興国が「ノー」を突き付けた格好である。

9月初めにジョン・ケリー米国気候問題担当大統領特使が中国を訪問し、COP26を念頭に中国の目標引き上げ(30年ピークアウト目標の前倒し)や海外への石炭火力輸出の差し止めを迫ったが、中国に袖にされたようだ。中国の解振華特使は1.5℃目標を迫る米国や欧州を念頭に「パリ協定を書き換えようとしている国がある。彼らは温度目標を2℃から1.5℃に変更しようとしているが、異なる国々の異なる事情を理解し、コンセンサスに達する必要がある」と述べている。確かにパリ協定の規定上は「産業革命以降の温度上昇を2℃を十分下回る水準に抑制し、可能であれば1.5℃を目指す」であり、そのために「今世紀後半のできるだけ早いタイミングでカーボンニュートラルを達成する」なので、1.5℃、50年カーボンニュートラルは協定の規定を踏み越えている。

中国はウイグルの人権抑圧を理由に米国が中国製パネルの輸入差し止めなどの制裁措置を講じたことに強く反発しており、王毅外相や楊潔篪政治局員は「米中関係が悪化している状況で、気候変動面での協力はスムーズに進まない」と述べ、対中姿勢の変更を求めた。予想されたことだが、中国は気候変動問題をほかの外交案件の交渉材料にしようとしている。

ボリス・ジョンソン英国首相は1.5℃目標をCOP26の成果とすることを断念したとの報道もある。議長国デンマークが世界中から首脳を集め、期待値を高めた上で大失敗した09年のCOP15の再来を避けたいということだろう。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院特任教授)

米国企業の再エネ電力調達 増加するPPA契約


【ワールドワイド/経営】

近年、企業活動におけるサステナビリティーの重視やESG投資の考え方が世界的に浸透するにつれ、企業による気候変動対策への社会的要請が急速に高まっている。こうした中、米国において消費電力量に占める再生可能エネルギーの割合は、企業の取り組みを評価する上での重要な指標の一つとなってきている。さらに、大手IT企業を中心に消費電力を再エネ100%で賄うことを目指す動きが加速しており、これらの取り組みは再エネ市場拡大の起爆剤としての役割も果たしている。

 企業による大規模な再エネ電力の調達は主に電力購入契約(PPA)を通して行われており、ブルームバーグによると、2020年に全世界で締結された企業による再エネPPA容量は2370万kWで、そのうち米国内のPPAが1190万kWを占めた。

 PPAは、発電設備の建設・運用に関して需要家と発電事業者との二者間で締結される長期契約を指し、契約形態は物理的PPAと仮想PPA(VPPA)に大別される。物理的PPAにおいては、送配電系統を通して発電設備から需要家へ電力が供給されるが、VPPAでは物理的な電力供給は行われず、金融取引および再エネ証書の受け渡しのみが実施される。

 VPPAは、需要家(買い手)が地元の電力会社との電力契約を維持したまま再エネ発電事業者(売り手)と直接再エネ価値を取引できる仕組みとなっている。具体的には、二者間で電力の取引価格を定めた上で、買い手は再エネ証書を受け取るとともに、売り手は卸電力市場へ電力を売却し、取引価格と卸市場への売却価格との差額を清算する。例えば、kW時当たり10セントでVPPAを契約し、卸市場価格が12セントであった場合、買い手は差額の2セントを得ることができる。一方で、卸市場価格が8セントであった場合は、2セントを売り手に支払うことになる。VPPAは、発電事業者が卸電力市場にアクセスできるという条件さえ整っていれば、所在する系統エリアに関係なく契約が可能という利点がある。このような特徴から、米国ではVPPAが主流となっており、19年に米国で締結された企業による再エネPPAのうち、8割以上がVPPAであったとされている。

 また、これまではIT企業が中心となって再エネPPAをリードしてきたが、最近では、ファストフードチェーンや自動車メーカー、石油・ガス会社など、さまざまな業界分野の企業による再エネPPAの締結が増加している。

(三上朋絵/海外電力調査会企画・広報部)

国際石油会社が相次ぎ撤退 変化するイラクへの視点


【ワールドワイド/資源】

 メジャー企業をはじめとする国際石油会社(IOC)のイラクに対する視点が変わり始めている。

 イラク戦争後、イラク政府は2009年からIOCを招いて公開入札を実施し始めた。イラクは石油埋蔵量が豊富で、油田の多くが平地であるなど開発条件にも恵まれており、開発能力を有する石油会社であれば低コストで経済性の高い開発・生産を行える環境にある。石油会社にとって極めて魅力的な条件であり、それ故に09年や10年の鉱区開放においてわが国企業を含め、多くの石油会社が、決して有利とはいえない契約形態にもかかわらず、こぞって参入しようとしてきた。

 この結果、原油生産量は鉱区開放以前の日量250万バレルから19年には日量480万バレルまで増え、今やイラクは日量500万バレルの石油生産能力を持つ世界第5位の産油国となった。この増加トレンドは、当時の鉱区開放によりIOCが開発を主導することになった南部巨大油田群での増産によって支えられてきた。

 しかし昨今、イラクの石油開発事業から撤退する企業が相次いでいる。18年にシェルは西クルナ1油田およびマジュヌーン油田から撤退し、上流事業からは完全に退いた。21年春、エクソンモービルは西クルナ1油田の権益を中国企業に売却する旨発表した。これまでのところ、イラク政府にこの売却計画を認める気はなく、国営操業会社への承継を求めている。この係争はいまだ決着がついておらず、現在エクソンモービル は国際商工会議所に仲裁を申し立てている。新しい動きでは、BPが操業パートナーであるCNPC(中国石油天然気集団)と共にルメイラ油田の資金調達を目的とした新会社を設立する計画で、イラク政府は8月にこれを承認した。BPはイラク事業のスピンオフにより石油・ガス支出を削減し、再生可能エネルギーへの転換を図る構えとされ、一方でイラク政府は34年までの契約期間中の継続的な資金調達が可能になると期待している。

 今や温暖化ガス削減の観点から10年先、20年先を見据えた企業戦略が変化し、IOC各社もポートフォリオの見直しが求められている。27年までに石油生産量を日量800万バレルに引き上げ、また自国のエネルギートランジションに取り組むには、IOCの参入は不可欠と思われる。石油・ガス開発投資環境が大きく変わりつつある中で、外資企業から投資先として選ばれるためにはイラク自身にも変化が迫られている。

(芦原雪絵/石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

朝日新聞の菅政権否定 感情的論評があおる群衆心理


【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

 見出しが気になった。日経8月31日「The Economist、加州知事リコール、民主主義の欠陥」である。米カリフォルニア州のニューサム知事が解職の危機にあり、後継者としてトランプ前大統領を信奉し、過激な発言で知られるラジオ番組司会者が有力視されているのだという。住民投票は9月14日なので、本誌発行の頃には結果が出ているだろう。

問題は、「民主主義の欠陥」とは何かだ。

現職知事は、貧困層の税控除拡大など実績を残してきた。最重要の新型コロナウイルス対策は「おおむね好調」で「今の苦境が奇妙に思える」と記事にある。それでもリコールが発議されたのは制度の欠陥が原因だと指摘する。

記事によれば、同州では「有権者の12%にあたる署名」で住民投票が実施される。解職を免れるには50%以上の信任票が要る。下回ると、後任候補の中で得票数最多の人物が知事になる。

民主党支持者が圧倒的に多い同州だが、現職信任の動きは鈍い。後任候補も、支持が「20%に満たない」過激な司会者にかなう人物は出ていないという。

安定性を欠く制度だが、コロナ対応への不満もあるだろう。感染ゼロは不可能で社会生活に制約が伴うのは明らかだが、鬱憤は残る。それが政治を揺るがす。

日本も変わらない。読売9月6日「首相退陣『当然』47%、内閣支持最低31%」が国民心理を物語る。菅義偉首相が退陣を決めたことを受けた世論調査結果だが、意外にも「菅内閣の約1年の実績を『評価する』は、『大いに』9%と『多少は』46%を合わせて55%と半数を超えた」とある。しかし、コロナ対策では「『評価しない』58%」だった。

こうした世論を意識したのだろう。朝日4日社説「菅首相1年で退陣へ、対コロナ、国民の信失った末に」は全否定だ。「国民の命と暮らしを守る役割を途中で投げ出す」「専門家の懸念や閣僚の進言を無視して、東京五輪・パラリンピックを強行」「自らの政治的な利害を優先し、根拠なき楽観論に頼って感染拡大に歯止めをかけられない」とののしる。

さらに「首相を選び、この1年、政権運営を支えてきた自民党自身にも、重い責任がある」と与党をたたくが、政策への言及は薄い。

同日の日経と読売の社説は、コロナ対策を含めて幅広く論じ、「菅政権が取り組んだデジタル化の推進や地球温暖化対策などは、政権が変わっても注力すべき重要テーマ」(日経)、「デジタル庁創設や携帯電話料金の引き下げでは指導力を発揮し、一定の成果を上げた」(読売)と評価する。

読売社説は、朝日が全面否定した東京五輪・パラリンピックについても、「中止論を抑えて開催に導いた。大きな集団感染を発生させることなく、国際社会に対して、開催国としての責任を果たすことができた」と書いている。

いずれも、朝日社説のように感情的ではない。

ツイッターなどを利用したネット世論が政治に影響する時代になり、社会心理学の古典とされるギュスターヴ・ル・ボン著「群集心理」(1895年刊)が改めて注目されている。群衆は扇動され、偏向しやすい。感情に染まり時に暴走する。そう分析した。

現在の衆院議員は10月21日に任期が満了する。自民党総裁選を経た新首相の下、衆院選が行われる。メディアにあおられ、国民が群衆化すれば、将来を誤る。

いかわ・ようじろう(デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員)

脱炭素時代の電力安定供給がテーマ 国際ワークショップをオンライン開催


【公益事業学会】

 学識者で作る公益事業学会政策研究会(電力)は9月13、27日の2日間にわたって、「電力政策・市場の3つの最新トピック」をテーマに国際ワークショップをオンライン形式で開催した。

ワークショップでは、①脱炭素・再エネ拡大下の安定供給システムの強化、②RE証書の在り方とカーボンプライシング、③再エネ増加下のフレキシビリティの活用と政策革新―の三つをテーマに、政策担当者、学識者、電気事業者らが、現状の課題を踏まえ、将来の電力システムの在るべき姿について意見を交わした。

脱炭素と安定供給は両立できるのか

①のセッションでは、1月の需給ひっ迫で顕在化した供給力不足の課題を解決するためには、バランシンググループ(BG)制度による安定供給確保の仕組みの見直しを含め、現状の課題に合わせた大胆な改革が必要だといった意見が事業者や学識者から相次いだ。

これに対し、資源エネルギー庁の筑紫正宏電力供給室長も、「責任感に支えられた制度が持続可能なのかという課題を突き付けられている。真摯に見直していく必要がある」と応じ、不断の改革が必要だとの認識で一致した。

脱炭素化の進展に伴い、いかにコストを抑制しながら安定供給を確保していくかが大きな課題となる。イーレックスの本名均社長は、「自由化と脱炭素化をどう両立させるかは、これからの電気事業制度の命題。事業者にセーフティネットを保証する必要はなく、国民に安定的かつ低廉な電気を供給するという電気事業の基本を全うできる仕組みにしていただきたい」と、先の冬の市場高騰に伴い、一部の事業者を保護するべきだとの議論が浮上したことを念頭に、制度設計への注文を付けた。

また、東京電力ホールディングス経営技術戦略研究所経営戦略調査室の戸田直樹氏は、「限界費用ゼロの再エネが増えれば、発電コストに占める固定費の比率が高まるためエナジーオンリーマーケットの価格シグナルだけで投資を誘導するのは難しい。発電分野は競争領域でよいのかという観点で、議論する必要があるのではないか」との問題意識を提起した。

RE証書の意義とは 「追加性」を問題視

②では、FIT電源の非化石価値を対象とする再エネ価値取引市場に「追加性が期待できない」ことで、その意義を疑問視する意見が大勢を占めた。英国から参加した再エネの電源証明を推進するNGO団体、エナジータグのフィリップ・ムーディ氏は、欧州におけるRE証書の先行的な取り組みを紹介。その上で、「再エネのみならず、全ての電源のトラッキングを検討するべきで、その上で追加性を証明できればプレミアムを上乗せし新規の設備投資に回すという考え方もできる」と述べ、目的の達成に向けた柔軟な制度の見直しの必要性を強調した。

脱炭素社会へのエネルギー政策立案 市民と若者の参画を


【オピニオン】村上千里/日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 環境委員長

第6次エネルギー基本計画(案)が9月3日パブリックコメントにかけられた。私はパブコメ終了、この計画を審議してきた審議会(総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会)がもう一度開催されることを期待している。2050年カーボンニュートラルを目指し策定されたこの大転換期の計画を、市民はどう捉え、どのような意見を持ったのか。審議会及び経済産業省はその意見を受け止め、対応を検討する必要があると考えるからだ。

今回の基本計画改定は20年10月13日からスタートした。会議当日は経産省前に、気候危機への対策強化を訴える若者組織、FFF(Fridays For Future)がスタンディング・パフォーマンスを行っていた。筆者は19年から当審議会に消費者団体の立場で参加しているが、若者代表の委員が不在の中、彼らの声を届けることも役割のひとつと意識している。

審議会では初回、基本計画を始めNDC改定につながるさまざまな政策検討プロセスを示し、そこに市民、若者との対話や意見聴収の場を組み込むことを求めた。しかし、その後も議論プロセスは示されず、市民の声を聴く場は、需要側のヒアリングに消費者団体が1度招かれるにとどまった。また第5次の議論から導入された「意見箱」に寄せられた意見も議題となることはなかった。ただ、その意見の多くが原子力推進への懸念や反対の声であったことは、「可能な限り原発依存度を低減」という記載の堅持に影響を与えたのではないかと思われる。

第5次の第2章には「対話型の政策立案・実施プロセスを社会に定着させていく取り組みをさまざまな形で進めていくことが望まれる」と記載されているが、今回の改定プロセスではほとんど実現できなかったといわざるを得ない。

ただ、この観点から興味深かったのは6月30日、50年カーボンニュートラルのビジョンを描くべく、複数の研究機関がシナリオ分析を行った結果を持ち寄り、相互に質疑応答が行われたことだ。時間が短く十分な議論とはならなかったが、翌7月13日には各機関の分析の想定(inputなど)と結果が一覧表にまとめられ、今後も継続してこのような場がもたれることの必要性を確認することができた。難しい議論への市民参加を進めるうえで、この場は必要不可欠と考える。

さて、第6次(案)は最終行で「対話型の政策立案・実施プロセスを社会に定着させていく取り組みをさまざまな形で進めていく」と言い切った。そしてその前段には「若年層とのコミュニケーションを深めていく」ことが加筆されている。

脱炭素社会へのトランジションはどのように進めていくのか。それを考える上で最も重要な50年の社会およびエネルギーのビジョンを私たちはまだ議論できていない。今こそその第一歩を、地域で、学校で、企業で、スタートさせるときだ。そして政府のみならず、地方自治体の脱炭素計画を検討していくプロセスにも、必ず市民と若者の参画を位置付けることを提案したい。

むらかみ・ちさと 1992年日本IBMから環境NGOに転職。以来、環境教育・持続可能な開発のための教育に携わる。2019年より現職。総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会委員。

【コラム/10月12日】岸田政権の誕生は、現実的なエネルギー政策への転換につながるのか?


福島 伸享/元衆議院議員

先月、自民党総裁選が盛り上がる中の本コラムで私は、「幸か不幸か、エネルギー政策が政局の争点となった」と題して、「近年の日本の政治にはあまりなかった、エネルギー政策を争点とした選挙が行われることになるだろう」と予測した。菅前政権がカーボンニュートラルを掲げ、小泉環境相や河野規制改革担当相が過激な政策を掲げる中、とりわけ総裁選に出馬した河野氏が核燃料サイクルの中止を掲げたことから、本質的なエネルギー政策の議論がなされることを期待したのだ。

しかし、現実にはそうはならなかった。核燃料サイクルからの撤退を実現するためには、核燃料サイクル関連施設を多く抱える青森県との関係の調整、使用済み燃料を青森県に搬出している原発立地自治体との関係の整理、日米原子力協定の枠組みがどうなるのか、などこれまでの自民党政権の下での原子力政策が内包する解決困難な矛盾がパンドラの箱を開けるように飛び出してくる。自民党の総裁候補が威勢よく唱えた「改革」の言葉は、ブーメランとなって我が身に戻ってきて、大量の出血が起こる可能性もあるのだ。おそらく、そのことに党内の誰かが気付いたのであろう。連日メディアを使って派手に行われた総裁選候補者同士の討論会のテーマから、エネルギー政策は巧みに外されていた。

その結果、バランスの取れた穏健なエネルギー政策を掲げる岸田氏が新総裁・新総理となり、胸をなでおろしたエネルギー関係者も多いことだろう。調整型の萩生田氏を経済産業大臣に、民主党から鞍替えした山口氏を環境大臣に、エネルギー政策に深く関与してきた嶋田前経済産業事務次官を首席秘書官に就けた人事や、規制改革会議の廃止などの機構改革によって、河野氏や小泉氏のようなパフォーマンス先行の先鋭的な政策推進が行われることがないことは、容易に想像がつく。

しかし、私は日本のエネルギー政策にとって、決して安堵できる状況ではないと考える。岸田新総理の所信表明で「エネルギー」という言葉が出てくるのは、「二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、温暖化対策を成長につなげる、クリーンエネルギー戦略を策定し、強力に推進いたします」という箇所だけだ。そこには、再生可能エネルギーも原子力も何ら具体的なことが示されていない、当たり障りのないものだ。

この10数年間の日本のエネルギー政策の最大の問題点は、「原子力か再生可能エネルギーか」というスローガン的な二元論の狭間で、今日本のエネルギーが抱える目の前の本質的な問題の解決を政治が逃げ続けていることにある、と私は考える。それは突き詰めて言えば、原発を使うにしても、なくすにしても、今ある原子力をどうするのかという現実の問題に何ら具体的な政策や対策が出されていないということだ。

立憲民主党が掲げる「原発ゼロ法案」は、原子力をなくす方法を法律には具体的に示さず、政府に丸投げしている。それを政府が作れるのであれば、苦もないだろう。一方の自民党も、「原発の再稼働を着実に進める」と言いながら、その環境を整えるための制度作りなどはほとんど行っていない。高速増殖炉もんじゅが廃炉になる中で、明らかにこれまでの核燃料サイクル路線はいったん蒔き直しをする必要があり、「純国産エネルギー」と称していた原子力の位置づけが短期的には変わっているにもかかわらず、何ら原子力政策の枠組みの見直しには取り組もうとしていない。

河野太郎氏が投げかけた核燃料サイクルの中止を題材とする議論の中で、そうした問題への具体的で有益な議論が展開されることを期待していたが、そうはならなかった。岸田政権の誕生は、日本のエネルギーが今抱える本質的な問題に蓋をして、不作為の時間をさらに続ける結果にしかならなかったのではないか。政治が不作為の時間を過ごしている間にも、世界の情勢は変化し、技術は進化し、あるいは退化していく。エネルギー関係者は、岸田政権の心地よいぬるま湯に浸かるのではなく、政治の不作為への警鐘の声を上げるべき時だろう。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。

【マーケット情報/10月8日】原油続伸、供給不安強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続伸。欧米やアジアにおける冬の需要期を前に、供給不足への懸念がさらに強まった。

米国原油の指標となるWTI先物は、8日時点で79.35ドルとなり、2014年10月末以来の最高値。また、北海原油を代表するブレント先物と、中東原油の指標となるドバイ現物は、2018年11月以来初めて、80ドル台にまで上昇した。

OPEC+の11月増産量が、日量40万バレルに留まったことによる品薄感が根強い。供給不足が懸念される一方、英国は新型コロナウイルス感染拡大の減速を背景に、渡航規制を緩和。また、米国の石油ガス会社Shellは、ルイジアナ州のNorco製油所を再稼働。ハリケーン「アイダ」の影響により、6週間ほど停止していた。米国では、製油所の原油処理量が前週比で増加しており、需給が一段と引き締まる要因となった。加えて、同国の原油在庫は、生産増と輸出の急減により前週比で増えるも、前年を15%、過去5年の平均を7%下回っている。

他方、中国では、新型ウイルスの感染再拡大で、一部国内便がキャンセル。ジェット燃料消費が減少するとの予測が台頭し、価格の上昇を幾分か抑制した。

【10月8日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=79.35ドル(前週比3.47ドル高)、ブレント先物(ICE)=82.39(前週比3.11ドル)、オマーン先物(DME)=81.14ドル(前週比5.64ドル高)、ドバイ現物(Argus)=81.04ドル(前週比5.66ドル高)

LNG・石炭高騰止まらず 電気料金への波及に懸念


化石エネルギー資源価格の上昇に歯止めが掛からない。9月中旬現在、北東アジアのLNGスポット価格指標であるJKMは、12月分の先物で100万BTU当たり23ドル強。例年の4割ほど高い水準で推移しているのだ。

最大の要因は、世界的な脱炭素化の動きを受け、欧米や中国を中心に発電燃料の天然ガスシフトが急速に進んでいることだ。そこに、欧州市場における低在庫の問題や、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を巡る問題、上流生産設備や発電設備のトラブルなどが重なり、相場を押し上げている。一方の石炭価格も1t当たり170ドル台後半で高止まりの状態だ。

「通常であれば、不需要期の秋を迎え、価格が下がるはずの時期に高騰しているのは異常と言っていい。火力発電の柱である天然ガス、石炭ともに上がっているわけだから、始末に負えない。冬場の需要期に向けて、どうなることやら。とにかく電気料金への波及が心配だ」(大手電力関係者)

2021年度の冬に日本を襲った電力暴騰相場が再燃するのか。行方から目が離せない。

南極観測で科学発展へ貢献 電気工事を支える裏方の使命


【関電工】

 60年以上におよぶ日本による南極観測。この極寒の地での観測が、自然科学の発展に大きく貢献してきた。実は、その発展の一翼を、東京電力系の電気工事会社・関電工が担っている。

関電工は1986年から、国立極地研究所の要請でこれまで越冬隊、及び夏隊の計38回、社員を南極へ派遣している。そして現在、 南極観測隊の活動拠点である昭和基地へ、第62次越冬隊員として昨年11月から1年3カ月間の計画で出向いているのが関電工の上原誠さんだ(現在の所属は国立極地研究所 南極観測センター)。

㊤常に仲間に感謝しているという上原さん
㊦物資を運ぶ「しらせ」
提供:国立極地研究所

「南極でのミッション」――。それは電力会社や水道局が存在しない南極・昭和基地で、電気・空調設備の設営や保守管理の業務を遂行することだ。それだけでなく上原さんは、観測や生活に必要な建物や設備の建設、燃料輸送などにも従事する。観測活動や隊員の生活に必要な電気は、中核設備「ディーゼル発電機(300kVA)」によって供給される。排熱は室内向けの暖房に利用するコージェネとして有効利用する。基地には太陽光や風力発電設備もあり、ディーゼル燃料の消費量を減らしている。一連の配線工事や設備運用を上原さんが担うわけだ。

「どの設備も細かな維持管理が必要です。現地では無駄のない設備で構成されているからこそ、何か一つでも故障で直らなくなると、場合によっては命に関わります」(上原さん)とその使命は重要である。真冬はマイナス40℃近くなることもあるという極寒の環境、そして資機材と人材に制約があるなか、とりわけ屋外作業では手際の良さが必須だ。綿密な作業計画と業務を遂行する能力は、「南極経験4度」の豊富な経験を持つ上原さんのなせる技である。

仲間の存在への感謝 周りを支えるために

上原さんは「一人の力では何もできない」と日々、周りの仲間の存在に感謝している。「私は電気の専門家のリーダーとしてミッションを遂行しますが、いろいろな方々の協力が不可欠です。南極では、その思いを一層強くしています。そんな経験から、自分にとって『何をしたいか』ではなく、『自分が周りを支えられることは何か』を強く意識するようになりました」。上原さんの南極でのミッションはあと4カ月ほど続く。

グロス・ビディング廃止へ 透明性確保に新たな措置


2017年に卸電力市場に係る大手電力会社の自主的取り組みとしてスタートしたグロス・ビディングが、廃止されることが決まった。大手電力会社の社内取引分を含めて、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場を介して売買する仕組みで、①市場の流動性向上、②価格変動の抑制、③透明性の向上―という三つの効果が期待されてきた。

実際、取り組み開始前は、日本の電力需要の3・2%にすぎなかったスポット市場の約定量が20年度末にはコロナ禍の価格低迷もあって37・6%に拡大した。

だがその一方で、グロス・ビディングは成り行き買いによる全量買い戻しが認められるため、かえって「社内取引の透明性が確保されているとは言い難い」との指摘も。昨年度冬の市場価格高騰の際には、「大手電力会社のグロス・ビディングを通じた高値買戻しが、価格の高止まりを長引かせた要因だ」との指摘もあった。

資源エネルギー庁は、取引の透明性をより高めるための新たな手段に移行することを廃止の前提としている。廃止されれば、JEPXにおける取引量が半分以下に縮小するだけに、新たな市場活性化策も求められそうだ。

成功裏に終わった東京2020 大会運営を支えた電力供給


【東京電力】

 史上初の延期とコロナ禍で開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。

東京電力は管内の41の大会会場などへの電力供給と保安を担った。大会期間中は全社大で特別保安態勢を組み、最大で1日約600人が大会の電力供給を見守り続けた。会場内での電気設備の構築、運営も行った。

東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト統括室の渡邉守主任は、お台場海浜公園のトライアスロン会場の電気設備の構築、運営を担当。電気設備の設計など、初期段階から携わった。各大会関係者がリクエストする機器の使用電力から、必要な機材の使用を確認し設計の調整を進めた。

自分たちで考えて対応 経験は大きな財産に

だが2020年3月24日、大会が1年延期に。お台場海浜公園は構築中の電気設備をいったん撤去。延期により、大会組織委員会はより一層のコスト削減を打ち出した。建物や設備に変更が入るたび、電気設備の設計に変更を加え構築の再開に備えた。

「本当に開催されるのか、最後まで反対の声が多く耳に入ってくる中で、役割を果たすためにモチベーションを維持するのは大変でした」と、渡邉さんは振り返る。

21年5月、再び現地に入ると、電気設備工事を担う海外の企業や各大会関係者との調整に追われた。開催直前まで観客の有無が分からない中、運営や警備、放送など、会場に関わる多くの部署から電力設備に関するさまざまな要請が来る。海外の企業と調整を重ね、再設計と確認を繰り返し、構築を進めた。

「毎日初めてのことばかり起こる。調整力と度胸がつきました。同じ業界でも文化や認識が違う海外の人ともわたり合い、出来上がった設備を保守していく。貴重な経験でした」

会場では電力の信頼性向上のため複数の系統の電気設備が整備された。経験したことのない複雑な設備構築。海外の企業の機材は240V、400V仕様で、かつバックアップ電源も必要だからだ。

福田正喜エネルギーゾーンマネージャーは、トライアスロン会場を含め6会場の電気設備の構築を監督した。大会期間中は24時間体制のエネルギーオペレーションセンターで、各会場と連携を取り、各電気設備の運営を見守った。大会が終わり、それぞれ新たな職場にいくメンバーの成長を感じているという。「これまではマニュアルがあり、やり方がわかっている仕事がほとんど。今回のミッションは、未経験のものを全く新しい場所で、自分たちで考え作り上げていくものだった。この経験は大きな財産になる」

今後は未経験のものでもひるまず取り組めると話す二人の笑顔は、どんな場所でもどんな時でも電気を供給し続けるという責任感と使命感に輝いていた。

「無事に終わってほっとしました」と話す、福田正喜さん(左)と渡邉守さん

脱炭素目指すエネルギー政策 世界の潮流見極めて再構築を


【論説室の窓】黒川茂樹/読売新聞 論説副委員長

野心的な目標を掲げたエネルギー基本計画案に、「数字合わせにすぎない」との批判が相次いでいる。

日本は、世界の複雑な動きを見極めつつ、エネルギー・環境政策を再構築すべきだ。

 この秋、気候変動を巡る国際的な議論は激しくなりそうだ。

10月末から英国グラスゴーで、気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開かれる。同じ時期にイタリアのローマで開催されるG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)でも温暖化対策は主要テーマの一つだ。

米西海岸でこの夏、人の平熱を大きく超える46・7℃を観測し、東部を記録的豪雨が襲った。世界中で洪水や山火事などの異常気象が頻発している。

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した報告書が、温暖化が加速している現状に強い危機感を示したことも見逃せない。世界中の論文を精査し、最新の科学的知見を集め、信頼性の高い資料とされるものだ。

火力発電に頼る日本への風当たりは強い。COP26の議長国である英国のニック・ブリッジ気候変動特別代表は読売新聞とのインタビューで「日本は早期に石炭火力の全廃時期を示すことを期待する」と述べている。

国内外の政治状況は目まぐるしく変わる。一連の国際会議でも、経済成長を重視したい新興国などの反発が強まることが予想され、合意に至るのは簡単ではない。

本来、世界の温室効果ガス排出量の6割超を占める新興国の抑制策こそが重要であるはずだ。

日本としては、気候変動対策に前向きな姿勢を示しつつ、冷静に状況を分析し、現実的な戦略を練ることが求められよう。

気候変動対策の積極姿勢 「アピール」することは大事

脱炭素を訴えてきた菅義偉首相が9月3日、退陣を表明したが、それでも温室効果ガスの排出量を「2030年度に13年度比46%削減する」との国際公約の重みは変わらないとみられる。

菅首相が4月下旬に「46%削減」の目標を打ち出したのは、米バイデン大統領主催の気候変動サミットに向け、協調姿勢を示す必要があったことが大きい。

米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使は8月末から9月上旬にかけ、日本と中国をそれぞれ訪問し、気候変動対策の推進を訴えた。ケリー氏の狙いは、世界最大の排出国である中国に圧力をかけることだ。

日本は、誰が首相になっても米国と連携して気候変動に積極的に取り組む姿勢を示し続けることが求められる。とりわけ、水素エネルギーやカーボンリサイクルなどの共同開発に取り組むべきだ。

米バイデン政権は「30年に05年比50~52%減」との目標を掲げたものの、どれだけ実行策が伴うかは未知数だ。来年11月の中間選挙では苦戦も予想され、エネルギーへの課税強化といった急進的政策はますます取りにくくなる可能性がある。

再エネ推進を掲げる欧州 安易に追随していいのか

欧州は、火力発電をなくして再生可能エネルギーへの移行を図っているが、日本が追随するのは得策ではないだろう。

この夏まとまったエネルギー基本計画案で、30年度の電源構成について、再エネ36~38%、原子力20~22%、火力41%、水素・アンモニアを1%――とした。これに対し、識者などからは「46%削減」との整合性を取ろうとして「数字のつじつま合わせに終始した」との批判が噴出している。

再エネを最大限伸ばすのは大切だが、整備に時間がかかる洋上風力は、30年度までの本格稼働は難しい。適地が残り少ない太陽光に頼るしかないという。

太陽光の割合は、19年度の7%から30年度に15%に高めるとした。もともと民主党政権の政権公約で盛り込まれた固定価格買い取り制度が12年に始まり、太陽光が急増した。再エネ推進派はまだまだ伸ばせるというが、国土が狭く、自然条件に恵まれない日本では、今回の目標も現実離れしているとの見方が多い。

河野太郎行政・規制改革相は、著書「日本を前に進める」(PHP新書)で、「(日本の再エネ目標は)わずか36~38%でしかない」と強い不満を示している。「30年に65%」を掲げたドイツなどと比べると、大きく見劣りしているとの主張だ。

太陽光は既に国土面積当たりの設備容量は世界一となり、近年、新規案件は伸び悩んでいる。山林を切り崩して太陽光発電所を造る事例が相次ぎ、住民の反発が強まっている。

太陽光の国土面積当たりの設備容量は既に世界一だ

まず環境省と地方自治体は、新たな適地を見つけるための最大限の努力をしなければならない。環境省は適地を自治体が選び、設備を設置しやすくする「促進区域」を各地で設定する方針だ。公共施設の屋根への導入なども推進するという。再エネの可能性と限界については、十分に検証して、広く認識を共有することが欠かせない。

二酸化炭素を出さない安定電源である原子力の役割は、大きくなるはずだが、位置付けはあいまいなままだ。

東日本大震災後、稼働に向けた申請があった27基のうち、再稼働したのは10基で、19年度の電源構成で6%にとどまる。新増設や建て替えには言及していない。

今回の計画案は、投資を促進する視点が欠けている問題も見過ごせない。総合資源エネルギー調査会の会合では、「これでは投資計画を変える電力会社はなく、意味がない」(橘川武郎・国際大学教授)との厳しい指摘があった。

エネルギー基本計画は、エネルギー政策基本法に基づいて、需給に関連する施策の方向性を定めるものであり、単なる努力目標を示すものではない。

自由化のあおりを受け、大手電力の経営余力は乏しくなっている。発電所の新規工事が急減し、19年の投資額は1兆3000億円と、1993年から3割以上減った。老朽火力の休廃止などで冬の電力需給は厳しくなると予想される。

火力発電への投資がストップし、再エネは思うように伸びず、原発の再稼働が進まない―。そうなれば電力不足が恒常化しかねない。世界へのアピールをしつつも、国内のエネルギー政策はしたたかに再構築しなければならない。

気になるCP導入の行方 既存税制強化の可能性


環境省が2022年度税制改正要望で、脱炭素化に向け、カーボンプライシング(CP)について年内に一定の方向性を取りまとめる、と踏み込んだ。要望では明示していないものの、同省が狙うのは炭素税で、かつ一般財源化も視野に入れている。

こうした動きを受け、日本経団連の十倉雅和会長は、政府の気候変動関連の会議で「炭素税なども含めて、社会変容を促し産業政策にもなり得るような最適なポリシーミックスを考えていく必要がある」と発言。ただ、経団連がその後発表した税制改正に関する提言では「炭素税については現状では新規導入の合理性は明らかとは言えない」と慎重姿勢を示した。

実際のところ、すぐに炭素税導入が結論付けられる可能性は低そうだが、既存のエネルギー諸税の強化の可能性はある。「2兆円のグリーンイノベーション基金の出どころは一般会計。エネルギー対策特別会計から出せなかったからで、今後財務省が圧力をかけてくるだろう」(経済界関係者)

やはり脱炭素化政策は金がかかるもの。今後もさまざまな場面で負担増が顕在化しそうだ。

東京パラ13日間の熱戦 エネ企業所属選手も活躍


13日間の熱戦となった東京パラリンピックが、9月5日に閉幕した。コロナ禍での異例ずくめの東京大会も、すべての日程を無事終了。パラリンピアンの活躍は五輪とは一味違った感動を多くの人に与え、エネルギー企業所属のメダリストも誕生した。

日本パラ競泳のエースで東京ガス所属の木村敬一選手は、視覚障がいクラスの男子100mバタフライで金メダル、100m平泳ぎで銀メダルを獲得した。2歳の時に病気で視力を失い、小学4年で水泳を開始。4大会連続出場ながら金にあと一歩届かなかったが、東京大会で悲願を達成した。東京ガスが開いたメダル獲得報告会では、木村選手が内田高史社長らを前に、2013年から所属する同社への感謝の想いを述べた。

競泳では四国ガスの山口尚秀選手も金メダリストに。100m平泳ぎ(知的障がいクラス)で自身の世界記録を更新しての快挙を達成した。小学4年で水泳を始め、17年から本格的に競泳に取り組む山口選手は、他にも2種目で4位入賞を果たした。地元への凱旋時は、四国ガスの眞鍋次男会長や片山泰志社長らが空港で出迎えた。

彼らの活躍を見守ってきた所属企業の喜びも印象的な東京大会となった。

木村敬一選手は悲願の金メダルを獲得した(提供:東京ガス、写真:清水一二[フォトサービス ワン])