A 昨年10月の菅義偉首相のカーボンニュートラル宣言を聞いた時は正直厳しいと思ったが、その直後、広瀬道明・日本ガス協会前会長がガス事業者の生き残りに向けチャレンジする方針を明言。そして今年6月に工程表としてアクションプランが発表された。エネルギーの実質ゼロというと電源の脱炭素化や電化が注目されがちだが、それ一辺倒で実現できるものではない。エネルギー消費の約6割は熱であり、トランジション(移行)期においても特に高温熱を使う産業分野や既築住宅など、電化に向かない分野の着実なCO2削減に都市ガス業界が貢献できる。
B ガス自体の脱炭素化は事業存続の命綱になると期待している。ただ、中小にはそれにコミットできるリソースがない。中長期の事業継続を考えたとき、地方ガスとしての生き残りにこだわるつもりは正直ない。確かに電化シフトが進んでも、ガスによる熱供給は残るだろう。だが脱炭素以前に、人口減少・少子高齢化に伴う市場のシュリンクの方が深刻だ。導管資産や雇用の維持はガス事業一本では難しい。地方ではどの産業も疲弊し、このままでは共倒れだ。異業種連携で新電力事業など総合インフラ事業体を新しくつくることで、ガス事業継続の道も見えてくる。まず持続可能なまちづくりを進め、その上でCNガスの供給体制を整えないと意味がない。
電化との競争本格化へ 需要家サイドへの提案が鍵
C 実質ゼロ化へのイノベーションも重要だが、トランジションで累積排出量をいかに抑えるか、つまりコージェネなど天然ガスの高効率利用の一層の深掘りも重要だ。ガス業界は、電力セクターがどう仕掛けるかを考えつつ、低炭素化という武器を生かした貢献策を追求する必要がある。現場はエネルギー間競争を意識しており、トランジションでの競争に劣後すれば、地方の事業者は存続できない。
D メタネーションは50年に向けた長期視点、30年46%減はほぼ明日の話と区別した上で、両輪の取り組みが求められる。50年についてはメタネーション一本足ではリスキーで、幅のあるシナリオを想定し、手立てをきちんと考えていくべきだ。30年の局面では、全体で非化石電源を2~3倍増やせなければ、ガス会社に一層のCO2削減のしわ寄せが行くことも予想される。そこで電力への進出も当然考えられるし、カーボンクレジットを使った対策も頭に入れる必要がある。