A EUは日本に先んじてロシア産石炭の禁輸を発表した。石炭の海上貿易規模は約10億tで、ロシア産はその18%ほどを占める。欧州向け石炭の一部はシベリア鉄道を東に向かい中国などで多少さばけるが、鉄道能力の限界もあり輸出量は相当減る。他方、オーストラリアなどほかの産炭国の生産能力に余剰はなく、市場はますますひっ迫する。こういう需給環境下なので、日本の一般炭のロシア産比率は13%程度だが、代替炭の調達は簡単ではない。価格もまだまだ上がる。
B 2月以降下旬、さまざまな企業、個人がロシアへの経済制裁の対象となった。当初は、制裁対象の個人が企業との関わり方を見直し、事業への影響を回避する余地もあった。しかしSWIFT(国際銀行間通信協会)からの除外や、米国の石油をはじめとする化石燃料禁輸、EUの石油化学企業への制裁、そして石炭輸入の規制と、強化が加速している。2014年のクリミア危機後のロシアへの制裁よりかなり厳しい。日本が遠巻きに眺めているうちに、化石燃料輸入のロシア依存度が低い米国が率先して手を打っていった。他方、当初EUの制裁は米国と比べて控えめだったが、14年のマレーシア航空機撃墜以降は態度を硬化し、18年の化学兵器使用疑惑を契機にさらに厳しい制裁を課すようになった。
C ロシア産天然ガスの排除は相当厳しい。全世界のガス貿易量の約25%がロシア産だ。プーチン大統領がパイプラインのバルブを締めれば自由に動かせるLNGで手当てしなければならないが、もともとパイプラインガスの量は非常に多く、かつ今はLNGの需給がタイトで、すぐの増産は難しい。先ほどAさんがロシア産石炭シェアの高さを紹介したが、それを聞いて事態の深刻さを再認識した。ガスが十分調達できなかった場合の代替燃料は石炭か石油しかない。しかし、先にEUが制裁として石炭輸入を絞り、その後プーチンにガスを絞られたらどうしようもない。
資源大国ロシアへのエネルギー制裁には疑問が残る
石炭の即増産は非現実的 脱炭素で首がしまる欧州
C 春になり(欧州の指標価格の)TTFや(アジアスポット指標の)JKMは100万BTU当たり30ドル台で推移。以前の5ドル台と比べれば高いものの、現在の価格は落ち着いているように見え、世間はガスの脱ロシアもいけると思うかもしれない。だが、今後夏、冬にEUが危機的状況になることは分かり切っている。今から石炭を減らすなんてとんでもない。日本政府がサハリン2などから撤退しないという姿勢は正しかったが、EUに続いて発表した石炭禁輸が大きなブーメランになるのではないかと心配している。
A 石炭は開発のリードタイムが短く、かつては価格が上昇すれば2~3年で増産できた。しかし前述の通り上流開発に金が回らなくなり、既存の石炭鉱山を使い倒すほかない。生産ピッチを多少上げることは可能だが、価格低迷期に生産性の高い鉱区を使い、手間のかかる場所ばかり残っているのではないか。あとは西側の金融の影響を受けない中国がどれほど増産し、輸入を減らしてくれるかだ。
B 資源開発の実態を考えると、欧州は次の冬も厳しくなる。昨年からガスプロムの欧州向けのガス輸出量は契約の範囲内にとどまり、地下ガス貯蔵在庫の少なさが以前から問題となっていた。欧州委員会は貯蔵量を増やすよう指示していたが、貯蔵事業者は高い価格を払ってまでガスを確保しようとしなかった。ガスプロムは、21年に圧入した分はすでに使い切り、20年に圧入したガスしか残っておらず、新たに追加しないと冬に向けて欧州は需要を賄えないと警告している。
C 脱炭素、自由化の罪もある。欧州ではガスも持続可能でないとの論調が強まり、ロシアとの長期契約を縮小してきた。実は欧州にはセキュリティーを担当する機関が存在せず、ガス貯蔵を計画的に管理できていない。事業者は自社の得かどうかだけで判断する。何の保険もなく、自由化や脱炭素に走った結果だ。日本も欧米追従で自由化を進めてきたが、世界のガス・LNG市場の一体化が進んでおり、日本も間もなく同様の問題を抱えそうだ。
A 脱炭素化でエネルギーソースの多様性が失われた。パイプラインガスは相手側にトラブルがあればすぐ止まってしまう。だから欧州では貯蔵でき、余剰の際は転売できる石炭がかつては調整力を担ってきたが、脱炭素でサプライチェーンが細り、結局ガス火力が需給調整役となっている。一方で再生可能エネルギーが増え、必要な調整幅は拡大した。