kW時不足の燃料確保で指針 義務なしで実効性に疑問符


今年1月、LNG不足に端を発し、全国的に電力需給がひっ迫状態に陥ったことを受けて、経済産業省資源エネルギー庁は、kW時不足を考慮した火力燃料確保の方向性を盛り込んだ指針の作成に乗り出した。

1月の需給危機は火力燃料不足が一因だった

指針には、将来のkW時不足の可能性を判断する基準や、需給ひっ迫時の必要量を考慮した燃料在庫量の目安などが盛り込まれる見通しだが、事業者の燃料調達交渉などへの影響に配慮し、「義務」ではなく事業者がとる燃料調達行動の「目安」との位置づけにとどまることになるため、業界関係者からはその実効性を疑問視する声も上がっている。

有識者の一人は、「実効性のある仕組みを作ろうとすれば、当然、新電力にも新たな負担を求めなければならなくなる。ただでさえ容量市場で負担が増える新電力への配慮から、今一歩踏み切れなかったのではないか」と、苦肉の策に一定の理解を示す。

だが、事業者の努力だけで今回のような危機を回避するには限界があるのも事実。このため、「現行の電力市場が非常に危険な構造であることを全市場参加者が理解した上で、少しでも改善するような方法論を議論するべきだ」と警鐘を鳴らす。

脱炭素と再エネ共存を目指す 蓄熱運用を変革する時代へ


【ヒートポンプ蓄熱の新潮流/第1回

地域熱供給事業者として、国内最大の蓄熱槽を保有する東京都市サービス。脱炭素・再エネ共存を目指して従来の「ピークカット・シフト」の運用を変えようとしている。

東京大学の松本真由美・客員准教授が同社福嶋岳夫社長に今後の展望について話を聞いた。

松本真由美 東京大学客員准教授

福嶋岳夫/東京都市サービス代表取締役社長

松本 東京都市サービスが手掛けている、晴海トリトンスクエアの熱供給事業の施設を見学しました。大都市のど真ん中で大規模な熱源機器や蓄熱槽を運用しながら、熱供給事業を行っていたことを知りびっくりしました。高い省エネ性を誇っているとは聞いていたのですが、改めてこの晴海トリトンスクエアの地域熱供給についての概要やポイントについて教えてください。

福嶋 晴海トリトンスクエアの熱供給施設は2001年に運用を開始しましたが、再開発の段階から非常に計画的に作られています。三つの大きな棟に囲まれており、熱供給のアクセスを考えてプラントは建物群のちょうど真ん中に配置しています。また各棟の地下には、巨大な水の蓄熱槽がプラントを囲むように設置されています。

 それともう一つの特徴は水槽、つまり蓄熱槽の容量が大変に大きいことです。1万9000tの規模で、これは熱供給事業としては日本最大です。この蓄熱槽のおかげで、全体の熱需要に対して、ヒートポンプを中心とした熱源機器の容量を約半分に抑えています。

 仕組みはいたって単純で、電力需要の少ない夜間に熱源機を動かして蓄熱し、昼間の時間帯に蓄熱槽から放熱します。そうすることで昼間の電力のピークを半分に抑えることができるわけです。

1万9000tの蓄熱槽を保有する晴海トリトンスクエア

松本 効率的な熱利用ができるように再開発と熱供給施設の計画が一体となって進んだ。さらに蓄熱を活用することで電力の負荷平準化に寄与しているわけですね。

福嶋 はい。当社では現在、関東エリアを中心に19カ所で熱供給事業を行っていますが、特に銀座周辺の地点が多いですね。地価が高いところには熱供給事業、つまり地域冷暖房が採用されやすい特徴があります。熱供給のような熱源機器のセントラル方式によって、ビルのオーナーは各フロアの空調用の機械スペースを省けます。また熱供給を受けるビルは、自前で冷暖房するための地階や屋上に設置する機器を大幅に省略できるため、その分貸し出すスペースや屋上利用スペースが広がります。さらに熱供給プラントが設置されるビルは容積率が緩和されるなど、地価が高いところに向いている特徴がありますね。

松本 こういった蓄熱槽は有事の際の防災対策にもなるわけですか。

福嶋 はい。われわれは蓄熱槽をコミュニティータンクと呼んでいまして、火災発生時には消火用水としても利用できます。晴海トリトンスクエアでは年1回は消防車が来て、蓄熱槽から放水する試験を実施して機能を確認しています。

 また、東京の京橋地区では清水建設さんの本社ビルの地下に熱供給プラントがありますが、行政側と連携し、有事の際には清水建設さんが帰宅困難者を受け入れることになっています。ここでは蓄熱槽がトイレ洗浄のための生活用水として利用できる仕組みになっているなど、いろいろな機能を蓄熱槽は兼ね備えています。

松本 平時には省エネ対策として稼働し、有事の際には近隣に対しての防災対策、レジリエンス機能を高めていくということですね。さて、今、政府がカーボンニュートラルを目指しています。そこを目指す上で大前提となるのが省エネです。その意味で熱供給の導入は省エネ対策として重要だと思います。そうした中、東京都市サービスの地冷では、あまり使われていない熱を有効に使う取り組みなど、さらに省エネ性を高めようとしています。

大手事業者にカルテル疑惑 制度改革の行方に影響も


電力・ガスの小売り市場で圧倒的な市場支配力を持つ大手事業者が、価格カルテルを結んでいた疑いが浮上している。小売り市場でのカルテル疑惑は、発電・卸市場でも同様なことが行われているのでは、との懸念を招きかねない。今後の制度改革に影響を与える可能性もある。

公正取引委員会は4月13日、関西電力、中部電力、中国電力に独占禁止法違反の疑い(不当な取引制限)で立ち入り検査を行った。2018年ごろから特別高圧・高圧電力の分野で、顧客の争奪戦を防ぐ話し合いを行ったという。また同日、中部電力、中部電力ミライズ、東邦ガスにも低圧電力と都市ガスでカルテルの疑いで立ち入り検査を行っている。

価格消耗戦を避けたかったのか

全面自由化による競争激化で、大手事業者の収益力は大きく低下。各社とも価格面で「消耗戦」を避けたい意向があったのか―。ならば、その代償も大きい。

東京大学の松村敏弘教授は「今回の事案が事実なら、大手電力・ガス事業者間の根強い競争制限体質を疑われることになる。小売りだけでなく調整力・容量市場を含む発電、卸市場での競争性にも疑念が生じ、これからの制度改革の議論にも影響を与えるだろう」と指摘している。

石炭火力「輸出停止」の波紋 裏で途上国の新設計画が激減


3月29日付の日本経済新聞が、政府が石炭火力の輸出支援の新規案件を全面停止する検討に入ったと報じた。政府は昨夏インフラ輸出戦略を見直し、石炭火力では脱炭素化を目指す国に対してUSC(超々臨界圧)以上に限定する、などと要件を厳格化したばかりだった。

だがこの報道について、加藤勝信官房長官や梶山弘志経済産業相は即座に否定。どうやら水面下で話はあったものの、環境省の一部からのリークに経産省側が怒り、結局立ち消えとなったもようだ。

今年に入り、途上国の石炭火力を巡る状況は急変している。米バイデン政権の誕生で世界的に気候変動政策強化に拍車が掛かり、日本がカーボンニュートラルを宣言したことも背景にある。

中国の一帯一路で2017年に建設されたパキスタンの石炭火力発電所(提供:朝日新聞社)

ASEAN(東南アジア諸国連合)で日本が関わり、現在具体的に動きがある石炭火力建設計画は、何とバングラデシュのマタバリ発電所1件のみ。現地国営電力を事業主体にJICA(国際協力機構)が支援するUSCで、10年ほど前に計画が立ち上がった1、2号機が建設中、その拡張工事として3、4号機の検討も進んでいる。しかしASEANでほかの案件はガス火力に変更したり、住民の反対で止まったままだったりと、マタバリ以降の新設計画はゼロだ。「ASEANも本音では石炭を使いたいはずだが、日本の動向なども見て潮目が変わった。中国も石炭火力から太陽光輸出にかじを切っている」(火力部門関係者)

アフリカでも石炭火力建設計画は1件のみで、あとはIGCC(石炭ガス化複合発電)案件が世界規模で1、2件出るかどうかという状況。脱炭素ブームは既に途上国をものみ込みつつある。

【イニシャルニュース】波紋広がるY参事官発言 内閣府は勉強不足!? ほか


1.波紋広がるY参事官発言 内閣府は勉強不足!?

「容量市場の必要性について非公式の場で必ず語られるのが、電力自由化と引き換えに経産省が電力に切った手形であるということだ。これは検証できるものではないが、仮に真実であるとすれば、国民に対する重大な背信行為であり、真実でないとしても、そのような話でしか腹落ちしない説明不能な制度」

3月26日の電力・ガス基本政策小委員会(経済産業相の諮問会議)で、内閣府Y参事官が発言した内容がエネルギー関係者の批判を招いている。

この発言に対し、1週間後に開かれた内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)」では、資源エネルギー庁幹部が「大変心外に感じている。揶揄的な憶測の批判発言は、審議会で制度設計議論に携わる委員に大変失礼な不適切な発言だ」と強く抗議。当の審議会委員からも、「内閣府はあまりにも勉強不足だ」と反発の声が上がっている。

新旧問わず、電力会社側からも「建設的な議論を呼ばない」と異論の声は大きい。電力業界関係者のX氏は、「TF意見で当初、容量市場の対案としていたテキサス州が大停電を起こしてしまい、言うに事欠いたのかもしれないが、平場で陰謀論を持ち出すのには驚いた」とあきれ顔。

別の業界関係者Z氏も、「要は内閣府と蜜月の環境団体SやK大チームがこういう思考に立っていて、Y参事官もそれをそのまま発言の論拠にしているという印象だ」と、逆に一部企業や団体への利益誘導が目的ではないかと疑念を強める。

実際、1月の電力卸市場価格の高騰を受け、再エネTFは一部新電力の経営を優遇するような主張を繰り返し、大手電力会社やほかの新電力関係者らの不評を買った。

容量市場は世界で複数の導入実績があるものの、それが将来の容量確保策として有効かどうか、国内でさまざまな意見があるのは事実。だが、このような陰謀論を持ち出したのでは、本質的な議論から遠ざかるばかりだ。

2.Fパワー波乱の更生開始 新スポンサーはどこに?

東京地方裁判所は3月30日、新電力大手Fパワーが申請していた会社更生法の適用に基づく更生手続きの開始を決定した。

今冬の日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格高騰などが業績を直撃し、負債総額は464億円。今年に入り、事実上最大の経営破綻劇だ。

東京地裁の決定を受け、Fパワーでは保全管理人の富永浩明弁護士が、埼玉浩史氏や沖隆氏ら旧経営陣に代わって、管財人として事実上の経営権を持ち、更生計画の策定に取り組むことになる。

「さまざまな憶測が飛び交っているが、当社の業務は従来通り行われ、お客さまに提供する電力(料金・サービスなど)の営業活動に影響が及ぶことはない。ステークホルダーの方々には大変なご迷惑をお掛けし、申し訳ない気持ちでいっぱいだが、新たなスポンサーの下で、より一層充実したサービスを提供できるよう、誠心誠意、今後の経営再建に取り組んでいく」。Fパワー関係者はこう話す。

業界の関心事は、Fパワーの新スポンサーにどの企業が選定されるかだ。複数の関係筋によると、情報通信系大手のH社のほか、IT系大手のD社、中堅新電力のE社、大手エネルギー会社のT社、C社、K社などの名前が浮上している。

「中でも、資金力でいえばH社が最有力。またD社関係の実力者I氏がFパワーの再建に関心を見せているとの話も聞こえている。ただ、いずれも電力販売事業には深い知見やノウハウがなく、課題山積状態のFパワーの経営を実際に立て直せるかは極めて微妙。外資系ファンドなどが絡んでくると見る向きもあり、今後数カ月の動きに要注目だ」(事情通)

現在、全国的に電力需給は落ち着いており、JEPX価格も安値圏で推移しているが、電力需要が増加する夏場や冬場にいつまた高騰するとも限らない。不安定な市場価格に影響されない経営改革をどこまで実現できるのか。再建は前途多難の様相だ。

地裁はFパワーの更生手続き開始を決めた

インフラ維持の年間費用が増大 統合的なマネジメントが必須に


【アクセンチュア】藤野 良/アクセンチュア プリンシパルディレクタービジネスコンサルティング本部

前回は、電力のレジリエンスをテーマに、送配電事業の災害復旧と事業への貢献余地の可能性を示した。4回目は、エネルギーインフラの維持管理において、他のインフラとの統合マネジメントに言及する。

ふじの・りょう 2005年アクセンチュア入社。エネルギー関連企業を中心に、事業戦略・新規事業創造等の戦略立案から戦略実行フェーズまで、多数従事。

エネルギー需要が右肩上がりだった高度経済成長時代に建設した電力やガスなどのエネルギーネットワーク設備の経年化が進んでいる。この設備の維持・更新にかかる支出は今後増大していく見込みで、大きな社会課題となっている。

特に人口密度が低い地方では、需要の総量が小さい割に、インフラ設備の総量が多くなりやすく、課題はより顕著となる。エネルギーだけでなく、水道や道路、通信などのネットワーク系社会インフラでも同様の課題を抱えている。

市町村当たりの電力と公共インフラ(道路・下水道・橋梁・河川等の土木費)の維持管理費用を、仮に各市町村の住民が負担すると仮定して試算すると、2018年度の25年後の43年度には、236の市町村において、住民一人当たりの負担額は2倍以上、中には4〜5倍を超える市町村も出てきてしまう。また、このうち169市町村では、住民一人当たり年間100万円以上のインフラ維持管理費用を負担することになる。その管理費用は、実際には、電気代や水道代、通信費、一般道路の維持管理費といった税金など、さまざまな形で徴収される。

このため、地域ごとの料金差は少なく、各住民は負担感を意識しづらいが、こうした試算を通じて、社会インフラ維持管理の課題の大きさが実感できる。

管理主体が異なり非効率 人材をプールして有効活用

持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けて、今回は複数種別のインフラを統合的にマネジメントする取り組みを紹介したい。

現状、ネットワーク系のインフラ管理は、電力とガス、通信は民間事業者、上下水道・道路は自治体の各管轄組織が主体となっており、インフラの種類ごとに管理主体が異なっている。このため、インフラの新設や改良、点検や補修などのメンテナンス業務は、個別に実施されている。面的に広がるインフラの点検・対策に必要な人材をインフラ管理者ごとに抱えることは非効率であり、プールした人材がインフラを横断してメンテナンスに対応していくことが全体最適だ。もちろん、インフラの種類ごとに必要な技術・技能は異なるため、タブレットやウェアラブルなどのデジタルデバイスと、リモートからの熟練者の支援などと組み合わせることで、現地作業員の技術や技能を補完することが可能であり、実現可能ではないかとみている。

2018年度と約25年後を比較したインフラ維持管理費用に関するデータ
市町村当たりの電力と公共インフラの維持管理費用を各市町村の住民が負担すると仮定した試算

電力や水道、通信などを同一箇所に埋設している工事は、現状も複数インフラ間で調整はされているものの、全体コスト極小化の観点からは、さらに早期に計画段階からの工期の同期が考えられる。

持続可能な都市の実現に向け、地方都市を中心に立地適正化計画やコンパクトシティー構想が立案され、時間をかけながら生活に必要な機能と住民を近接した地域に集約していく計画も存在する。自治体主導で立案したプラン通りに民間が足並みをそろえて動けていないケースも多い。マスタープランに従いながら、生活に必要な諸機能の集約に合わせて、社会インフラも再形成していくには、複数のインフラを横断した計画とその計画に基づく中長期視点でのインフラ再形成の実行が必要となる。

官民連携の事業体が鍵 成功モデル作りを早期に

インフラを統合的にマネジメントするには、官と民とで分断した現状のインフラ管理から脱却して、統合型のマネジメントモデルへと変革を図っていく必要がある。そのためには、統合マネジメント効果を創出しやすい地域と業務領域を対象に、着実に効果を創出していきながら、業務領域やインフラ種別といった統合範囲を拡大していくアプローチが必要である。

日本でも、官民連携の下で複数インフラを統合的にマネジメントする動きが出始めている。例えば、新潟県妙高市では、ガス事業譲渡と上下水道事業の民間委託の公募型プロポーザルが行われ、21年3月にJFEエンジニアリングと北陸ガス、INPEXの3社グループの提案が採択され、優先交渉権を獲得、22年4月から事業を始める計画だ。「ガスと上下水道の一体運営での相乗効果を生かした持続的運営」に加え、「電気や再生エネルギーなども提供する『地域のユーティリティー・コーディネーター』を目指す方針」が評価された。

滋賀県大津市では、大阪ガスなどと共に出資して、びわ湖ブルーエナジーを設立し、ガスや水道の保安サービスを提供している。

複数のインフラを統合的にマネジメントして効果を最大化するためには、単に官が保有するインフラを民間に渡すだけでは不十分であり、インフラ種類ごとの縦割り制度を改革し、統合マネジメントによる創出価値を住民と民間事業者側に適切に利益配分ができるような仕組みを作るなど、継続的に統合効果を創出し続けるための環境整備・制度的支援を強化していく必要がある。官は民に丸投げをせず、また、民は全体最適視点で利益の社会還元も大目的に据え、官民が密に連携した成功モデルが早期に生まれ、さまざまな地域に展開されていくことを期待したい。

またも温暖化問題で政治判断 30年46%減へNDC大幅拡大


カーボンニュートラルに続き、またもや政治判断で2030年温暖化ガス削減目標(NDC)の大幅引き上げが決まった。現在掲げる30年の電源構成と整合する13年度比26%減から、46%減へと約20ポイント引き上げる(※)。昨年末に1990年比30年55%以上削減との目標を国連に再提出したEUに続き、米国でもバイデン政権が目標を大幅に引き上げることから、日本も同調せざるを得なくなった格好だ。

4月16日の日米首脳会談では協調路線をアピール(提供:朝日新聞社)

日本の見直しは40%~45%減の間で調整が進んでいたが、欧米に見劣りしない水準として、最終的にはその上限にさらに1ポイント積み増す形となった。前回策定時は電源構成の検討状況を踏まえ、部門ごとに温暖化ガスの削減幅を積み上げてNDCを算出したアプローチに比べると、今回の結論ありきのやり方は乱暴と言われても仕方がない。

原子力再稼働が進まず目標比率と乖離しており、現在のNDCの達成も難しい状況下でどうやって削減幅を46%まで引き上げるのか。関係者は、省エネの深掘りに加え、経済成長とCO2排出量の「デカップリング」がポイントになるという。従来は経済成長に伴いCO2排出量も増大するとの前提で検討してきたが、今後は経済成長を維持しつつもCO2削減は進むとの考え方にシフトする。

ただし、一部の先進国でデカップリングを達成しているとの主張がある一方、その因果関係については疑問の声も多い。そしてサービス業中心の国と異なり、日本の産業構造は製造業中心だ。トップダウンで強引に導き出したNDCを必達しようとすれば、産業構造の転換や空洞化を招き、日本経済にさらなる打撃を与える懸念は払しょくできない。

※編集部注 記事執筆時点(4月20日)は新NDCの発表前だったため、本誌5月号(5月1日発売)ではその時点の情報を基に「30年46%減」でなく「45%減」としました。

増加の一途をたどる再エネ賦課金 企業の調達支援に「不公平感」の指摘


再生可能エネルギーの大量導入に向けた国民負担が雪だるま式に累増している。

一方、その「環境価値」活用を巡る新たな制度議論では、真のニーズに合致しているのかと疑問の声が上がる。

政府が主力電源化を掲げる再生可能エネルギー。菅義偉首相による昨年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」の後押しもあり拡大路線は今後も続くが、その一方で懸念されるのが大量導入を支える国民負担の増大だ。

経済産業省資源エネルギー庁が3月に発表した、21年度の1kW時当たりの再エネ賦課金は、前年度よりも0・38円高い3・36円。1カ月の電力使用量が260kW時の一般家庭の場合、月額873円(前年度は774円)、年額では1万476円(同9288円)を負担することになる。家庭の負担が年間1万円の大台に乗るのは、FIT制度が始まった12年度以降初めてのことだ。

この賦課金算出の根拠となった21年度のFIT買い取り費用の総額は、3兆8000億円。再エネ比率22~24%を目指す現行の「2030年エネルギーミックス(電源構成比率)」策定時、エネ庁は年間の買い取り総額を3・7~4兆円と試算していた。つまり、30年に想定する水準まで10年近く前倒しで達したことになる。

増大し続ける国民負担にエネ庁も無策だったわけではない。これまでも、①中長期的な価格目標の設定、②入札制度の活用、③FIT認定後、長期間稼働していない高価格案件への厳格な措置、④低コスト化に向けた研究開発―などに取り組むことで、再エネ推進との両立を図ろうとしてきた。

それでも、今後しばらくの間は、当初の高額認定分の買い取り期間が続く上に、太陽光・風力発電の設置コストはある程度低減されたものの、そのスピードは鈍化しつつあり世界的に見れば高止まったままだという現実がある。

大量導入に影を落とす 国民負担と環境負荷

しかも、既にFIT認定を受けた設備が全て稼働した場合、買い取り費用が4・9兆円になるとも試算されており、これに新規に開発される案件の買い取り費用が上乗せされれば、国民負担はさらに膨れ上がる。

再エネ開発事業に携わる関係者の一人は、「国土の7割近くを森林が占める日本では、再エネ適地が少ない。今後も一定の導入量を確保していこうとすれば、より開発が困難な立地に設置することになるため、コストは高止まりか逆に上昇するしかない」との見方だ。

国民負担は「賦課金」という見える形ばかりではない。再エネ拡大に伴う不採算化と、脱炭素化への対応で火力電源の退出の流れが続けば、調整力コストも上がる。「こうした費用をどう負担するのかという新たな課題も出てくる」(前出の再エネ関係者)

福島第一原発事故後、「年間コーヒー1杯分で安心安全が買える」との触れ込みで始まった再エネ導入政策。だが、野放図な拡大による、国民負担とさらには自然環境への負荷増大が、かえってこれからの再エネ導入を鈍化させかねない状況を生んでいる。

真の脱炭素化に資する再エネ政策が求められる

石炭火力「新規制」への懸念 安定供給は本当に大丈夫?


非効率石炭火力のフェードアウトに向け、新たに二つの「規制」の導入が決まった。

ただ、石炭火力の過度な退出に歯止めがかからず、供給力不足のリスクが拡大する可能性がある。

石炭火力への新たな規制が導入されても、安定供給は本当に担保できるのか―。

昨夏に梶山弘志経済産業相が指示した非効率石炭火力のフェードアウトの実行策が、今春固まった。非効率設備の一定の退出や稼働抑制を促すため、省エネ法での「規制的措置」と、容量市場での「誘導措置」の二つの手段を講じる。が、実際はどちらも「規制」と言って差し支えのない内容だ。

二つの発電効率基準 「二重規制」に疑問の声

省エネ法ではこれまで、燃料種ごとの発電効率(A指標)と火力全体での発電効率(B指標)の二つの目標を設定していた。ここに石炭火力のみを対象に2030年に「発電効率43%」という新指標を導入。事業者単位でこれをクリアしなければならない。実績値がベースとなり、現状では大手電力の既設のうち43%超は2基のみという厳しい水準だ。

ただ、老朽設備の休廃止や設備改修だけでなく、バイオマス混焼などによる補正措置を認めた。今後実用化が期待されるアンモニアや水素混焼についても、同様の手法で評価する。さらに変動性再生可能エネルギーの導入拡大には火力の調整力が欠かせないが、設備利用率が下がるほど発電効率も低下するため、年間設備利用率に応じた補正値を設定。こうした補正で実績値に数ポイント上乗せすることができる。

もう一方の容量市場では、省エネ法とは異なる「設計効率42%」という設備ごとの基準を設けた。こちらでは設備利用率に応じて評価を変える仕組みを用意。設備利用率50%を基準とし、25年度オークションでは基準を超えた設備については容量確保金を20%減額する。26年度以降の減額率については引き続き検討する。

容量市場のこの仕組みを、資源エネルギー庁は稼働抑制を促す「インセンティブ」としているが、関係者からは「減額はインセンティブではなく退出を促す制度で、実際は二重規制だ」(火力部門関係者)との指摘が出ている。片や事業者単位の実績効率、片や設備単位の設計効率と二つの基準が存在する上、容量市場には補正措置がないなど、制度間の差異には疑問の声が上がる。

これについてエネ庁は「省エネ法では事業者に毎年報告義務があり、これまでの指標と同じく実績値で見ていく。一方、(4年後の供給力のオークションである)容量市場では事後に減額されることがないよう、予見性の観点から設計効率にした」(小川要・電力基盤整備課長)と、制度の性質の違いからズレは生じ得るとの見解を示す。

両者のうち、特に厳しいと受け止められているのが容量市場の措置だ。「実際に入ってくるお金に関わる容量市場の方が重要。これが省エネ法の実績に跳ね返ることになる」(大手電力関係者)。ただ、設計効率と一口で言っても、使うデータのさじ加減で高めに出すことも可能で、その妥当性を誰がどう判断するのかは不透明だ。

再エネ連系拡大で脱炭素社会に貢献 公益性を追求し社会の期待に応える


【送配電網協議会】

ひらいわ・よしろう 1984年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修了、中部電力入社。
専務執行役員、取締役専務執行役員、取締役副社長執行役員などを経て2021年4月1日から現職。

全国の一般送配電事業者による「送配電網協議会」が4月1日、電気事業連合会から独立し発足した。

理事・事務局長に就任した平岩芳朗氏に、新組織が果たす役割や解決すべき課題について聞いた。

―送配電網協議会の役割は。

平岩 昨年10月に電気事業連合会の中に一般送配電事業者10社で構成する送配電網協議会を設置し、4月1日に新たな団体としての活動を始めました。系統運用の中立性、透明性の確保はもちろん、低廉で安定的に電力を供給するという送配電事業者の使命を、これまでと変わらず果たすことが第一の役割だと考えています。

 その上で、再生可能エネルギーの連系拡大を通じた脱炭素社会への貢献、災害に強いネットワークの形成など、さらなる公益性を追求することで、社会からの新たな期待にも応えていかなければなりません。

―今冬の電力危機を送配電網協議会としてどう振り返りますか。

平岩 全国のお客さまに電気の効率的な使用にご協力いただき、また、発電事業者、自家発事業者には供給力の積み増しの要請に対応いただいたことにより、今回の危機を乗り切れたことを大変感謝しています。電力広域的運営推進機関において、今回の需給ひっ迫を受けて短期・長期でどのような対応が必要か検討しており、当協議会も実務者として参加しています。

 今回の危機は、LNGの供給支障などさまざまな要因が複合的に重なったことによるkW時不足によって引き起こされたということが、これまでのkW不足との大きな違いです。何日後にどの程度のkW時が不足するのかを評価する仕組みがなく、こうした状況下での全国的な応援融通のルールもありませんでした。こうした状況に対処するためにどのような施策を講じるべきか、協議会としても検討の場で提案していきます。

需給調整市場を開設 参加者拡大へ広報に注力

―具体的にどのような施策を提案していきますか。

平岩 需給ひっ迫時には、最終的な周波数調整を含めた安定供給を担う上で調整力の確保が非常に重要です。送配電事業者がそうしたミッションを果たすためには、厳しい気象条件の中でも調整力を確実に確保するための仕組みやルールが必要であり、そのような提案をしていきたいと考えています。

―4月1日には新たに需給調整市場が開設されました。

平岩 再エネ予測誤差を補正するための「三次調整力②」の取り引きが始まりました。各送配電事業者のエリアごとに必要量を募集し、原則全国大でメリットオーダーによる調整力の調達を行います。これにより調達コスト削減効果があると期待しています。具体的には、1カ月ごとの確報値が積み上がった段階で評価することになります。

 今後、より応動速度の速い商品の取り引きが段階的に始まりますが、まずはスタートしたばかりのこの商品をしっかりと運用し、調整力を調達する送配電事業者のみではなく、供出する側の発電事業者にとっても適切に取り引きできる環境を整える必要があります。

 そのためにも、各送配電事業者と発電事業者とのコミュニケーションを深めるとともに、市場の仕組みをより理解していただくための広報活動にも力を入れていきます。

福島復興の「障害」除去へ トリチウム水海洋放出を決定


「福島の復興を成し遂げるためには避けて通れない」 4月13日、菅義偉首相はこう述べ、関係閣僚会議で福島第一原子力発電所サイト内のALPS(多核種除去設備)で処理したトリチウム水を海洋放出する方針を決定した。事故前の福島第一原発の放出上限である年間22兆ベクレルを30~40年かけて、2023年から毎年放出していく。

処理水は2022年秋に保管容量の限界に達する

首相の言う通り、福島第一原発の廃炉を進めるには、敷地内にたまり続ける処理水の放出が欠かせなかった。タンクに保管する処理水の量は既に125万tに上り、22年秋には保管容量の限界となる137万tに達する見通し。これ以上、結論を先送りすることはできなかった。

トリチウム水の海洋放出は、安倍晋三前首相の時から政府にとって重要な課題だった。昨年9月に就任した菅首相は海洋放出の検討を始めたが、漁業関係者などの反発で見送られている。

一方、東京電力は敷地内タンクが増え始めた時点から、福島県の漁業組合関係者と連絡を取っていた。漁業者は風評被害を最も恐れている。さらに「無害」と分かっていても、溶融燃料の冷却水から回収したトリチウムの放出には感情的なしこりがある。東電関係者は粘り強く説明を行い、理解を示す漁協幹部も出始めていた。

海洋放出の決定前に、国は処理水の扱いについて、「ご意見を聞く会」など地元自治体や漁業関係者らを交えた会合を繰り返した。その場で漁業関係者らは、海洋放出に強硬な反対姿勢を示している。一方、漁業団体とのつながりが深い自民党の水産部会は、海洋放出を容認する方針を固めていた。政府関係者は「水面下で、与党の水産族議員が漁協幹部と交渉を重ねていた」と明かす。

全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は4月7日、官邸に招かれ、首相から海洋放出の方針を伝えられる。岸会長は会談後、記者団に対して「断固反対する」と強調した。だが官邸で岸氏に間近に接した記者によると、「半ば容認しているようにも見えた」。業界関係者は「トップレベルでは、合意ができていたはず」と話す。

風評被害防止に注力 中国・韓国は意趣返し!?

今後、最大の課題は風評被害対策になる。いまも、消費者には福島県産の農水産物を避ける傾向が見られる。政府はモニタリングを行い、海洋専門家を交えた会議を設置して水質データを検証する。また、国際原子力機関(IAEA)にデータを提供し、客観的な検証をしてもらう。

近隣国の懸念払拭も課題になる。韓国政府は「絶対に許せない措置だ」と批判。文在寅大統領は国際海洋法裁判所への提訴を指示した。中国政府も「深刻な懸念」を表明。垂秀夫・駐中国大使を呼び抗議を行っている。

しかし、両国ともに既に自国の原子力施設が福島第一原発を上回るトリチウムを海洋放出している。徴用工問題や台湾に言及した日米共同声明などを巡り、日韓・日中関係はぎくしゃくする。放出への批判は単に意趣返しのようだ。

【省エネ】再エネ電力の購入 法律で適切評価を


【業界スクランブル/省エネ】

経済産業省の2050年カーボンニュートラル。電力分野は非化石電源の拡大で脱炭素化を実現し、産業・民生・運輸部門(燃料・熱利用)では脱炭素化された電力による電化、水素化、メタネーション、合成燃料などを通じた脱炭素化を進めるイメージである。

電力供給側の取り組みとしてはエネルギー供給構造高度化法がある。一方、需要側では省エネ法の業界別ベンチマーク制度などがあるが、現在の省エネ法の一次エネルギー換算係数では、実際の炭素生産性とリンクしていない。よって、CO2削減対策の電化(業務用車両の電気自動車化や蒸気ヒートポンプ導入、誘導加熱)などがマイナス評価とされたり、再エネ電力購入などの取り組みが一切評価されない課題がある。

当然、環境先進企業が取り組むSBT(科学と整合した目標設定)、CDP(炭素開示プロジェクト)では適切に評価されており、日本企業の多くをカバーする省エネ法でも、脱炭素の取り組みを阻害しない制度に修正すべきである。なお、欧州EU-ETS(連合域内排出量取引制度)は、直接排出のみの規制で、セクターカップリングにより燃焼分野の脱炭素化に貢献する電化は全てプラス評価となる。省エネ法が再エネ電力購入も適切に評価する制度となれば、再エネ電力の需要が増加し、日本の再エネ増加の推進力となり得る。

電力と同じ二次エネルギーの水素については、省エネ法では系統電力とは逆にゼロ評価となっているが、「化石燃料を輸入して、国内で燃焼と同程度のCO2を排出して製造した水素(ある意味、火力発電の工程と同じ)」と「再エネ電力から製造したグリーン水素」の扱いが同じであり、グリーン水素の脱炭素優位性を省エネ法換算係数に加味すべきである。また、メタネーション(合成メタン)についても「Direct Air Carbon Captureと再エネ電力で合成したグリーンメタン」と、「化石燃料起因のCO2を用いるため、最終的には大気へのCO2排出増となるメタネーション」の評価を、「バイオマス起因メタン」と「化石燃料起因メタン」の差と同様に適切に差別化する必要がある。 (Y)

【住宅】低下する売電単価 昼間へ需要シフト


【業界スクランブル/住宅】

2021年1月末の調達価格等算定委員会において21、22年度の住宅用太陽光発電(PV)の売電単価がそれぞれkW時当たり19円、17円と公表された。20年度の売電単価21円でも、一般的な家庭用の電力単価約24円より安価であり、昼間にPVの発電電力を自家消費することが有効と言われていたが自家消費が大きく増加していない。理由は、そもそも一般家庭では昼間の電力需要は少なく、需要をシフトするメリットがなかったからだ。PV搭載住宅は同時に電化住宅メニューを採用しており、深夜電力単価と売電単価を比較した場合、まだ深夜電力単価の方が安いといった背景があると思われる。

21年1月時点で新規申し込みできる各大手電力会社の電化住宅用メニューの深夜電力単価は11~18円だが、これに基本料金の買電量に応じた按分、再生可能エネルギー賦課金、燃料調整費(現在はマイナスであるがプラスになる懸念あり)、消費税などを加えると16~23円程度になることが想定され、21年度以降は、PVの余剰電力の売電単価は深夜電力単価よりも安くなるという状況に変わってくる。この変化は大きな意味を持つ。例えば、エコキュートは安い深夜電力で運転しているが、昼間PVの余剰電力で運転すれば、単価が安い上に昼間は外気温が高いのでより省エネになる。蓄電池も電力単価が安い時間帯に充電することが有効なので、昼間充電になる。まさに昼間へ需要シフトすることがユーザーの経済的メリットにつながる状況が現実的になってくると考えられる。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の政策も自家消費を拡大する方向へシフトしてきているが、経済的な視点から見ても昼間の需要を増やして自家消費型に切り替えることが今後のトレンドになりそうだ。

課題は昼間への需要シフトに設備機器が十分対応できていないことだ。PVの余剰電力(発電電力)は天候、季節により大きく変動する。その変化により細かく対応できる設備機器の進化が、自家消費型へのシフト加速につながるだろう。(Z)

【太陽光】さらなる普及へ 設置場所の開拓を


【業界スクランブル/太陽光】

パリ協定の目標「2050年カーボンニュートラル」を目指すことは、国内の産業競争力の飛躍やイノベーションのチャンスともいえ、分散型経済社会の実現に向け地域経済循環やレジリエンス向上にもつながるだろう。太陽光発電(PV)は数ある再生可能エネルギーの主力であると信じているが50年カーボンニュートラル達成には、現状の普及施策制度の見直しやコスト、設置場所(適地)、電力系統、地域共生などの解決すべき課題への解決の道筋の提示や、PV導入の将来ビジョンをさらに進化させ、大胆な未来予想図を描き関係者が一丸となって実現に進むべきであろう。

PVは、これまで工業団地の用地、塩田やゴルフ場の跡地など、大小の地上設置のPVが建設・運転されたことにより、わが国の電源構成に影響を与える規模に成長した。ただ今後もエネルギーや環境の観点から、PVの導入拡大を継続させるためには新たな設置場所を求める必要がある。そこで注目されているのが、農地の上の空間や水面の上などの活用だ。農地の上空間を活用する営農型PVシステムは、農地法の一時転用許可が導入の契機となった。地上設置型のPVシステムと比べ、高所太陽電池モジュール設置、支柱間隔の広さ、軟弱な農耕地での強度などの確保が今後の課題として挙げられる。水上設置型PVシステムでは、ため池などの静水面で樹脂製の浮体設置架台基礎(フロート)の上に太陽電池モジュールなどを設置する。建設に適した土地が減少する中で、①未使用(利用)である「水の上」の有効活用、②土地造成工事の不要・減少、③陸上設置に比べ日照を遮る障害物の少なさ、④遊休空間の活用による収入-などの利点がある。だが、風荷重などの設計資料がほとんどなく、台風などの強風時には被害が発生したことも記憶に新しく水上設置の懸念材料といえる。

新しい空間へのPVの普及は課題があるものの、安全・安心にPVシステムを設計・施工するためのガイドラインが検討されているので、PVの普及ツールとして期待したい。(T)

【マーケット情報/4月23日】原油下落、需給緩和観が台頭


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。新型コロナウイルス感染拡大にともなう需要後退と、供給増加の見通しが、価格の重荷となった。

世界各国で引き続き、変異株も含めた新型ウイルスの感染が拡大している。特にインドでは感染者数が急激に増加しており、同国の首都ニューデリーは19日から、一時的なロックダウンを開始。英国や中東諸国はインドからの入国制限を導入した。さらに、クウェイト、オマーンは国内の移動規制も強め、燃料用需要が一段と後退する見通し。

一方、ノルウェー国営エネルギー会社Equinorは、北海の新規油田で、近く生産開始を計画。また、米国の週間在庫統計は、前週比で増加を示した。加えて、米国とイランは核合意を巡る協議に進展があったと発表。米国の対イラン経済制裁が解除された場合、イラン産原油が市場復帰し、供給の増加が予測される。

【4月23日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=62.14ドル(前週比ドル0.99安)、ブレント先物(ICE)=66.11ドル(前週比0.66ドル安)、オマーン先物(DME)=63.22ドル(前週比2.04ドル安)、ドバイ現物(Argus)=63.01ドル(前週比2.18ドル安)