1.波紋広がるY参事官発言 内閣府は勉強不足!?
「容量市場の必要性について非公式の場で必ず語られるのが、電力自由化と引き換えに経産省が電力に切った手形であるということだ。これは検証できるものではないが、仮に真実であるとすれば、国民に対する重大な背信行為であり、真実でないとしても、そのような話でしか腹落ちしない説明不能な制度」
3月26日の電力・ガス基本政策小委員会(経済産業相の諮問会議)で、内閣府Y参事官が発言した内容がエネルギー関係者の批判を招いている。
この発言に対し、1週間後に開かれた内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)」では、資源エネルギー庁幹部が「大変心外に感じている。揶揄的な憶測の批判発言は、審議会で制度設計議論に携わる委員に大変失礼な不適切な発言だ」と強く抗議。当の審議会委員からも、「内閣府はあまりにも勉強不足だ」と反発の声が上がっている。
新旧問わず、電力会社側からも「建設的な議論を呼ばない」と異論の声は大きい。電力業界関係者のX氏は、「TF意見で当初、容量市場の対案としていたテキサス州が大停電を起こしてしまい、言うに事欠いたのかもしれないが、平場で陰謀論を持ち出すのには驚いた」とあきれ顔。
別の業界関係者Z氏も、「要は内閣府と蜜月の環境団体SやK大チームがこういう思考に立っていて、Y参事官もそれをそのまま発言の論拠にしているという印象だ」と、逆に一部企業や団体への利益誘導が目的ではないかと疑念を強める。
実際、1月の電力卸市場価格の高騰を受け、再エネTFは一部新電力の経営を優遇するような主張を繰り返し、大手電力会社やほかの新電力関係者らの不評を買った。
容量市場は世界で複数の導入実績があるものの、それが将来の容量確保策として有効かどうか、国内でさまざまな意見があるのは事実。だが、このような陰謀論を持ち出したのでは、本質的な議論から遠ざかるばかりだ。
2.Fパワー波乱の更生開始 新スポンサーはどこに?
東京地方裁判所は3月30日、新電力大手Fパワーが申請していた会社更生法の適用に基づく更生手続きの開始を決定した。
今冬の日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格高騰などが業績を直撃し、負債総額は464億円。今年に入り、事実上最大の経営破綻劇だ。
東京地裁の決定を受け、Fパワーでは保全管理人の富永浩明弁護士が、埼玉浩史氏や沖隆氏ら旧経営陣に代わって、管財人として事実上の経営権を持ち、更生計画の策定に取り組むことになる。
「さまざまな憶測が飛び交っているが、当社の業務は従来通り行われ、お客さまに提供する電力(料金・サービスなど)の営業活動に影響が及ぶことはない。ステークホルダーの方々には大変なご迷惑をお掛けし、申し訳ない気持ちでいっぱいだが、新たなスポンサーの下で、より一層充実したサービスを提供できるよう、誠心誠意、今後の経営再建に取り組んでいく」。Fパワー関係者はこう話す。
業界の関心事は、Fパワーの新スポンサーにどの企業が選定されるかだ。複数の関係筋によると、情報通信系大手のH社のほか、IT系大手のD社、中堅新電力のE社、大手エネルギー会社のT社、C社、K社などの名前が浮上している。
「中でも、資金力でいえばH社が最有力。またD社関係の実力者I氏がFパワーの再建に関心を見せているとの話も聞こえている。ただ、いずれも電力販売事業には深い知見やノウハウがなく、課題山積状態のFパワーの経営を実際に立て直せるかは極めて微妙。外資系ファンドなどが絡んでくると見る向きもあり、今後数カ月の動きに要注目だ」(事情通)
現在、全国的に電力需給は落ち着いており、JEPX価格も安値圏で推移しているが、電力需要が増加する夏場や冬場にいつまた高騰するとも限らない。不安定な市場価格に影響されない経営改革をどこまで実現できるのか。再建は前途多難の様相だ。
地裁はFパワーの更生手続き開始を決めた