原子力に積極的立場 I議員を地元は歓迎
原子力立地県選出の自民党I議員が、以前にも増して原子力発電所の再稼働、リプレース、新型炉の研究開発支援などに意欲を見せている。原子力関連の同党のある議連会長に就いていたが、カーボンニュートラルの方針やウクライナ戦争でさらに積極性を強め、専門家との会合やエネルギー関係議員の会合に意欲的に出席し、陳情を受け付けているという。エネルギー業界や地元から歓迎の声が広がっている。
I氏の選出県は保守王国で、党内で有力議員がしのぎを削っている。原子力推進に積極的な国会議員は主に原発が集中立地する県南部の出身で、「北部を選挙区とするI氏は、どちらかというと原子力を客観的に見ていた」(事情通)と言われている。
しかし、原油・天然ガスの高騰でガソリン価格や電気料金が上昇し、ウクライナ戦争でエネルギー安全保障が大きくクローズアップされる中、原発の再稼働などは、国民生活や経済活動を守る「即効薬」になる。
「I氏が本心からエネルギー問題を憂いていることは確かだ。それに加えて県内の支持、そして全国からの評価のために、原子力政策で成果を出そうとしている」(同)と見る向きもいる。
もともとI氏は政策理解力が高く、手腕も評価されている。元首相のA氏やK氏とも親しい。原子力推進への意欲について、「将来、政権や党の中枢を担う政治家。継続してほしい」(同)との声が出ている。
電源は足りている? TF提言に業界憤り
「火力発電所の現場は、夏・冬の電力不足を何とか回避しようと点検停止の日程調整に苦心している。火力発電への投資も原発の再稼働も解決策になり得ないと言い切るのは的外れ。おかしな言説を流布するのはいかがなものか」
電力業界関係者のX氏が憤慨するのは、内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)」が4月25日に公表した提言に対してだ。
提言では、3月22日に電力需給が危機的状況に陥り初の需給ひっ迫警報が発出されたことについて、「需要を満たす供給力は十分に存在し、燃料が不足していたわけでもない。全体の設備容量が足りていた以上、過剰に発電所を持つことは経済性を低下させるし、仮に発電所が用意されていたとしても、地震により運転停止していた可能性もある」と断言。安定供給確保に向け、火力発電への投資拡大や、原発の再稼働を急ぐべきだとの主張を真っ向から否定している。
これに対し、大手電力関係者のT氏は「地震の影響がなくても関東地方は電源不足であり、地震の影響が残っていれば、次の夏・冬のピーク時の需給はさらにタイトになりかねない」と反論する。
冬の最大需要発生日である1月6日の例を挙げ、「予備率3%は確保したものの、デマンドレスポンス(DR)の発動、自家発のたき増し要請に加え、火力増出力運転、信頼度低下を伴う連系線マージン利用、供給電圧の低め調整というリスクを伴う対策を実施してかろうじて確保したにすぎない」と実態を語り、再エネTFに対し「影響力を持って提言するからには、もっときちんとした情報源を持つべきだ」と苦言を呈する。
再エネTFの提言に関係者は憤慨(内閣府)
いずれにしても、次の冬に備え計画停電を準備しなければならないほど、東日本エリアの電力需給は危機的状況にある。資源エネルギー庁や電力業界が総力を挙げて対応策を講じている中、難癖を付けるような提言を受け入れて本当に停電したら、再エネTFは責任を取れるのだろうか。
反原発の「著名ペア」 袂を分かった理由は
I氏とO女史。エネルギー業界では有名な反原子力・再生可能エネルギー推進の運動家だ。
東大と双璧をなすK大で原子核工学を学び、卒業後、原子力関連会社に勤めながら後に反原発派に転じたI氏。NPO法人のシンクタンク、「KE政策研究所」を設立し、原発に代わる電源として再エネの普及拡大に向けて、国の審議会委員を務めたり、マスコミへの出演など精力的に活動を続けている。
一方、O女史も筋金入りの反原発・再エネ推進論者。現在は大物財界人、S.M氏が設立したS財団で事務局長の要職を務める。以前は、海外の再エネ普及団体で管理職に就いたり、在日E国大使館のアドバイザーを務めたこともある。
実はI氏とO女史は、共にKE政策研究所の設立に参画した仲間同士。長く机を並べ活動していた。しかしある日、O女史が研究所を去り、袂を分かつことになる。「Iさんが研究所設立当初の気持ちを失ったためではないか」。ある関係者はO女史の心境をこう語る。
FITが導入されてから、膨大な資金が再エネ市場に流入している。「再エネ開発の案件で、Ⅰ氏の名前が出ることが多くなった」(事情通)。巨額マネーを前にI氏が見せ始めた剛腕事業家としての一面。O女史はそれに愛想を尽かしたのかもしれない。
CCS技術は必要か 大手電力幹部が苦言
「X社あたりは前のめりになっている印象だが、これだけ地震が多い日本で、CO2回収・貯留(CCS)は(商業化)できるのだろうか」
こう話すのは、大手電力会社幹部のH氏だ。発電所や工場から排出されるCO2を分離、地中深くに貯留するCCS技術について、国は脱炭素化と産業・エネルギー政策を両立する重要なオプションと位置付ける。2050年カーボンニュートラル(CN)達成の切り札としても関心を集めている。
5月11日には、経産省がCCS長期ロードマップ検討会の中間取りまとめ案を発表した。年間CO2貯留量の目安を1.2~2.4億tと想定。30年までのCCS事業開始や関連法の整備について検討を行い、年内にもロードマップの最終取りまとめ案を示す方針だ。
CCSは商業化できるか(実証プラント)
環境づくりへ躍起となる経産省とは対照的に、現場の反応は冷ややかだ。「CNに取り組んでいる、というパフォーマンスも必要だ」。電力関係者はこう明かす。H氏も「(CCSの)候補地は確かにいくつかある。しかしCO2を貯留する段階になった時、誰が責任を持って管理するのか、誰が住民や社会に理解を得るよう動くのか、国の施策はその部分を欠いている」と苦言を呈する。
そもそも、地震大国の日本と、CCSプロジェクトが盛んな欧州、オーストラリアでは、貯留量のポテンシャルにも差がある。CCSの拙速な推進で地盤の脆弱さを露呈し、貯留したCO2が抜け出しては意味がない。文字通り「気の抜けた」政策にならなければいいが……。
苦境の新電力業界 胡散臭い業者の実態
多くの新電力事業者が厳しい経営状況に陥っている。昨年から新電力の倒産が目立ち始めたが、中にはうさんくさい実態の事業者も存在している。その一例を見てみよう。
17年の設立で昨年10月に破産したF合同会社の場合。法人向けや新電力向けの電力供給に加え、事業プランニングや運営サポートなどを手掛け、年間売り上げ3億円前後で推移していた。しかし21年1月の電力需給ひっ迫に伴う市場高騰が経営を直撃。インバランス分割払いの特例措置を受けたものの、再エネ賦課金の未払いで9月、10月に経済産業省から社名公表されており、資金繰りが危ぶまれていた。その直後に、F社は破産手続きの開始決定を受けていた。
破産直前の時期にF社を訪問しても、社員はほとんどいない状態だったという。なお、F社と同じフロアには、外資系で電力小売り事業者支援サービスを展開するZ合同会社、別の新電力J社が入居していた。3社の関係性は不明だが、仮にF社がZ社に事業委託していたのであれば、小売り事業者登録を受けさえすれば、簡単に電力販売事業をスタートできたことだろう。
結果として、F社は賦課金未払いの末に破産した。今後同様に経営体力のない新電力の倒産・撤退の加速が予想されるが、怪しげな事業者の退出が進むことは良しとして、「立つ鳥後を濁す」状況が続出するようでは困る。