佐渡島における再エネ導入拡大へ 最適な需給制御の実現を目指す

【東北電力ネットワーク】

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、電力ネットワークの高度化は不可欠だ。 電力系統が独立する佐渡島において、最適な需給制御の実現に向けた取り組みが始まっている。

 新潟県の佐渡島は、東北電力ネットワークの供給区域であり、同社が発電・送配電・販売までを一貫して行っている。江戸時代初期には徳川幕府が金山開発を進め、金の産出量が世界最大級を誇った。現在は、佐渡鉱山の遺跡群としてユネスコの世界文化遺産登録を目指すなど「歴史と文化の島」として知られている。また、東京23区の1・5倍ほどのこの島は、特別天然記念物トキの生息地としても有名であり、多種多様で恵まれた自然環境を有している。

佐渡金銀山は世界文化遺産登録を目指している
提供:佐渡観光PHOTO

2019年2月、新潟県は東北電力と包括連携協定を締結するとともに、再生可能エネルギーの導入拡大により、地域経済の活性化や防災力の強化、豊かな自然環境の維持を図り、持続可能な循環型社会の実現を目的とした「新潟県自然エネルギーの島構想」の策定に向け検討を開始した。現在、佐渡島での取り組みの具体化を進めている。

佐渡島は、本土と電力系統が接続されておらず、電力需要も島内に限定されていることから、天候により出力が変動する再エネが大量に接続された場合、電気の使用量と発電量のバランスが保てなくなり、電力の安定供給に影響を与える懸念がある。こうした背景を踏まえ、東北電力ネットワークは、「新潟県自然エネルギーの島構想」の先導的プロジェクトとして、再エネや蓄電池、内燃力発電、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などを組み合わせた最適な需給制御の実現に向けた取り組みを進める。佐渡島での再エネのさらなる導入拡大を目指している。

発電出力の調整を一元管理 EMSを新規設置

同社はこの取り組みを進めるにあたり、太陽光発電、蓄電池システム、EMSを佐渡島に新設する。

佐渡市栗野江地区に出力規模1500kWの太陽光発電を、両津火力発電所構内には容量5000kW時の蓄電池を設置する計画だ。

佐渡島での最適な需給制御に係る取り組みのイメージ

取り組みの肝となるのがEMS。EMSは島内の電力使用量と再エネの発電量を予測する。さらに、蓄電池の充放電と内燃力発電の出力調整などを一元的に管理・制御して、再エネの出力変動による電力系統への影響を緩和。安定供給を維持する。再エネを最大限活用した経済的な需給制御を実現する。

具体的には、佐渡電力センターにEMS親局を設置し、制御対象装置への指令値などを演算・送信する。既設の内燃力発電に加え、新設する太陽光発電や蓄電池側にはEMS子局を設置する。さらに、需要家と協力し、蓄電池やEVなどの需要側設備を制御の対象とすることも検討していく。

太陽光発電、蓄電池システム、EMSの着工は22年度、運転開始は24年度を目指している。

2050年に向けて 安定供給と脱炭素化を両立

東北電力グループでは今年3月「東北電力グループ〝カーボンニュートラルチャレンジ2050〟」を掲げ、持続可能な社会の実現に向けて、カーボンニュートラル(CN)に積極的に挑戦する。

同社も送配電事業という側面から、電力ネットワークの高度化を通じて、安定供給の維持と電源の脱炭素化に向けた環境整備などに取り組む。

企画部設備計画グループの瀬谷雅俊副長は、「再エネの導入拡大や分散型電源の普及拡大に対応するための効率的な設備形成に加え、蓄電池・P2G(Power to Gas)を活用した需給変動抑制対策などの技術も駆使し、CNの実現に向けて最適なネットワークとなるよう、検討や設備形成を進めている」と現状を話す。

その上で、「今回の佐渡島における需給最適制御は、『足元の再エネ導入拡大時に必要となる需給制御』や『将来の再エネの最大限活用に向けた電源計画の検討』の知見の蓄積にも貢献する。また、この取り組みを通じ、分散グリッドの運用に関わる課題の分析と技術開発を進め、本土における分散グリッドなどへの応用についても検討していく」と取り組みの意義を語る。

日本が排出する温室効果ガスのうち約9割がCO2であり、CO2の排出量の約4割が電力部門。それだけに、CN実現に向けた電力会社の取り組みは注目されている。

佐渡島での取り組みをステップに、電力の安定供給と再エネ導入拡大の両立など、CNの実現に向けたさらなる挑戦が始まっている。

プロジェクトの概要について説明する瀬谷副長

脱炭素と安定供給の両立 電力自由化の再設計が必要に

【論説室の窓】井伊重之/産経新聞 論説委員

「新自由主義からの転換」を掲げる岸田文雄政権が始動した。

その象徴としてほしいのが、脱炭素と安定供給の両立のための電力自由化の再設計だ。

英グラスゴーで開かれた第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、議長国の英国が加盟各国に対し、石炭火力発電所の早期廃止を求めた。その結果、先進国は2030年代、途上国も40年代までに段階的に廃止することで合意し、世界46カ国がこれに賛同した。だが、米国や中国、インドなど主要な石炭消費国は参加を見送った。

英国は今回のCOPを開催するにあたり、自国の石炭火力の廃止時期を25年から1年前倒しすることを決めた。各国に石炭火力の廃止を求める以上、自らも廃止に向けて積極的に動くことで、世界的な廃止機運の高まりを狙ったのだろう。ただ、英国の電源構成のうち、石炭火力が占める比率は、わずか1%程度に過ぎない。今回の廃止賛同国の多くも石炭火力が占める割合が低い国ばかりだ。

英国が危機に直面 石炭火力の一時存続を検討

その英国はいま、深刻なエネルギー危機に直面している。主力燃料の液化天然ガス(LNG)の価格高騰で電力小売り会社が相次いで経営破綻に追い込まれ、原子力大国フランスからの電力系統も一時不調に陥った。

危機的な状況を打開するため、英国政府はバイオマス発電所への転換を決めていた国内最大の石炭火力発電所について、一時的に存続させることで電力供給の継続を検討中だ。脱炭素に向けて英国は石炭火力の廃止で主導権を発揮しようとしたが、やはり自国の安定的なエネルギー供給を賄うためには、目の敵にしている石炭火力にも頼らざるを得ないのが実情だ。

石炭火力の廃止についても世界で一律ではなく、CO2を回収・地下貯留や再利用する「CCUS」のほか、アンモニア混焼などの技術開発を含め、各国のエネルギー事情に応じて段階的に進める必要がある。

エネルギーは国を支える重要な基盤である。国際協調による脱炭素が問われる中でも、国家としてエネルギー供給を優先する判断は当然である。電力危機に見舞われて計画停電が頻発した中国も、国内炭の増産を進めている。その量は日本の年間消費量を上回るほどの大規模なものだ。各国とも脱炭素の取り組みの重要性は認識しているが、足元の安定供給に目を瞑ることはできない。

今回の世界的なエネルギー危機の一因として挙げられているのが、上流部門への投資縮小である。国際エネルギー機関(ⅠEA)の調査によると、原油・天然ガスの探鉱や開発、生産など「上流」事業に対する20年の投資額は3260億ドル(約36兆円)だった。世界的なコロナ禍の影響もあり、前年に比べて3割以上も減少した。既に石炭市場ではダイベストメント(投資引き揚げ)が本格化しているが、その波は天然ガスにも及びつつある。

また、米国が石油輸出国機構(OPEC)とロシアに高値水準の是正を目的にして追加増産を求めたが、先進国主導の脱炭素の動きをけん制し、OPEC側は増産要求に応じなかった。これまで産油国は石油価格の高騰が需要減少につながる事態を懸念し、市況に応じて生産量を調整することで価格メカニズムが形成されていた。だが、今回は脱炭素で将来的な需要減が避けられない中、産油国の姿勢にも変化が見られる。

一方、日本では来年2月に首都圏で深刻な電力不足が見込まれている。老朽化した石油火力の休廃止が進んでいるためだが、これが脱炭素の流れの中で、今後は石炭やLNGにも波及するのは確実だ。政府は当面の電力需給対策として、火力発電所の定期修繕の先送りや休廃止の延期などを求めている。新たなエネルギー基本計画では、脱炭素に向けて再生可能エネルギーを主力電源に位置付けたが、移行期に火力発電がショートすれば大きな混乱は避けられない。

ここで問われているのが電力自由化である。東京電力の福島第一原発事故を契機に始まった電力システム改革は、電力会社による地域独占を排し、総括原価方式を廃止することで利用者の選択肢を増やしながら、電気料金の引き下げを目指す取り組みだ。16年には家庭用を含めて小売りが全面自由化され、電力自由化は完成した。

だが、こうした自由化は現在の世界的な脱炭素や資源価格の高騰など、新たな事態は想定していない。電力会社は新規参入が相次ぐ電力市場の中で競争しながら、脱炭素と安定供給の両立を図る難しいかじ取りを迫られている。以前のようなコストを見込んだ電気料金は設定できず、各社の経営体力は消耗しつつあるのが実態だ。

もちろん電力会社の経営努力は欠かせないが、原発に対する政府の姿勢もあいまいな中で、脱炭素投資や安定供給のための設備投資が今後も確保できるかは不透明だ。

高効率火力発電には一定の資金回収を認めるべきだ

資金回収を認める制度に 総括原価の一部復活を

そこで提案したいのは電力自由化を再設計し、脱炭素と安定供給のための投資資金の回収を予見できるようにする新たなシステム整備である。

例えば低炭素や脱炭素につながるような高効率の火力発電の開発・建設や原発の新増設などに対し、一定の資金回収を認める制度の導入だ。いわば総括原価を一部認めることで、安定的な投資や技術開発の資金を確保してもらう仕組みといえる。経産省は容量市場で安定電源を確保する制度づくりを進めているが、その対象をもっと広げた形で脱炭素と安定供給の両立を図りたい。

岸田首相は「小泉純一郎内閣から続いた新自由主義的な政策からの転換を図る」と明言している。電力自由化は、電力市場の規制改革を通じて競争を促す新自由主義的な政策の典型といえる。だが、実際には電力市場の競争は進んだものの、電気料金は自由化前よりも上昇し、最も重要な安定供給さえも大きく揺らいでいる。これでは自由化の恩恵を国民は実感することなどできない。

こうした電力自由化の再設計は、新自由主義的な政策の転換の象徴ともなる。岸田首相には是非とも取り組んでもらいたい。

「最終処分」議論が前進か 調査検討で注目の自治体は

使用済み核燃料の最終処分場選定を巡る国民的議論が前進しそうな気配だ。その試金石となる北海道寿都町長選(10月26日)では、第一段階の文献調査に踏み出した現職の片岡春雄氏が6回目の当選を果たした。対立候補の越前谷由樹氏が優勢との下馬評を覆し、わずか235票差という僅差での勝利だ。片岡氏は「非常に複雑な思い」と心境を吐露したが、これで文献調査継続の民意が確認されたことに違いはない。

約2年間の文献調査を終えた後は「概要調査」に移る。同じく文献調査が行われている北海道神恵内村では、高橋昌幸村長が概要調査を前に「住民投票を行うのも一つの手段」と前向きな姿勢を見せている。寿都町では既に住民投票条例を制定済みで、神恵内村でも議論が盛り上がりそうだ。

有力筋によると、全国で複数の自治体が文献調査を検討中。注目は山口県上関町だ。原発立地問題で紛糾した経緯があるが「現在は調査に前向き」(政府高官)。もし名乗りを上げれば、全国的な関心を集めるのは確実。迷っている自治体の背中を押す可能性も。今後の動向から目が離せない。

【覆面ホンネ座談会】脱石炭で紛糾したCOP26 現場模様を交え一挙総括

テーマ:COP26の評価

温暖化防止国際会議・COP26について、「脱石炭」や、産業革命前からの温度上昇を「1.5℃」に抑える目標の追求に合意した点を評価する報道が目立つ。しかし専門家の評価は真逆で、「現実を直視しない議論が横行した」と一刀両断する。

〈出席者〉 A経産省OB  B有識者  C産業界関係者

――「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕したCOP26全体を振り返っての感想はどうだろうか。まず、現地へ赴いたAさんから話を聞きたい。

A 環境派は「歴史的合意」だと評価するが、今後10年のツケをどう払うのか大いに心配になった。特筆して1.5℃目標に「努めることを決意する」とし、NDC(国別貢献目標)の引き上げが不可欠。その作業計画を来年のCOPで詰め、2022年末までに強化したNDCの再提出を求めている。石炭も、これまでと異なり特筆して合意に書き込んだ。しかし現実は2℃目標の進捗さえおぼつかない。1.5℃なら30年までのカーボンバジェット(累積排出量の上限値)がさらに狭まり、先進国と途上国で奪い合いが激化する。

B 問題点はいくつもある。まず、先進国が自滅の仕掛けを自ら作ったこと。30年どころか、来年にもボロボロになりかねない。例えば米国バイデン政権は、NDCや50年目標を担保する法律が可決できず、来年は袋叩きだろう。ましてや中間選挙で負ければ目も当てられないことになる。

途上国では石炭火力削減には程遠い状況が続くが……(写真はインドネシアの発電所)

1.5℃追求はパリ協定の書き換え 将来へのツケ残す結果に

C 本来の議題はパリ協定6条のルール作りや、資金の話。1.5℃や石炭はいわば場外乱闘だ。国際条約に基づく合意は各国が持ち帰り国内での批准手続きが生じるが、石炭などは政治的に表明した口約束にすぎず、国内での実施を担保できない。故に「努力する」といった用語しか書けない。いわば砂上の楼閣で、政治が変わればあっさり反故にされる。米国が共和党に政権交代すれば、即終了だ。

A 先進国が1.5℃に火を付けたのだから、そのツケの支払いを毎年のように途上国から突き上げられるだろう。現にインドは今回、「先進国がCN(カーボンニュートラル)を40年代に前倒しすべきだ」、「資金支援を年1兆ドルに拡大を」などと主張した。

C 途上国が1.5℃などの話に乗るわけがない。逆に今回乗ったのは、やらなくてよいと考えているから。壮大なる同床異夢の合意だね。まだインドのように、1.5℃を「パリ協定の書き換えだ」と正論を言う国はまともで、途上国の本音は「先進国が努力し、お金をもらえるなら少し話に乗ってもよい」という程度だよ。

A 中国やインドがNDCを見直すとは思えない。合意ではNDC見直しは「パリ協定の温度目標を達成するため」とし、「1.5℃」とは書いていない。「今世紀後半のCN目標は出している」と逃げられそうだ。

B 特に大きな問題が、中国が今回何一つ譲らなかったこと。したたかに、この大勝利をひけらかすこともない。環境的には最悪の結果だが、環境派は中国をまったく批判せず、一部では資本主義諸国の「社会や経済システムが悪い」と左翼まがいの主張を繰り返している。エネルギー危機で中国の石炭生産量はCOP期間中に過去最高となった。これが実態で、エネルギー価格が下がり先進国も喜んでいるはずだ。

 他方、あまり表に出てこなかったが、豪州の姿勢は一線を画していた。英国のジョンソン首相は「石炭の終焉」をアピールしたが、これに豪州のモリソン首相が「石炭産業は何十年も続く」「温暖化のために税や法律を課したりしない」などと真っ向から反論。国益を守り、30年目標の深掘りはせず、自主的取り組みを追求するとはっきり表明した。

A 菅義偉前首相がCN宣言したころ、経済産業省内は「30年目標は26%のままでよい」と考えていたが、私はそんなに甘くないと伝えていた。実際、その後裏付けなしのエネルギーミックスを作る羽目に。同様のことが今後も続くと覚悟した方がよい。来年のG7(先進7カ国)サミット議長国はドイツだが、新たな連立政権には緑の党がいる。先進国にCN前倒しを迫るだろうし、日本のNDCも「50%の高みを目指す」のなら「50%を最低ラインに」などと口を出しそうだ。

C 今回、「パリ協定の終わりの始まり」が本当に始まったと思う。「プレッジ&レビュー」(誓約と評価)で、努力した国を褒めて全体の成果を高めていくという基本思想が、もはや機能しないことが明白になった。

A COPで大風呂敷を広げて先に楽をするか。それとも真面目な積み上げ目標の発表で批判されるか。日本は前者を選んだ。数年後、今回の合意内容を悔やむ未来が予想される。

米国の弱みに付け込んだ中国 米中合意は最大の成果

――先ほども話に出たが、中国は今回習近平主席が参加せず、存在感が乏しかった。

A いつもの代表団の半分以下の40~50人ほどだった。特筆大書された米中合意も「25年に35年目標を出す」と中身は大したことはない。米国については35年に電力セクターのゼロエミッション化を掲げたが、まさに空約束だ。一部の人は「(気候変動担当特使の)ケリーは議会の裏付けがないことばかりしゃべっている」と批判していた。他方、中国は5カ年計画で石炭のフェーズダウンを掲げたが、Bさんが言うように何も譲っていないのに、化石賞はゼロ。今回の最多受賞国は豪州だ。英国や中国とのあつれきで悪者にされたように思えてならない。

B 米中合意は中国の最大の成果だ。最近、中国は外交的に孤立していたが、気候変動分野から風穴を開けられそうだ。しかも中国が掲げた内容は25年以降の第15次五カ年計画の話で、25年までは石炭消費をがんがん増やすということ。痛くもかゆくもない。一方、米国にとっては売国的な合意だ。結局バイデンもケリーも本音では中国と商売をしたがっている。今回、省エネや再エネ関係でその言質を取った中国の高笑いが聞こえてきそうだ。

A バイデン政権の支持率は下がる一方で、支持される数少ない分野が温暖化対策だから、米中合意を華々しく演出したかった。それを中国に利用された。先進国が1.5℃を強く推したのに対し、中国、インドはパリ協定の規定を尊重すべきとのまともな主張で、思わず「その通り」と言いたくなった。プレッジ&レビューを無視した欧米の責任は重く、天唾で帰ってくる。

C 実際の行動に移ると、投入する再エネや蓄電関係の製品・部品の多くを中国に依存することになる。人権無視の労働力と石炭火力でつくった安価な中国製品の需要喚起をお膳立てする、理解に苦しむ展開だ。なのに日本は米国のように中国製品の締め出しに動かない。日本の成長戦略になるわけがない。

国を挙げて新型炉を支援 米テラパワーが高速炉建設へ

日本では原発の新増設・リプレースを巡る論争が続いているが、米国では革新的な新型炉の建設が進もうとしている。

マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏が創設したテラパワー社は11月16日、ナトリウム冷却高速炉「ナトリウム」の実証炉の建設地として、ワイオミング州ケンメラーを選んだと発表した。「ナトリウム」は小型モジュール式高速炉「PRISM」を開発したGE日立・ニュークリアエナジーと、テラパワーが共同で開発した。出力は34万5000kW。さらに溶融塩を使うエネルギー貯蔵システムを組み合わせると、出力は最大50万kWまで増やすことができる。

このプラントを米エネルギー省(DOE)も支援。先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)の対象とし、建設の総工費40億ドルのうち約19億ドルを米政府が拠出する。同社は28年までの運転開始を目指している。

ケンメラーには、25年に廃止される石炭火力発電所があり、それが同地が選ばれた理由の一つ。プラウントが稼働すると、新たに約250人の雇用が生まれる。

カーボンニュートラルを目指して、再生可能エネルギーと同時に新型炉開発にも力を入れる米国。ぜひ見習うべきだろう。

ビルゲイツ氏が新型炉に力を入れている
提供:AFP=時事

地熱発電の普及に向けて研究実施 「地上」「地下」「社会」の課題解決を支援

【電力中央研究所/窪田ひろみ サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 上席研究員】

くぼた・ひろみ 筑波大学大学院修了後、電力中央研究所入所。環境リスク学、社会心理学、毒性学が専門領域で、地熱発電研究にも従事。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、自治体主催の地熱会議等の委員を務める。2017年7月から現職。

地熱発電事業者向けツールの開発など、電中研では地熱の有効利用に向けた研究を行っている。

これら研究や各種機関の委員も務める窪田ひろみ上席研究員に、地熱発電の現状と展望などを聞いた。

 ――日本の地熱資源のポテンシャルは世界第3位と言われていますが、地熱開発はなかなか進展していません。その課題は。

窪田 発電を行うには地下から蒸気や熱水を取り出す必要があります。これらの有無や利用可能量は掘削してみないと正確に把握できないため、ポテンシャル試算量の全てが発電に利用できる訳ではありません。また掘削費用は高額であり、有望地の絞り込みには開発リスクが伴うため、民間企業では手を出しにくいのが現状です。

 近年、自然公園内での開発に係る規制緩和により開発可能な地域が増えましたが、熱源までの道路、送電線などの整備が新たに必要となり、開発の難易度は未だ高いといえます。さらに地域関係者との丁寧な協議など、時間とコストが掛かります。太陽光や風力などの再生可能エネルギーと異なり、「地上」「地下」「社会」に係るさまざまな配慮が必要です。

――諸課題の解決へ、電中研はどのような研究を行っていますか。

窪田 「社会」の課題を解決するには、開発候補地が抱える地域事情や開発に対する考えを事業者側が理解しなければなりません。また地熱発電の意義やしくみ、開発による便益やリスクなどを地域関係者に分かり易く伝える必要があります。これに関しては、地熱開発に伴う地域産業への経済効果を可視化する手法の調査をNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業として進めています。

 「地上」「地下」の技術的な面では、例えば石油天然ガス・金属鉱物資源機構と高温岩体発電技術を使って圧力により地中に人工的な亀裂を作り、隙間にCO2を注入して蒸気を作る「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の共同研究を進めています。他にも配管などを腐食させる硫化水素のIoTモニタリング手法開発など、安全な発電所操業に向けた技術開発もNEDO事業で行っています。

地熱発電の運営を手助け 事業者向けにツールを開発

――「GeoShinkTM(ジオシンク)」と「事業性評価支援ツール」を地熱事業者向けに開発しました。

窪田 FIT導入以降、余剰の温泉や温泉熱を活用した数十から数百kW程度の小規模地熱発電が80件程度増加しました。しかし、設備等のトラブルが多い発電所もあり、全体的に設備利用率は低く、多くの事業者は想定していた程の収益を得られていません。

 ひとたび発電設備に故障などのトラブルが起きれば、修理完了までに長期間を要することもあります。発電停止中は売電収益を得られず、FIT対象期間も延長できません。このためNEDO事業で、デジタル技術を使って設備の異常予兆の検知や健全性診断が可能な「ジオシンク」と、定期点検費用、維持管理費用などの支出と、FIT価格などを入力することで、発電事業のキャッシュフローを分かりやすく表示する「事業性評価支援ツール」を共同開発しました。

GeoShinkTMのシステム図

――両ツールにはどのような特徴がありますか。

窪田 「ジオシンク」は、発電設備の稼働状況のモニタリングデータを解析するツールです。数値の変動を監視することで、故障やトラブルの発生原因を遠隔地から早期に検知することが可能です。

 「事業性評価支援ツール」は、電中研とエンジニアリング協会(ENAA)が共同開発したエクセルベースの家計簿のようなツールです。

 トラブル要因や対策内容・費用だけでなく、写真形式のデータも登録可能で、紙の領収書や交換部品など、メンテナンスにかかる各種データを一元管理する機能もあります。またジオシンクでの発電電力量の分析結果の一部を計算モデルに搭載しているので、売電収入の近似値を算出できます。事業収支の観点から最適な点検スケジュールといったシミュレーションを事業者自身で行えるので、事業者の最適な設備運用や収益性の向上に繋がることが期待されています。

「地元」「事業者」の橋渡し 持続可能な地熱発電に貢献

――研究の展望を教えてください。

窪田 現在の専門領域は主にリスクコミュニケーションや事業性評価で、事業者と地域関係者の相互理解や信頼醸成に資する事業者側の改善策などを研究しています。例えば、事業者は地熱開発により地域が得られる便益や開発リスクなど、地域の関係者が知りたいあらゆる情報に対応する必要があります。

 また地域関係者の信頼を得るためには的確な説明だけではなく、誠意や誠実な対応・態度が重要です。このような学術的・科学的な内容を分かりやすく伝える方法や対話の場づくりなど、双方向的なコミュニケーションを支援しています。

―地熱エネルギー利活用推進に向けて意気込みを。

窪田 地熱発電は現在の電源構成の中で0・2%に過ぎませんが、原子力、水力と同じくベースロード電源としての役割を果たし、更に熱利用により省エネにも貢献しています。

 持続可能な地熱資源エネルギー利用により地域内で便益が循環し、地域社会の問題解決にも役立つ環境づくりに貢献したいと考えています。

未曽有の軽石漂流問題 離島向け重油輸送に影響

小笠原沖の海底火山の噴火で噴出した軽石の大量漂流という未曽有の事態が、多方面で問題を引き起こしている。軽石は10月中旬から沖縄本島などで確認され、11月には伊豆諸島などにも漂着。沖縄を中心に漁業や観光業などに影響を与えている。

辺土名漁港に漂着した大量の軽石(10月25日)(提供:朝日新聞社)

発電用の燃料輸送も例外ではなかった。10月25日、軽石により鹿児島県与論島に重油タンカーが接岸できず、受け入れを中止する事態が発生した。ただ、九州電力によると、1カ月以上の発電に必要な燃料は確保していたため、安定供給に支障は出なかった。その後、国土交通省や地元企業が軽石回収などを進め、11月15日に燃料補給を行うことができた。

ほかのエリアや、LNGや石炭の燃料船の運航については大きな影響がないことを確認済みで、「軽石の漂流に対して現時点で何か対策を講じることはなく、引き続き情報を収集していく」(九電担当者)。

ただ、軽石は今後黒潮に乗り、関東沿岸まで達すると見られる。風の状況によっては入り江の奥まで入り込む可能性も否定できない。昨シーズンに続き、今冬は電力の需給ひっ迫が懸念されているだけに、軽石が新たなリスク要因とならなければよいが……。

【マーケット情報/12月3日】原油続落、需給緩和観さらに強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続落。需給緩和観が一段と強まり、売りが優勢となった。ドバイ現物は前週から6.93ドルの急落となった。

新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染が拡大している。世界保健機構(WHO)は2日時点で、同変異株の感染を23か国で確認。また、日本、豪州、イスラエルなど、さらに複数の国が入国規制を再導入した。これにより、燃料消費の減少や、経済の停滞および石油需要後退への懸念が広がった。

そんななか、OPECプラスは、1月も当初の計画通り日量40万バレルの増産で合意。「必要に応じて、迅速に産油量を調整する」と声明を出したものの、需給の引き締め要因にはならなかった。加えて、米国も計画通り、戦略備蓄5,000万バレルを放出すると発表した。

一方、米国とイランの核合意復帰を巡る会合は、米国がイランを批判し、進展のないまま終了。米国の対イラン経済制裁は解除されず、イラン産原油の供給増加は当分見込めないとの予測が強まった。また、米国の週間在庫は減少。ただ、価格下落の抑制にはならなかった。

【12月3日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=66.26ドル(前週比1.89ドル安)、ブレント先物(ICE)69.88ドル(前週比2.84ドル)、オマーン先物(DME)=70.82ドル(前週比5.62ドル安)、ドバイ現物(Argus)=70.49ドル(前週比6.93.ドル安)

【イニシャルニュース】自民党入りしたH氏 乱開発阻止の本気度は?

自民党入りしたH氏 乱開発阻止の本気度は?

10月31日の衆院選に無所属で立候補し、自民党公認のY氏らに圧倒的な差を付けて当選したH氏。これまでの「無所属の自民党特別会員」という立場を脱し自民党への入党が認められ、政治家として新たな一歩を踏み出した。

そんなH氏の選挙区では、メガソーラーの乱開発が問題となっている。H氏はこれに批判的な立場を表明、地元住民の支持も集めているが、関係筋によると、「H氏は再エネ業界との関係が深いのもまた事実」だという。

H氏は、地元のZ社が出資する再エネ企業の経営者X氏と親交がある。X氏は、再エネ系団体で中心的な役割を果たしており、K知事ともつながりがある人物だ。

「今回衆院議員となったH氏を巡っては、K知事の後釜を引き続き狙ってくるのではないかと噂されている。K知事はかねて再エネ寄りの政策を取っており、Z社グループやX氏の支援を受けている。知事の座を狙うにしても、国会議員を続けるにしても、彼らの協力は不可欠なので、太陽光開発規制にどこまで本気になれるかは微妙な立場だと思う」(再エネ関係者)

一方で、地域の温泉業界からはH氏に対する批判的な声が聞こえる。「H氏は以前、特定の地熱業界幹部の意向だけを聞いて地熱発電を推進し、温泉業界の声には耳を傾けようとしなかった。そんな人物が太陽光反対を叫んだところで、信頼することはできない」(地熱発電関係者)

また、地域の水力事業を手掛ける企業の幹部は「4年前の総選挙に際し、H氏は太陽光の強引な開発手法が批判された企業の子会社から大金を借り入れた経緯がある。太陽光開発を批判する資格はないのでは」と手厳しい。

今回の衆院選の結果を見るまでもなく、地元におけるH氏の人気は圧倒的。だからこそ、政治的な事情やパフォーマンスばかりではなく、地域住民に寄り添う真摯な姿勢が求められる。

くすぶり続けるB連合 電力幹部が悔やむ過去

BWR(沸騰水型炉)の再稼働がなかなかスピードアップしない。ようやく最近、女川2号、そして島根2号の新規制基準への適合が認められたものの、これらに続くプラントの見当がつかない状況だ。さらに女川2号も工事完了は2022年度を目標としており、BWR稼働ゼロの状況は当面続くことになる。

こうした中、BWR連合構想が再注目されている。19年に東京電力、中部電力、日立、東芝の4社が原発の共同事業化検討で合意した後、表立った動きは出ていない。

新政権でBWR連合に注目が

しかし、昨年来の柏崎刈羽発電所での核物質防護に関する一連の不祥事が後を引いていること、さらにBWR連合を志向していると言われている嶋田隆氏が、岸田政権の筆頭首相秘書官に就任したことなどから、再び動きがあるのではないかという憶測が一部で流れている。政府内からも「BWRが動かない限り、原子力は次のステップには行けない」といった焦りが聞こえてくる。

電力会社幹部によると、実は水面下ではかつて、BWR連合につながる議論がある程度進んでいた時期があったと言う。「電力システム改革で発送電分離を決める時、原子力を切り離すという話も出ていた。しかし結局、表に出ることはなかった。現状を考えれば、当時議論が煮詰まらなかったことは返す返すも残念だ」(某大手幹部X氏)。

ただ、立地地域はこうした構想について「そんな話が出ているのか。しかし看板が変っても地域住民にとっては意味がない話」(K市担当者)と、中央の動きを冷ややかに見ている。

世界を覆うガス供給不安 欧州発の価格高騰止まらず

世界的なエネルギー価格高騰と供給不安が続いている。11月17日、欧州天然ガス価格の指標であるオランダの「TTF」の翌月先物が、1MW時当たり101・60ユーロ(100万BTU当たり33・7ドル)を付けた。

10月末にロシアのプーチン大統領が欧州のガス貯蔵施設への供給増を表明して以降、価格は下落傾向にあったが、約1カ月ぶりに高騰に転じた。これは前日の16日に、ドイツ政府が露―独をバルト海経由で結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認手続きの一時停止を表明し、再び供給懸念が生じたためだ。

ノルドストリーム2の稼働遅れの影響は深刻

例年であれば90%近くまで充填されている欧州の天然ガス地下貯蔵は、年初の厳冬による激減から回復しきっておらず、現在も7割程度にとどまっている。市場関係者は、「ロシアから十分な供給が見込めなくなる。このまま今冬も厳冬で消費が加速するようなことになれば、来年2~3月ごろには在庫が枯渇する」と語り、燃料不足により欧州各国が停電危機に見舞われる恐れを示唆する。

基地の整備とLNGの市場化の進展で欧州の輸入量が一気に増えた2019年以降、世界のガス・LNG価格は相関を強めている。日本にとっても、欧州のガス価格高騰と需給危機は対岸の火事ではなく、実際、TTFにつられる形でJKM先物も高止まりしている。

さらなる懸念は12月以降、日本の電力・ガス会社の多くが長期契約を結ぶマレーシア産LNGの供給量が、生産設備の問題から大幅に減少する可能性が出てきたことだ。電力・ガス会社の調達計画に狂いが生じることになれば、スポット調達の争奪戦と価格高騰に拍車を掛けることになりそうだ。

【コラム/12月6日】再エネのグローバルスタンダードとローカライゼーション

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 管理本部副本部長兼社長室長

2021年10月に第6次エネルギー基本計画が閣議決定され、また、英国のグラスゴーでは10月31日から11月13日まで、約200カ国・地域の代表が集まり、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催された。

COP26の成果文書である「グラスゴー気候合意」が採択され主な合意としては、①気温上昇を1.5度に抑える努力を追求②必要に応じて22年末までに30年の削減目標を再検討③排出削減対策の取られていない石炭火力の段階的削減へ努力④先進国による2020年までの年間1000億ドル資金目標が未達成であることへの多くの途上国からの批判――といったところだ。

地球温暖化に対して世界各国がそれぞれの利害を超えて取り組んでいくというのは、言わずもがな地球温暖化対策に向けた取り組みがグローバルスタンダードになるということかと思う。更にその具体的な手段として再生可能エネルギーの普及を図るというのもグローバルスタンダードと言ってよいだろう。

その一方で、グローバルスタンダードを実現するためには、「ローカライゼーション」が大切になってくると考える。

ところでローカライゼーションとは何だろう? 一番ピンと来るのは言語だろう。フェイスブックやツイッターは、それを使う人の言語に対応していないとなかなか普及しない。私もフェイスブックは知人のフランス人に紹介されて英語版しかない時に使い始めたが、やがて日本語対応してから、日本国内で一気に拡がっていったと思う。また天気予報のアプリはスマホの位置情報と連動して、自分の住んでいる地域や旅行先の天気予報が見られる。これもローカライゼーションで、新聞の地域紙面や地域情報誌、ポータルサイトの表示や求人広告の表示が地域限定で出るのもローカライゼーションだ。挙げだしたらきりがない。

その点で、ある意味第6次エネルギー基本計画もローカライゼーションと言えると思う。

私がどうしてローカライゼーションを話題にするのかというと、「最近の脱炭素社会に向けての論調の中に、日本という観点でのローカライゼーションはあるのか?」「開発にあたって地域におけるローカライゼーションを意識する観点が具体的にあるのか?」ということを思ったからである。

例えば風力発電の場合、発電所のメンテナンスは、風車の製造会社が手掛けるのが一般的だ。しかし、その製造会社はほぼ全てが外資系企業であり、日本はあくまでone of themの市場だ。果たしてどこまでローカライゼーションをしてくれるのだろうか? 日本の気候や土地柄(景観なども含めて)風車を開発しようというインセンティブは働くのだろうか?

先日、たまたま日本の風力発電を研究されている方のお話を聞くことができたのだが、私の記憶が正しければその方は風速30-40m/秒でも発電する風車で、大きさも大きくない中小型風車を研究しているとのことだった。また太陽光発電所をデジタルに運営管理するソフトウェアの開発をしているスタートアップの会社とお話をしたが、元々は数百MW規模の発電所をデジタルマッピングして管理していくというコンセプトで開発していたのだが、日本では低圧が多いので、そういう規模の小さい発電所をデジタルで一元管理するというニーズがあるとのことだった。

エネルギーというのは人々のインフラなので、資本の理論だけでなく、地域の特性も踏まえて開発するということを改めて意識すべきではないだろうか?

COP26の開催に合わせて化石賞をいただいたという脱炭素の推進で欧米に対して気後れし、グローバルスタンダードという名のもとに進めるのではなく、テクノロジーの進化はよりカスタマイズできることにあると考えるのであれば、四季折々の姿がある気候、国土の約7割が森林、少子高齢化が進む人口構造や地域の過疎化等々、再生可能エネルギーの普及に際しては、ローカライゼーションを意識していくべきではないだろうか?

出典:https://www.env.go.jp/press/files/jp/117098.pdf

「気温1.5度内追求」COP26閉幕、石炭火力は段階的削減: 日本経済新聞 (nikkei.com)

電力での信頼性と安定性が高評価 ガス・水道の遠隔検針サービスを開始

【四国電力送配電】

電力スマートメーターによる実績を携え、ガスや水道での検針サービスを開始した四国電力送配電。 半年で無線通信端末の出荷台数が1万台を超え、四国の発展につながる新サービスも視野に入れる。

 「モノ」をインターネットに接続し、離れた場所から計測・制御したり、モノ同士の通信を可能にするIoT。既存のモノに付加価値を付け、暮らしを便利にする。

四国電力送配電は、送配電ネットワークを活用して新たな価値の創造に取り組んでいる。今年4月、電力スマートメーター(スマメ)を活用した「IoT向け通信回線サービス」を開始した。同社第1号の新規事業だ。

サービスは、ガスや水道のメーターなどに同社の無線通信端末を接続。電力スマメ用通信システムを介して、ガス・水道事業者に検針値などの情報を提供する。検針値や異常警報などの遠隔取得のほか、ガスではLPガスボンベの残量把握、開閉栓などの遠隔操作に利用できる。検針・保安業務の効率化や高度化につながるため、インフラ事業者からの注目を浴びている。

ガスメーターの多くは既に遠隔検針に対応した設計になっているため、現在のメーターに無線通信端末を接続するだけで利用可能だ。

「IoT向け通信回線サービス」のシステム構成図

電力スマメの信頼と安定性 長期的なコストも削減

同社のシステムの強みは、①四国全域に設置した電力スマメを使う、②電力検針での安定的な稼働実績がある、③強固な暗号化通信によるセキュリティー確保、④長期にわたるサービスの提供が可能―な点だ。

①と②は、設置済みの電力スマメの99%をカバーしており、電力の遠隔検針において既に7年間の稼働実績を有している。プラチナバンドと呼ばれる920MHz帯の近距離無線で、密で高い通信品質を保つ。③は、無線通信端末を遠隔操作して、ファームウェアの更新も可能だ。

④は、導入事業者にコスト面での大きなメリットをもたらす。遠隔検針には通信事業者などの回線を使う方法があるが、通信方式が変わるとその影響を受け、その都度無線通信端末の取り換え費用が発生する可能性がある。電力スマメを活用すれば、通信方式の変更には電力スマメ側で対応できるため、無線通信端末の取り換えが不要。事業者は取り換え費用が発生しないメリットがある。

こうした強みを持ちながらも、同社がガス・水道事業者にサービスを展開するのは初めて。なぜ送配電会社がサービスを提供するのかを説明するところからの営業活動だった。地道に何度も足を運び意見交換をして他業界の課題を知るとともに、ニーズに合うサービスを提案して導入につなげた。

企画部SM活用事業PJTの亀井聖司さんは「誠意が伝わり、『亀井さんと一緒に仕事がしたいから契約する』と言ってもらった時の達成感は何ものにも代えがたい大きな喜びでした。販売して終わりではなくそこから始まるサービスなので、これからもより強い信頼関係を築いていきたい」と話す。同じ思いでメンバーが力を合わせ、サービス開始から半年足らずで累計出荷数が1万台を突破。年間目標を達成した。

現在、四国にある約1000社のLPガス事業者のうち、大手の事業者を皮切りに着々と導入が進んでいる。

島しょ・山間部などで検証 水道事業にも大きな期待

水道については、全国のほとんどのメーターが遠隔検針に対応しておらず、無線通信端末を取り付けるにはメーターごと交換しなければならない。地面の下に設置するため強固な防水機能も必要だ。

導入にはハードルが上がるが、検針業務の効率化が求められているのは水道業界も同じ。四国に限らず、水道管の老朽化による漏水対応も喫緊の課題だ。水道メーターが遠隔検針に対応すれば細かい粒度で世帯ごと、短時間ごとのデータが取れるので、2カ月に1度の検針では発見されにくい漏水も発見されやすくなる。水道管設備の効率的な更新計画に活用できる。

こうしたことから水道業界でも遠隔検針への対応が本格的に検討され始めている。

同社は今年9月から、香川県女木島と愛媛県愛南町の水道メーターで実証試験を始めた。

女木島では香川県広域水道企業団と共同で集落の30世帯に設置。これまで高松市からフェリーに乗り、山道を登って検針していた業務が効率化できる。現地水道メーターの指針値と遠隔取得した指針値の整合性を確認し、検証を進める。漏水などの警報情報も提供し、水道使用量の見える化サービスも提案する予定だ。

愛南町では山間部などでの実証試験となる。一人暮らし世帯が多い、山あいに点在する22カ所に取り付けた。いずれも将来の遠隔検針の利活用に向けて、積極的に実証・評価を推進している。

ガスや水道といった新たな事業分野への展開について、奥村貴博副リーダーは「ガス・水道事業者の方との情報交換で、インフラに共通する課題が浮き彫りになった。人口減少による収入減をどうカバーしていくか、総合的な知見が増えた」と実感している。電力の遠隔検針に使用しているスマメ通信網をガスや水道でも活用することは、社会全体のコスト削減にもつながると力説する。

同社は自社の通信網の信頼と安定性を、今後は遠く離れて住む家族の見守りサービスにも発展させたいと考えている。

電力のネットワークを生かした第1号の新規事業が次々に連鎖して、時代や暮らしに応じた新しい価値を生み出していきそうだ。

四国の活性化に貢献したいと語る奥村副リーダー(右)と亀井さん

「太陽光の乱開発は許さない」 自治体首長の本腰に事業者は?

本誌が報じた山梨・甲斐、静岡・函南両市町の太陽光乱開発問題に動きがあった。

反対運動の高まりを受け、事態改善へ本腰を入れる自治体首長。事業者の対応はいかに。

 「単なる私の思い過ごしならいいのだが……」

静岡県函南町軽井沢の山あいで進む大型メガソーラー建設計画を巡り、計画変更を届け出た事業者に対し町側が「不同意」を通知したことが明らかになった。建設反対を訴える住民側にとっては朗報のように見えるが、全国再エネ問題連絡会の山口雅之・共同代表の表情はなぜかさえない。その理由について、順を追って説明しよう。

この計画は、中部電力系工事会社のトーエネックが、2018年4月に国のFIT(固定価格買い取り制度)認定IDを取得。不動産開発会社のブルーキャピタルマネジメントが、発電所の施工を手掛ける事業構成になっている。

これに対し、土砂災害の誘発などを心配する地元住民らが反対運動を展開。去る7月3日には、軽井沢地区から東にわずか4㎞ほどの距離にある熱海市伊豆山で大規模な土石流災害が発生し多くの人命が奪われたことで、地元の不安は頂点に達した。しかしトーエネックは計画続行の姿勢を変えず、同月26日に「函南町自然環境等とエネルギー発電事業との調和に関する条例」(再エネ条例、19年10月施行)に基づく「再エネ発電事業届出書」を町に提出した。

この条例には、町長の同意なしに施設を設置できないとする規定がある。「本計画は不同意の要件である事業抑制区域に該当するため同意はあり得ない」とする住民側の訴えをよそに、町では事業者が条例施行前に静岡県に林地開発許可申請を行っているため、「事業に着手済み」と解釈。遡及適用は難しいとして、同意・不同意の判断を見送る姿勢を示していた。

突然の計画変更の狙いは 「不同意」に不可解な点

「伊東市と伊豆メガソーラーパークの訴訟を巡る東京高裁の判例(4月21日付)からも明らかな通り、遡及問題は起こり得ない。にもかかわらず町が法的根拠なく判断を1カ月以上放置するなら、町長に対する義務付け訴訟もあり得る」。住民側の強硬姿勢を背景に動いたのは、町ではなく、トーエネック。事業届出から3週間後の8月24日に突如、発電出力や運転開始時期などの計画を変更する旨を届け出たのだ。すると、町側は変更部分には条例適用が可能と判断。10月27日、防災上の危険など14項目を理由に「不同意」を通知するに至ったわけだ。

この結果、メガソーラーの設置は事実上認められないことになり一件落着か。と思いきや、前出の山口代表は「まだ安心はできない」とした上で、こう続けた。

「今回の不同意については、事業者によるトラップの可能性が考えられる。何よりトーエネックとブルーは条例施行から2年もの間、届け出を拒み続けていたのに、7月に一転申請に踏み切り、そのわずか3週間後に今度は変更を届け出たこと自体が不自然だ。今後、事業者は変更届を取り消すなどで不同意の効力をなくすシナリオを描いているのかも。今回の件でひとまず住民を安心させ、油断を生じさせる狙いがありそう」

山口氏によれば、町が事業者とつながっている可能性も否定できない。「町は条例制定前から計画推進の意思があったと認められる公文書が存在する」ためだ。また再エネ条例に定める事業抑制区域の件を、不同意理由に明記しなかったことも不可解だという。ともあれ、結果的には事業者の変更届のおかげで、町は義務付け訴訟を回避できた格好になった。

表向き反対の立場を取る自治体が、実は水面下で事業者と手を結んでいるケースは決して珍しいことではない。前出の伊豆メガソーラーパークの訴訟では、原告側の小野達也・伊東市長が係争の最中に被告側の事業者と計画推進に向けての密約を交わしていたことが発覚、謝罪に追い込まれた。

「町長の不同意を受け事業者が撤退するのか、それとも懸念していることが現実となるのか、今後の動きを注視していく」(山口氏)

もちろん、全国を見渡せば事業者寄りの自治体ばかりではない。太陽光の乱開発に対して、厳しい姿勢で挑む自治体も少なからずある。その代表が山梨県だ。

発電所の建設予定地は災害危険エリアに(函南町)

「信頼の土台が破壊された」 事業者撤退劇に知事激怒

「(甲斐市菖蒲沢の大型メガソーラーについて)安全確保のための対応をしてくださいと申し入れをしてきたが、責任を感じていないような形で(発電所を)譲渡したことは、社会的責任の欠如と言わざるを得ない。極めて不誠実な行為で、強い憤りを禁じ得ない」

長崎幸太郎知事は11月12日に開いた臨時会見で、メガソーラー事業者が県の要請に従わず発電所譲渡に踏み切ったことを、強い口調で非難した。問題の事業者は何と函南町と同じ、トーエネック、ブルーの2社である。

関係筋や報道によると、ブルー社が林地開発許可を受け昨年から工事を手掛けてきたメガソーラーの運営権利(FIT認定ID)を、トーエネックが取得。その後、調整池や水路、太陽光パネルの設置などで不正や欠陥が判明し、地元から不安の声が高まっていた。

こうした中、長崎知事は8月末にトーエネックの幹部を県庁に呼び、設備の工事と維持管理に万全を期すよう要請。同社側は「法令に従い、責務を果たしたい」と工事をやり直していたが、11月11日に担当者が来庁。ブルー社から「責任をもって設備を完成させるため買い戻したい」との提案があり、施設を譲渡する旨を伝えた。県側は「受け入れられない」と再考を求めたものの、翌12日に両社は譲渡契約を交わしたという。

「申し入れが完全に無視され、信頼の土台が破壊された」「場合によっては人の命が関わる問題を放擲して逃げ去るのは、あまりにも無責任」―。長崎知事の会見発言は痛烈だ。これを受け、トーエネックでは「譲渡後も工事の状況を現場で確認し、必要に応じて指導する」と説明。15日には藤田祐三社長ら幹部が県を訪れ、「知事の意向に配慮できず、おわびします」と謝罪した。

内情を知る関係者によれば、トーエネックの撤退劇は親会社の意向を踏まえたものとみられる。今後、函南町の案件からも同様に手を引く可能性もあるが、問題はそのやり方だ。「地域にきちんと理由を説明した上で、立つ鳥跡を濁さないよう最大限の配慮をもって撤退するのが筋。夜逃げのような態度が許されると思ったら大間違いだ」(山梨県関係者)

太陽光事業がコンプライアンス問題に発展するとは。FIT制度化の10年前には想像し得なかったような事態が現実化している。

卸電力市場暴騰の前触れか スポット上昇の要因を探ると

昨冬のような卸電力市場価格暴騰の前触れなのか――。

冬本番を前に、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格が例年になく高い水準で推移している。10月以降、時間帯によって1kW時当たり50円を超え、11月17日には一時65円の高値を付けた。

この季節外れの価格上昇について、電力業界関係者は「点灯時間帯と太陽光発電の出力減が重なるタイミングで大量の買い注文が出ている。それに見合う売り札がなく、買い手が価格を釣り上げざるを得ないのだろう」と分析する。

この背景にあるのが、アジアのLNGスポット指標「JKM」の高騰。100万BTU(英国熱量単位)当たり40ドル近く(発電単価約30円/kW時相当)で高止まっている。一方、卸電力価格のスパイクは1日に1コマあるかどうか。平均20円を下回っていては、発電事業者は消費を抑制し次の受け入れまでしのぐしかない。

発電事業者は、稼働ユニットを絞ったり価格の安い時間帯に買い札を入れたりしているのに加え、11月に入り、西日本の各社が燃料制約からLNG火力に出力制限をかけている。

11月上旬以降、複数のLNG火力で燃料制約が生じている(写真は新大分発電所)

燃料価格と卸電力価格のいびつな関係を解消しない限り、機動的な燃料調達は不可能だ。「世界がLNG争奪戦を繰り広げる中、厳冬にならずとも売り札不足に陥ることは十分にあり得る」(前出の関係者) 東北電力が追加的な燃料調達を考慮した卸電力市場への入札を決めるなど、電力価格に燃料指標をより反映させるための見直しが進む。新電力にとっては厳しい限りだが、昨冬のように200円/kW時に張り付く事態を回避するには、受け入れざるを得ないようだ。

「1.5℃」追求の努力を確認 COP26の合意が示す意味

「気候危機」包囲網は狭まる一方だ。英国で11月13日までの14日間開催された温暖化防止国際会議・COP26。成果文書には、世界の気温上昇を「(産業革命前から)1.5℃に抑える努力を追求することを決意する」と明記。そこからバックキャストし、世界のCO2排出量を2030年までに10年比45%減、今世紀半ばに実質ゼロとすることのほか、各国に対しては22年末までに30年目標を強化することを求めた。

「グラスゴー気候合意」が採択され拍手を受けるシャルマ議長(中央)ら
提供:dpa/時事通信フォト

世界自然保護基金ジャパンの気候エネルギー・海洋水産室長の山岸尚之氏は「1.5℃のピン止めと30年目標の強化が割と素直に示された。1.5℃を巡ってはこれまでの表現と明確な差はないが、このパラグラフで特筆されたことが重要。各国の問題意識の変化が表れている」と強調する。

英国がこだわった項目の一つである石炭も焦点に。文書では、排出削減対策を講じていない石炭火力発電の段階的削減と、化石燃料への非効率な補助金の段階的廃止に向けた努力を加速するとした。当初の議長案はストレートな「石炭のフェーズアウト」だったが、インドや中国が反発し「石炭火力のフェーズダウン」で落ち着いた。ただ、「期限や拘束力はないものの、成果文書に書き込めるところまで石炭に関する国際認識が揃ってきたことは大きい」(山岸氏)。

本筋であるパリ協定の実施指針の交渉では、JCM(二国間クレジット制度)などに関わる6条(市場メカニズム)の内容が決着。クレジット拠出国と利用国双方での「ダブルカウント」防止や、〝ゾンビクレジット〟と一部で呼ばれる京都議定書時代のクレジットの扱いが争点だった。結果、国別目標や国際部門間取引でのダブルカウント防止や、13年以降に登録されたクレジットは条件付きで利用を認め、実施指針が完成した。

「有志連合」をアピール 温度上昇見通しが異なる訳

英国は分野ごとに国や企業などでつくる「有志連合」もアピールした。日本が「脱エンジン車」とともに乗らなかった「脱石炭」では、先進国は30年代、途上国は40年代の石炭火力建設や新規投資の停止に、46カ国・地域が合意した。岸田文雄首相は首脳級会合で、変動性再生可能エネルギーの拡大には「既存の火力発電をゼロエミッション化し活用することも必要だ」とスピーチ。アジアの脱炭素化のけん引役を強調したが、賛同が広がったとは言い難い。

また、複数団体が今後の温度上昇への見解を示し、IEA(国際エネルギー機関)は各国が目標を達成すれば1.8℃に抑えられるとした一方で、UNEP(国連環境計画)は2.7℃まで上がると発表。分析の差は目標ベースか政策ベースかによるもので、山岸氏は「各国が真剣に取り組めば1.8℃に抑えられる希望が見えたが、政策的にはその域に達していない。各国が国内政策の強化を模索するべきで、これは日本にも当てはまる」と指摘する。

ただ別の視点で見ると、COP26の意味合いは大きく異なってくる。詳しくは『覆面ホンネ座談会』をご覧ください。