2月17日にウクライナ政府軍と親ロシア勢力の衝突情報が駆け巡るなど、軍事的緊張が続くウクライナ情勢。北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナ加盟問題を巡る欧米とロシアの溝が埋まる気配がない中で、危機は長期化の様相を呈しつつある。

海外メディアや専門家の見解を踏まえると、プーチン大統領らロシア政府側はウクライナへの軍事侵攻を繰り返し否定しており、米国・NATO側が危機をあおる構図が浮かび上がってくる。ロシア外務省のザハロワ報道官は2月中旬、米国がウクライナ危機を扇動しているとして、「彼らの狙いは(ロシア産ガスをドイツに供給する新設導管)ノルドストリーム2の稼働阻止だ」と主張した。
米英とEUは、ロシアが侵攻した場合の制裁パッケージを検討しており、とりわけノルド2の稼働阻止に焦点が当たっている。ロシアの天然ガス輸出に制限を加えることで経済制裁を課そうというわけだが、欧州の一部にとっては諸刃の剣となる恐れも。「原発が停止するドイツを中心にガス不足が発生し、エネルギー安定供給上のリスクが高まる」(大場紀章・ポスト石油戦略研究所代表)ためだ。結果として「ドイツのエネルギー政策は転換を迫られる」(橘川武郎・国際大学大学院教授)ことになりかねない。
そもそもロシアのエネルギー収入に占める天然ガスの割合は石油の5分の1程度に過ぎず、効果を疑問視する向きは多い。その石油に対する制裁が話題に上らないのは、「欧米への打撃が大き過ぎるためか」(大場氏)。またノルド2が稼働しなかった場合、「ロシアは日本へのLNGの売り込みを強めてくる」(橘川教授)可能性も。そのロシア産が、米国側の要請で日本が実施する「欧州向けLNG融通協力」に回されることにでもなれば何のことやらである。
米国の欧州向け輸出急増 シェール生産も過去最高へ
にもかかわらず米国がノルド2阻止にこだわるのはなぜか。「昨年12月に欧州向けのLNG輸出が過去最高を記録した中で、ノルド2を阻止できれば一層の輸出拡大が見込めることになる」(大手商社関係者)。現在、米国内ではシェール増産が加速。政府当局によると、国全体の産油量は3月に日量11万バレル増の870・7万バレルと2年ぶりの大幅増へ。天然ガス生産量も3月には日量5億立方ft増の917億立方ftに達し、過去最高となる見通しだ。原油高騰も相まって、脱炭素どこ吹く風の好況ぶりである。
米ブルームバーグ通信は14日、「米国による警告が現実となり、ロシアがウクライナに侵攻すれば、欧州では第二次大戦以降で最悪の安全保障上の危機に発展し、ロシアによるクリミア併合やウクライナ東部での紛争でもたらされた危機とは比較にならない可能性がある」と報じた。
歴史を振り返れば、1941年8月に米国が石油禁輸措置を発動したことがきっかけとなり、太平洋戦争へと突入した。80年後もエネルギー資源が戦争の火種となる構図は変わらないようだ。




