どうする!? 熱エネルギーの脱炭素化 「エネ庁のアキレス腱」の声も

第六次エネルギー基本計画が閣議決定され、脱炭素社会実現に向けた動きが加速している。

その大きな鍵を握るのは、最終エネルギー消費の7割を占める熱利用分野だが、課題は山積している。

政府が掲げる2050年カーボンニュートラル(CN)社会の実現は、不可逆的な流れとして社会全体に大きな構造転換を促そうとしている。

10月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画には、「従来の発想を転換し、積極的にCNに向けた取り組みを行うことで、産業構造や社会経済の変革を見出し、次なる大きな成長につながる『経済と環境の好循環』を作っていくことが求められる」と明記されている。

これを実現するには、行政、研究開発機関、エネルギー供給事業者、そして産業界を中心とした需要家が一体となって、産業の競争力を維持向上させながら脱炭素化を実現するためのイノベーションへの挑戦に、待ったなしで挑戦していく必要がある。

エネ基議論では、とかく電源構成比率(エネルギーミックス)の数値ばかりが注目されがちだ。今回のエネ基を巡る報道を見ても、ほぼ再生可能エネルギー比率や原子力の最大限活用の是非に終始していたと言って過言ではない。

それに加えて、10月末から英国で開かれていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を巡っては、各国が石炭火力の低減・廃止をどう宣言するか、しないのかといったニュース一辺倒で、あたかも電源の脱炭素化さえ実現できれば、気候変動問題の全てが解決できるかのような報道が目立った。

これでは、こうした報道に触れる国民の多くが、CO2排出問題=電源問題であると思っても不思議ではない。

新技術の社会実装へ 具体的な道筋示せ

しかし、忘れてはならないのは、日本の最終エネルギー消費のうち直接的な電力として利用されるのは約3割に過ぎず、残りは化石燃料を用いた熱利用が占めているということだ。需要側で省エネと電化がある程度進むとはいえ、30年度の断面でもその構造が大きく変わることはない。

それは50年に至っても同様だ。脱炭素社会を実現するということは、極論すれば化石燃料を使わないということ。しかし、日本は産業用の熱需要が多く、電化以外を認めないとなれば製造業が衰退し雇用が維持できなくなる恐れが大きい。

エネ基が掲げる、脱炭素社会の追求による「経済と環境の好循環」を創出するには、未利用熱エネルギーの有効活用と熱源の脱炭素化に資する技術の確立を急ぐと同時に、社会実装に向けた具体的な政策を示さなければならない。それがなければ、50年脱炭素化など絵に描いた餅に終わる。

脱炭素社会の鍵を握るのは熱エネルギーだ

しかし、熱エネルギーについて、再エネなど電力分野と同様に長期的な政策やロードマップを描くことは、そう簡単ではない。課題は主に三つあるようだ。

一つ目は、熱は、投入エネルギー(石油、石炭、天然ガスなど)、供給・利用設備(ボイラー、工業炉、ヒートポンプ、コージェネレーションシステムなど)、熱の形態(温水、蒸気など)、利用温度(10℃以下の冷熱~1000℃以上の超高温熱)といった、供給や利用方法が事業所によって千差万別であるということ。このため、需給実態の把握は困難を極める。

二つ目は、簡単な道のりではないとはいえ、電力分野が再エネや原子力など脱炭素化に向けた技術的な活路がそれなりに見出せているのに対し、「熱エネルギーの獲得、活用、再利用といった基礎的な技術が圧倒的に不足している」(大口需要家)ことだ。

蒸気や温水などによる低温帯の熱需要については、ヒートポンプなどの電化技術による脱炭素化が期待される。一方、電化が困難な高温帯の領域では、水素やアンモニア、合成メタンなど合成燃料の活用による脱炭素化、特に産業部門においては、水素還元製鉄や人工光合成などのイノベーションが不可欠となる。だが現時点では、これらが技術的、コスト的なハードルを越えられるかは未知数だ。

最後に、エネルギー政策を主導する資源エネルギー庁の組織的な問題がある。関連政策が広範に及ぶことから、政策によって担当課がエネ庁内で分散してしまっており、トータルで熱政策を語れる部署がないのだ。 何より、「電力」「ガス」「石油」といった供給側の政策を手掛ける同庁にとって、需要家の取り組みが主軸となる熱エネルギー政策は「不得意」。エネ庁幹部でさえ、「熱エネルギーはエネ庁のアキレス腱だ」と言わざるを得ないのが実情だ。熱政策に本腰を入れるために、まずは組織体制の見直しを図る必要があるかもしれない。

CNの国際基準主導へ 官民の総合力問われる

いずれにしても、今すぐに熱源を水素に切り替えられるわけではなく、現状では企業需要家は、電化なのか、天然ガスシフトなのか、次の数十年を見据えた設備投資計画を描くことすらままならない。「技術革新に合わせてどう設備更新計画を描くのか、その羅針盤を示すのがエネ庁の役割だ」(エネ庁OB)

まずは、電化が可能な領域以外では、熱源をより低炭素なガスに切り替えた上で、技術が確立した暁にはそのガスを脱炭素化していくことが選択肢の一つとなる。都市ガス業界が将来のCN技術として注力するメタネーションは、再エネ由来の水素とCO2を反応させ合成メタンを生成する仕組み。利用時にCO2が排出されるが、回収するCO2と相殺されCNであるとみなし得る。

ただ、こうした技術が確立したとしても、今のところこれらをCNとして定義付ける制度が国内にも国際的にも存在していない。特に欧州各国は、化石燃料を活用し続ける仕組みには否定的で、国際標準化の前途は多難。

いかに世界に協力国を作り、熱分野のカーボンニュートラルの国際基準づくりを主導していくのか。つまり、政府がCOPやG20といったハイレベルな交渉の中で発信力を高められるか―。官民の総合力が問われている。

【マーケット情報/11月26日】原油続落、需給緩和の見通し強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続落。新型コロナウイルス変異株の台頭で、需給緩和観がさらに強まった。米国原油を代表するWTI先物は7.95ドル、北海原油の指標となるブレント先物は6.17ドルの急落となった。

世界保健機構(WHO)は、アフリカ大陸南部で新たに発見された新型コロナウイルスのオミクロン変異株が、高い感染力を持つと警告。英国や米国、シンガポールなど複数の国家が、アフリカ南部への渡航制限を導入した。これにより、燃料消費が鈍るとの観測が強まった。また、変異株の感染拡大で、経済が冷え込み、需要回復に歯止めがかかるとの懸念が広がった。

供給面では、米国に加え、日本、韓国、インドなど複数の国が、戦略備蓄の放出を決定。加えて、米国の週間在庫が増加。米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表した国内の石油掘削リグの稼働数は、前週から6基増加して467基となり、需給緩和観を強めた。

一方、OPECプラスが、1月の生産計画を見直す可能性も台頭している。新たな変異株の感染拡大や、戦略備蓄の放出が懸念材料となっている。ただ、現時点では、方向性が定まっておらず、価格への影響は限定的となった。

【11月26日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=68.15ドル(前週比7.95ドル安)、ブレント先物(ICE)72.72ドル(前週比6.17ドル)、オマーン先物(DME)=76.44ドル(前週比4.63ドル安)、ドバイ現物(Argus)=77.42ドル(前週比3.77ドル安)

【省エネ】脱炭素社会の実現 自治体の役割は

【業界スクランブル/省エネ】

日本が脱炭素社会を実現するうえで、地方公共団体の役割は極めて重要である。地方公共団体側も認識しており、2021年7月末現在で、東京都・京都市・横浜市を始めとする432の地方公共団体(40都道府県、256市、10特別区、106町、20村)が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明している。残る、秋田県、石川県、茨城県、埼玉県、愛知県、山口県、福岡県の表明も期待される。

地方公共団体の役割は大きく二つあり、「自らの率先実施」と「規制、補助政策などによる民間誘導施策」である。率先実施としては庁舎や学校の新築・改修におけるZEB実現、公営住宅のZEH・ZEH-M(マンション)および所有車両のゼロエミッション化などが挙げられる。ZEBやZEHはエネルギー購入費用が下がる分、建設コストが増加するが、一般に自治体発注は地元事業者が受注するケースが多いため、資金・技術が地元に残るメリットがある。特に地元事業者がZEB・ZEHの省エネ技術導入経験を得られることは貴重であり、当該地方公共団体内のZEB・ZEHの普及拡大に貢献する効果もある。また低所得者向けの公営住宅をZEH化することは、低所得者のエネルギーコスト負担を削減する福祉政策としても有効であり、英国でも低所得者向け公営住宅へのヒートポンプ給湯暖房機導入などのプロジェクトが進められている。

民間誘導施策としては、PV・省エネ設備の補助金制度が効果的だが、地方公共団体主導のPR活動も重要だ。協賛企業からのノベルティを景品として、家庭向けのエネルギー消費削減活動を実施して効果を挙げた自治体もあり、今後、少なくとも100カ所つくられる「脱炭素先行地域」で、さまざまな工夫をこらしたて取り組むことが期待される。また、規制強化においても、建築確認の際の脱炭素書類申請・自治体版CASBEE活用、自治体版C&T制度導入、太陽光発電所のウェルカムゾーン設定など、さまざまな独自の取り組みを実施することも可能であり、規制強化も含めた脱炭素促進施策を検討することが必要である。(N)

【コラム/11月29日】電力システム改革の陥穽を考える~安定供給喪失と弥縫策継続の情けなさ

飯倉 穣/エコノミスト

1,電力小売全面自由化の合言葉「あなたに合った電気を選べる時代」の登場で電力システム改革(電力自由化)は一段落した。自由化論者は、地域独占の安定供給義務に代わる市場機能で電力需給は安定すると心底思っていたであろうか。 

数年経ず、経済産業大臣が、今冬の電力需給に警告を発した(21年5月14日)。忘れた頃に「経産省 発電用燃料を追加調達 冬に備え電力会社に促す」(日経10月27日)、「経産省 厳冬なら電力「厳しい」供給余力 過去10年で最低」(朝日同)、「予備率 東京電力管内3.1% 全国10エリア中7エリア3%台 10年ぶり」と報道があった。

現在大震災もなく国際的なエネルギー危機も耳にしない。自由化成功勝手売込の中で、経産相の発言である。自由化で安定強化という経産省主張に疑問を抱く。これは電力市場に我が物顔で介入を画策する意図的発言と疑う。この国の改革は、電力の安定供給に不安を抱かせている。供給義務(責任)の再議論に陥っている電力の供給体制改革の陥穽を改めて考える。

2,電力自由化は、米国要求に阿ね、政官民の思惑が交差する「経済改革研究会中間報告(平岩レポート)」(1993年11月8日)の「経済的規制は原則自由・例外規制」の仕掛けから始まった。紆余曲折を経て卸電力市場の自由化(95年)、高圧部門の小売り自由化・卸電力取引所の創設(03年)となった。東日本大震災当時、民主党政府主因の需給不安を背景に、電力に市場機能を貫徹させ、市場失敗なら政府介入当然という考えで電力システム改革が論じられた。

市場競争で効率を上げ安い電力の安定供給をお題目に電力自由化は進められた。規模の経済を軽視・発送電一貫体制を弊害視した。大口需要者への需要価格弾力性の導入(電力料金で需給バランス決定)、ピーク抑制・過大施設不要(予備率引き下げ)、新規参入の推進(誰でも電源投資可能)、送電線開放、小売り自由化等が基本的発想であった。実現すれば需要家の選択が拡大し、また競争は、供給企業の効率化を促し、コスト削減で料金も低下すると喧伝された。(八田達夫「電力システム改革をどう進めるか」12年12月)。そして発送電分離、小売市場の自由化が完成する(20年)。

3,現在、経産省(20・21年度統計)は、新電力のシェア20%、大手電力の域外進出4%、小売り電気事業者の登録件数727者、電源構成大手電力シェア59%、新エネ(再エネ)導入比率21%、卸電力取引所の取引平均価格11.2~6.8円(乱高下無視)、卸取引市場シェア40%(経産省指導で)等の数値を挙げ、電力自由化成功を示す。

岡目八目なら、経産省の評価と異なり、現実は、再エネの導入負担、政府介入による電力取引所の運営の不適切さ等々の問題があり、また料金高止まりも目立つ。予備率の考えは、従来8%程度であったが、経産省主導で3%目標となり、その数値に近づいた結果、電力供給危機宣言である。この改革は、明らかに政治・経産省主導の間違いである。

4,思えば、電力システム改革の本質を問う議論もあった(南部鶴彦「エナジー・エコノミクス第2版」17年5月)。日本における9電力・地域独占廃止に対する根本的な困難を指摘している。

電磁気学の法則に沿えば、安定性で発送電一貫体制が合理的かつ自然あること。且つ発送電一体の相互連結が、限界費用に基づく発電の効率性を確保するうえで優位であること。

発送電分離の入札制度では、市場取引費用の最小化とならず、効率性喪失となること。限界費用料金は、ベース時間帯の赤字を招き投資回収が困難になるため、二部料金制(固定と変動の組合せ)が合理的であること。発送電分離なら、ホールドアップ問題(不確実性)が発生し、リスク回避で過少投資となり、予備力低下を招き、且つ供給義務の所在が不透明なため、安定供給が覚束なくなること。容量市場(予備力)を、市場メカニズムで確保することは、需要曲線と供給曲線が明確でないと価格付けが困難で、政府の恣意的な需要曲線では、発電増設のインセンテイブがわかないこと等を指摘した。垂直統合=独占=悪という単純発想は、垂直統合の相互連結と発送電のコンビネーションの合理性を無視していることを検証している。

電力という通常の商品と違う「電場(同時同量)」の供給に相応しい供給体制は、供給責任の明確化、地域独占、発送電一体の経営形態、第三者アクセス容認、2部料金制、総括原価、公的なコスト監視の仕組みがより適切であり、公益事業体制は合理的な解であると述べている。

新自由主義・市場重視というお題目で改革という美名の下実施された電力システム改革(電力自由化=小売り自由化+発送電分離+官支配電力広域的運営推進機関+官製日本卸電力取引所+取引への官の介入)は、もう一度範囲の経済・自然独占の原点に立ち返り、公益事業・地域独占・総括原価という電力体制の振り出しに戻り再考すべきである。

5,この30年間の政治経済社会改革(含む構造改革)の推移をみると、多くの政策で当初の狙いは良さそうに見え、マスコミ報道に煽られ、国民の一部不満が過大評価され、実施に移されたものが多い。長期的に見れば、見込み違いで、当初の思惑とは異なる結果となっている。

例えば、政治では選挙制度変更(小選挙区)、行政面の政治主導(忖度日常化)、成長期待の財政再建(成長なくして財政再建なしで財政破綻状態)、金融緩和による経済活性化(日銀B/S肥大化のみ)、経済成長狙いのモットー政策(改革なくして成長なし、三本の矢等の無理論・現実無視)、金融制度改革による金融機能低下、投資家重視の企業ガバナンス改革による企業活力の削弱等々枚挙に暇がない。

電力システム改革も、作られた市場(改革後電力システム)で競争による効率化コストダウン、自発的な電源投資は生起しなかった。安定供給義務の廃止で期待された市場機能は安定供給に寄与しなかった。リスク最小化、利潤追求の企業行動から見れば当然の結果である。商売上一定価格で販売が確実なFIT制度利用の再エネは活況を呈したが、不確実性の高い電源投資を抑制することは当然である。電場(同時同量)の提供という特殊性からくる供給の安定性を確保するには、地域独占・料金規制・供給義務を課すことの方が現実に適していたということであろう。

様々な構造改革は、本来必要か否かの理論的詰めが少なく(根拠の調査報告書稀有)、米国要求対応で進められてきた経緯がある。政治主導の実体無視で官僚の思惑と「ためにする議論」が好きな御用学者の空論が、歴史的かつ自然発生的な民間市場を荒廃・歪曲する構図を演出した。

このような構造改革に伴う負の連鎖の見直しも新しい資本主義を掲げる岸田政権の経済政策の課題であろう。それが経済の安定、そして成長の鍵となる。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

【住宅】具体的な省エネ政策 曖昧な再エネ政策

【業界スクランブル/住宅】

今年8月に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」が公表された。内容は省エネ、再エネに分けて説明されている。「あり方」に関しては、省エネは2030年には新築で、50年にはストック平均でZEH・ZEB基準の省エネ性能を確保するとの具体的な目標が記載されているのに対して、再エネは、30年は「新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入される」、50年は「導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入が一般的となる」とやや抽象的な表現にとどまっている。

「進め方」に関しても、省エネはボトムアップ対策では「省エネ基準への適合義務化」、ボリュームゾーンのレベルアップ対策では「建築物省エネ法に基づく誘導基準等をZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能に引き上げ、整合させる」、トップアップ政策は「ZEH+やLCCM住宅などの取組の促進」、と具体的な方向が示されているのに対して、再エネは、「将来における太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の一つとしてあらゆる手段を検討し、その設置促進のための取組を進める」とのことで公表段階では具体的な方向はまだ定められずと受け取った。カーボンニュートラル実現には再エネ導入は不可欠であるが、再エネに関しては誤解による否定的な意見もある中で、特に住宅用太陽光発電に関しては、適切な情報発信・周知を建築主への伝達する仕組みの構築し、建築主に理解してもらうことが再エネ拡大の原点になると考える。

この資料を読んで最も心配なのは、国土交通省の役割は「住宅・建築物分野における省エネルギーの徹底、再生可能エネルギー導入拡大に責任を持って主体的に取り組む」という記述である。行政トップの強い要請で記載されたと漏れ聞くが、「再エネ」と「国交省」の組み合わせには違和感がある。具体的にはZEHの3省合同体制の延長で運営されるものと推察するが、カーボンニュートラルのために省庁の垣根を超えた総合的な取り組みを期待する。(Z)

【太陽光】一定規模で導入増 RE100に期待

【業界スクランブル/太陽光】

資源エネルギー庁はFIT制度開始以降、3カ月ごとにFIT案件に関し導入量を発表している。この資料を集計すると、2012年度939万2000kW、15年度916万kW をピークに導入量は減少したが、18~20年度までの3年間は毎年約570万kW前後で推移している。特に20年度は10kW以上50kW未満の低圧設備に自家消費30%以上の要件が付け加えられたため導入量は減少したが、未稼働案件の稼働が増えたことによる2000kW以上の特別高圧設備の導入量が増加したことにより、全体の導入量は19年度と比べ若干増加した。業界の外部の人たちからは、コロナ禍の影響やFIT価格の値下がりも加わって20年度の導入量は減少しているのではとの声もあったが、このデータを見る限り脱炭素に向かって太陽光発電設備の導入量は一定の規模を維持していると思える。

第六次エネルギー基本計画では、菅義偉前首相のカーボンニュートラル宣言を受けて36~38%までに引き上げる目標を掲げている。その中で主力電源となる太陽光発電は6400万kWから1億2000万kW程度まで大幅に導入量を拡大する必要が出てきた。経済産業省の審議会などで導入量引き上げは難しいとの意見が出ているが、FITの設備導入状況のデータを見る限りは、22年からのFIP導入を控え、発電側課金などの政策の方向性が決定されていない現状でも、太陽光発電設備を導入しようとしている事業者の意欲は旺盛であると思える。改正温対法や、今後検討されるであろう再エネ導入を後押しする政策などがさらなる太陽光発電設備の導入につながっていくと考えられる。

ここ最近増加している脱炭素を目指す企業、例えばRE100企業による太陽光発電設備を使った電気の自家発電自家消費やPPAはFIT制度に頼らない再生可能エネルギー導入の切り札になりうると思える。政府は企業の自家発電自家消費やPPAの拡大を後押しする政策を進め、再エネ賦課金による国民負担の低減を図るとともに、電気を使用する事業者が自ら脱炭素に動く太い流れを作っていってほしいと願う。(T)

【再エネ】原子力出力制御 本格的に検討を

【業界スクランブル/再エネ】

第六次エネルギー基本計画(案)を読み込んでみると、当に電力システムのパラダイムシフトとも言うべき時代にきていると感じる。

戦後日本政府は、早期復興を優先するため、全国9エリアで地域の電力会社が発電、送電、配電の全てを担う画一的電力システムを作り、主要電源は水力中心→火主水従→原主火従と変遷してきた。ただし1996年の京都議定書発効から、本格的に温暖化対策を意識したエネルギー政策が必要になり、2011年の東日本大震災と福島原子力発電所の事故以降は、3E+Sの方針の元、抜本的な電力システム改革を進めてきた。

今般のエネ基では、“野心的”と形容詞が付くほど高い30年の再生可能エネルギー導入目標が設定され、官民学を総動員してその導入促進策を議論し、同時に電力システム改革、脱炭素化、自給率向上、そして原子力のさらなる安全確保を進める内容である。その一方、改正再エネ特措法の施行により、これまで優遇措置を受けてきた変動再エネの風力・太陽光発電は、固定価格買い取り制度、インバランス特例の廃止などにより、一般市場への統合を目指す必要があり、これまで以上に精緻な事業計画、事業規律の元での安定した事業を進める事が要求される。また、既に九州電力管内では、太陽光発電の大量導入により、春秋好天時の軽負荷時間帯には出力を抑制制御する状況になっており、調整力の確保のため、政府はEVの充電時期を活用した需要側制御も含めた対応を検討している。

再エネ大量導入に伴う電力システムのさらなる変革が避けられない中で、ベースロード電源と呼ぶ原子力は出力制御しないままで本当に良いのだろうか。原子力の再稼働が叫ばれる中、最終処分方法と並行し、原発の出力制御も検討するべきである。再エネ導入で10年以上先を走るドイツでは、04年に原電の出力制御を実施済みである。日本国内でも、原発の導入が盛んだった1980年代には出力制御が検討された経緯もあり、新技術開発と合わせてしっかり検討するべきと考える。(S)

【メディア放談】選挙とエネルギー問題 政治の季節にエネルギー危機

<出席者>電力・石油・ガス・マスコミ業界関係者/4名

自民党総裁選に衆院選と、世の中の話題は政治一色となった。
一方で、化石燃料価格の高騰が、生活・産業を脅かそうとしている。

―自民党総裁選、衆議院選挙と「政治の季節」が続いた。エネルギー環境問題も争点の一つになっている。

電力 総裁選では、河野太郎氏の「核燃料サイクル中止」発言があり、原子力事業についてマスコミの注目度が高まった。中止の是非はともかく、世間が原子力や核燃サイクルについて目を向けて、考える機会になり、良かったと思っていた。

 ところが衆院選に入ると、一気に関心が薄れてしまった。地方電力の人たちに聞いても、「エネルギー問題は争点になっていない」と言っている。新型コロナウイルスは収束の兆しが見えたが、依然、景気は悪く、商工業だけでなく農林水産業も疲弊している。やはり、今はエネルギー問題は二の次のようだ。

ガス 自民党の選挙戦略も影響している。党内には今も原発の新増設、リプレースに強くこだわる議員がいる。だが、国民的に不人気な原子力の政策は、選挙ではなるべく触れたくない。それで、新増設を明記しなかったエネルギー基本計画を閣議決定して、とりあえず来年7月の参院選まで、政府はこの方針のままでいく考えだ。今の基本計画なら、公明党も文句は言わない。

 ただ、参院選後は分からない。岸田文雄首相が所信表明演説で「クリーンエネルギー戦略」と言い出したことに注目している。「グリーン」ではなく「クリーン」とした意味は何か。永田町界隈では、「原発はクリーンエネルギー。新増設を進めることだ」と見ているようだ。

石油 それで原発再稼働が進めばいい。だが、柏崎刈羽がいい例で、いくら政府が力を入れても、立地地域の事情を見ると楽観的には考えられない。

 今、ものすごい勢いで、世界中で石炭、石油、天然ガスの価格が上がっている。産経論説委員の井伊重之さんが、「化石燃料の逆襲が始まった」(10月10日)とのコラムを載せて、電力危機が起きた中国の事情を紹介して、日本での電力やガス料金の高騰に警鐘を鳴らしている。

 1973年に第四次中東戦争が起きてオイル危機が起きた。今は、それに次ぐエネルギー危機が起きかねない状況だ。残念なことに、そういった記事が他の紙誌ではあまり見られない。

電力・ガス高騰は必至 再エネで何とかなるか

―行き過ぎた脱炭素政策と自由化の弊害が出始めている。

マスコミ まさに自業自得だ。天然ガスのスポット価格が昨年の同じ時期に比べて10倍に膨れ上がった。当然だ。どの国も脱炭素政策に力を入れれば、火力発電の燃料を石炭から天然ガスに代える。

 自分の国に膨大なガス田がある米国、ロシアのガスに依存できる欧州はまだいいだろう。石炭からガスに転換している中国も、一方で猛烈な勢いで原発開発を進めている。だが、原発依存度の低減を目指しながら、老朽化した石炭火力を止めざるを得ない日本はどうすればいいんだ。今の温暖化防止政策では、天然ガスの「一本足打法」にならざるを得ない。

―いずれ再エネで何とかなる、という人もいる。

マスコミ 一般の人たちは、電力のロードカーブ(電力負荷曲線)が分からない。だから、「再エネが普及すれば、何とかなるんじゃないか」と言う。確かにこの国が1年中、5月のゴールデンウィークのような非需要期ならば再エネだけでいい。しかし、そんなわけにはいかない。

 朝日、毎日、日経などの編集幹部は、そういう事情が分かっている。それでいながら、再エネのメリット・デメリットを読者に伝えず、「開発を急げ」と繰り返している。おそらく、これから冬、夏に電力料金は跳ね上がる。最悪、計画停電もあるかもしれない。その時に、某与党代議士のように「再エネの普及が遅れたからこうなった」と書くようなら、無責任極まったとしか言いようがない。

―業界関係者としては専門紙に期待したいが。

電力 岸田首相が衆議院を解散した10月14日、電気新聞は一面でエネルギー・環境を巡る各党ごとの政策を表にして掲載している。原子力政策の違いがよくまとまっていた。

バラマキ批判の狙いは 原子力で同じ構図も

―話は変わるが、財務省の矢野康治事務次官が文藝春秋に寄稿した「バラマキ批判」の記事が話題になっている。

電力 衆院選前の各党の「大盤振る舞い」を見かねてのことだろう。岸田首相の派閥「宏池会」は、もともと財政規律を重視するグループ。それに岸田さんは政調会長の時、コロナ禍で生活に困っている減収世帯などへの30万円給付案を、公明党の強力な横車で一律10万円給付に変えさせられたことがある。

―その10万円は、使われずに多くが貯蓄に回ってしまったといわれている。

電力 岸田さんの面子がつぶされだけでなく、生活困窮者の支援や景気向上にもあまり役立たなかった。公明党はまた、18歳以下の子供に一律10万円給付と言い出している。衆院選前なので岸田さんも同意せざるを得なかったが、寄稿は首相側の意向も踏まえて、公明党をけん制する狙いもあったのではないか。

ガス ただ、矢野さんは菅義偉前首相のひきで次官に就いた人。「どうせなら、菅政権の時に言ってくれよ」と思った。

―自民党、公明党の間には原子力発電の新増設・リプレースなどでも同じような構図がある。経済産業省にも矢野さんのような役人がいればいいが。

【石炭】CNへ現実的方策 最適技術の結合

【業界スクランブル/石炭】

9月5日のクリーン・コール・デーに併せて、今年も国際会議が行われた。石炭フロンティア機構(旧石炭エネルギーセンター)主催、NEDOJOGMEの共催で、日本はもとより米国、インドネシア、豪州などの各国政府・国際関係機関、企業・学術関係者などによる講演が行われた。次に会議の趣旨を紹介する。

カーボンニュートラル(CN)を2050年もしくはそれ以降に達成する目標を世界各国が掲げている。しかし、その国の実情や自然条件や地理的条件、経済性条件などの異なる状況においては、全ての国がCNを達成するのは困難だ。また再生可能エネルギー技術の導入を推し進める中、再エネだけで電力を賄うこともなかなか難しい。今後もなお多くの国々では、現在使用している化石燃料、特に埋蔵量が多く安定して供給が可能な石炭を使わざるを得ない。

CNにおいて重要なことは、極力CO2排出を押さえるとともに、排出されたCO2を実質的にゼロにすることである。「石炭を使わない」という意味ではない。再エネ導入を最大限に推進しながら、非効率な石炭火力発電所のフェードアウトを進め、それ以外の発電所に対しては徹底したCO2低減策を講じることが必要だ。具体的には既設の石炭火力発電でのバイオマス、アンモニアの混焼、専焼火力への転換など、CO2低減策、さらには発生したCO2回収・利用・貯留(CCUS)が挙げられる。

その国の実情や自然条件、地理的条件、経済的条件によりCNに向けた最適な技術の組み合せを見つけることが各国の現実的なCNの解になるのではないだろうか。そのような新しい石炭の使い方、CCUSによるCO2削減により、CNに貢献する進化し拡大した広義の革新的なクリーンコールテクノロジー(Innovative CCT)を社会実装に向けて最大限に利用していくことが、今後の世界の石炭火力の新しい道である。

全体としてそんな趣旨だったが、全くその通りであろう。異論を挟む余地は見当たらない。(C)

3億kWの太陽光発電の導入 日本の風景はどうなるか

【リレーコラム】加藤丈佳/名古屋大学未来材料・システム研究所教授

小生は、毎年年末に実家で餅つきをする。朝6時から竈の火を起こし、二升のもち米を蒸し、石臼で10枚位をつく、家族総出で一日がかりの行事である。火の番は小学校高学年の頃から息子の担当であり、今や薪の燃やし方(燃料の扱い方)は小生よりも上手い。薪は、祖父が生前にどこからか調達した廃材などをこつこつと割って備蓄したものであり、ごみ焼却所行であったはずの廃材を、餅つきの燃料と言う付加価値をつけて、使えているのではないかと考えている。

今は新たな薪の調達はないが、備蓄量はあと10年分位ある。これだけあれば、大災害が発生して電気やガスの供給が途絶えても、一週間は湯を沸かしたり、暖をとったりできそうである。発電用にスターリングエンジン発電機を購入しようかと考えなくもない。

もっとも、都市部において薪の備蓄がある住宅はほとんどなく、災害時のエネルギー供給源として思い浮かぶのは太陽光発電(PV)である。卒FITのPVも出始めており、自家消費率を上げるために電気自動車や定置用蓄電池を導入する場合も増えるであろう。さらにカーボンニュートラルが実現する状況であれば、各住宅の屋根にPVが設置され、自立分散的に災害時の電力供給源を確保できるかもしれない。

どのような導入が望ましいか

山間部の集落であれば、災害時に燃料となる木材を確保できそうだが、ここでも災害時のエネルギー供給源の主役はPVかもしれない。環境省の再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報によれば、耕作放棄地のPV導入ポテンシャル(レベル3)は8000万kWに達する。環境共創イニシアチブの「地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業」では、こうしたPVなどを活用し、災害等による大規模停電時に電力供給を継続できる地域マイクログリッドの構築が検討されている。先日、同事業に参画する山間の自治体に行き、民家に隣接する耕作放棄地にPVが点在する光景を見てきた。同様の光景はあちこちで見かけるが、まだ違和感がある。他の自治体で、緩やかな北斜面に逆バンクをつけて設置した設備を見たこともある。

カーボンニュートラルを実現するために3億kWものPV導入が必要との試算もある。しかし、無理な導入が増えると、導入適地の理解が得られなくなり、目標達成が難しくなるのではないか。3億kWの導入時にはどのような光景が広がっているのかについてしっかりとしたイメージを持ち、望ましい導入のあり方を議論することが重要であろう。

かとうたけよし 1996年3月名古屋大学大学院工学研究科にて博士(工学)を取得後、同大学理工科学総合研究センターエネルギーシステム寄附研究部門助手、国際応用システム分析研究所(IIASA)研究員などを経て、2015年4月より現職。

次回はENEOS中央研究所の古関恵一さんです。

【石油】コスト上昇は不可避 エネ転換に痛みあり

【業界スクランブル/石油】

英国グラスゴーで第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が始まった。今回は、各国の排出削減貢献量(NDC、国別貢献目標)と石炭火力発電所が焦点になるという。行き過ぎた議論にならないことを祈るばかりである。

ただ、最近の国内報道を見ていると、ひところの脱炭素歓迎一色から、慎重な論調も見受けられるようになった。注目されるのは、乗用車の電動化の問題点として、エンジン自動車から電動化で部品点数が半減されるため、自動車関連の就業者540万人のうち、製造に係る約100万人の雇用が懸念されるとする報道であった。

エンジン技術は産業技術の中核であり、多くの中小企業が関わっているが、バッテリーとモーターのユニット化で、産業構造は大きな転換を迫られる。それだけではない。自動車整備業界やガソリンスタンド業界の業態・雇用に係る問題もある。

また、自動車業界の主張である現在の火力依存の電源構成では電動化は脱炭素にはならないことや、製造から廃車までのライフサイクルアセスメント(LCA)の排出量が大きく変わらないことも、報道されるようになった。非化石電源中心のヨーロッパと日本では、乗用車電動化の意味は大きく異なる。

仮に、電源の脱炭素化(CCS付火力発電所を含む)に成功し、化石燃料の電化が進むとしても、カーボンニュートラル実現には、産業用燃料などの水素化・アンモニア化・バイオ化、さらには、化石燃料の消費が残る部分の森林吸収源・CCUS(CO2回収・利用・貯留)による相殺・吸収も必要であり、依然、課題は山積している。

いずれの対策も、電力料金をはじめエネルギーコストの上昇は明らかであり、国民負担の増大も懸念される。フランスでは、自動車燃料への炭素税課税問題を契機とする「イエローベスト」運動の前例もあり、政治的に強行されたカーボンニュートラルだけに、政治的にそれがどこまで支持されるかが疑問である。(H)

【田村麻美 国民民主党 参議院議員】常に働く者の視点で

たむら・まみ 1999年同志社大学神学部卒、ジャスコ(現イオンリテール)入社。2017年UAゼンセン役員、19年参院議員(当選1回)。参院資源エネルギー委員会理事。

スーパーマーケットの店頭に立っていたが、働く者の待遇改善を求めて国会議員に。
脱炭素化政策を進める中でも、「雇用と地域コミュニティーを守ることが大切だ」と訴える。

子どものころから、日常の生活に密着したスーパーマーケットの仕事に、人一倍の愛着を感じていた。大学を卒業すると、就職先として迷うことなく大規模小売店を選択。ジャスコ(現イオンリテール)に入社した。

食料品売り場などのフロアに立つ日々。自ら知恵を絞って店頭に並べた商品が献立を豊かにし、消費者に喜ばれる仕事にやりがいを感じていた。「将来は店長になりたい」。こう夢を膨らませた。

ところが、思わぬ壁にぶつかる。当時、全国に転勤のできる社員しか店長にはなれない社員区分の規定があった。2001年、職場の同僚と結婚。転居を伴う異動はしない社員区分へ変更をせざるを得なかった。働く者が将来の道を断念しなければならない規定を何とか変えたい――。

労働運動に関わるきっかけだった。06年からは専従役員として、組合活動に専念することに。17年にはUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)の役員にも就いた。

スーパーマーケットには、社員と同じように働きながら、社会保障などの待遇面で大きな差があるパートタイマーが多く働いている。「改善するには、国の制度を変えなければいけない」。働く者の処遇を改善しようと奔走する姿が、UAゼンセン幹部の目にとまった。参議院選挙への出馬を打診され、19年7月の参院選比例区に国民民主党から立候補。26万324票を得て初当選を果たした。

パートタイマーの多くは、社会保険制度の第3号被保険者(配偶者の収入で主として生計を立てている)として働いている。パートでの年間収入が130万円を超えると、配偶者の扶養が適用されず、保険料を支払わなければならない。

そのため、仕事に生き甲斐を見出しながら、自ら労働時間を制限するパートタイマーが少なくない。少子・高齢化社会を迎え、今後、確実に労働人口は減っていく。その中で、熱意を持って自分の仕事に取り組む人たちを守っていかなければならない。国会議員となり、社会保険制度の見直しが大きな政策課題になっている。

もう一つ大きな課題がある。小売り業で働く者をカスタマーハラスメントから守ることだ。自身にも苦い経験がある。食料品売り場でパンコーナーの責任者だった時のこと。パンが値引きの対象でなかったことに腹を立てた買い物客から、約1時間、罵詈雑言を浴びせられた。何とか耐えたが、悪質なクレーマーの対応をすることで、トラウマを抱えたり、退職してしまう同僚もいた。

消費者教育推進法という法律がある。消費者の利益を守り、同時に消費行動が社会・経済・環境に影響を及ぼすことの自覚を促すことなどを目的とする。「この法律を改正し、カスタマーハラスメントの抑止にむけた教育を盛り込みたい」。政治家として、ぜひ実現したいと力を込めた。

CCUSの技術確立に期待 脱炭素化で雇用と地域を懸念

参院資源エネルギーに関する調査会に所属して約1年がたつ。今年、策定作業が行われたエネルギー基本計画では、原子力の位置付けが大きな焦点になった。国民の間で意見が分かれる原発については、「推進するにしても、安全性の確保をどう国民に伝えるかが課題。国民が求めているのは信頼に基づく安心。政府が説明をし尽くして信頼を得ていくしかない」と考えている。

菅義偉前首相が打ち出した「2050年カーボンニュートラル」に異論はない。だが、総額2兆円のグリーンイノベーション基金については、「温暖化対策のあらゆる技術で革新を追求するとしたら少なすぎる。有望なものを選択して、資金を集中すべきだ」と不満がある。期待するのは、CCUS(CO2回収・利用・貯留)でのイノベーションだ。UAゼンセンには帝人、旭化成、東レなどの化学会社、東洋紡、カネボウなどの繊維会社も加盟している。それらの企業人と交流する中で、国内に製造業を残すためにも、CCUSの技術を確立することが欠かせないとの思いを強くした。

国として脱炭素化を進める中で、今後、非効率な火力発電所が廃止となり、太陽光・風力発電などに置き換わっていく。懸念しているのは、その時に雇用が守られ、地域の衰退を防ぐことができるか、だ。「労働者と地域のコミュニティーを守ることを大切にしなければならない」。労組出身議員として、こう強く訴えていくという。

国会議員としては珍しい神学部の卒業生。「うちは曹洞宗。キリスト教とは無縁」というが、労働者が抱えるさまざまな問題について熱く語る姿からは、日々真剣に働く人たちへの確かな愛が伝わってくる。

【火力】エネルギーの不足 気候変動より脅威

【業界スクランブル/火力】

第六次エネルギー基本計画の素案が示されてから3カ月、その間国際的にはCOP26やG20サミットを控え、また国内では自民党総裁選から衆議院議員選挙に向かう中で、エネルギー問題に大きな注目が集まっているものの現実味のある仕上りとは言い難い。

2030年温室効果ガス46%削減、50年カーボンニュートラルという目標は、政治的スローガンとしてのインパクトは充分であるが、その派手な部分にばかりに目を奪われてしまい、目標実現のための具体的方策の検討が一向に進まないことを危惧している。カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギーを増やし、一方でCO2を排出する火力発電を減らしていく流れはよいとしても、こんな大雑把なやり方で複雑なエネルギー問題を上手く解決しきれるはずもない。

現状、日本の発電電力量に占める化石燃料の割合は4分の3程度であるが、世界全体でみても未だ6割強が化石燃料に依存しており大きな差異はない。仮に火力発電をいきなり止めてしまったら、過半の供給源が失われることになり、たちまち電力危機に陥ることになる。再エネの普及が進んだ九州地方などでは、再生可能エネルギーが余剰になり出力抑制をすることが増えているが、1年8760時間を通してみると、余剰になる時間帯はほんのわずかであり、再エネだけでは全然足りず火力や原子力などの安定電源に頼らねばならないのである。

このように言うとタチの悪い脅しのようであるが、欧州や中国でも脱炭素の圧力の中で天然ガスの価格高騰や電力不足が目の前で顕在化している。わが国でも昨冬の需給ひっ迫が問題になったが、世界的な脱炭素の潮流が影を落としていたのは間違いない。

気候変動が脅威というのであれば、難しくても複数の脱炭素シナリオを試行錯誤していく必要がある。だからと言って、目の前でエネルギー不足を引き起こすシナリオは、その時点でサスティナブルであるとはいえない。エネルギー不足は、人類にとって気候変動以上の脅威になるということを忘れてはならない。(S)

崩壊熱でなく冷水注入が引き金に 炉心溶融の真因を探る

【福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.8】石川迪夫/原子力デコミッショニング研究会 最高顧問

TMI事故・福島事故で起きた炉心溶融の原因は何だろうか。
原子炉停止後の崩壊熱で起きるとの学説には、疑問符が付く。

炉心溶融は、これまで原子炉停止後の崩壊熱によって起きると教えられてきたが、この学説は怪しい。崩壊熱は停止直後こそ大きいが、1日たてば10分の1に減衰する弱い発熱だ。高温になるにつれて巨大化する輻射放熱に抗して、炉心を熔融させる力はない。この間違いを明確にしておかないと今後の話が読者を混乱させる。炉心溶融説についての問題点を述べ、次いで誤りを正した説を述べる。

ジルカロイが水・蒸気と反応 炉心溶融は簡単に起きず

福島事故全体の共通点といえば、炉心溶融と水素爆発(2号機は水素放出)だ。なぜ溶融と爆発が共通して起きたのか、その解明が本論解決の鍵となる。
爆発を起こした水素量は炉ごとに違うが、おおむね数百㎏といわれる。これほど大量の水素をつくる手段は化学反応しかない。原子炉にはこの化学反応が起きる理由が存在し、事故過程で顕在化したに相違ない。金属は一般に、高温になると水と反応して水素を発生する。原子力材料で水と激しく反応する金属といえば、燃料の被覆管、ジルカロイがその代表だ。TMI事故もチェルノブイリ事故も、爆発はジルカロイ・水反応による水素発生で起きた。
ジルカロイは、温度800℃くらいから水や蒸気と反応を始め、温度上昇につれて反応が激しくなる。反応熱は大きく586KJ/Molもある。この熱量を目安で示せば、仮に燃料棒を包む被覆管が全て反応したとすれば、中にある二酸化ウラン(UO2)ペレットが溶融する熱量の約2倍に相当する。炉心溶融は熱量的に十分に可能だ。
炉心から水がなくなると、炉心温度は崩壊熱で上昇する。高温でのジルカロイ・水反応は激しいから、反応が起きると大量の水素ガスが一時に発生する。ジルカロイ・水反応(ジルカロイ燃焼ともいう)は、溶融、爆発の両方を兼ねる。
その実例が、8月号で述べたTMI事故だ。TMI事故では、高温の炉心に冷水を注入した途端に、原子炉圧力が80気圧から150気圧に、一気に上昇した。その間わずか2分だ。炉心に大発熱が起きたことは確かで、直後に炉心溶融が起き、水素爆発が発生した。
表は冷水注入と爆発の時刻を示したものだ。ご覧の通り、福島事故もTMI事故も、炉心に冷水を注入した後に水素爆発が起きている。表は、冷水注入によってジルカロイ・水反応が発生し、炉心溶融が起きたことを示している。

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冷水注入と爆発の時刻


ここでジルカロイ・水反応の説明に入る。ジルカロイが酸化すると、管表面は薄い酸化皮膜で覆われて黒色に変わる。この黒い皮膜が、炉心溶融を操る黒幕なのだ。
ジルカロイの酸化皮膜は組織が緻密で、水や蒸気の透過を容易に許さない。加えて強靱で、その融点は2700℃と非常に高い。従って、この皮膜に守られた燃料棒も強靱だ。米国のPBF(Power Burst Facility)実験PCM―1では、出力を定格出力の約3倍とし被覆管温度が1500℃の状態で15分間保持したが、その間燃料棒は体形を崩さず、林立状態を保っていた。
燃料棒温度が1000℃くらいに上昇すると、柔らかくなった被覆管は原子炉圧力に圧されてペレットに密着する。その表面に生じた強靱な被膜は燃料棒を締め付けて変形を阻むから、燃料棒は体形を保つと考えられる。炉心溶融は簡単には起きないのだ。
だが、酸化皮膜にも弱点がある。温度が200℃くらいになると膜は脆くなる。その結果、高温で形体を保っていた燃料棒は、実験後に被覆管が壊れて、燃料棒はバラバラになって出てくる。冷えて収縮しようとする酸化膜を、まだ温度の高いペレットがそれを許さないので、脆くなった皮膜にひびが入り、締め付け力が失われる結果、燃料棒は壊れてバラバラになる。これがデブリで、燃料実験で常に見られる現象だ。
炉心溶融に話題を戻す。問題は、酸化膜にひびが入る時の燃料棒の温度だ。いま仮に、燃料棒温度が1200℃だったとする。この状態で冷水を注入すると皮膜が壊れて、これまで被膜で保護されていた高温のジルカロイが水と接触でき、燃料棒の溶融が始まる。炉心溶融の始まりだ。
だが、燃料棒温度が700℃の時は何ごとも起きない。700℃のジルカロイは水と反応できないから、燃料棒が壊れて、多少の放射能が出るだけだ。
述べてきたように、炉心溶融の発生は、冷水注入時点での燃料棒温度で決まる。これが炉心溶融についての新しい結論だ。

【マーケット情報/11月19日】原油下落、需給緩和観が強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。需給緩和の観測が一段と強まり、売りが優勢となった。

米国に加え、中国や日本など複数の国が、インフレ抑制に向けて戦略備蓄を放出する可能性が台頭。また、米エネルギー情報局は、12月の国内シェールオイル生産量が前月比で増加するとの見方を示した。さらに、国際エネルギー機関は、世界の産油量が11~12月に合計で日量150万バレル増加すると予測。OPECも、世界の原油在庫が12月から増加に転じると予想し、需給逼迫感を緩めた。

加えて、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表した国内の石油掘削リグの稼働数は、前週から7基増加し、461基となった。

一方、欧州の一部地域は、新型コロナウイルスの感染再拡大で、外出規制などを再導入。経済の冷え込みや燃料消費の減少による、需要後退の見通しが強まった。

米大統領は、エネルギー価格高騰を受け、連邦取引委員会に相場操縦の調査を要請。燃料価格の上昇が抑制されるとの見方も、価格の重荷となった。

【11月19日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=76.10ドル(前週比4.69ドル安)、ブレント先物(ICE)78.89ドル(前週比3.28ドル)、オマーン先物(DME)=81.07ドル(前週比0.72ドル安)、ドバイ現物(Argus)=81.19ドル(前週比0.19ドル安)