NEWS 01:FIP移行促す新たな措置 出力制御をFITから実施へ
資源エネルギー庁がFIT(固定価格買い取り)からFIP(フィードインプレミアム)への移行を促す新たな措置を講じる。早ければ2026年度から優先給電ルールでの出力制御の順番をFIT、次いでFIPとする方針だ。FIPは当面出力制御の対象とならない見通し。一方でFITの制御確率は高まる。
FITの出力制御確率は上がることに
FIPは再エネ電源の市場統合を図る制度で、収入は市場価格に連動する。価格が低い時間帯に蓄電し、高い時間帯に供給をシフトすることなどで収入を増やせる可能性がある。また、FIP電源はエリアで出力制御が発生していても指令対象とならない場合、その時間帯にプレミアムが交付されない仕組みで、需給バランスへの貢献度が高い。
ただ、23年度のFIP認定量は、太陽光ではFIT・FIP全体の約3割にとどまる。そのためエネ庁は、需給バランスへの貢献面でFITとFIPの公平性を確保すべく、8月7日の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小員会で今回の案を提示。優先給電ルールの見直しに加え、FIPへの移行が一定程度進むまで、蓄電池の活用や発電予測などの支援を強化する方針も示した。エネ庁案に対し、同日の会合にオブザーバー参加した太陽光発電協会の増川武昭事務局長は、「必要性と効果に疑問がある。案の通り進めることに賛同することは難しい」などと述べ、再考を求めた。
NEWS 02:膨れ上がる調整力コスト 送配電事業の収支に打撃
大手エネルギー各社の2024年度第1四半期決算が、7月末までに出そろった。多くの企業が過去最高の経常利益を記録するなど好決算だった前年同期から一転、大手電力10社のうち、四国、沖縄を除く8社と、東京、大阪、東邦の大手都市ガス3社が大幅な経常減益を余儀なくされた。この背景には、原・燃料費調整制度に基づく期ずれ差益の縮小があり、減益幅も想定の範囲内と言っていいだろう。
一方、浮き彫りとなったのは厳しい送配電事業の収支状況だ。北海道、東北、東京、中部、関西、中国、九州で経常減益。中でも関西は56億円の赤字(前年同期は158億円の黒字)となり、グループ全体の収支にも影響を及ぼしている。
これには、需給調整市場の入札不調により膨れ上がっている調整力の調達コストが大きく影響している。24年度に同市場で予定されていた全ての商品が出そろったが、多くのエリアで一週間前に取り引きする商品区分で募集量に対し応札量が大幅に不足する「未達」状態にある。それゆえに、価格が高騰し送配電事業者にとって大きな負担となっているのだ。7社とは逆に、エリア内の調整力の調達コストが低下した北陸、四国は経常増益となった。
電力業界関係者の一人は、「スポット市場同様、大手電力の発電部門に対し限界費用ベースの価格規律を押し付けていることが、この問題の諸悪の根源となっている。翌週の市場がどうなっているか分からないにもかかわらず、ほぼ利益もなしに1週間前の応札などあり得ない」と指摘する。
26年度には、現行1週間前に取り引きされている一次~三次①が前日取引に移行することが決まっている。その前に打てる手はないのか。
NEWS 03:SAFを身近な航空燃料に 環境価値の取引で魅力を認知
航空業界の脱炭素化につながる「SAF(持続可能な航空燃料)」の魅力を認知させる試みが動き出した。ENEOSや伊藤忠商事、日本航空(JAL)などの7社は8月、SAFの利用に伴うCO2排出量の削減効果を「環境価値」として取引する実証試験を始めた。次世代燃料を利用拡大に弾みをつける仕組みとして、今後の展開に注目が集まりそうだ。
成田空港(千葉県成田市)で始動したのが、温室効果ガス排出量を供給網全体で捉える「スコープ3」の環境価値をやりとりする試験。このプロジェクトには、日本通運の持ち株会社NIPPON EXPRESSホールディングス、成田国際空港、みずほ銀行、みずほリサーチ&テクノロジーズも参画した。航空輸送の関係者が一堂に会してこの種の環境価値をやりとりする試みは世界初という。
具体的には環境価値の販売情報と購入情報を、情報を集約するプラットフォーム(基盤)上で結び付ける。ENEOSや伊藤忠が成田空港にSAFを供給するとともに、CO2削減効果を証書にして基盤上で環境価値を提供。JALもSAFの使用に伴って発生する環境価値を届け、こうした価値を基盤を通じて運送事業者や旅客などが受け取るという。
SAFは従来の航空燃料と比べると高額なため、航空機のチケット代に跳ね返る可能性がある。CO2排出量の低い輸送や出張に価値を見い出したい買い手は潜在するとみられ、環境価値を伝える対応が求められていた。試験は12月まで進める計画で、その間に生み出される価値は最大で約160t(CO2削減効果)を想定している。SAFの供給体制づくりと並行し、空の脱炭素の切り札として身近な存在する需要面の工夫も求められている。
NEWS 04:「常陽」が再稼働へ前進 高速炉開発の巻き返しなるか
高速炉開発の巻き返しに向けた一歩となるか─。茨城県は8月2日、日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速実験炉「常陽」の再稼働に向けて原子力審議会を開催した。再稼働について「基本的に了承」と評価し、今後は茨城県と立地する大洗町が同意の上で安全対策工事が行われる見込みだ。
再稼働を目指す常陽
高速炉開発については近年、経済合理性の観点から計画を凍結・中止する国が相次いだ。日本も2007年に常陽が装置破損で運転休止、16年には高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定し、世界の「先頭集団」から脱落。先行するロシアや中国、インドは30年代の実用化を狙う。こうした中で専門家は「高速増殖炉とナトリウム流動の実験ができる施設を持つことは、日本の優位性を高める」と経済安全保障上の意義を語る。
政府は22年末、高速炉開発の巻き返しを図るべく、「戦略ロードマップ」を改訂。昨年7月に実証炉開発の中核企業に三菱重工を選定し、40年代半ばの運転開始を目指す。今年7月には、政府とJAEAが常陽の燃料確保に向け、新たな製造工場の新設検討を表明した。
既設炉の再稼働のみならず、次世代炉開発の前進も原子力政策の正常化に向けた重要なピースだ。まずはJAEAが「26年半ば」とする再稼働を実現し、実証炉の運開に向けた貢献に期待したい。