碧南火力発電所において、20%のアンモニア転換を成功させた。
火力発電のゼロエミッション化、そして洋上風力開発に注力することで、脱炭素と安定供給の両立に貢献する
【インタビュー:奥田久栄/JERA社長CEO兼COO】

志賀 碧南火力発電所4号機において、燃料の20%を石炭からアンモニアに置き換える実証試験を行いました。成果はどうでしたか。
奥田 4月1日に着火し、10日に100万kWのフル出力で20%の燃料アンモニアへの転換を達成しました。6月末まで約3カ月間にわたり試験を実施し、窒素酸化物(NOX)の発生を転換前と同等以下に抑制できたほか、一部欧州で問題になった温室効果の高い亜酸化窒素(N2O)も検出限界値以下であることを確認するなど、全ての試験を問題なく終えることができました。
100万kWの実機を使ってアンモニアを燃焼させる試験は、世界で初めての試みでした。試験結果も良好でしたので、今後は実用化の段階に入っていきます。早ければ2027年度に20%転換で4号機の商用運転を開始し、さらに5号機でも20%転換の商用運転を行うことを予定しています。
志賀 次世代燃料の中で、アンモニアがコスト面で最も有利なのでしょうか。
奥田 将来にわたって何が有利であるかは、今決められることではないと考えています。とはいえ、今の技術水準で実現可能なものの中では、間違いなくアンモニアは現実的な選択肢であると認識しています。技術は進歩していきますので、当社としても柔軟に考え方を変えていく必要があります。
複数プレーヤーと交渉 アンモニアを安定調達
志賀 サプライチェーンの構築にはどう取り組んでいますか。
奥田 LNGを導入した当初は、電力会社はサプライチェーンに関与せず単に購入するだけでした。ただそれでは、火力発電所の運用に合わせた売主との交渉や輸送船の調整といった柔軟な数量調整に対応できません。LNGの時の反省も踏まえ、サプライチェーン全体に対して一定程度マネジメントできる仕組みを最初から作ることが重要だと考えています。マーケットが目まぐるしく変化する中では、価格の決め方がより柔軟であることが望ましく、水素・アンモニアのサプライチェーン構築に自ら参画していきます。

北米では、アンモニア製造の世界最大手の一つであるCFインダスリーズやヤラ・インターナショナル、さらにはエクソンモービルなどと共同プロジェクトを検討しています。これは天然ガスから水素を生成する過程で排出されるCO2をCCS(CO2の回収・貯留)によって地中に固定化し、その水素から製造する「ブルーアンモニア」です。一方インドでは、再生可能エネルギー由来の電気で水を電気分解した水素で「グリーンアンモニア」を製造することを検討しています。インドは、急速な経済成長を背景に火力発電所の需要が高い一方、大規模な太陽光発電の開発にも積極的です。中東諸国をはじめ多くの国でアンモニアに注目していただいていますので、さまざまなプレーヤーと交渉しているところです。また、日本郵船、商船三井とともに大型アンモニア輸送船の開発、安全な輸送体制の構築などについて検討しているところです。