【事業者探訪】細谷地
LPガス販売を主軸に、地域に根差したライフラインサービスを手掛けている。
急速な人口減少という逆境下、収益力の向上と人材確保の両面で成長戦略を描く。
2013年に放送されたNHKの朝ドラ「あまちゃん」の舞台として人気の観光地となった岩手県久慈市。この地でLPガス事業を営む細谷地の歴史は、1952年に初代社長の細谷地倖助氏が、炭の粉末を丸めて固めた燃料「たどん」の販売を手掛けたことから始まった。
58年にLPガス事業に参入し、現在は電力小売りや灯油販売、ガソリンスタンド経営といったエネルギー関連事業と共に、家電販売店や携帯電話ショップ、レンタカーショップや道の駅での産直店、さらには農園の経営と、地域に根差したビジネスを幅広く展開している。
顧客数はLPガスが7200軒、灯油が3500軒、電気が1200軒ほど。電力事業では、同社も出資し17年に設立した地域新電力「久慈地域エネルギー」の「アマリンでんき」を家庭や企業向けに販売。22年に環境省の脱炭素先行地域に選定された久慈市は、海と山に囲まれた地形を生かした自然エネルギーに恵まれており、地域の水力発電や太陽光といった再生可能エネルギー由来の電気を供給している。22年の市場価格高騰をきっかけに、新規契約の開拓は停滞したままだったがようやく再開し、地産地消の電気を少しでも安く地域に供給できる環境が戻ったところだ。
未知の領域を開拓し 経営力向上に注力
「これまでは潰れない会社を目指してきたが、今は成長する会社づくりへと経営戦略を転換し取り組んでいる」と話すのは、3代目社長の細谷地茂陽氏。久慈市は過疎化が進む岩手県の市町村の中でも、4番目に人口減少率が高く、今後は地域経済の疲弊に伴う市場の縮小が避けられそうにない。こうした厳しい状況下であっても、企業としての持続的な発展を追求していこうという意思は固い。

その実現のために経営戦略の柱に据えるのが、「長期投資計画」と「働きがい改革」だ。新たな需要を創出し収益力を高めることに加え、魅力的な職場環境を作り優秀な人材を確保することは、成長に向けた大きな経営課題。今年は、新しい領域や分野を切り開いていこうという意味を込めた「フロンティア戦略」を掲げ、全社を挙げ経営力向上に挑戦している。
長期投資計画では、人口減少下で収益を伸ばすための鍵となる商圏と事業の拡大に取り組む。事業エリアを久慈市内にとどめず、隣接する盛岡市や青森県八戸市といったより大きな商圏で事業基盤を築くほか、事業の多角化をより一層、進めていく必要がある。また、他社との協業やLPガスの商圏譲渡案件が出た際のM&A、生産性向上のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)投資を積極的に行うなど、新たな収益チャンスへの種まきに余念がない。
「LTV(顧客生涯価値)」向上も、大切な取り組みの一つ。人口減少により、潜在的な顧客数が減っていくことは避けようがない。そこで、ガスのみならず電気、灯油、水、携帯電話といったさまざまな商材を取り扱いながら、デジタル、リアル双方で顧客接点を持つ頻度を増やす。それとともに、他社にはない商品・サービスの提供やアフターサービスの充実、社員への信頼感の醸成することで、顧客満足度や付加価値を高め、高収益モデルを築き上げようという狙いがある。「原点に立ち返りながら、お客さまとの円滑なコミュニケーションで信頼関係を築き、末永く当社と取引していただけるようにしていきたい」(細谷地氏)














