【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題
チャットGPTなど生成AIの普及は各産業分野で不可逆な存在となるが、グーグルなど一般的なインターネット検索が1件当たり0.3W時のであるのに対し、生成AIは約10倍の2.9W時とされ、電力消費量が激増している。
2023年、米国としては35年ぶりの新設原発となるジョージア州ボーグル3号機が稼働したが、一方、AIの膨大な電力需要に対応するため、GAFAMなどは、既存の電力供給に頼るのではなく、安定した独自電源、特に昼夜を問わず出力が安定し、CO2を排出しない原発に注目している。
特にマイクロソフト社は30年までに「カーボンネガティブ」を目指しており、昨年コンステレーション・エナジー社と相場の2倍近い1MW時当たり最低100ドル以上の固定価格で20年契約し、経済的理由で停止されたスリーマイル島1号機を27年に再稼働させ、発電所の名称変更も行う予定だ。1979年に部分炉心溶融事故を起こした2号機とは違い、1号機は事故と無縁で安全運転を続けた実績を持つが、退役した原発の再稼働という前例のない挑戦となる。4年の期間と最低16億ドルの費用、そして数千人の作業員が必要になる。さらにアマゾン社は2030年までに全ての購入電力をカーボンフリーにする予定で、ペンシルベニア州サスケハナ原発の広大な隣接地を取得し、直接電力供給を受ける形で最大960MW級のクラウド用データセンター(DC)を建設中である。一方、メタ社はイリノイ州クリントン原発から20年間の供給契約を締結した。
こうした流れはAI事業の拡大に必要な電力の確保に独自に動く本気度と、その需要に応じようとする米国電力会社の取り組みが読み取れる。
わが国でもDCの国内立地は欠かせない。GAFAMはおおむね日本国内でのDC拠点の増設を公表している。生成AIによる電力需要が急増すれば、電力不足は避けられない。DC整備に加え、安定稼働のための電力供給体制も重要だ。
現状の電力会社からの電力調達ではなく、独自電源の確保に動く場合、再稼働審査が進む泊や稼動中の玄海などの原発は、広い敷地や海水による冷却、高圧送電線といった条件を備えており、DCの立地として相性が良いとも言える。生成AIはあらゆる産業に波及し、各国の国際競争力の維持・強化のためにも欠かせない。しかし、生成AIの発展は電力不足を招来しエネルギー政策を破綻させる規模になり得るリスクも内包する。国家のエネルギー戦略の新たな視座が加わった。今後は、AIデジタル競争力とエネルギー安全保障を一体として考える政策が重要となる。
脱原発方針を決定し既に実行したドイツや台湾、一方、原発を推進する中国と米国。韓国は国内の政治の混乱とは裏腹に原発比率を高めつつ今年6月にはチェコへの原発輸出に成功した。各国のAIデジタル政策の今後を一つのエネルギー戦略の視座として注目したい。
(平田竹男/早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授・早稲田大学資源戦略研究所所長)








