【マーケット情報/10月14日】原油下落、需要後退の懸念強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。特に、米国原油を代表するWTI先物、および北海原油の指標となるブレント先物は、それぞれ前週比7.03ドルと6.29ドルの急落となった。需要後退の見通しが相次いで公表され、売りが優勢となった。

OPECは、今年と来年の石油需要予測を、前月時点から大幅に下方修正。今年の消費は、日量46万バレル下方修正の日量264万バレルと予想した。また、来年の見通しは、日量36万バレル下向きに修正し、日量234万バレルとした。背景には、中国におけるゼロコロナ政策の影響等、経済が冷え込んでいくとの見込みがある。また、国際エネルギー機関はOPECプラスの11月減産計画を受け、今年と来年の石油需要予測に下方修正を加えた。

加えて、米国ではインフレ率が一段と上昇。これにより、米連邦準備理事会がさらなる金利引き上げを図り、それにともない経済の減速と石油消費が減少するとの見方が台頭した。

フランスの製油所でストライキが続いていることや、米国の原油在庫の増加も、需給緩和感を強める要因となった。

【10月14日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=85.61ドル(前週比7.03ドル安)、ブレント先物(ICE)=91.63ドル(前週比6.29ドル安)、オマーン先物(DME)=92.06ドル(前週比2.18ドル安)、ドバイ現物(Argus)=91.76ドル(前週比2.38ドル安)

エネルギー価格高騰が直撃 ASEAN諸国の対応は

【ワールドワイド/経営】

ロシアのウクライナ侵攻を契機として、世界中で物価高騰が加速、その影響は、中・低所得国を抱える東南アジア(ASEAN)を直撃している。

顕著な動向として現れているのがエネルギー価格の高騰である。タイでは5~8月期、9~12月期の電気料金が2014年以来の最高値を2期連続で更新。同国では天然ガスの国内生産量の減少に伴い、海外調達への依存度が高まっており、LNGスポット価格の高騰が電気料金の急騰につながった。ベトナムでは輸入炭価格の高騰が引き金となって深刻な石炭不足が生じ、総発電電力量の半分を占める石炭火力が停電を引き起こすリスクが高まっている。インドネシアやマレーシアでは、価格高騰に対して政府がエネルギー資源への補助金を拡大、カンボジアは電気料金に対する補助金を増額し、国家財政を圧迫し始めている。

これに追い打ちをかけているのが、米国のインフレ抑制策(金利引き上げ)に伴うアジア通貨の下落である。ラオスでは、外資の民間発電所からの電力調達が外貨建てであることから、現地通貨安により電力公社の赤字が拡大し、政府の財政負担が増しており、悪循環に陥る懸念が強まっている。フィリピン・タイ・ベトナムでも現地通貨安が続いており、エネルギー価格の高騰に拍車をかけている。コロナ後の行動制限緩和で消費は堅調なものの、中央銀行の急ピッチの利上げが続いており、今後の景気への影響が懸念されている。

このように影響は国によって違いがあるものの、どの国の対応策も限界に近づいており、インフレと景気停滞が同時に発生するスタグフレーションのリスクも指摘される。ウクライナ危機は食料やエネルギー、金融などあらゆる部門に暗い影を落としており、世界的に経済状況が安定化するには長い時間を要するものと見られる。こうした中にあって、今後ASEANが進む方向は、短期的にはエネルギー資源の確保や資源輸出の規制強化、中長期的には「長期ASEANエネルギー見通し」の目標の通り、エネルギー自給率を高めるための再エネ開発やエネルギー効率化の促進だとされている。現在の状況を鑑みるに、この必要性がますます高まっている。

国際協調路線が大きく揺らいでいる現在、ウクライナ戦争が惹起した未曽有の経済危機を乗り越えるために、世界各国が共通に取り組むべき課題は多い。これらの課題にどのようなフレームワークを活用できるのか、今こそ人智が試されているといえよう。

(柳 京子/海外電力調査会・調査第二部)

スタートアップ企業と業務提携 「医療・ヘルスケア」の取り組み加速

【中部電力】

 中部電力が医療・ヘルスケア分野への取り組みを加速させている。ヘルステック・スタートアップ企業のUbieと協業に向けた業務提携で合意。同社が実施した第三者割当増資の一部を引き受け、株式を取得した。

Ubieは、毎月約700万人が利用する症状検索エンジン「ユビー」を展開。ユーザーは人工知能(AI)から生成される質問に答え、症状をチェックするだけで、関連する病名や近隣の医療機関を検索できる。医療機関向けには、患者の問診回答を事前に確認できるサービス「ユビーリンク」などを提供。全国約1万5000件の医療機関が導入している。

症状検索エンジン「ユビー」

8月には『Forbes』が発表した「Forbes Asia 100 To Wa-tch(アジア太平洋地域で注目すべき中小企業100社)」に選出されるなど、勢いのあるスタートアップ企業だ。

中部電力は医療・ヘルスケア分野において2020年9月、メディカルデータカードを連結子会社化した。同社はオンライン診療ツールの提供や、医療機関と個人の検査結果の共有など医療機関と患者をリアルタイムでつなげるサービス「MeDaCa」を開発・展開。医療機関と患者は、診察券、検査データ、処方箋、レントゲン写真、健康診断書などをウェブでいつでも閲覧できる。

問診から結果共有まで オンライン診療を一貫提供

子会社化以降は、慶応大学病院産科外来の「遠隔妊婦健診」を支援するシステムの運用を始めた。こうした遠隔健診サービスによって得たバイタルデータ(体重、血圧、脈拍などの生体情報)は、中部電力がクラウド上で保管。今年9月には、国内の半数を超える検査機関とシステム連携する予定となっている。

今後、中部電力とUbieはMeDaCaとUbieを連携することにより、医療機関を受診する一連の流れを、垣根なく一体的に提供する仕組みを構築する。症状のチェックから医療機関の検索、問診回答の共有、診察・検査、アプリを通じた検査結果の共有―などだ。

23年度には機能のさらなる向上を図る。中部電力グループが提供する連絡網サービス「きずなネット」や電気料金や使用量などをウェブで確認できる「カテエネ」と連携し、より利便性を高めていく方針だ。

両社は「さまざまなデータを活用し、医療・ヘルスケア分野での取り組みをさらに大きく発展させるとともに、暮らしを便利で豊かにするサービスをご提供することで、お客さまや社会とともに持続的な成長を実現していく」と新分野に意欲を見せている。

イランが国際的孤立打開も ウクライナ侵攻と核合意で

【ワールドワイド/資源】

 ロシアのウクライナ侵攻とイラン核合意交渉という二つの動きは、イラン石油ガス産業の国際的孤立を打開するきっかけとなる可能性がある。2018年5月に米国がイラン核合意から離脱して以降、外国企業はイラン石油ガス産業への参画を断念し、イランの油ガス田は引き続き国内企業によって操業されることとなった。制裁によりイランは石油増進回収(EOR)技術やLNG関連技術など、石油ガスの生産・輸出に必要な技術の恩恵を受けることができない。イラン国内企業はそれらの技術を有さず、外国企業の資金や知見も得られないため、石油の増産やガスの域外輸出に制約が生じている。この状況が、二つの世界的な出来事によって変化するかもしれない。

22年2月のウクライナ侵攻は、エネルギー市場を通じてイランにも影響を及ぼしてきた。欧米諸国によるロシアのエネルギー部門への経済制裁が強化されたことで、ロシアとイランは「原油輸出に関する制裁回避方法」に関する協力を進めているといわれる。また、イランが制裁回避を手伝う一方、22年7月に締結されたロシア国営ガスプロムとイラン国営石油会社のエネルギー協力に関する覚書において、ガスプロムはイランのガス田開発やパイプライン建設に協力することを表明した。今後、ともに被制裁国であるロシアとイランが、石油ガス産業で協力を進める可能性が高まっている。

22年9月初旬現在、EUが提出したイラン核合意「最終草案」に対する検討作業が進んでいる。核合意が成立すれば、イランの石油生産量が数カ月から1年以内に日量380万バレルまで回復し、外国企業が制裁を受けずにイランの石油ガス産業に参入可能となることが見込まれる。前回の核合意では、中国のCNPCやフランスのトタルエナジーズらが関心を示し、探鉱開発契約まで至った例もあった。核合意が成立した際には、イランが検討している中国、ロシア、中央アジア諸国、ペルシャ湾岸諸国などとの共同事業が早期に進展する可能性があるほか、EOR技術やLNG関連技術を持つ欧米企業との協力への道も開かれる。

イランはウクライナ侵攻と核合意交渉の行方次第でさまざまなパートナーを得る可能性がある。核合意が成立したとき、イランはロシアと欧米諸国のどちらとの協力を選択するか、または両方のバランスを取りながら協力していくのか。その選択はイラン石油ガス産業にとって、また世界の原油供給にとって重要な岐路になりうる。

(豊田耕平/JOGMEC調査部調査課)

「水素先端技術センター」を新設 次世代ディスペンサー開発を推進

【トキコシステムソリューションズ】

トキコシステムソリューションズはこのほど、静岡事業所(掛川市)内に「水素先端技術センター」を開設した。世界的なカーボンニュートラルの潮流の中で、水素利用はさまざまな用途で拡大していくと見られる。車両分野では燃料電池自動車(FCV)に加え、商用大型トラックなど市場の拡大が見込まれ、バス向けの車体をより大型化した物流向けFCVへの期待が高まっている。同センターでは、そういった次世代車両向けディスペンサーの開発に乗り出す。

開設した水素先端技術センター

次世代ディスペンサーでは、充填時間を小型FCVは3分程度、大型トラックは10分程度で済ませる充填時間短縮技術や、1台のディスペンサーで異なる車体サイズの車両に同時に水素を供給する充填技術、圧縮機や蓄圧器などのステーション機器の効率的な運転制御技術などが求められてくる。

そこで、同センターには従来比5.5倍の吐出能力の圧縮機、同2.4倍の蓄圧器、同5.5倍の模擬充填タンクなどを揃え、充填試験全体で、最高圧力は87.5MPa、最大流量は同3倍以上の流量試験が可能な設備を実現した。これにより、ディスペンサーの出荷前試験の能力を、従来の月当たり最大6台から同20台まで引き上げた。インフラ事業責任者兼静岡事業所長の髙橋太氏は「まずは大型トラックへの充填を目指します。同センターは、さらに大流量の試験にも対応するなど、将来を見据えた設備を揃えます」とアピールする。

最新の評価設備が並ぶ

岩谷産業グループに加わる 技術によるシナジー創出へ

トキコは全国53カ所の水素ステーションにディスペンサーを納入するほか、水素ステーションのエンジニアリングにも携わる。今年4月に岩谷産業グループに加わった背景にはそうした技術力を持つことも要因にあったとのことだ。

輪島勝紀社長&CEOは「今後、岩谷産業グループで創出できる新分野としては、水素ステーション用配管ユニット、各種プラント制御機器、水素サプライチェーンやアンモニアなどの流量計測や制御製品の拡大などが考えられます。グループ全体で目指すCO2フリー水素サプライチェーンの構築を後押したい」と抱負を語った。新たな価値創出に積極的に取り組んでいく構えだ。

首相発言をあえて曲解 朝日と毎日のクレーマー体質

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

 検討ばかりの「検討使」(遣唐使)。そんな岸田文雄首相がまた検討かぁ、と考えていたら、このメディアの反応である。

8月24日、脱炭素社会を目指す政府のGX実行会議が開かれた。締めくくりで、首相は「原子力についても再稼働、運転期間の延長など既設原発の活用、次世代革新炉の開発・建設など、政治判断を必要とする項目が示された」「再エネや原子力は不可欠な脱炭素エネルギー。これらを将来にわたる選択肢として強化するための制度的な枠組、国民理解を深めるための尽力の在り方など、あらゆる方策について具体的な結論を出せるよう、与党や専門家の意見も踏まえ、検討の加速を」と述べた。

反原発メディアらしい。翌25日朝日は「原発回帰、前のめり」とたたく。「ロシアによるウクライナ侵攻で、エネルギーの安定供給が揺らいでいると政府は説明している。会議資料には『危機』という言葉が並んでいる」「『危機』ばかりを強調し、一気に原発回帰を進めるのであれば国民の理解を得るのは難しい」という。

検討指示なのに、「一気に原発回帰」の非難は理解に苦しむ。

対照的なのは日経だ。25日社説は「原発新増設は安全重視で着実に進めよ」、同日5面で「原発活用、瀬戸際の決断」「次世代炉、技術や人材維持狙う」などと前向きに取り上げた。

これに先立ち日経は、18日社説「原発新増設へ明確な方針打ち出せ」でも踏み込んだ。「英国やフランスは再エネの普及加速と、原発の利用拡大を車の両輪として推進する方針」と英仏の危機対応を例に挙げ、「英国は、50年までに原子炉を最大8基建設し発電量に占める原発比率を足元の15%から25%に増やす」「フランスも、50年までに6基を建設し、8基の追加を検討」と詳述して、「日本も見習うべきだ」と説く。

検討指示の先取りか、「原子炉は傷みやすい機器を交換して慎重に維持管理しており、運転期間を延ばすのに技術的課題は少ない。一方、事故で放射性物質が広がるリスクを減らした最新型を建設する方が、安全性が増すという考え方もある」とも解説する。

産業の存立にエネルギーの安定供給は欠かせない。そうした危機感の現れだろう。

朝日はズレてる。25日読売を見るとそれが際立つ。「読売・早大共同世論調査、原発再稼働、賛成58%」によれば、「規制基準を満たした原子力発電所の運転再開について、同じ質問を始めた2017年以降、計5回の調査で初めて賛否が逆転した」という。世論も危機を感じている。

ズレか、ボケか。心配なのは毎日27日コラム「土記、コロナも原発も」である。

「岸田首相がいきなりかじをきった。新型コロナ対策だけでなく、原発政策までも。そのやり方にがっかりした」で始まる。検討指示を政策決定のように曲解し、「政治は対策や政策のメリットとデメリットをよく知った上で、『なぜその政策を選ぼうとしているのか』を説明しなければならない」と注文を付ける。

その上で、「原発に依存するリスクの大きさを私たちは知っている」「原発依存により、再生可能エネルギーや省エネの促進が抑制されてしまう。それをどうてんびんにかけたのか。分からない」と首相をなじる。

冒頭の議事録くらい確認した方がいい。相手の発言を無視した非難はクレーマーと変わらない。

いかわ・ようじろう  デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。

エネルギーの二つの顔 「コモディティ」と「ウエポン」

【オピニオン】矢野 伸一郎/日本原子力文化財団 専務理事

 かつてアメリカにエンロンという急成長を遂げた総合エネルギー販売会社があった。のちに当時、アメリカ史上最大級といわれた企業破綻をするのだが、日本において電力自由化がスタートした2000年当時は「エンロン詣で」という言葉が存在したほど日本の企業や官庁の皆さんが注目し、経済誌などでも何度も取り上げられる状況だった。

そんなある日、当時電力会社の広報にいた私は、エンロンのビジネスモデルを絶賛していたある著名経済誌の副編集長から、「今やエネルギーは完全なコモディティ(市場で取引される商品)です。エネルギーセキュリティーなんて言っている人は、この日本で皆さんだけですよ」と、時代遅れの人間でも見るような目で見られた。

あれから20数年、ロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギー価格の高騰、需給ひっ迫などが世界的規模で懸念されている。日本のメディアでもエネルギーセキュリティー、電力安定供給確保の文字が飛び交っている。エネルギーは今再び「コモディティ」から「ウエポン(兵器・武器)」の顔を見せている。

日本の一次エネルギー自給率は約1割、OECD(経済協力開発機構)36カ国中35位(2019年)のエネルギー貧困国である。昨年秋に決定された第6次エネルギー基本計画では、30年のCO2削減目標46%達成に向けて野心的なシナリオが示されたが、再生可能エネルギー、水素利用など考え得るあらゆる手段を総動員して達成できたとしても、エネルギー自給率は3割にしかならない。

ウクライナの例を持ち出すまでもなく、エネルギーはこれからもコモディティとウエポンの二つの顔を持ち続け、その時々で表情を変えるだろう。

エネルギー供給のレジリエンスを高めることは日本の経済・社会の安定と発展にかかわる最も重要な課題である。それを実現するためには、原子力発電、原子燃料サイクルが今後も一定の役割を果たすことが不可欠だ。

一方で、原子力は極めて高度な技術集約的なエネルギー源であり、建設・運転・保守などの各面において長い経験と技術、知識の蓄積があって初めて継続が可能となる。そして、それを支えるのは人財に他ならない。

しかしながら、原子力関係学科・専攻の減少や教員数の減少が顕著になっているほか、熟練技術者の高齢化・退職と若手技術者不足が深刻化していると耳にする。また、原子力産業における研究開発費の減少、さらには原子力産業から撤退・離脱する企業も出てきている。

これらは、将来における明確な原子力の位置付け、具体的な原子力ビジョンが描けず、先行き不透明であることの影響が大きい。国、電力会社には、原子力の信頼回復に向けた取り組み、原子力が果たす役割に対する理解活動はもちろんだが、原子力の持続的な活用について将来に向けた明確で確固たるビジョンをぜひ打ち出していただきたい。

やの・しんいちろう 1982年早稲田大学商学部卒、東京電力入社。広報部長、多摩支店長、テプコシステムズ常任監査役などを経て、2022年から現職。

巨大なビジネスチャンスを提示 企業・団体が最先端技術を出展

【スマートエネルギーWeek秋2022】

最先端のエネルギー関連技術に触れようと、全国から多くの来場者が詰めかけた。

電気料金の高騰が、再生可能エネルギーを巡るビジネスへの関心を高めている。

 国内外のエネルギー関連団体や企業が集まる日本最大級の総合展示会「スマートエネルギーWeek秋2022」が、8月31日から9月2日まで千葉県の幕張メッセで開かれた。380の企業や団体が最先端技術を出展し、3日間で約3万人が来場。再エネビジネスの関心の高さを浮き彫りにした。

3日間で約3万人が来場した

会場は七つの展示ゾーンで構成。2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向け、主力電源としての期待される洋上風力発電「WIND EXPO 風力発電展」では、関係者によるセミナーのほか、風力発電所の建設、保守運用などで技術を持つ企業団体が出展した。来場者からは「国の後押しもあり見通しは明るい」(船舶業界関係者)と期待の声が聞こえる一方で、「日本は風車の大型化が進み大量生産には向かない。技術力を示して海外企業にアピールしないと儲けにはつながらない」(塗装メーカー関係者)と冷静な意見も聞こえた。

SEP船で大型風車を設置 洋上風力の競争力高める

「適地が限られる日本で洋上風力を進めるなら、大型化は必須」と話すのは、海洋土木工事を多く手掛ける五洋建設洋上風力事業本部の島田遼太郎氏だ。国内で初めて大型クレーンを搭載した800t吊の自己昇降式作業台船(SEP船)を投入するなど、今後は風車の大型化に対応した1600t吊のSEP船を23年4月稼働に向けて建造中だ。島田氏は「1600t吊のSEP船が完成すれば、1万5000kW級の着床式洋上風力設置工事にも対応できる」と話す。五洋建設は今後3籍のSEP船を保有し、海底ケーブル敷設や1万5000kW級洋上風力建設の競争力を高める構えだ。

大型化する洋上風力事業に企業も対応

そのほか、三菱重工業グループでは、浮体式洋上風力技術の一般化に向け、福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業を推進。こちらも1万5000kW級といった風車の大型化に対応する。三菱造船の小松正夫海洋開発担当部長は「3~4年後にも洋上風力は浮体式が世界標準になると予測している」と話す。三菱造船の手掛けるフロート技術は既存造船所の設備を活用でき、港湾の作業が可能なため、日本の海岸での製造に適しているという。将来的には曳航可能な浮体式の利点を生かしてアジア各国で市場拡大を目指す。

国際エネルギー機関(IEA)によると、洋上風力市場は、40年には全世界から120兆円超の投資が見込まれるという。特にアジア市場は欧州とは海の形状や気象条件が異なり、現在の風車設計の中心である欧州とは違う技術コンセプトが求められる。

企業にニーズ高い蓄電池 海外メーカーも市場参入

洋上風力のほかに来場者の関心を集めたのが、二次電池や太陽光発電のゾーンに展示された蓄電システムだ。蓄電システムは蓄電池とパワーコンディショナーが一体となり、電気を蓄え、必要に応じてその電気を利用できる。大型の蓄電システムは、コンビニやホテルなどの施設にソーラーパネルを設置する企業のニーズが高い。企業の蓄電池導入は、国や地方自治体の補助金も手厚い。

日本の蓄電池市場に海外メーカーも注目

現在、蓄電池システムは村田製作所やパナソニック、京セラなど電機メーカー大手が販売しているが、新たに参入するのが中国のファーウェイだ。年末を目途に、スマート産業用蓄電システムの発売を予定している。担当者は「用意したパンフレットがなくなりそう」とうれしい悲鳴を上げる。

家庭用の蓄電システムを展示したのは、台湾のプラスチックジャパンニューエナジーだ。化学分野や半導体分野で世界トップクラスの大型複合企業グループで、日本での家庭用蓄電システムの販売について7月、双日と総代理店契約を締結。秋から販売を開始する。双日の蓄電システム担当者は「昨年夏から、『(再エネ電気は)売っても安いので貯めたい』という声が増えている」と話す。 

ここで重要なのが、蓄電池を導入したとして、採算が取れるのかという問題だ。住宅で蓄電池を導入するには、100万円以上の費用がかかることが多いうえ、蓄電池の寿命は、10~15年ほどとされる。

国内最大級の蓄電池専門ECサービス「丸紅エネブル蓄電池」の試算では、太陽光パネルを設置している一般家庭で蓄電池を導入、自家消費率を30%から70%まで向上させた場合でも、電気料金の年間削減額はわずか3・5数千円程度にとどまる。この状況を見越して補助金が交付されているが、補助金を利用して導入費を抑えたとしても、初期費用を回収できるかどうかは微妙だ。とはいえ、電気料金の高騰トレンドが続くと見て蓄電システムの導入を検討する家庭もあり、22年以降、今回取材した各メーカーには見積もり依頼が急増しているという。災害や停電時の非常電源として利用するメリットも考慮したケースもある。

企業、家庭ともに、蓄電池を求めているのは採算上のメリットだけが理由ではない。企業であれば脱炭素経営に取り組むため、家庭であれば災害への備えや、サステナブルな生き方をするためなど、金銭だけでは計れない価値のために脱炭素を選択する。そして、そこに巨大なビジネスチャンスが生まれようとしている―。今回の総合展では、そのうねりを体感することができた。

中山間地や自然公園に水平展開へ 山岳観光地の脱炭素モデルを構築

【地域エネルギー最前線】 長野県 松本市

乗鞍高原が2030年度までにCO2排出実質ゼロを目指す「脱炭素先行地域」の第一弾に選ばれた。

行政、地域住民、企業、大学が一体となって、山岳観光地のリーディンモデル形成を目指す。

 乗鞍岳山麓の静寂な自然環境に囲まれ、山岳観光地として親しまれてきた長野県・乗鞍高原。だが今、少子高齢化や居住人口減、新型コロナウイルス禍などによる観光客減、温暖化などで豊かな自然環境が失われることへの危機感など、さまざまな課題に直面する。

山岳観光地として持続的に発展し活力を取り戻したい―。そんな地域住民の思いから生まれたプロジェクトが、環境省による脱炭素先行地域の第1回公募で、長野県で唯一採択された。松本市が、乗鞍高原を擁する大野川区、信州大学と共同で提案した「のりくら高原『ゼロカーボンパーク』の具現化」だ。 “世界水準”の「ゼロカーボンパーク」実現に向け、地域を挙げた取り組みが本格化しようとしている。

豊かな自然に恵まれた乗鞍高原

きっかけは地元の将来構想 3つの柱で地域に好循環を

計画の柱は、①地域裨益型小水力発電所を建設し、エネルギーの自治を実現すること、②サステナブルツーリズムモデルを形成し、滞在意欲の高い来訪者を獲得すること、③地域活力の好循環を創出することにより、人口増を実現すること―の3本だ。

①については、乗鞍地域に流れる信濃川水系の小大野川に、674kWの小水力発電所を整備し、地区の住宅や宿泊施設などに設置した太陽光発電由来の電気と合わせて地域内に供給。住宅の断熱改修やLED導入を進め、2030年度の電力の脱炭素化に道筋を付ける。エネルギーの地産地消により生まれる収益の一部を地域の収入源として半永続的に入る仕組みを構築し、地域の課題解決に活用していくことも考えている。

②については、観光客向けに、ゼロカーボン拠点施設(現観光センター)をとする環境配慮型の二次交通を構築する。観光客の移動手段として、低速で走行し環境への負荷が小さいEVバス、E‐バイクなどを導入。地域の自然環境に配慮したサステナブルツーリズムを実現することで、インバウンド需要やワーケーション需要に訴求し、長期滞在型の旅行者やリピーターの獲得を狙う。

③は、地域内ビジネスとして「木の駅事業」を展開する。管理が行き届かず景観の支障となっている木々を伐採し、薪ストーブ・ボイラーの燃料として加工。各家庭や宿泊施設に、新たに薪ストーブやボイラーを導入しその燃料として利用する。

放牧が途絶えて森林化したシラカバなどを伐採し草原の景観を取り戻すと同時に、木質バイオマス熱として利用することで、電力由来以外の温室効果ガス排出削減につなげようというわけだ。脱炭素を起点に新たな地域ビジネスを立ち上げることになるため、新規雇用を創出し、若年人口を増やし地域活力の好循環を創出することも期待できる。

総事業費は26億円と試算。先行地域に採択されたことで、このうち17億円を国の交付金で賄うことができる。松本市環境エネルギー部環境・地域エネルギー課の丸山克彦課長補佐は、「小水力発電の整備や運用をどのように行うのか、まだまだ手探り状態だが、『山型』の脱炭素化のリーディングモデルを確立し、市内のほかの中山間地や自然公園にも水平展開していきたい」と語る。

実は、計画のベースには昨年3月に、乗鞍高原の地元関係者による「のりくら高原ミライズ構想協議会」が、同地域の将来構想として策定した「のりくら高原ミライズ」がある。丸山課長補佐によると、「地域が脱炭素先行地域の共同提案者となっている例はほかになく、住民発信型の取り組みとして唯一の案件ではないか」という。

ミライズでは、観光振興や人口減少に歯止めをかけ安心安全な暮らしを守ることのみならず、ゼロカーボンの実現など循環型社会の実現を目指すことにまで踏み込んでおり、大野川区が市内でも脱炭素化への機運が高い地域であることがうかがえる。

ゼロカーボンシティへ 市、事業者、市民が総力

松本市では、このほかにも、ゼロカーボンシティを実現するためさまざまな取り組みを進めている。建て替え計画がある市立病院が所在するアルピコ交通上高地線の波田駅周辺では、『街型』の脱炭素モデルづくりを進める計画があり、『山型』の乗鞍とともに市内全域に広げていく方針だ。

また、今年2月には、地域の脱炭素化を支援する産学官金連携の共同団体として「松本平ゼロカーボン・コンソーシアム」を設立した。地元の事業者や大学、金融機関、市などが連携し、定例フォーラムや課題別の部会などを通じて、地域の脱炭素事業の具現化や発展を図る。

さらに6月には、化石燃料から再エネへのシフト、省エネの徹底、ごみの減量やリサイクル、環境負荷の少ない交通手段への転換といった、ゼロカーボンの取り組みを「まちづくりの大原則」として位置付ける「松本市ゼロカーボン実現条例」を制定。ここでは、市、市内の事業者、市民が脱炭素化に向け、それぞれの責務を果たしていかなければならないことを明記している。エネルギーの地産地消の役割を担うため、市や地元企業が出資する形で、早ければ来年度にも地域エネルギー会社を設立する方向で検討を進めている。

脱炭素先行地域に選定されたことを受け、臥雲義尚市長が記者会見で語ったのは、「豊かさと幸せを実感できるまちづくりに向けた大きなチャンス。ゼロカーボンの先駆けとなるよう市民の皆さんと共に取り組んでいきたい」と、市民と一丸でゼロカーボンを目指すということ。

とはいえ、現段階では脱炭素の必要性を行政と市民が十分に共有できているわけではない。ゼロカーボンの取り組みは「未来への『投資』である」と、脱炭素の機運を醸成していくことが、これからの市の大きな役割となる。

外せない原発の選択肢 新増設の「事業主体」は

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.7】関口博之 /経済ジャーナリスト

 「GX(グリーントランスフォーメーション)を進める上でも、エネルギー政策の遅滞の解消は急務だ」。8月24日、GX実行会議で岸田文雄首相はこう述べ、原子力発電所の新増設・リプレースを検討するよう指示した。東京電力福島第一原発事故以降、原発への国民の不安が拭えていないことを背景に政府が避けてきた論点に、ようやく踏み込む姿勢を見せたが、これは同時に「政策の遅滞」を自ら認めた形でもある。

エネルギー安定供給と脱炭素化の両立には、原発という選択肢は世界的に見ても多分、外せない。日本では60年運転を前提にしても2040年代後半から稼働できる原発は大幅に減る。去年のエネルギー基本計画でも、議論を求める声があったものの、棚上げされてきたのがこの新増設という課題だった。

ただ、今回示されたテーマの中で、抜け落ちているように見えるのが原発の新増設を担う「事業主体」をどう考えるのか、という論点だ。今の大手電力各社をそのまま事業主体に想定するのか。有識者からは各社の原子力事業を切り出して統合し、原子力発電専業会社を新たに作るという案も出されている。さらにこれを官民共同で設けるという発想もあるだろう。

美浜発電所はリプレースの候補地のひとつだ

原発専業会社という考え方にはいくつかの利点がある。第1には事業者への信頼回復という懸案への一つの答えになる。柏崎刈羽原発の再稼働の見通しが立たないのは東京電力に原発を動かす資格(適格性)があるのか、という疑念があるためだ。安全対策上の不祥事も相次いだ。地元をはじめ世論の理解を得るある種のけじめとして、原子力事業は東電から切り離して再出発を、という「荒療治」も必要かもしれない。

二つ目は原発建設には長期にわたるファイナンスが要るという点だ。総括原価主義はもはや認められず、電力自由化が進む中での長期投資になるだけに仮に国が新増設を認めるとしても、そもそも手を挙げる電力会社がいるのかどうか、おぼつかない。国が財政支援にも踏み込む場合、受け皿は特殊法人的な事業体で、というのはあり得る。

第3には人材の維持・育成やノウハウの継承という視点だ。原発の新増設には当然、この目的もある。ただ、原発に関わる人材を各電力会社がこの先もそれぞれに抱えていくことは現実的なのだろうか。人材をプールして確保するため、一つの事業体に集約することは有効だろう。第4は脱炭素電源としての原発の価値だ。安定的なベースロード電源で、かつ再生可能エネルギーとともに脱炭素化を支える原発は、いわば「公益性のある電源」ともいえる。新電力との関係で言っても一部の大手電力のみがその価値を得てよいのか、という視点だ。

振り返れば、福島第一原発事故直後から、「国策民営」方式は行き詰まっている、いっそ国営化などの大ナタを、といった議論はあった。新増設を問うならば原子力政策の原点として誰が原発を作り、動かすのかも俎上に載せるべきだろう。

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.1】ロシア軍のウクライナ侵攻 呼び覚まされた「エネルギー安保」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.2】首都圏・東北で電力ひっ迫 改めて注目される連系線増強

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.3】日本半導体の「復権」なるか 天野・名大教授の挑戦

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.4】海外からの大量調達に対応 海上輸送にも「水素の時代」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.5】物価高対策の「本筋」 賃上げで人に投資へ

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.6】なじみのない「節ガス」 欠かせない国民へのPR

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せきぐち・ひろゆき
経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

【マーケット情報/10月10日】原油急伸、供給減少の予測が支え

【アーガスメディア=週刊原油概況】

10月3日から10日までの原油価格は、主要指標が軒並み急伸。原油の品薄感が台頭し、価格に上方圧力を加えた。

OPECプラスは、11月、日量200万バレルの大幅減産の計画で合意。インフレ率の上昇にともなう経済の冷え込み、それにともなうエネルギー消費減少の懸念が背景にある。サウジアラビアは、実際の減産は日量100~110万バレルになると見ているようだ。

また、欧州連合は、ロシアによるウクライナ一部地域の併合を受け、ロシア産原油に対する禁輸措置を強化する方針。同製品の、第三国に対する海上輸送に価格上限を設けることを提案した。

一方、アジア太平洋地域の石油企業5社によると、サウジアラムコ社の11月ターム供給は希望通りとなる見込み。また、米国における11月デリバリーのスイート原油の戦略備蓄放出は、計画を15万バレル上回る1,015万バレルとなった。供給不安がある程度和らぐも、価格の弱材料とはならなかった。

【10月10日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=91.13ドル(前週比7.50ドル高)、ブレント先物(ICE)=96.19ドル(前週比7.33ドル高)、オマーン先物(DME)=96.72ドル(前週比8.51ドル高)、ドバイ現物(Argus)=96.75ドル(前週比8.76ドル高)

系統電力・上下水道から隔絶 八ヶ岳で完全オフグリッド生活

【オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳】

電力需給ひっ迫の解決、社会インフラの転換へ向けた第一歩になるか―。

長野・山梨両県にまたがる真夏の八ヶ岳山麓を訪れ、完全オフグリッド生活の実態に迫った。

 草木が青々と茂る8月の八ヶ岳―。その麓に、異彩を放つ五つの白いテントがある。目立つので地元の人も存在は認識しているが、どういった施設なのかを知る人は少ない。

インスタントハウスとソーラーカーポート

白いテントの正体は、「オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳」。一般的にオフグリッドとは、送電網に接続されていない状態を指すが、ここは水道管にもつながっていない。〝完全オフグリッド〟の居住環境だ。

「LIFULL」が運営する定額制施設「LivingAnywhere Commons八ヶ岳北杜」の敷地内に2月、建てられた。同社と国際環境経済研究所理事の竹内純子氏らが設立したU3イノベーションズが、完全オフグリッド生活の実証実験を行っている。担当者の川島壮史さんは、自宅のある東京と施設を行き来し、週の約半分をここで過ごす。

人口減少や過疎化によって、地方では社会インフラの維持・管理が大きな課題となっている。インフラ事業者が需要拡大が見込めない過疎地域に投資しても、それを回収することは難しい。水道管の更新にしても、ガソリンスタンドの営業にしても、利用者が少ないために採算が取れない。

そこで注目されるのが、オフグリッドの住環境だ。これまでのインフラのあり方が、規模の経済性から「人口集中」を前提としていたのに対し、オフグリッドはその前提から解放される。LIFULL社長の井上高志氏は、「社会インフラの自律分散型への転換に向けた第一歩」と、実証実験の意義を語る。

夏場は電力枯渇の心配なし クーラー全開で快適な室内

いざ、テントの中へ―。茶室のような狭い入口をくぐると、小洒落たモダンな空間が広がっていた。スタイリッシュなダイニングキッチン、余計な家具を置かずにシンプルさを追求したリビング。プライベートルームは寝室の下にデスクとソファがあるロフト式で、穴蔵感が心地いい。秘密基地のようで、大人もテンションが上がる。

ゆったりとくつろげるリビング

一般住宅と違うのは、壁だ。ゴツゴツとしていて、触ると発泡スチロールのように少し柔らかい。実はこの建物、テント生地と断熱材だけで造られた「インスタントハウス」。テント生地を風船のように空気を入れて膨らませ、内側に発砲ウレタンの断熱材を吹きつける。それが固まれば完成だ。昨年の12月27日に着工、翌日の夕方には完成という早さ。名古屋工業大学大学院教授・北川啓介氏が開発・設計を行い、LIFULLが製品化した。

この日、外の気温は32度だが、室内は涼しく、快適な温度を保っている。24時間、クーラー全開でも、電力が枯渇する心配はない。電気が作られるのは、屋根が太陽光パネルになっている駐車場「ソーラーカーポート」だ。5・1kWの発電容量を持つソーラーカーポートを2棟導入。電気自動車(EV)にも直接に充電できるから、近くの買い物ならこれで事足りる。

排水はろ過して循環 ビジネス展開目指す

白いテントの一つ「インフラ整備室」には、リチウムイオン電池がズラリと並ぶ。ソーラーカーポートで作られた電気は、ここに蓄電される。容量は32・26‌kW時で、一般家庭の電気使用量の約3日分に相当する量だ。

実は今年3月、ピンチに追い込まれたことがある。雪が降り続いた21日、午後9時の電池残量は約40%、翌22日朝には約20%となり、停電の危機を迎えていた。カーポート上には15㎝程度の雪が積もっていたが、両面受光の太陽光パネルによって停電は回避した。川島さんはこの時、発電量と蓄電池の残量を確認できるモニターと睨めっこ。節電を余儀なくされた。

インフラ設備室には蓄電池がズラリ

水はどうしているのか―。その答えは、インフラ設備室にある。シャワーや調理などで使われた排水は、インフラ設備室内のタンクに貯められ、3種類のフィルターでろ過。その後、塩素を注入して再利用する。一連の水処理設備は、3時間の稼働で300ℓの生活水を生み出す。1人が1日に使う水の量は100~150ℓとされるから、2~3人で暮らすには十分な量だ。蒸発や皮膚などに付着して外に流出した分を保給するため、数カ月に1度、雨水を供給する。今後は飲料水にも挑戦するという。

壁が断熱材だけなので、外の音がよく聞こえる。朝は鳥の鳴き声で目が覚めるという。これだけなら、どこの田舎でも味わえるが、

異なるのはエネルギーを太陽から直接もらっていることだ。「都会で暮らしていると、電気は遠くで作られたものとの認識だが、ここにいると自然につながっている感覚が得られる」と川島さん。この感覚が、やみつきになるのだとか。

LIFULLとU3イノベーションズは、実証実験を通じてビジネスへの展開を目指す。リゾートや住宅サービス事業者には、レジャーとして。地方にはサステナブル・ビレッジなど、新たなインフラとして―。どのような場所でも、水や電気、暑さや寒さを凌げる環境を「オフグリッド・インフラボックス」(仮称)として提案したい考えだ。

オングリッドか、オフグリッドか―。近い未来、住居のインフラ環境を選択する時代がやってくるのかもしれない。

岸田首相は原子力政策を転換したか GX会議発言に見る「検討使」ぶり

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

 8月24日のGX実行会議での岸田文雄首相の原子力に関する発言に、脱原発派は反発し、原発推進派は歓迎している。しかし、役人が作成した原稿を読んでいるであろう岸田首相の発言をなぞってみると、やはり「検討使」で何も言っていないのに等しい。まさに、「万犬虚に吠える」という状況だ。

〈原子力発電所については、再稼働済み10機の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を採ってまいります。〉

と言っているが、単に原子力規制委員会での規制の審査状況を示しているのにすぎず、「国が前面に立って」というのもこれまでの常套句だ。具体的に規制の在り方を見直すとか、各自治体が苦戦している避難計画の策定のために具体的な予算措置を講じるとか、そうしたことをするつもりはないだろう。今、国がやっていることに何か新たな政策が加わるわけではない。

原子力は「急がば回れ」 今こそ政策再構築の議論を

〈原子力についても、再稼働に向けた関係者の総力の結集、安全性の確保を大前提とした運転期間の延長など、既設原発の最大限の活用、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設など、今後の政治判断を必要とする項目が示された。これらを将来にわたる選択肢として強化するための制度的な枠組み、国民理解をさらに深めるための関係者の尽力の在り方など、あらゆる方策について年末に具体的な結論を出せるよう、与党や専門家の意見も踏まえ、検討を加速してください。〉

「次世代革新炉の開発・建設」と言っても、その開発に具体的な見通しがあるわけでなく、それがどこかで建設に着手されるようなことは現時点では想定できない。ここで言われている「制度的な枠組み」や「関係者の尽力の在り方」というものには注目したいが、単に脱炭素化や供給力を埋めるための数字合わせとして惰性で原子力を推進しても、これまでの原子力政策は失敗を繰り返すだけだろう。「専門家」と称する人たちが、「国策」とか「純国産エネルギー」とかお題目を唱えながら、結局精神論ばかりで進めてきたことが、日本の原子力政策の失敗の歴史だからだ。

今政府が行うべきは、官民のどの主体がどのような役割分担と責任を負うのか、国際的な動向を見極めながら技術開発の方向性を誰がどのように決めていくのか、科学的で合理的な安全規制の在り方は何か、といった本質的な論点を議論して、原子力政策の再構築を行うことである。まさに「急がば回れ」だ。が、「年末に具体的な結論を出す」という今の動きを見る限り、それは期待できそうもない。

国葬問題やカルト宗教との関係などによって岸田政権の支持率が急落する中、末期の政権に国民に不人気な決断を押し付けてしまおうというやっつけ仕事ではいけない。

ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

JFEが大型電炉導入へ 原発の重要性が浮き彫りに

国内鉄鋼2位のJFEスチールが、岡山県倉敷地区の高炉1基を大型電炉に切り替える方針を示した。鉄鋼大手3社で初の試みだ。

電炉は高炉に比べてCO2排出量を4分の1に抑えられるが、生産性が低い。JFEは2024年から「グリーンイノベーション基金」で採択された高効率・大型電炉の開発を行い、倉敷地区の高炉が改修タイミングを迎える27~30年に電炉への切り替えを目指す。

電炉は自動車用鉄板など製造できない高級鋼材が多い。だが、天然ガスで還元された還元鉄を活用すれば製造できる鋼材もある。そこでJFEは新たに伊藤忠商事とともにアラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のエミレーツ・スチールと合弁会社を設立、25年度から還元鉄の生産を始める。高炉で製造していた高級鋼材の一部を電炉で製造できるとなれば画期的だ。

採算性はエネルギーコスト次第だが、西日本では原発が稼働している。倉敷地区の電炉転換は、さらなる原発の再稼働で産業用電力の経済性改善を期待しての判断とみられる。ここにも脱炭素に原発が欠かせない現実がある。

市場連動型への移行を把握せず 起こり得る混乱と大量のクレーム

【論点】最終保障供給約款の変更/千島亨太 エネチェンジ 執行役員 法人ビジネス事業部 事業部長

電力調達を新電力などから最終保障供給に切り替えた需要家は約3万5000件に達した。

最終保障供給は市場連動型へ移行したが、送配電事業者も需要家もその重要性に気付いていない。

 電力切り替え支援サービスを提供する当社には、2022年9月までに最終保障供給になった(またはなる予定の)需要家を中心に、月に数百件の新規見積り依頼がきている。当社の事業として考えると本来であれば喜ばしいことだが、この問い合わせの内容を掘り下げると、とても喜べる状況にないことが分かる。本稿では需要家側の課題と一般送配電事業者の課題の2点に絞って伝えたい。

①需要家の課題

当社が認識している課題をまとめると、周知の問題と選択できる電気料金メニューが限定的であることの2点になる。最終保障供給約款の制度変更の注意、そして単価の見直しによる市場価格調整単価の影響の通知や注意喚起など、需要家にとって難解で複雑な変更点を丁寧に説明するメールマガジンの配信を行っている(図1参照)。

図1 ●●電力エリアで試算した市場価格調整額を加えた値上げ額

受信した需要家からは、「こんな制度変更とは理解していなかった」「燃料調整費の変更の延長くらいの認識だった」などの声が多く寄せられている。そのことから、現状の需要家への周知方法は十分ではないことが分かる。

22年8月15日、電力・ガス取引監視等委員会が公表した8月1日付の最終保障供給契約数は約3万5000件。そのことからすると、当社が発信できる需要家数はその15%程度にとどまる。依然、最終保障供給約款の変更の重要性を把握していない需要家が多く存在していることを懸念している。

二つ目は、選択できる電気料金メニューが限定的であることだ。当社では、数十社の小売り事業者と連携するなか、一部の小売り事業者とは市場連動の料金メニュー開発を行うなど、最終保障契約より割安で提供できるメニューの開発支援を行っている。

全国規模で、事業者の提案状況や内容の調査も行っているが、安定的かつ継続的に標準料金型メニューを提供している事業者は存在しない。そのため需要家は、自社の電力使用パターンに合った市場連動型メニューから比較・検討している状況になっている。

図2 需要家が選択できる料金メニュー

認識が足りず周知不足 需要家は変更を見過ごしも

②一般送配電事業者の課題

一般送配電事業者の対応には次の2点の懸念が考えられる。一つ目は、電気料金への影響が大きい重要な通知だという認識の欠如からくる周知不足である。最終保障の料金変更の通知は各社書面、メールなどで通知を実施しているものの、料金変更の説明は市場価格調整単価が追加される変更図および、補正項が追加されることとその式の説明にとどまっている。

具体的に自社の電気料金単価に反映される料金がいくらになるのかが、確認しづらいものとなっているのだ。需要家の一部は燃料費調整程度の変更だと見過ごしてしまう懸念が考えられる。そのため変更の重要性を看過し、他社料金プランの検討をしない需要家が発生している懸念が考えられる。

二つ目が、周知不足によるクレームが発生する可能性への懸念だ。各送配電事業者が書面、メールなどで通知とホームページ上の掲載を実施したとはいえ、卸取引市場により日々変動するリスク性のあるメニューへの変更であり、より丁寧な説明が求められる。

さもなければ初回請求が行われる10月以降に、需要家からの変更に関する周知不足と電気料金の上昇への問い合わせやクレームが多数発生する懸念がある。

当社からの通知や、報道で制度の変更を知った需要家からの問い合わせが現在も続いている。情報提供の強化と周知を徹底するためには、各送配電事業者からも当初の通知やホームページ掲載だけでなく、方法を問わず具体的な市場価格調整単価を明示し、電気料金へのインパクトを丁寧に伝える必要があると考えている。

セット料金を提案 周知徹底でクレーム抑制を

当社と当社提携先の小売り電気事業者では、最終保障契約の変更による単価の影響を通知した上で、見積もりを希望する需要家に対して最終保障変更後の想定電力料金と各社の市場連動メニュー料金を比較・提案している。

検討時の丁寧な説明と供給開始後の電力市場の定期的な情報提供により、電力料金に対する問い合わせはあるが、クレームといわれる問い合わせは発生していない。単価変更と料金見込みの周知を徹底することで、10月以降の各送配電事業者への問い合わせやクレームの発生を抑制しながら、最終保障契約からの離脱を促すことが可能になるのではと考えている。

今回の最終保障供給約款の変更の最大の目的は、最終保障供給からの需要家を通常契約に戻し、将来的な託送料金の負担を低減させることであった。そのための対策が早急に求められている。

※電力・ガス取引監視等委員会による「22年8月1日時点における最終保障供給契約件数」より(22年8月15日付)

ちしま・こうた  大学卒業後、2006年三井住友銀行(当時)入行。16年に大手新電力へ移り小売り、電源調達、卸電力取引などの各種取引に従事。19年9月に法人ビジネス事業部の執行役員事業部長としてエネチェンジに参画。22年7月からは政策渉外を担当。