メジャー不在のサハリン2 楽観論は時期尚早

ロシアの「サハリン2」の運営主体変更に伴う騒動の顛末は、いまだ楽観視できない状況だ。露政府が8月5日に設立した新会社に対し、三井物産は12・5%、三菱商事は10%と従来比率での継続出資を決定した。露政府は8月末に両社の参画を承認。加えて露ノバテクが新たに参画し、撤退を表明した英シェルの出資を引き継ぐと見られている。

新体制はひとまず整いつつあるものの、供給途絶リスクは消えていない。問題は液化プロセスを含めてオペレーターを担える事業者、つまり欧米資源メジャーの不在だ。実際、露政府は新会社への参画は年400万t超のLNGプラント操業経験者に限るとしたが、ノバテクがシェルの役目をそっくり引き継げるわけではない。

「資源開発系の関係者ほど悲観的な見方だ。何かトラブルがあればガスが搬出できない可能性がある。本件では広島ガスが注目されがちだが、購入比率より、供給途絶の際にはスポットをどれだけ確保する必要があるかというボリュームの問題が大きい。JERAなどへの影響が懸念される」(ガス業界関係者)。電力ひっ迫の正念場の冬が迫る中、ロシアリスクはくすぶったままだ。

驚異的な読み取りスピード 現場の作業効率向上に寄与

【キーエンス】

キーエンスは1974年設立。FA(ファクトリー・オートメーション)用センサーを中心に測定器や画像処理機器の企画・設計・開発・生産を行い、日本のモノづくりを長年支えてきた。常に生産現場の声に耳を傾け、付加価値の高い商品を発表し続けており、今も新製品のうち70〜80%が世界初となる革新的なものが占める。

そんな同社がエネルギー業界向けに拡販しているのが、画像処理技術を応用したハンディターミナルDXシリーズ。

ハンディターミナルDXシリーズ

製造、物流、小売りなどBtoB分野で多くの実績を持つ製品で、読み取り対象のバーコードや文字列が汚れていても、反射していても、ゆがんでいても、条件を選ばず高速かつ正確に読み取りできるのが特長だ。

具体的な採用実績は、LPガスのシリンダー管理、エネルギープラントの資材管理など。LPガス用途では、シリンダーが家庭の軒先に設置されるため、読み取りに適した状態でバーコードが維持できるとは限らない。そうした状態でも正確に読み取ることができる。

さらに、アプリを立ち上げて読み取るまでのスピードが非常に速く、業務効率向上に寄与する。スマートフォンを応用した一般的な製品はアプリの立ち上げから読み取りまで時間がかかり、何世代前の機種になるとさらに遅くなる。

これに対し、DXシリーズは読み取り用途で開発された専用機であり、アプリの立ち上げから読み取りまでの作業が数秒で終わる。

「一般的な製品はピントを合わせて照度を調節するなどして読み取り作業に入ります。DXシリーズに搭載するアルゴリズムはピントや照度が合ってなくても読み取ります。これにより高速読み取りを実現し、生産性を追求するお客さまに大変好評です」。自動認識事業部販売促進グループの担当マネージャーはそう話す。

このほか、堅牢性にも優れている。高さ2・7mからの耐落下試験、水没試験、冷熱衝撃試験、低音落下試験などもクリアしており、過酷な業務環境にも耐え得る。操作性も重視しており、基本は片手で操作できるようになっている。

エネルギー業界のDX促進 検針業務など需要開拓

今後は、電気やガス、水道などの検針業務向けなどにも拡販していく。「エネルギー業界でもDXの取り組みが始まっています。ハンディターミナルのリプレース需要に訴求していきたい」とマネージャーは語る。

現場作業の業務効率向上に寄与するDXシリーズ―。特に読み取りスピードは実際に体感しないと伝わらない面がある。是非一度、デモを試してもらいたい。

経産省が政策検証して自己批判 首相が原発新増設の検討指示

【論説室の窓】井伊 重之/産経新聞 論説副委員長

岸田文雄政権が原発政策を大きく転換し、新増設や建て替えに向けて動き始めた。

そこで経産省がこれまでのエネルギー政策を検証し、自己批判したことに驚いた。

 「電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず、今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員し、不測の事態にも備えて万全を期す」

岸田文雄首相は8月、首相官邸で開かれた「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」にオンライン参加し、現下の供給力不足を解消するため、次世代原発の開発・建設に加え、既存原発の再稼働も政府が主導する方針を初めて表明した。

この会議で岸田首相は「原発の新増設や建て替え(リプレース)は想定していない」と繰り返してきた従来の政府の原発方針を大きく転換し、次世代原発の実用化に向けて新規建設の検討を指示した。その上で年末までに具体的な結論を出すように求めた。

さらに政府の原子力規制委員会の安全審査に合格しながら、再稼働していない7基の原発について、来夏以降の再稼働を目指す方針も示した。この中には東京電力の柏崎刈羽原発6・7号機(新潟県)や日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)も含まれている。

これまで政府・与党は「エネルギー基本計画」に盛り込んだ表現を踏襲し、原発の活用には慎重な姿勢に終始してきた。だが、ロシアによるウクライナ侵略で世界のエネルギーを取り巻く環境は大きく変わり、各国ともエネルギー安全保障の見直しを余儀なくされている。特にわが国の場合、電力自由化と脱炭素の影響で火力発電の供給力が急低下し、電力不足が深刻化している。そうした電力危機を打開するため、既存原発の再稼働に向けて舵を切った。

原発政策の転換をめぐり、岸田政権は周到に手を打ってきた。ロシアがウクライナに侵略して以降、本来は脱炭素戦略を描くための「クリーンエネルギー戦略」で電力の安定供給を打ち出し、原発の活用を強調した。3月に東日本で初めて発令された電力需給ひっ迫警報を受け、首相は4月の記者会見で「原発を最大限活用する」と表明した。そこでは「原発を1基稼働させれば、液化天然ガス(LNG)を年100万トン節約できる」とも訴えた。

GX実行会議の第2回会合で発言する岸田首相
提供:首相官邸ウェブサイト

参院選公約に明記 国民の意識にも変化が

「原発の最大限の活用」は、政府が6月にまとめた経済財政運営の指針(骨太の方針)や自民党の参院選公約にも明記され、政府・自民党の正式な方針に位置付けられた。この間にはマスコミ各社の世論調査でも「原発の活用」を求める意見が過半数を上回るなど、エネルギー価格の高騰や電力不足の深刻化に伴い、国民の意識も変化していった。

一方、経産省では4月に専門家を集めたワーキンググループを設置し、世界で開発が進む小型モジュール炉(SMR)や高速炉、それに実用化が本格化する革新軽水炉について、「最優先で取り組む」とする工程表を策定。技術的に現実的な革新軽水炉を「30年代に運転開始する」と打ち出した。

その総仕上げが、首相が創設を主導したGX実行会議だった。7月の初回会合で首相は「原発の再稼働とその先の展開策などの具体的な方策について、政治の決断が求められる項目を明確に示してもらいたい」と指示し、政治決断が必要な具体的な項目を挙げるように求めた。

この首相発言について、マスコミはあまり注目しなかったが、首相は会議の中で「1973年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて緊迫した状況だ」と現下の情勢に強い危機感を示した上で、「この危機の克服なくして2030年、2050年に向けたGXの実行はあり得ない」とまで言明している。この時までに原発の政策転換の布石を打ち終え、8月下旬の第2回会合で政策転換を正式決定した。

何より驚いたのが、GX実行推進担当相を兼務する西村康稔経産相が第2回会合に提出した資料だ。そこでは「エネルギー政策の遅滞」とのタイトルで、これまでの経産省の政策を批判しているからだ。電力自由化をめぐっては「供給力不足に備えた事業環境整備や原発再稼働の遅れが相まって電力需給がひっ迫した」と批判。そして再生可能エネルギーの大量導入についても「系統整備や調整力の確保は道半ば」と総括した。

電力システム全体を再点検 政府主導で早期の再稼働を

「省内でも『遅滞』という文言をめぐって議論が白熱した」と同省幹部は苦笑する。中には「失敗」という言葉を使うべきではないかとの意見もあった。現下のエネルギー危機の克服を考えるには、これまでの政策を検証した上で、これから取り組むべき課題を洗い出す必要があると判断したという。そこでは遅滞解消のための政治決断として、「電力の安定供給に向けて電力システムの制度全体の再点検」も盛り込まれた。これまでの経産省のエネルギー政策を検証する内容となった。

目下の最重要課題は、規制委の安全審査に合格した原発の早期再稼働だ。地元同意を獲得するために政府がどのような対応を見せるのか。これまでのように電力会社に丸投げするのではなく、政府が主体的に動くべきだ。政府・与党が将来にわたり、責任を持って原発を活用する姿勢を明示することで立地自治体やその周辺地域の理解を深めてもらいたい。

さらに今後の課題として浮上しているのは、40年とされている原発の運転期間のうち、規制委の審査期間を除外する案だ。原発の新増設がなければ、国内の原発は2060年段階で3基、20年の運転延長が認められても60年には8基しか残らない。政府は新増設に向けて動き出したが、既存原発の安全審査期間を運転期間から除外できれば、より多くの原発の運転期間が確保できる。

審査期間の除外について、規制委は「これは安全規制ではなく、利用規制なので原子力等規制法の対象ではない」との立場だ。そうなると新たな法律が必要となるため、経産省は原子力委員会と共同で議論を始める方針だ。これも原発の最大限の活用だ。具体化を急いでほしい。

エネ基改訂後ガス火力で初 アセスで「袖ケ浦」の評価は

紆余曲折を経て東京ガスの単独計画となった「千葉袖ケ浦天然ガス発電所」の環境アセスメントを巡り、まもなく環境大臣意見が示される見通しだ。今年2月、事業主体の千葉袖ケ浦パワーが準備書を公表していた。2050年カーボンニュ―トラル(CN)と30年46%減目標を踏まえた第六次エネルギー基本計画が昨年策定されて以降、LNG火力への環境大臣意見は初となるだけに、行方が注目されている。

石炭火力計画が乱立した時期、「是認できない」とする環境大臣意見が相次いだ。直近の火力への意見は21年末、電源開発が石炭ガス化複合発電にリプレースする「GENESIS松島計画」に対するものだ。環境省は19年3月、石炭火力へのアセス厳格化の方針を発表。本件ではそれを踏まえ、30年、50年に向けた排出削減の道筋が描けなければ「事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案」するよう求めた。

今度の袖ケ浦発電所も、CNへの道筋をどの程度明確化できるかが焦点だ。一連のアセスの動向が、今後のLNG火力の位置付けを示す試金石となる。

【覆面ホンネ座談会】エネルギー有事下の予算 危機克服の「本気度」見えず

テーマ:経産省・環境省の概算要求

 エネルギー特別会計を巡る2023年度予算の概算要求がまとまった。エネルギー安全保障に寄与するとともに、脱炭素効果の高い電源の活用を促す中身となっている。

〈出席者〉A政治家 Bエネルギーアナリスト Cエネルギー業界関係者

―エネルギー危機下の概算要求をどう見ているか。

A 予算額は膨らませてあるが、政策に目新しさはない。ロシアによるウクライナ侵攻を経て、エネルギー価格は高騰し、円安が進行。国際的なLNG調達環境は大きく変わったが、概算要求からはいかに対応していくかという変革への意識が見えてこない。

B 本当に必要なものに資金が振り分けられているのか疑問だ。喫緊の課題はLNGや石炭の安定供給だが、例えば「系統用蓄電池や水電解装置等の導入支援による電力網の強化」に新しく100億円が充てられている。不必要とは言わないが、化石燃料をいかに確保していくか、という視点が欠落している。

 LNGの貯蔵量は、ガス会社が約1カ月分、電力会社はわずか2~3週間分しかない。少なくとも、それを倍増させる必要があるだろう。そのための設備費を負担する仕組みを考えなければならない。

A リスクにさらされた時のために、戦略的に国内の備蓄基地を構築したり、各社のパイプラインを接続したりしないと意味がない。国が何をやるのかが、何も見えない。

C 大手ガス会社などのLNG基地は、各社の需要想定の中で目一杯に使っている。ただ、一部には稼働率が悪いところもあると聞く。効率はよくないが、そこで貯蔵する方法も考えられなくはない。

A 概算要求ではJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)への出資金を増額させた。数年に一度、法改正を行って業務を拡充しているが、権益確保につながっているのか。無秩序な投資を行った前身の石油公団に逆戻りしていないか、検証する必要がある。

C かつて経産省はあらゆる手段を使って石油の確保に努めたが、LNGにはさほど関与してこなかった。しかし、今はLNG確保のため、カタールやオマーンに赴いている。サハリン2の運営会社を再編する大統領令が出された時、当時の萩生田光一経産相と保坂伸資源エネルギー庁長官はかなり慌てていたという話も聞く。経産省はとにかくロシアを刺激しないことを最優先にしているようだ。

A 三井物産と三菱商事が新たな運営会社から参画を認められ、JERA、東京ガス、広島ガス、東邦ガスもこれまでと同じ内容で購入契約を結んだ。目先ではうまく対応できているように見えるが、中長期的な視点で見た場合、外交的な負債になりかねない。

 来年5月、皮肉にもLNGの半分をサハリン2から調達する広島ガスの本拠地、広島でG7サミットが開催される。各国首脳がロシア制裁について議論する最中に、ロシアから「空調が効いた涼しい部屋で会議ができるのは、ロシアのガスのおかげだ」と言われたらどうするのかな。

B LNGのスポット価格が世界的に高騰する中で中東や東南アジア、オーストラリアなどのLNGは今後、これまでと同じ条件で契約更改できなくなる。となれば、依存度を減らしていくしか方策はなく、原発の活用が重要になってくる。運用中の原発33基を全て稼働させると、LNG2000万t分に相当する量を削減できるが、これは日本の全LNG輸入量の約4分の1に相当する量だ。

「エネルギー有事下」で経産省の危機意識が問われている

―岸田文雄首相は8月24日、GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議の第2回会合で、原発再稼働や新増設に言及した。原子力政策に進展はあるのか。

岸田発言は単なる現状追認 今こそ原子力政策の再構築を

C 本来、原子力は国家の中長期エネルギー戦略の要の一つと位置付けるタイミングだ。しかし、経産省は再稼働と新増設が必要な理由として、「足元の危機」を利用しているようにも見える。GX実行会議で経産省が示した資料は、「エネルギー政策の遅滞」として、系統整備や原発再稼働などの遅れを指摘した。そして、需給ひっ迫など足元の危機を克服するために、原発再稼働や次世代革新炉の開発・建設などが必要だと唱えている。

B 需給ひっ迫を再稼働の理由にしていては、状況が打開されたとき「原発は必要ナシ」と言われてしまう。早急な再稼働と、中長期的な計画の策定は分けて行うべきだろう。

A 原子力政策は「急がば回れ」だ。いま破綻している原子力政策を、根本から再構築する必要がある。最終処分地や核燃料サイクル、国と事業者の役割分担、規制のあり方、技術開発の方向性、そのスケジュール……。政府はその大枠を提示すべきだ。今のままでは、有権者から「最終処分地はどうするのか」と聞かれたとき、政治家はハッキリと答えられない。最近の世論調査では、再稼働に半数以上が賛成している。国民の理解を得られる土壌ができ上がった今こそ、原子力政策を立て直す好機だ。

B すぐに取り掛かってほしい。稼働を停止して10年が経ち、現場での実務経験がない人が増えている。残された時間は長くない。規制委改革も待ったなしだ。三条委員会で政治が直接に指揮・命令できないが、業務監視は求められている。3・11以後、なぜ日本だけが原発を停止しながら審査を行っているのか、なぜ10年もかかっているのか、委員の選任は適切だったのか―。

A 規制委といえども、原子炉等規制法(炉規法)に基づいての規制しかできない。審査自体には政策的な関与はできなくても、そもそもの審査方法の枠組みや規制体系の見直しは、炉規法を改正できる立法府の役割だ。例えば、不服がある場合は第三者に申し出られる仕組みの導入など、改善できる点は多い。

新規制基準は、紋切り型のように「世界で最も厳しい」といわれるが、その厳しさは「質」ではなく「量」だ。「世界一厳しい規制をやっている」という政治家の言い訳のために、電力会社が苦しめられている側面もある。

B 裁判で例えれば、規制委は裁判官と検事、弁護人までを兼ねているようなものだ。被告のように扱われる電力会社は、炉が止められ、拘置所に入れられた挙句、無実を証明するまで出られない。

C 2年前、自民党政調の原子力規制に関する特別委員会で、規制庁は40年運転制限ルールは立法政策の問題と改めて確認した。また今年の同委員会では、安全審査が行政手続法上の標準処理期間である2年を遥かに超えて遅滞していることを指摘した。GX実行会議でも「運転期間延長」いう言葉が入った。今後、事態がどう進むかだ。

東電EPを襲う債務超過 狂い始めた総特シナリオ

東京電力エナジーパートナー(EP)の経営問題がついに火を噴いた。4~6月期に908億円の赤字、6月末時点で67億円の債務超過に陥り、EPが行う2000億円の増資を東電ホールディングス(HD)が引き受ける。これで10月末には債務超過を脱するものの、これほどの増資を要した背景として「今年度通期のEPの赤字は4ケタ億円後半に達する公算」(政府関係者)との見立てもあり、事態は深刻だ。

HDがEPを手助けするしか道はなかったが……

そもそも競争がし烈な東京エリアで発・販・送を3分割すればEPの経営が傾くのは自明だった。「その展開が思ったより早かった。一時はEPの特高や高圧の部分売却などの案も浮上したが、それでも規模が大きく、現状では買い手がつかない。HDがてこ入れするしかなかった」(新電力関係者)

しかし東電の使命は福島への責任の貫徹にあり、負担すべき費用は約16兆円に上る。「それなのにEPがグループ内で救済されている。これで関係者の理解が得られるのか。総合特別事業計画から一番乖離している部分だ。時間をかけてでも自ら身を切って一層の経営合理化に努める必要がある」(同)。当初から指摘される再建シナリオの破綻が、EP問題という形で表面化し始めている。

【コラム/10月7日】地域における再生可能エネルギー導入の理想と現実

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 社長室長

 日本における主力電源としての再生可能エネルギーを長期安定的な電源として普及促進することを目的として設立されたリアスプ(再生可能エネルギー長期安定電源推進協会)には、5つの委員会(①長期電源開発委員会②コスト削減委員会③電源活用委員会④電源安定化委員会⑤洋上風力委員会)がある。私は今年の6月よりその中の電源活用委員会の委員長を務めさせていただいている。この委員会の大きなテーマの1つに再生可能エネルギーの地域における普及、地産地消、地域マイクログリッドというテーマがある。月に一度の頻度で委員会を開催し、約2時間のうち最初の1時間で自治体や学識経験者、事業者の方々からこれらのテーマで現場の声を会員企業の皆様にお届けすべくご講演していただいている。これらの数か月間の委員会活動を通じて地域マイクログリッドにおける現実や課題等をお伝えしたいと思う。

 脱炭素社会の実現において、地域における再生可能エネルギーの導入というのは総論として多くの方は異論がないと思う。ではどのように実現していくのかと各論の話となると色々な課題というかハードルが見えてくる気がしている。

まず、再生可能エネルギーの地域における導入、地産地消、マイクログリッドは、誰が何のためにやるのか?という所をきちんと整理する必要があるのではと思う。大企業の場合は、SDGsという観点で年々ステークホルダー等から脱炭素社会の実現に向けた取り組みを求められていることや、資金力、人材、情報といった点においてもある程度主体的に取り組むことができると思われる。
 一方、地域ということになると「誰が」は、1次的には自治体であり、2次的には当然ながら地域住民の方々になると思う。自治体の方々(市町村首長、議会、市町村職員)及び地域住民の方々が再生可能エネルギーの導入、地産地消、マイクログリッド等の必要性を感じるという点において、現場の方々の声を聴くと、情報がなかなか取れない、人材がいない等の声が聞こえてくるのが現実だ。

更に、地域に再生可能エネルギーを導入するとエネルギーの観点単独で議論するのでなく、過疎化&高齢化の進行、産業の育成、災害に強いまちづくりといった地域が抱える課題とセットで考えることが重要だという意見が多い。
 また、取り組みを進めている方々からは、地域に再生可能エネルギーの発電所を設置する際、やはり系統の問題は避けて通れないという声もあった。

先日、ある有識者の方とお話させていただいた時には、やはり自治体によってかなり温度差があるのが現実で、本気で取り組もうとしているのはざっくり3割くらいではないかということであった。仮に事業者がある地域において自治体と連携して取り組もうと考えた場合、本気度のある自治体を探すということが重要になってくる。

そして、実際取り組みを前に進めようとすると当然、事業者が何らかの形で関わることになるが、事業者としてはやはり、採算が合うのかということになる。実際、実証実験として取り組んでいる事業者の声を聴くと補助金等の支援はあるものの、採算性に関しては大きな課題だと感じているということだった。

繰り返しにはなるが、地域における再生可能エネルギー導入は、地域課題の解決、地域ビジョンの実現の一つの手段として地産地消があり、更にその中の解決手段の一つとしてマイクログリッドがあるということになろうかと思う。

総論では賛成でも各論ではまだまだ実現に向けた課題は多々あるのが現実だ。しかしながら、時間をかけて、様々なステークホルダーの方々がそれぞれの立場で色んな意見を出し合い、また、いくつかの地域(特に人口1万5千人とか数千人とか少ない地域)で成功事例を生み出すことができれば、自分達にもできるという気持ちを持ってもらうことができると思う。少しずつ地道に積み上げていくことが大切である。

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。

対話を重ね多くの住民と向き合う 地域と共に歩む東海第二発電所

【日本原子力発電】

原電は東海第二発電所の再稼働に向け、さまざまな方法で地域住民の理解の醸成に力を注ぐ。

小規模な会合を繰り返し、住民の疑問や意見に耳を傾け、地域に根差した発電所を目指す。

 東海第二発電所の再稼働を目指す日本原子力発電は、地域との対話活動や情報発信に力を注ぐ。立地自治体である東海村をはじめ、周辺自治体と呼ばれる発電所から30㎞圏内の14自治体と小美玉市を対象に、東海第二の状況説明会を開催。住民との対話に取り組む。

今年7月からは、周辺自治体の住民とこれまで以上に顔を合わせさらに深く話す機会を増やすため、大規模ホールなどで開催していた状況説明会を小規模な会場に変更。参加者が原電への率直な思いなどを伝えやすいよう、対話型の状況説明会を始めた。

1会場の定員数を最大30人とし、東海第二の安全性向上対策や工事状況をVR(バーチャルリアリティー)動画も用いて解説する。その後、少人数のグループに分かれ、質疑応答を行う。発言をためらう人には声をかけ、発言しやすい雰囲気作りに気を配る。

参加者からは「今までは壇上と客席に距離があったが、今回は参加者からの意見をきちんと聴いてくれて、分からないことにも丁寧に答えてくれた。参加してよかった」などの感想が多く寄せられている。関心が高いのは、東海第二の安全性向上対策工事や広域避難計画、高レベル放射性廃棄物の最終処分について。脱炭素や電気料金の高騰、電力需給ひっ迫の状況を踏まえ、原子力発電の在り方についての意見交換もある。

状況説明会では原電社員と参加者が車座になって対話する

出張イベントで接点を多く 安全対策工事へ理解深める

東海第二から30㎞圏内は、国の原子力災害対策指針で原子力災害対策重点区域に定められている。

状況説明会へ足が向きにくい地域の若い世代やファミリー層には、スポーツイベントやショッピングセンターなどに出展する出張イベントで接点を持つ。出展するブースでは、気軽に楽しめるよう大型モニターを使った選択式のクイズなど、参加型のイベントを企画して集客を図り、クイズを通して万が一の避難行動などの正しい知識を持ってもらう。

地域共生部コミュニケーショングループの合田憲司GMは、なぜその答えになるのか、考えてもらうことが大切なのだと説く。「例えば、万が一原子力発電所で事故が起き放射性物質が放出された場合、家の中でどこにいるのが一番安全かというクイズがあります。

正解は家の中心部分。なぜかというと、『放出された放射性物質が住宅の屋根や庭に積もり、目に見えない放射線が屋根や壁、窓を通り抜け、家に入り込む恐れがあります。だから屋根や壁に近い空間や窓などに近づかないことが基本。家の中心部分が安心です』と説明します。そうすると皆さん納得し、記憶に残りやすいのです」

この出張イベントが好評で、昨年度は約8000人の人々が参加し対話することができた。

商業施設で原電のクイズに参加する親子

合田GMは状況説明会や出張イベントに加え、著名人を招いた講演会やセミナー、広報誌「テラchannel」の発行など、さまざまな活動を掛け合わせることで、幅広い年齢層の人々との双方向コミュニケーションを図る機会が増えてきたと手応えを感じている。

「東海第二の安全性向上対策工事、原子力発電の必要性や、万が一の避難行動などを正しく理解し判断してもらえるよう活動を進めることで、原電は信頼できる企業だと思ってもらえる関係を築いていきたい」

原電はこれからも、地域の人たちとの信頼関係づくりを一歩一歩地道に進めていく。

防潮堤の設置が進む原電の東海第二発電所

【イニシャルニュース 】「自由化よりも安定を」 経産省が狙う政策転換

「自由化よりも安定を」 経産省が狙う政策転換

 「今冬に懸念される電力の需給ひっ迫と価格高騰。深刻化の一途をたどるエネルギー危機を背景に、経産省では電力システム改革を改革する議論に着手しようとしている」

電力業界の関係者がこう話すように、自由競争促進を旗印に突き進んできた電力システム改革が大きな曲がり角を迎えているようだ。最近、経産官僚のZ氏が某会合の場で次のような主旨の発言を行い、参加者の関心を引いた。

「(エネルギー事業ではこれまで)安定供給がないがしろにされてきたのではないか。その揺り戻しが起きている。自由競争よりも安定という課題が浮上しており、そこに政策の手を打っていく局面を迎えている」

「公的支援がないと、電力の安定供給が確保できなくなる状況にきている。火力の退出に歯止めを掛け、安定した供給力を確保するため、火力部門は総括原価の世界に戻す。電気料金の上昇は覚悟の上で、安定供給上必要な火力に対して資金を付ける。もはや自由化ではない」

別の関係者によれば、電気事業法改正案やJOGMEC法改正案など、近年主流のエネルギー束ね法案を来年の通常国会に提出する動きが水面下で進んでいるという。もちろん、キーワードはエネルギー危機対応だ。

最大の懸念は、エネルギー政策の転換を議論する審議会の委員が従来と同じ顔触れでは、従来政策の延長線上の議論に陥る可能性があること。「システム改革を改革するのなら、審議会メンバーの総入れ替えが不可欠」(前出の電力関係者)。果たして、経産省にその覚悟はあるのか。

東京五輪の贈収賄事件 業界に広がる不快感

東京五輪・パラリンピック組織委員会の元理事への贈収賄事件で、エネルギー業界にさざ波が広がっている。業界内の東京五輪のスポンサー企業が、この贈収賄事件に関わったかのような無責任な憶測にさらされ、業界内にはそれに憤る見方がある。 

E社グループ会長S氏が8月に突然辞任し、公職も全て退いた。豪放磊落な人柄で、エネルギー業界の政治問題の窓口にもなり、評判の良かった同氏の動きを巡って驚きが広がった。その直後に、東京地検は組織委員会の理事と紳士服大手のAOKI首脳を逮捕した。

東京五輪にはE社も深く関わった

E社グループは東京五輪に熱心に取り組んでいたためS氏の辞任との関係の憶測を生み、経済誌Sでも報道された。ところが二つの出来事は全く関係ない。「S氏は健康上の理由で『他人に迷惑をかけられない』と自ら身を引いた。変な憶測だ」と、業界関係者は憤慨する。

スポンサーになったT社でも、東京五輪と同社の関係が社内調査され、何も法的な問題がないことを確認したという。五輪支援に取り組んだ同社幹部は「都からの要請で支援企業に加わった。真面目に取り組んだのに、イメージを下げかねないことに巻き込まれて迷惑している」と、組織委員会に怒りを向ける。

資金力のある大手エネルギー事業者は大掛かりな公的イベントで、協力してほしいという声がかかりやすい。2025年開催予定の大阪万博でも電力、ガス、石油各業界はパビリオンの出展を計画する。

「新型コロナ禍の影響もあって、東京五輪の広告効果はそれほどではなかった。お金をばらまいてまで率先してお祭りに参加するほどの経営の余裕はないのに、おかしなことに巻き込まれたくない」(前出幹部)。こうした憶測は、エネルギー業界と公的イベントの関わりを見直すきっかけになってしまうのか。

LPガス企画官が消滅 政策の行方に黄信号

今年7月に発表された資源エネルギー庁人事。その一覧を見たLPガス業界関係者に衝撃が走った。石油流通課内にあったLPガス企画官のポストがなくなったのだ。新たに石油精製備蓄課内に「石油・液化石油ガス備蓄政策担当企画官」が設置され、LPガスを担当する役職は残ったが、石油と兼務の備蓄政策が担当。LPガス事業を専門に担当する役職はエネ庁から事実上消滅した形だ。今後は、これまで企画官が担当した業務を石油流通課長が兼務する。

この発表に先立って行われた、全国LPガス協会の全国会議である事件が起こった。東京都代表O氏が経産省OBの着任ポストである専務理事の給与額について批判したのだ。その後、専務理事は自ら辞任を申し出たという。都内のLPガス会社社長は「この一件で、企画官のポストがなくなったとのうわさが広がった」という。

LPガス関係者の不安は尽きない

元業界団体幹部B氏は「この件は氷山の一角。他にも二人の間で齟齬が生じていたと聞く。企画官ポストの消滅問題はもっと根深い。『無償配管・貸与などによる料金不透明に関する問題』が代表するように、この数十年間、エネ庁が打ち出した政策に熱心に取り組まず、LPガス業界が成し遂げたことは何一つない。これでは見切りをつけられて当然だ」と嘆く。

石油とLPガスの産業規模を比較すると、石油のほうが圧倒的に大きい。石油流通課長が兼務するにしても、石油政策を優先的に進めるだろう。LPガス政策の行く末に黄色信号が灯る。

鉄鋼業界で初 元環境次官が天下り

鉄鋼業界で初となる天下り人事が話題騒然だ。N社は9月1日、環境次官経験者のN氏が顧問に就任したと発表した。N氏は次官任期中になんとか炭素税導入の目途をつけようと奔走した人物。政府関係者からは「政府が志向するGX(グリーントランスフォーメーション)移行債で炭素税議論に火が付いたことを踏まえ、産業界が『総大将』を人質に取ったとしか思えない」(X氏)といった声が挙がる。

また、N社では経済産業省OBで元産業技術環境局長S氏が常務を退いたものの、6月からは常任顧問となり社に残った。しかもN社への経産省OBの天下りは、以前の審議官クラスから局長経験者へとレベルアップしたようだ。「ここにN氏が加われば二枚看板になる。N氏は現在顧問だが、来年あたりには役員になるのだろう」(別の政府関係者Y氏)

N氏の人事を巡っては別の見方も。N社は現在、K市の製鉄所でのシアン流出問題に揺れている。今回の問題は事故ではなく記録改ざん的な内容であり、あまり大きく報じられてはいないものの、その責任問題はおいおいかなりの大事になりそうだ。

「過去の同様の例では製鉄所長や環境担当の責任者が更迭されている。N社は県と政府との間で責任の所在の落としどころを探ることになるが、N氏が社にいることで、環境省の公害対策部署との接点を持つという意味合いもあるのではないか」(先述のY氏)

異色の人事に関係者の目が注がれている。

電力債発行に影響も 日銀総裁に早期退任説

大手電力会社の社債発行ラッシュが続いている。天然ガス・石炭などの価格高騰により財務状況が急速に悪化、資金調達を急ぐ必要があるためだが、来年4月の黒田東彦日本銀行総裁の任期切れを見越してのことでもある。

8月に145円に迫った円ドルの為替レートは、年末には160円を予想する声も出ている。主な原因は日米の金利差。米国では連邦準備委員会(FRB)が政策金利を0・5~0・75ポイントずつ上げ、22年末には3・5~4%になるもよう。一方、デフレ脱却を最優先とする黒田氏の在任中、日銀はゼロ金利政策を続けるが、退任後、円安是正のために金利を上げる可能性がある。電力会社としては、「社債を出すなら黒田氏の在任中」と、来春まで有利な条件を探れる。

だが、「黒田氏が任期を待たず早ければ年内、遅くとも来年3月までに退任するかもしれない」(政治評論家K氏)。インフレが進む中、円安進行で物価の上昇に拍車がかかる懸念がある。統一教会問題で国民から強い批判を受けた政府・自民党にとって、物価上昇を放置することは政権維持に致命傷になりかねない。K氏は「岸田政権は既に黒田氏を辞任に追い込む腹を固めた」と見る。

電力会社はまだまだ資金調達が必要。担当者は対応を急いだ方がいいかもしれない。

エネ庁が示した「再稼働加速」 規制委問題に踏み込めるか

「原子力発電所については、再稼働済み10基の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を取っていく」

適合審査が続く北海道電力泊原発

8月24日の第二回GX実行会議の席上、岸田文雄首相が原発再稼働や次世代革新炉開発を推進していく考えを示したことで、メディアはこぞって「岸田政権が脱原発路線の方針転換」と報じた。確かに、岸田首相が原発推進の方向性に初めて言及した意味は大きいが、その中身をよく見てみると、「現状追認の域を出ていない」(電力関係者)との評価がある。

そうした中、資源エネルギー庁は9月15日の有識者会合で「GX実行会議を受けた電力システム改革に係る論点について」と題する資料を提示。「今後の方向性と対応案」の項目で、安定供給に必要な供給力の確保策として「原子力発電所の再稼働の加速」を打ち出した。事情通が解説する。

「北海道電力泊など、原子力規制委員会の安全審査の遅れで長期停止を余儀なくされている原発をどう再稼働させていくのかが次なる課題。審査体制の見直しなくして加速もなし」(電力関係者)

3・11以降の原子力施策の停滞を招いた規制委の在り方を巡る議論に踏み込めるのか、注目だ。

太陽光発電巡る乱開発の実態 行政はトラブルを防げるか!?

再生可能エネルギーの普及拡大を旗印に、乱開発がいまだに続く太陽光発電事業。

住民とのトラブルや豪雨などによる被害が相次ぐ現状に、国・自治体はメスを入れられるのか。

 静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害から1年以上が経過した2022年9月6日、土石流の起点とされる伊豆山の現場に足を踏み入れた。今も土砂崩れの爪痕がはっきりと残っており、崩落の一因といわれる盛り土は放置されたままだ。

崩落地をよく観察すると、黒く見える盛り土と茶色く見える山の土とがくっきりと分かれている。地面には産業廃棄物と思われるプラスチック片が散乱。現場周辺の山中には冷蔵庫などの家電が、無造作に打ち捨てられたまま放置されていた。盛り土というより産業廃棄物を土で覆い隠した印象だ。いまだ現地の復興が進まない理由は、起点となった土地の現所有者と前所有者、そして行政との「責任の押し付け合い」にある。

静岡県は、土地の前所有者である不動産会社「新幹線ビルディング」に対し、今年9月5日までに盛り土の撤去工事を始めるよう措置命令を出した。同社の元代表である天野二三男氏は県の命令に応じない姿勢で、6日には県が代わりに撤去し、費用を請求する行政代執行の方針を決定した。森副知事は「いち早く撤去が進まないと復旧復興が遅れる」と話す。

一方で行政側の姿勢も疑問視された。9月5日には遺族らが「盛り土の危険性を認識していながら、県や熱海市は適切な措置を取らなかった」として、市や県を相手に損害賠償を請求する裁判を起こした。現所有者である麦島善光氏も6日に「市が必要な措置を取らず、土石流が発生し土地が使えなくなった」として、齊藤栄熱海市長を相手に10万円の賠償を求め静岡地裁に提訴。その麦島氏は天野氏と共に、土石流災害の犠牲者の遺族らから集団訴訟を起こされており、事態は訴訟合戦の様相だ。

そうした中、熱海市議会が8月26日に開いた百条委員会で、麦島氏側が設置した太陽光発電施設について、市職員から「宅地造成規制法に基づく許可基準に沿ったものではない」と違法状態を認める証言を得られたのは、被災者にとって朗報と言っていいだろう。

崩壊現場から西へわずか4kmほどの静岡県函南町軽井沢地区には、約65‌haに及ぶ山林を切り崩し、約10万枚の太陽光パネル(総出力2万9800kW)を敷き詰めるメガソーラー計画がある。奇しくも、熱海土石流災害の4日前、計画に反対する住民団体が川勝平太・静岡県知事の元を訪れ、指導を求める要望書を提出。その後、函南町長が同計画には防災上の危険などがあると不同意の判断を示したが、事業者側は計画を撤回せず、事実上の膠着状態に陥っている。

崩壊したままの熱海土石流の被災現場

豪雨などの被害相次ぐ 住民説明会もおざなり

問題解決が進まない中、太陽光事業者による乱開発は全国的に横行。一部の施設や周辺では豪雨などによる被害が相次いでいる。昨年9月、集中豪雨で熊本県南関町のメガソーラー建設現場から大量の土砂が河川や付近の農地に流出した。県によると、事業者側は洪水調整池の防災工事完成を後回しにして土地の造成計画工事を行い、度重なる指導にも耳を傾けなかったという。蒲島郁夫・熊本県知事は会見で「防災工事と計画工事が同時に行われていた」と指摘。19年に林地開発申請を防災工事の完成を前提に許可したことについては「適切だった」と弁明した。

そのほか、今年7月には鹿児島県姶良市の山間部で土砂崩れが起き、付近の住民が間一髪で難を逃れた。土砂は山の上で進められているメガソーラーの整備予定地から、造成工事の資材と共に流れてきたことが判明。土砂崩れの原因は大雨による排水パイプの目詰まりで、造成地から近くの沢を伝い流出したという。業者側は被災者対応と防災対策の見直しを徹底するとしている。

林野庁によると、大規模なメガソーラー造成地の約1割で土砂災害が発生。地域住民の不安は募る一方だ。が、事業者による住民説明会が適切に実施されているかといえば、必ずしもそうではない。

福岡県飯塚市の白旗山に広がるメガソーラーの建設事業では、県の再三の要請にもかかわらず、事業者は説明会を開かないまま、パネル設置工事を強行した。飯塚市の片峯誠市長は9月13日の市議会本会議で「強風や大雨の可能性が増している現状で、パネル設置近辺の住民の不安は大きくなっている」として、工事の完了検査終了後に福岡県と飯塚市、事業者の3者による住民向け説明会を開くよう県に求める意向を示した。

関係者によれば、悪質事業者の中には、一部の推進派のみに限定して説明会を開き、既成事実化するケースが散見されるという。

急務の悪質事業者対策 省庁横断の提言も不透明

そして地域の不安に拍車をかけるのが、造成地の盛り土が悪質事業者の手によって産廃の不法投棄場と化している実態だ。象徴的な事例として、ソーラーパネル販売などを手掛ける「ディーエスエス」がある。同社の木下誠剛社長らは、愛知県南知多町でずさんな工事を行い、行政に届け出が不要な10‌kW以下の太陽光パネルを91カ所建設。産廃不法投棄の疑惑も浮上し、木下社長は真っ向から否定していたが、今年8月、三重県東員町の太陽光発電建設現場で、パネル梱包材や樹木などの廃棄物約10・5tを不法投棄した疑いで逮捕、起訴されている。

このような悪質事業者による乱開発を、なぜ行政は率先して食い止めることができないのか。これまでに宮城、山形、山梨、兵庫、和歌山、岡山の6県と192の市町村が、太陽光開発を規制する条例を制定している。ただ全国的な広がりという意味では、まだまだの状況だ。「熱海の土石流災害を契機に、盛り土条例を制定した静岡県こそ、太陽光条例を制定すべきだ。環境問題にうるさい川勝知事がなぜ条例制定に動かないのか、不思議でならない」。メガソーラー反対運動を展開する住民運動の幹部は声高に訴える。

国の動きはどうか。経済産業省など関係4省庁は7月28日、問題のある太陽光設備を優先的に調査し、法令違反が見つかった事業者に対しFITなど交付金支払いを留保するといった提言案をまとめた。資源エネルギー庁の井上博雄・省エネルギー新エネルギー部長は「一部の不心得の方々によって地域トラブルが発生し、再エネに対する一般的感覚を悪くしている」と指摘するが、現実はそんなレベルではない。

メガソーラー推進の弊害がここ数年で顕著に表れた以上、悪質事業者の排除は急務だ。法整備での抜本的な対策が求められる。

規制料金の維持に限界 中国電が値上げを検討へ

中国電力は9月13日、規制部門を含めた全ての電気料金の値上げを検討すると発表した。これまで2022年度の通期業績予想は未定としていたが、燃料高騰などの影響を受けて過去最大の赤字予想を公表。売上高は21年度実績と比べて約4割増の1兆6200億円に増えるものの、純損失は1390億円まで膨らむとの見通しを示した。

燃料価格が4倍になった石炭火力発電が4割を占める(写真は三隅発電所)

会見で瀧本夏彦社長は「燃料価格と電力市場価格が例を見ないほど急激に高騰した」と指摘。「企業努力で対応できる限界を大きく超えた」とし、価格高騰がこのまま続けば「値上げをせざるを得ない」と述べた。中国電は東日本大震災以降も規制部門の料金を値上げせずに維持してきた。それも限界となり値上げの検討に入った。

現状を分析すると値上げ不可避の状況が浮かぶ。原子力規制委員会の審査に合格したとはいえ、島根原子力発電所2号機の再稼働時期は見通せていない。電源に占める石炭火力は4割近くあり、石炭価格は直近1年で4倍ほどに急騰している。制度的に燃料高騰分の100%を電気料金に転嫁できない上に、燃料価格が安定している原発も動かせない状況。値上げするほかに打つ手はない。 

中国電力は役員報酬のさらなる引き下げを明らかにした。社内からは管理職や一般職の給与カットを懸念する声も聞こえる。それらもあってか、値上げ幅や時期は未定だが、「検討」に対する周囲の反応に否定的なものは少ない。地元の中国新聞や大手メディアも批判的な記事を載せていない。

規制部門の料金値上げは苦渋の判断になるだろう。だが、事業継続のために値上げは欠かせない状況になっている。

政府が目論む「再エネ国防化」 EEZ内の洋上風力推進で法整備か

政府が水面下で検討している排他的経済水域(EEZ)の開発促進で、来年にも新制度が構築される見通しだ。

その中で、洋上風力発電が日本の主権を明確にするシンボル的存在に浮上する可能性が出てきた。

 「あと16㎝で沈没の危機にある」。防衛省関係者は危機感をあらわにした。鉄製の消波ブロックとコンクリートで周囲を覆われている日本の最南端、沖ノ鳥島のことだ。

2021年12月、東海大学と東京都が合同で沖ノ鳥島の大規模調査を実施した。その結果に政府内がざわめいた。気候変動による海面上昇の影響で、満潮時にわずか16㎝しか顔を出さず、沈没の危機が現実味を帯びてきたからだ。もし沈めば、日本は島から200カイリ(約370km)もある広大な排他的経済水域(EEZ)を失うことになる。

台湾とグアムの間に位置する沖ノ鳥島が消滅すれば、中国と台湾が紛争に発展した場合、中国は間違いなく沖ノ鳥島付近を陣取る。沖ノ鳥島の問題は、日本のみならずアジア太平洋の安全保障が危機にさらされる上に、開発できる海域を失うという日本の経済的権益を損ないかねない一例として重要な問題提起となる事実だ。

重い腰を上げた政府 EEZ内の権益明確に

政府内では今、23年にもまとめる次期海洋基本計画の策定に合わせ、EEZ内の事業開発を促進させるための法整備の検討を水面下で進めている。これまで中国を刺激することを懸念し、EEZの包括的な法整備を避けてきた政府がようやく重い腰を上げた。

日本は国連海洋法条約に基づき、07年に「海洋基本法」を施行した。海洋の開発などについて総合的に定めた法律だが、そもそもEEZ内の開発などについては範囲に入っていない。「EEZ及び大陸棚に関する法律」というものがあるが、国内法を適用すると定めているだけで強力な規定がない。開発については数年に一度、閣議決定される海洋基本計画に頼っており、明確な法整備のない宙ぶらりんの現状が続いている。

政府はこの従来方針から一歩踏み込む。日本近海での将来的な安全保障上の懸念も想定してのことだが、経済的な側面からの「国益」にも配慮する。EEZの具体的な開発などを包括的に規定する「EEZ新法」の策定、もしくは既存の法律を改正するなどして、EEZ内の権益を明確にする。既に各省間での協議を始めている。

EEZ内の主権を明確に(写真はデンマークの洋上風力)

焦点の一つに浮上しているのが、EEZ内で洋上風力発電の開発を促進させることだ。現在、外務省、防衛省をはじめエネルギー政策を担当する経済産業省、環境影響評価(アセスメント)を担う環境省などの関係省庁が検討を進めている。具体的な内容の詰めはこれから本格化するが、政府関係者は「23年の通常国会には何らかの形を示したい」と見通す。

洋上風力は50年カーボンニュートラルを標榜する日本にとって、温室効果ガスを排出しない電源の切り札的存在になりつつある。政府は40年までに最大4500万kW導入する目標を立てているが、現行制度のままでは無理だという認識が広がっている。

洋上風力の整備は海洋基本法で策定が義務付けられた海洋基本計画を契機に、港湾法の改正と再エネ海域利用法が制定され、事業者の「占用公募制度」が創設された。国が一定の条件を満たした海域を洋上風力の「促進区域」に指定し、その区域であれば、事業者は最大30年間独占して事業ができる。最近では、秋田沖など3海域で三菱商事が独占して話題をさらったが、極めて限定的な制度だ。

再エネ海域利用法の適用は、12カイリ(約22‌km)の領海内と範囲が狭い。加えて沿岸域には漁業権を持つ漁業者や自治体との難しい交渉問題が常につきまとう。このまま現状の制度を追認するだけでは、4500万kWという途方もない導入量を確保することは難しい。政府内ではこの再エネ海域利用法の適用範囲をEEZ内まで広げることも視野に入れているという。政府関係者は「新法にせよ法改正にせよ、EEZ内での開発ができるよう一刻も早い法整備が必要だ」と説明する。 

日本の領海やEEZの面積は、約447万㎢と世界第6位だ。EEZを全て使えるようになれば、欧州並みの大量導入が可能になり、4500万kWの目標は夢物語ではなくなる。しかもEEZ内は「障害物がなく、風の強さもあり風況がいい。洋上風力の最適地ともいえる」(風力事業関係者)。

「メリット計り知れない」 再エネに新たな役割も

沿岸域とは違い開発環境は格段に上がる。前出の風力事業者は「EEZ内なら難しい問題が起きにくい。開発するために必要なコストなども計算しやすい。英国沖などのように何百基という数の風車を並べることも可能だ」と話す。

制限がある日本を嫌って韓国や台湾にシフトする動きを見せる海外大手風車メーカーを呼び戻すことにもつながり、「メリットは計り知れない」(政府筋)という。

EEZ内での洋上風力開発は国際的には何ら問題がない。海洋法条約は経済的な目的での活動について沿岸国に対し、具体的な制限を加えるものではないというのが通説だ。洋上風力も当然該当する。既にデンマークなどではEEZ内の洋上風力開発について、自国の権利を明確に定めており、実際にEEZ内での開発も進めている。仮に中国が警戒感を強めても、国際法上の正当性を主張できる。

もちろんEEZ内の開発には沿岸域とは違う問題も発生する。例えば発電した電力をどう陸地まで送るのか、環境アセスにどういう問題があるのかなど検証すべき点は多い。今後、有識者を交えた議論も必要になるだろう。

これまでの政権では中国とのあつれきを気にしてEEZ内の開発の制度設計を避けてきたきらいがある。事業者や有識者からはかねて制度整備を求める声が上がっていた。EEZ内の洋上風力開発が進めば、日本の主権を国外に明確に示すことができる。それが領海で違法な振る舞いを繰り返している中国へのけん制にもなり得る。再生可能エネルギーは日本の脱炭素を実現する役割にとどまらず、主権を守るためのツールとしてこれまでとは違う新たな役割を担うことになりそうだ。

八重洲エネルギーセンターが始動 再開発エリアと地下街に供給開始

【八重洲再開発】

東京駅の八重洲エリアに、最高水準の設備を揃えたエネルギーセンターが誕生した。

エネルギー供給の拠点として防災力の強化や省エネ、CO2削減をミッションとしている。

 東京駅の八重洲エリアで、自立分散型のエネルギー供給を行う「八重洲スマートエネルギープロジェクト」が、9月1日に本格始動した。このプロジェクトは、三井不動産と東京ガスが共同で設立した三井不動産TGスマートエナジー(MTスマエネ)が、7月31日に八重洲エネルギーセンターを完工。同センターから、東京駅八重洲口側の大規模再開発エリア「東京ミッドタウン八重洲」と、既存施設の地下商店街「八重洲地下街」に、電気と熱を供給するというものだ。

八重洲スマートエネルギープロジェクトは、2019年4月の「日本橋スマートエネルギープロジェクト」、20年4月の「豊洲スマートエネルギープロジェクト」に続き、MTスマエネ社が手掛けるプロジェクトの第三弾となる。同センターは東京ミッドタウン八重洲と八重洲地下街のほか、現在隣接地区で進められている「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」においてもエネルギーを供給する予定だ。

東京ミッドタウン八重洲は「八重洲セントラルタワー」と「八重洲セントラルスクエア」で構成。セントラルタワーは地上45階と地下4階建て、セントラルスクエアは地上7階と地下2階建てで、延床面積は合計約28万9750㎡となる。主な用途は事務所、店舗、駐車場のほか、セントラルタワーはホテルや小学校、バスターミナルなど、セントラルスクエアは子育て施設や住宅などの予定だ。八重洲エネルギーセンターの設備は、セントラルタワーの地下4階と地上5・6階に置かれている。

「東京ミッドタウン八重洲」完成予想イメージ

多様な機器で安定供給 核となるのは高効率CGS

エネルギー供給の要は、川崎重工業製の高効率なコージェネレーションシステム(CGS)だ。このCGSは地下4階に設置され、中圧ガスを燃料に発電する。発電した電力は、系統電力と合わせられ地上5階にある電気室の変圧器で、各需要家の受電設備に応じた22‌kⅤと6・6kⅤの2種類の電圧に変換される。

CGSでの発電に伴い発生する廃ガスと廃温水も、熱供給で無駄なく活用する。廃ガスボイラーを用いて廃ガスの熱から蒸気を、廃温水と蒸気をジェネリンクに投入して冷水を製造。このほか、電気で稼働するターボ冷凍機と蓄熱槽で冷水を、中圧ガスを燃料とする蒸気ボイラーで蒸気を作り出す。こうして生み出された電気と熱は、東京ミッドタウン八重洲内の事務所、店舗などの各施設と八重洲地下街に供給される。

こうした機器を組み合わせた運用には、複雑な制御が求められる。安全かつ安定的で、高効率な運用は中央監視システムが担う。

八重洲スマートエネルギープロジェクトの狙いは、日本の交通と経済の重要拠点である八重洲エリアの都市防災力と環境性のさらなる強化にある。

使命は防災力と環境性向上 緻密なエネマネがカギ

都市防災力向上のカギとなるのはCGSだ。八重洲エネルギーセンターに導入されているCGSの燃料は、災害に強い中圧ガスを採用。電力供給においては、非常時に系統電力が停止したとしても、中圧ガスの供給が継続する限り、CGSで発電した電力の供給が可能だ。加えて、重油を燃料とする非常用発電機も装備しており、電気、ガス、重油による「燃料の3重化」で、あらゆる緊急事態に備える。

また、同センターが対応するのは災害だけではない。完工直後の8月上旬、需給ひっ迫の要請を受け、電力を融通する対応も行った。

熱供給においても、CGSの廃熱を利用するジェネリンク、ガス・重油切り替え式の蒸気ボイラー、電気で稼働するターボ冷凍機など、異なる燃料での熱供給の手段を有する。例えば、系統電力で停電が発生した場合、CGSの稼働で年間ピークの50%以上の電気・熱の供給を継続できる。

八重洲エネルギーセンターのもう一つの使命は、環境性の向上だ。電気と熱を合わせた高いエネルギー効率や、最新のICTによる最適運転の計画・制御などで、その実現を目指している。

同センターのCGSの発電効率は約48・5%と、高いエネルギー効率を誇る。発電時に発生する熱の有効活用で、全体では約77%のエネルギー効率を実現。CO2の排出量も一般的なビルと比べ、約26%削減されているという。事業推進部副部長・緒方隆雄氏は「CGSをはじめ、八重洲エネルギーセンターの設備はすべて最高水準のものを導入している」と話す。

こうした高い性能を持つ機器を効率よく運用するためには、最適な運転計画や制御が求められる。同センターでは、最新のICTを活用し、過去の実績や天気予報などからエリア全体のエネルギー需要を予測。その予測に対し、高効率かつコストダウンが可能な1時間ごとの運転計画を立案する。当日の実際の需要を踏まえ、補正しながら運用を行っていく。

このほか、八重洲エネルギーセンターでは、使用電力の実質的なグリーン化を実現する。同センターから供給する電力に、三井不動産が保有・開発した太陽光発電所の環境価値を「トラッキング付非化石証書」として付与することで実質的な再生可能エネルギーとして電力を提供、企業のRE100への取り組みに貢献する方針だ。

最新かつ最高水準の機器や複雑なエネルギーマネジメント、都市防災、環境への配慮など、八重洲エネルギーセンターの先進的な取り組みに今後も注目だ。

世界各地を襲う異常気象 エネルギーに深刻な影響も

世界各地で異常気象が猛威を振るっている。パキスタンでは大雨による洪水の影響で、少なくとも約3300万人が被災したと発表。パキスタン政府は「国土の3分の1が水没した」と各国に支援を要請している。

パキスタンでは国土の3分の1が水没か(AFP=時事)

一方、アメリカ西部カリフォルニア州では、最高気温47℃を記録する猛暑で電力需給がひっ迫。自主的な節電を呼び掛ける事態になっている。カリフォルニア州は将来的な再生可能エネルギーへのシフトを表明しているが、電力不足で火力発電を再稼働させるなど方針の転換を余儀なくされた。

欧州では干ばつ被害が深刻だ。偏西風の蛇行による熱波で、イタリア最大の河川、ポー川では水位が通常の10分の1ほどに低下。EU全体で「過去500年で最もひどい干ばつに直面している」(欧州メディア)と言われ、農作物への影響が懸念されている。また、川の水位低下により、輸送船で運ぶ石炭の量も減少しており、今冬の欧州の石炭火力積み増しにも影響が出そうだ。

中国でも1961年の統計開始以来最も暑い夏を迎えた。揚子江流域では歴史的な干ばつで水力発電用の水が足りず出力が低下。四川省周辺の米アップルやトヨタ自動車の工場が一時操業を停止するなど、多くの製造業に影響が出た。中国当局は8月30日、揚子江流域の熱波や干ばつの被災者が約3700万人に達したと発表。9月以降も干ばつが深刻化する可能性があるとしている。

保険仲介会社によると、今年1~6月の干ばつによる被害額合計は、全世界で132億ドルに上るという。エネルギー供給問題を抱える各国に、異常気象の影響が重くのしかかっている。