【電力事業の現場力】四国電力労働組合
新型コロナ禍での西条発電所1号機のリプレース工事を予定通り完工。
伊方発電所周辺地域を対象に、対面形式による訪問対話活動を再開した。
昨年6月、西条発電所1号機が最新鋭の超々臨界圧(USC)石炭火力発電へと生まれ変わり、営業運転を開始した。
西条旧1号機は昭和の高度経済成長期に急増した電力需要の増加に対応するため、1965年11月に石油火力発電所として運転を開始。70年代にはオイルショックに直面し、石炭へと燃料転換。半世紀以上にわたり発電を続けた旧1号機だが、経年化が進んだことなどを踏まえ、リプレースを決定。2019年6月に着工した。

2号機の運転を続ける中でのリプレース工事は大忙し。日常業務をこなしながら、旧1号機の廃止作業と新1号機の新設工事を同時に進める必要があった。組合として苦心したのは職場の安全衛生対策と労働時間管理だ。安全かつ組合員の健康面に配慮しながら、長時間労働が常態化しないよう、所内応援ができるように労使で対話を重ねた。
最も苦労したのは新型コロナウイルス禍への対応だった。海外で製造する機器が各国のロックダウンなどの影響で届かないことも。また感染対策を取っているとはいえ現場は人が密集せざるを得ず、感染者が発生して工程は遅延。だが機器の国内製造への切り替えや作業員の感染拡大防止の徹底、人員増強など関係者が一丸となって遅延を挽回し、当初の計画通りの運開を達成した。

再エネの最大限導入を目指す中、その出力変動に対応するため、火力発電所は調整電源という重要な役割を担う。今後も、さらなるCO2排出量削減に向けて、アンモニア混焼の導入検討などを加速していく予定だ。
約2万6000戸を訪問 住民と直接関わる好機
四国地域の安定供給を支える「大黒柱」といえば伊方発電所。東日本大震災後、16年に再稼働を果たし、安全・安定運転を続けている。
労使で力を入れるのが、1988年以来、約35年にわたり継続して実施している訪問対話活動だ。発電所から20㎞圏内の約2万6000戸を一軒ずつ訪問し、発電所に関する意見・質問を伺うとともに、安全性に対する取り組みを説明している。
近年は新型コロナウイルス禍により非対面で活動していたが、昨年4年ぶりに対面形式での活動を再開し、延べ1300人の社員が参加した。地域の人々からは、「今後とも安全を最優先に伊方発電所の運営にあたってもらいたい」「透明性の高い情報公開をお願いしたい」といった意見が多くあった。

訪問活動は2人一組みとなり、1日30〜40軒の家庭に足を運ぶ。近年は事業所の統廃合などもあり、地域の人と直接関わる機会が減っている。こうした中、訪問対話活動は地域の人と接点を持つ数少ない機会だ。活動後、若手社員からは「勉強になった」「また参加したい」との感想が聞かれたという。
慣れない土地で普段と異なる活動に従事することで、知らず知らずのうちに疲労が蓄積することもあろう。安全に活動を終えられるよう、組合は活動拠点への陣中見舞いを実施。従事する社員を激励した。
4年ぶりに地域住民との直接対話による実施が叶った訪問対話活動。伊方発電所の安全・安定運転には、地域との信頼関係が大前提だ。今後も地域との信頼関係の要である訪問対話活動を継続し、受け継いでいく。