カーボンニュートラル実現に向け、家庭部門では省エネ、非化石転換、DRの「三本柱」に取り組む。
2023年度の補正予算では経産、国交、環境3省連携の省エネ支援で4215億円を計上している。
2050年カーボンニュートラル(CN)実現の鍵を握るのが業務・家庭部門の省エネだ。資源エネルギー庁によると、業務用、家庭用、運輸など、くらし関連部門のCO2総排出量は日本全体の約5割を占めるという。
この対策として国が進めているのが、省エネと非化石転換、デマンドレスポンス(DR)の三つだ。家庭や中小企業の省エネは産業部門に比べて、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が少なく、省エネへの取り組みによる金銭的メリットは必ずしも多くない。このため、需要家にとっての省エネインセンティブが弱く省エネが進みにくいといわれている。
そこで、家庭部門では、産業部門のような直接的な規制ではなく、省エネを行う消費者行動を促す間接的な施策が主に採られている。代表的なものに、資源エネルギー庁が21年に創設した「省エネコミュニケーション・ランキング制度」がある。エネルギー事業者が需要家に対し、エネルギーに関する情報提供を行い、一層の省エネに取り組んでもらうことを目的としたもので、電力会社と都市ガス会社、LPガス会社を対象に、省エネに関する情報・サービスの提供状況を調査し、ランキング形式で評価・公表するものだ。

例えば、太陽光発電や蓄電池などの設備を需要家に初期費用ゼロで提供する条件で電力購入契約を結ぶ、PPAサービスなどの存在を知らせるのが代表的だ。住環境計画研究所の鶴崎敬大研究所長は「エネルギー事業者が家庭向けに手軽に再エネ設備や蓄電池を導入できることを発信し、需要家が省エネ行動を促進する良い流れをつくっている」と評価する。
住宅の省エネ支援に注力 高効率給湯器導入を促す
23年度の補正予算では、経済産業省、国土交通省、環境省の3省連携による住宅省エネ化支援で4215億円が盛り込まれた。
同補助金事業の柱となるのが、高効率給湯器の導入だ。家庭部門のエネルギー消費量の約3割を占める給湯器を、高効率品に更新する効果は大きい。最近は、再生可能エネルギー拡大に伴う出力制御対策や寒冷地における光熱費の高額化も問題となっており、設備更新を後押しする。補助額は、ヒートポンプ給湯機「エコキュート」の昼間の余剰再エネ電気を活用できる機種で10万円、家庭用燃料電池「エネファーム」のレジリエンス機能搭載機種で20万円、ヒートポンプ給湯機とガス給湯器を組み合わせたハイブリッド給湯機の昼間の余剰再エネ電気を活用できる機種で13万円となっている。
ハイブリッド給湯機では、リンナイが「ECO ONE X5」シリーズの新モデルとして、屋外コンセント対応のプラグインモデルと、マンション向けの集合住宅専用モデルを展開する。プラグインモデルはシステム全体の電力を監視しヒートポンプ運転時の消費電力を低減し、既設の屋外コンセントを使用可能にした。設置のハードルを下げることで、従来の給湯機からの交換を促し、既築住宅の省エネを後押しする。