【論点】LPガス商慣行の是正/角田憲司・エネルギー事業コンサルタント
LPガス商慣行の是正を目指す液化石油ガス法の改正省令が4月2日に公布された。
一部7月2日に施行されるが、これを節目にした実行段階における検討の論点を考える。
商慣行是正の神髄は「LPガス事業者・産業が背負うコストに本来家賃に含まれるものを入れ込ませないこと=異物混入の禁止」である。これを許せばその分LPガス料金が高くなり、それがあだとなってLPガスが消費者から選ばれないエネルギーになる。「異物混入の禁止」をフローベースで早期かつ確実に実現することが何より大事である。
「異物」に着目して省令改正のポイントを整理すると表のようになる。留意すべきは施策間でカニバリゼーションが起きても「異物混入の禁止」を優先して運用することである。

現場の混乱回避へ グレーゾーンつぶす運用を
ただ、今般の改正では「どんな異物もLPガス料金への混入を認めない」とはなっていない。「過大な営業行為の制限」の条項では賃貸オーナーや建売業者などへの正常な商慣習を超える(=過大な)利益供与が禁止されるのみであり、正常か過大かの判断も一義的には各事業者に委ねられる。さらに賃貸集合ではオーナーらに設備貸与した費用の回収分を新規の入居者のガス料金に計上することが禁止されるが、厳密な意味での営業行為規制ではないなど、ややリジット(厳格)さに欠ける。ゆえに法令の隙間や独自解釈による規制の抜け道も作りやすい。「グレーケース」を現場から提起し、場合によっては「ノーアクションレター制度(法令適用事前確認手続)」の活用など、LPガス事業者と規制当局で詳細な確認を行い、グレーゾーンを確実につぶす運用が重要となる。
加えて今般の改正は「不動産・建築業界の理解と協力があろうとなかろうと、LPガス事業者が腹をくくって解決を図る」というハードランディングを志向した。このため、今回の措置を認めない賃貸オーナーや住宅会社からの圧力によりLPガス事業者の法令順守の信念もぐらつきやすく、自社がホワイトになったとしてもグレーな事業者に顧客を奪われていくようでは法令遵守の意味がない、との誘惑に駆られやすい。LPガス市場はゼロサムで、誰かの利得は誰かの損失であるため、競争上の公平性を可能な限り維持した上で改革を進める必要がある。
さらに「LPガス事業者のみの規制」という「片務性」を解消しなければ真の商慣行是正にはならない。そのためには、①まずLPガス事業者が法令改正事項の遵守を通じて「範」を示し、②それをもって国土交通省所管の法令などにおいてもう一方の当事者に対する「是正のための規制」を促す―という「戦略」を全関係者で共有することが求められる。これが見えればLPガス事業者も頑張れるだろうし、消費者庁(消費者委員会)や消費者団体からの要請や、国交省ならびに同省が所管する不動産・住宅業界側の覚悟も増すのではないか(現状その方向にはあるが動きは弱い)。


















