<メディア人編> 大手A紙・大手B紙・フリーC氏
敦賀2号の再稼働を阻む決断が下された。
初の不合格にメディアも色めき立った。
―日本原子力発電・敦賀2号機の断層問題を巡り、原子力規制委員会が新規制基準に不適合との初の判断を下した。
A紙 2回にわたり「規制委の偏向審査、強引な幕引きは許されぬ」などとした産経の社説は大胆だった。読売の社説は、エネルギー供給体制の面から原発が必要だとの意見がにじみ出ていた。東京や朝日、毎日は「廃炉を選ぶべき」などとし、原電が資料書き換えで信頼を失った点に焦点を当てた。いずれもそれぞれのカラーが出ている。
B紙 規制委は「K断層」の活動性や原子炉直下まで連続する可能性が否定できないとしたが、そこで止めてはダメだ。例えばK断層は「逆断層」だが、原子炉直下の「D―1断層」は「正断層」であり、両者がどうつながるのか、いまだに意味不明。審査が十分し尽くされたとは思えない。今回の結論に至るにしても、例の地質学者の委員の任期が迫っているからこのタイミングかと言われても仕方がない。そうではないと信じたいが。
原電への不信感拭えず 規制の在り方国会で議論を
C氏 今回の報道には恐ろしさを感じた。産経以外、規制委への批判的視点が欠けている。本質は安全性の審査が妥当かどうかだが、一部メディアは規制委の主張をうのみにし、国家権力の乱用や民間企業の財産権侵害には一切触れない。行政が一企業をつぶすような重い決定だ。産経や読売の書きぶりも足りていないよ。また、国会閉会中とはいえ政治の沈黙も不気味だ。
―規制委は「悪魔の証明」と言われることをことさら嫌がっているようだね。
A紙 でもこれ以上審査を続けても結果は変わらなかったろう。規制委からすれば数年前から原電の対応が求める水準に達しておらず、いら立ちを募らせてきた。ほかの事業者ができることがなぜできないのかと、相当な不信感があった。逆によくここまで判断を引っ張ったと思うよ。
C氏 しかし約10年前の有識者会合のころから同じ論点を繰り返したり、外部の意見を「どうとでも取れる」などと受け止めたりと、今のルールにはいくつも疑問に思うことがある。特に12万~13万年前という活断層の判断基準の根拠は今でもよく分からない。
―神学論争に対する多様な問題提起があって良いと思う。
C氏 いずれにせよメディアは、敦賀2号が稼働すれば年間数百億円もの経済価値を生み出すことをもっと意識してほしい。
A紙 安全性が確認できないとされた炉の経済性を論じる意味はないのでは? 経済産業省や政治が規制委の判断に何か言うこともおかしい。朝日・毎日・東京からしたら、ここまで判断を伸ばした規制委の態度も甘いと思うはず。一方、原子力推進・反対に関わらず、規制や審査の在り方について関連法見直しの議論が国会で行われていないことはよろしくない。
B紙 政治の胆力のなさは痛感した。効率性や経済性の視点がない審査や基準が妥当なのかという根本課題に手をつけるには、規制委設置法の見直ししかない。これは政治の役割。現場は今ぎりぎりの状態で、これ以上動かないままなら人材がいなくなる。経済のために動かしたくても動かせない可能性があるのだから、日経はもっと切り込んでほしい。
遂に中間貯蔵事業開始へ 河野氏の変節が話題
―青森県を巡っても動きが。使用済み核燃料の中間貯蔵施設の事業開始に向け、関係者間で安全協定が締結された。
C氏 この件では各紙冷静だった。ただ、自らと県の利益を見据えた宮下宗一郎知事の裏の狙いを掘り下げた報道を見たかったし、日本原燃の再処理工場完成がまた延期しそうな話と絡めた記事も見当たらなかった。
B紙 地元紙はもう少し深い記事を書いているはずだ。一方、核燃料サイクルに批判的な人たちが最近X(旧ツイッター)などで「乾式貯蔵で良いのでは」「米国では露天で保管している」などと冷静な意見を発信し始めるという、意外な変化もある。
A紙 今後、ほかの地域で何カ所施設ができるかが重要だ。一方、使用済み燃料への課税率を巡っては、貯蔵期限と絡めた駆け引きがまだ続くだろう。いずれにせよ、中間貯蔵が現実に始まろうとしていることは感慨深く、大きな節目。今後はサイクル政策の課題に結び付けた報道も増えそうだ。
C氏 やはり青森での最終処分はないことも改めて分かった。
B紙 それは青森にすべきではないよ。沖縄米軍基地問題同様、地域を分散させなければ、どうしてもひずみが生じる。
―さらに7月31日に河野太郎氏が東海第二原発などを視察し、脱原発を軌道修正したとの記事も気になった。
B紙 囲み取材で、安全性が確認された原発再稼働容認の考えを示したと強調する記事があったが、ポイントはそこじゃない。「核燃サイクルはやめるべきだ」という持論を今回言わなかったことこそ注目すべきだ。総裁選を控え周辺から相当言われたようで、さすがに「サイクルを回す」とまでは言わなかったが、マイナスからゼロには引き上げた。なんとしても麻生派の票を固めたい思いが見えた場面だ。
A紙 でも河野氏は勝てるかな。仮に首相になったとすれば、やはり持論は譲らなそう。ただ、原子力は総裁選でも論点にはならないと思うがね。
―そしてお盆には岸田文雄首相が総裁選不出馬を電撃発表し、先行きは混とんとしている。次回のテーマはこれで決まりだな。







