A 公取委の事実上の敗北だね。これだけの時間をかけて調査しておきながら、電力小売りで中部電とミライズ、ガス小売りで東邦という主事業者に懲罰を課すことができなかったことが全ての答えだ。つまり、疑惑を立証することができなかった。「電力分野における実態調査報告書」でも明らかだが、公取委は電気・ガス事業について正しい認識を持っていない。推定有罪―。旧一般電気事業者、旧一般ガス事業者が悪であるという認識に基づいて調査に入るからこのような結果になるわけで、この認識を正さない限り、このようなリスクが今後もつきまとう。
B 業界内では、東邦の1年分の経常利益が飛ぶことすらあり得ると言われていた。電力カルテルでは中国電力が史上最高額の707億円だからね。ところがふたを開けてみれば、東邦は課徴金なし、中部は2600万円で大きな落差があった。中部・東邦の場合、初めは家庭用の電気・ガス小売りで調査に入ったにもかかわらず、東邦がリーニエンシー(課徴金減免)制度を使ったと思われる大口ガスで中部に課徴金を科し、なんとか格好を付けただけ。家庭用では課徴金納付命令などに至らなかったという点で、Aさんの言う通り公取委の敗北と言っていいだろう。われわれも4電力カルテルの処分内容が内容だっただけに、かなり惑わされていた。
C 公取委は、4電力カルテルにしても中部・東邦にしても、リーニエンシーに基づいたものでしか処分できていない。考えてみると、それだけカルテルを認定することはハードルが高くて難しいことを意味しているのだと思う。それにもかかわらず、4電力カルテルの課徴金が過去最高額に達したということは、絶対に勝てると公取委に思わせる材料を、リーニエンシーを活用した関西電力から得たということではないか。それがどのようなものだったのか興味がある。そういう意味でも3電力による取消訴訟の行方、その過程で出てくる情報は非常に注目されるだろうね。
カルテル処分の妥当性の判断は裁判所に委ねられた
A かつて、公取委の関係者がカルテルを証明することは難しいと語っていたことが印象に残っている。刀と鞘のような関係で、ぴったりと収まらない限り、黒にはできないということだ。過去において、多くのカルテル事件が課徴金にまで至らなかったのはそのため。どうしても警告や勧告、注意といった処分でお茶を濁すしかない。
B 先ほど、中部・東邦で公取委の敗北という話があったけど、九州電力の小売子会社である九電みらいエナジーにも課徴金命令が出ていない。九州の小売りは役割分担がはっきりしていて、本体は域内で域外営業はみらいエナジーが担う。公取委がカルテルの合意があったと主張しているにもかかわらず、みらいエナジーの違反の証拠を見付けられなかったというのも、なかなかの負け戦に見える。
―中部、東邦では、この処分案を受け入れる可能性が高いのかな。
B 昨年には関係筋から、双方がリーニエンシーを使っているという話を聞いていた。中部も、大口ガスでは抗弁できないと、電力カルテルとは別の対応をしているのだろう。取り消し訴訟はないのではないか。