エネ庁幹部交代説が浮上 原因は再エネTF騒動か
資源エネルギー庁の幹部を巡って今夏の交代説が浮上している。内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(再エネTF)」の関係者の間で、幹部M氏らへの批判が高まっていることが背景にある。
5月号の本欄で既報の通り、再エネTF関係者とエネ庁幹部が3月下旬、電力ガス基本政策小委員会や再エネTF会合の場で、容量市場の問題を巡り舌戦を繰り広げた。「容量市場が電力自由化と引き換えに経産省が電力に切った手形だとすれば、国民に対する重大な背信行為」(Y氏)、「大変失礼で不適切な発言だ」(M氏)、「内閣府はあまりに勉強不足」(O氏)、「むしろ皆さんの方が理解されていないのでは」(H氏)―。
背信行為呼ばわりされたエネ庁側が怒り心頭なのは当然のこととして、一方の再エネTF側も、電力業界と緊密にやり取りするエネ庁の姿勢には反発を強めている。「同じ経産省でも、本省サイドとはそれなりに話ができている。電力業界と近いエネ庁、とりわけ電力ガス事業部が全然聞く耳を持ってくれないのは、実に困ったものだ」(内閣府関係者)。再エネTF構成員のH氏も、「エネ庁での容量市場の検討は、結論ありきで行われているようにしか見えない」と批判する。
そんな中で取り沙汰されるエネ庁幹部の交代。「M氏は就任1年で異動。その後任として、K氏の名前が聞こえている」(事情通)という。ただ、もしM氏の異動となると、騒動を知っている周辺からは「経産省が再エネTF側の圧力に負けた」とみられかねない。「さすがの経産省も、省内の士気に影響を与えるような、露骨な人事はやらないだろう」(エネルギー業界関係者)。果たして、再エネTFとエネ庁の確執は今後どんな展開を見せるのか。
「環境未来都市」形骸化 地産地消はあやふやに
地方のSDGs(持続可能な開発目標)のモデル事業とすべく政府が取り組む「環境未来都市」構想。東日本のとある自治体では近隣地域と連携したさまざまな取り組みを進め、その中核の一つにメガソーラー事業がある。
一連の取り組みを自治体に持ち掛けたのは東京が拠点のコンサル。自治体とコンソーシアムをつくり、メガソーラーについて当初計画では「世界初の地域分散型蓄電システム付メガソーラー発電所」として建設し、「地産地消」をうたう内容だった。
風力発電などと異なり、メガソーラーは新たな雇用の受け皿になりにくい。その点、例えば自治体自身が事業に絡みFITの売電収益を確保すれば、地域経済への還元が期待できる。しかも、この事業はkW時当たり42円という売電価格が高額な時期に認定された案件だ。
しかし指名競争入札により、東京が本社のM社が事業主体に決まった。実はM社、別の地域で陸上風力を計画したが、地域住民からの猛反対に遭い、短期間に撤回に追い込まれたこともある。
運開から約6年たつが、発電所への蓄電池設置はいまだ実施されず。計画を主導したコンサルもいつの間にか解散していたそうだ。環境未来都市の事業でありながら、地産地消のコンセプトはあやふやになってしまった。
コロナ禍のT電力会見 ちぐはぐさの違和感
新型コロナウイルス禍の感染予防策として、記者会見を開く際の企業の対応が多様化している。
あくまでも会見者と記者が直接対面することにこだわる企業がある。その場合は、参加する記者の人数を制限しつつ、会見者と記者との間にアクリル板を設置したり、記者同士も間隔を空けて着席したりするなどして、「密閉」「密集」「密接」のいわゆる「三密」を避ける工夫をしている。
一方で、コロナ禍が始まってからは社会の感染状況に関係なく、記者会見はオンラインによるリモート開催のみという企業も一定数ある。リモート会議システムのチャット機能を活用することで、質疑応答も意外とスムーズにやり取りができる。
こうした中で、会見によって対応が違い過ぎではないかと記者から違和感を覚えられているのがT電力ホールディングスのK社長だ。ある媒体のX記者が言う。
「4月、N社のカーボンニュートラル化推進に向けた戦略的提携の締結に伴う会見には、N社のM社長とK社長がそろって登壇した。ところが、その数日後に開かれた人事・決算会見では、記者を一つの会場に集めておきながら、会見者は画面の向こう側というスタイル。さすがにそういう対応はどうかと思ったよ」
二つの記者会見の間で何が変わったかといえば、東京都に緊急事態宣言が発出されたことか。当初は通常の会見を予定していたが、宣言が出てこうした対応を取らざるを得なかったのかもしれない。
しかし別の媒体のY記者は、「会見者が必ずしも東京にいるわけではなく、会見側の都合で記者を一会場に集めてリモート開催することに問題があるわけではない。ただK社長の場合、どうも不祥事の頭を下げなければならない会見はリモート、営業系の前向きな会見はリアルで実施しているようだ」と明かす。
ゼロカーボン都市の現実 高炉停止に自治体反発
2050年CO2排出実質ゼロを表明する自治体がここ1~2年で急増している。環境省のホームページによると、この「ゼロカーボンシティ」は5月18日時点で387自治体に到達。表明自治体の総人口は約1億1000万人強に上り、自治体のトレンドとなっている。
小泉進次郎環境相のトップセールスが奏功した結果といえる。だが、どう実質ゼロに近づけるのか、現実的な手段に落とし込むことについては、これから検討するケースが多いようだ。
例えばゼロカーボンシティを表明したK市内には製鉄会社の高炉が稼働しており、長年雇用を支える重要な受け皿となってきた。しかし、国内の鉄鋼需要の減少や中国との競争激化といった背景から、製鉄会社が全国各地の高炉休止に踏み切る動きが続いている。K市内でも1基の休止が発表された。
温暖化ガス排出量削減の観点だけでみれば、これはむしろ実質ゼロに一歩近づく喜ばしい動きであるはず。ところがK市は、雇用損失の影響が大きすぎるとして、経済産業省に「高炉を止められては困る」と直談判したそうだ。
言うは易く行うは難し。経済への悪影響を押さえつつ脱炭素化にどう移行していくかは、産業界だけでなく自治体にとっても重い宿題となる。
「木村王国」が復活!? 青森政界の行方混沌
原子力関連施設が集中立地し、電力業界にとって最重要地である青森県。来年行われる参議院選挙を前に、保守政界が混沌としてきた。
自民党は、出馬が予想される現職の田名部匡代議員(立憲民主党)を落選させ、参院の青森選挙区で議席独占を狙う。県政界関係者によるとO衆議院議員、T参院議員が中心になり、候補者を絞り込んでいる。
候補に挙がっているのは、まず現在5選の三村申吾知事。次期知事選への出馬は多選批判が想定されるため、国政へ転じるとみられている。
三村知事が辞職した場合、後継は誰か。有力視されてきたのが木村次郎衆院議員だ。兄・太郎氏の急逝で県庁職員から転身。17年に初当選したばかりだが、地盤は太郎氏の長女・桜氏(18年弘前城ミス桜グランプリ)が引き継ぐという。次郎氏の父は衆院議員4期・知事3期を務めた守男氏で、「『木村王国』の復活を目指している」(県政界関係者)とうわさされている。
また、外ヶ浜町の山崎結子町長の名前も浮上している。曾祖父は元知事、祖父、父ともに元参院議員という血筋を持ち、元県連幹部の有力者が支援していることも強みだ。山崎氏は参院選出馬との見方もある。
一方、出馬が取り沙汰される、ともに元中央省庁キャリア官僚のO市長とM市長。両氏とも「三村知事との関係がよくない」(同)ことで立候補は微妙になっている。
名前が挙がった各氏、それぞれ原子力に対する考えは異なる。電力業界は静観を決め込むが、動向に目を凝らしているはずだ。