東電EP巡り増資の噂 市場高騰で一層打撃か
東京電力エナジーパートナー(EP)を巡って、エネルギー業界内にはいまだ「厳しい経営状況を立て直すため、第三者割当増資に踏み切るのでは」との観測が絶えない。
東電事情に詳しい市場関係者のA氏によると、増資引受先の候補として名前が上がっているのが、大手エネルギー会社のC社、E社、K社、O社、また大手商社のM社などだ。「東電EPの直接のライバルである東京ガスや、そこと連携している大手エネルギー会社のT社やK社は候補には上がっていないもよう」(A氏)だという。
年初来の日本卸電力取引所(JEPX)におけるスポット価格の異常高騰は、電力小売り事業者の経営を直撃する見通しだ。
「さすがにスポットがkW時250円まで跳ね上がったら、市場依存型の新電力は言うまでもなく、市場調達率の低い電力小売り事業者もアウトだろう。インバランス側で乗り切ることになると思うが、テプコカスタマーサービスを抱える東電EPへの影響は少なからずあるのではないか」(大手電力会社関係者)
JEPX価格の異常高騰に対応するため、経済産業省は1月15日、インバランス等料金単価の上限を需給ひっ迫時に限りkW時200円とする措置を、2022年4月の導入に先駆けて17日から適用すると発表した。市場崩壊を防ぐための措置だが、関係者の中には「結果的に、東電EPの救済にもつながりそうだ」と見る向きも。
東電の経営再建を図る「新々総合特別事業計画」のレビュー公表が延び延びになっているが、今回の事態を受けて、さらに延期されることになるのか。
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市場暴騰でS電力解約 立民党議員に批判殺到
電力需給がひっ迫したことで、JEPXスポット価格が200円を超えた。そうした中、立憲民主党に所属するS参院議員のSNSが物議を醸している。S議員は、再エネ100%電気をうたい文句にしたS電力と、JEPXと連動して電気料金が変動するプランに加入していた。
しかし、JEPX価格は平時の10倍をはるかに超える水準まで暴騰。「企業理念は素晴らしいが、料金10倍はおかしい」との理由でS電力を解約し、暴騰分の電気料金を分割払いできる再エネ系新電力のM電力に切り替えたとSNS上で報告した。
この行動に対し「再エネ推進を目的にS電力を選んだのに、料金が上がったからといって見捨てるのか」と批判が殺到したのだ。
厳しい批判を招いたのは、立民党が原発を否定しているため。「日本と同じく電源構成がLNG火力に偏重し、かつ日本より高緯度に位置する韓国では、このような事態に陥っていない。それはひとえに原発が安定供給を支えているから。党綱領にまで『脱原発』を書き込み分裂した立民党の議員が、こうした事態に陥っているのは皮肉だ」。業界関係者はこう揶揄する。
ちなみにS議員は、参議院の「資源エネルギーに関する調査会」の委員も務めるエネルギー通の議員。今回の問題について「再エネを大量導入していれば、防ぐことができた」と強調。この発言にも多くの非難が集まり、文字通り火に油を注いだ。
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頼みの綱はS紙 エネ庁幹部が急接近
「最近のエネルギー報道を見ていると、大手紙で頼りになるのはS紙だけだ」。ある資源エネルギー庁幹部はこう漏らし、S紙の担当記者と会う時間を増やしているという。
エネ庁はもともと政・財界に強い影響力を持つ大手経済紙、N紙を別格扱いしてきた。だが、N紙は最近、担当デスクの意向で再エネに肩入れしすぎ、バランスに欠いた報道が目立っている。エネルギー関係者の間では、「最近のN紙はおかしい」との声が強まるばかりだ。
エネ庁幹部はこれまでN紙に対し、公平な視点で報じるよう申し入れてきたが、再エネ偏重の報道は変わらなかった。カーボンニュートラルが大きな政策課題に浮上する中、エネ庁も目をつぶれなくなり、N紙との距離を取り始めたという。
ただ、その矢先、年明けに顕在化した電力需給ひっ迫のニュースで、N紙が盛り返し始めた。新型コロナ拡大に伴う緊急事態宣言の陰に隠れ、テレビも一般紙もほとんど報じなかった中、N紙は専門紙に続き、いち早くこのニュースを深掘り。N紙らしく、多方面への取材で他紙を一歩リードしている。
件のデスクも、大規模停電の危機を目の当たりにして、再エネの実力を見直し始めたとか。ただ、肝心のエネ庁が需給ひっ迫をそれほどの危機と認めておらず、一度広がった距離は縮まりそうもない。