1.環境団体の内ゲバ 分断の契機は小泉氏

石炭火力の削減、グリーンリカバリー、ESG投資など話題に事欠かない脱炭素戦略だが、世の中の機運の高まりとは裏腹に、環境団体間の対立が際立ってきた。
「企業と自治体が主役の意見交換会なのに、環境団体Sのプレゼンに大半の時間が費やされた。どっちが主役なのか分からなくなりましたよ」
こう不満を漏らすのは、環境団体Iのある関係者だ。6月10日に小泉進次郎環境相と企業の代表者がグリーンリカバリーについての意見交換会を開いたが、企業が前面に出て討議するはずが、ほとんどの時間を割いたのはSという団体だったという。
前出の関係者は「Sは豊富な資金力をバックに強引に事を進める。国連などのイベントでも自分たちの持ち時間を勝手に延長してひんしゅくを買った前科がありますから」とあきれ顔だ。
J、K、Wの環境団体間でも微妙にすきま風が吹く。小泉環境相が就任以来、Jをひいきにすることが発端になった。小泉氏は何かにつけJの代表に直接意見を聞いており、これが各団体間のやっかみにつながっているようだ。
典型例はベトナムの石炭火力「ブンアン2」の計画を巡る一騒動。小泉氏が異議を唱えて物議を醸した案件だが、当の環境、経産の両省はどこ吹く風で予定通りの計画を進めることで合意した。「何を思ったのかJは『自分たちの活動が政治を動かした』といってはばからないのです。結果は変わらないのに何をぬか喜びしているんだか」(K関係者)と痛烈に批判する。
政府の気候変動対策の遅れを批判して、パリ協定に沿った対策をするよう一致団結して求めていた環境団体だが、小泉氏の登場が分断を招いているというのは皮肉な話だ。ある政府関係者は「小泉氏入閣の最大の功績は、何かと面倒な環境団体を結果的に分断させたことだ」とほくそ笑んでいる。
2.石炭火力輸出で成果誇張 有識者からも苦言
春先に小泉進次郎環境相が問題提起し、注目されていた石炭火力輸出方針の厳格化を巡る調整が、7月9日に決着した。
インフラ輸出新戦略の骨子では、相手国のエネルギー政策や脱炭素化方針の詳細を把握していない場合は、原則輸出しないと表記。しかし小泉環境相は9日の会見で、前後の文脈を無視して、「石炭火力発電については、支援しない方針を書き込むという異例の決着を見た」と強調した。経済産業省側との説明の食い違いが際立った格好だ。
それでも飽き足らなかったのか、小泉環境相はS紙の16日付のインタビューでも自らの実績アピールを展開。「これほど明確な政策転換はない。環境先進国である日本の逆襲が始まる」「石炭火力の輸出厳格化は、エネルギー政策のセンターピンになった」などと力説した。
エネルギー関連の政府審議会委員を務める有識者X氏は、この紙面を目にして、「小泉大臣は浮かれすぎだ」とばっさり。小泉氏はほかにも、海外メディアBなどで同様の主張を繰り広げている。
小泉氏の強引な手法は、動物愛護政策でも鮮明に。業界の声には耳をふさぎ、ペットショップやブリーダーに対する新たな規制をぶち上げた。賛否両者の意見に耳を貸して調整力を見せれば、「やはり将来の首相候補」との呼び声が高まりそうだが……。
3.一方的な不可抗力宣言 相対契約破棄の暴挙
新型コロナウイルス禍は、新電力経営にも大きな影響を与えている。
非常事態宣言に伴う経済活動の停滞で、大口分野のエネルギー消費量が減少した一方、家庭分野では増加。これにより、にわかに活気付いたのが、家庭向けの供給がメインで、かつJEPX(卸電力取引所)調達比率が高い新電力だ。
安いスポット価格を背景に、「在宅応援プラン」などと称した破格のメニューを打ち出し、新規の契約獲得を推し進めた。これとは反対に、大口顧客が主力の新電力は販売量が激減。この経験を踏まえ、こうした新電力が、より家庭用営業を強化していく可能性は高い。
そんな中、新電力大手のF社に関するとんでもない話がまたまた聞こえてきた。「随分と無茶苦茶なことをしているようだ」と話すのは、新電力経営に詳しいX氏。F社も大口供給をメインとしているが、このコロナ禍を理由に一方的に不可抗力を宣言し、5月ごろからまだ契約期間が残っている発電事業者との契約を切っていったというのだ。
当の発電事業者は泣き寝入り状態だというが、一体どのような条件で契約を結べばそのようなことが起きるのか、首をかしげざるを得ない。
ここ数年、赤字経営が続いてきたものの、不採算部門からの撤退や契約の大幅な見直しで経営体質の改善を進めてきたF社。「2020年6月期決算は黒字に転じたようだ」(エネルギー業界関係者のY氏)というが、他者に不利益を付け回すような何でもありの経営手法で、黒字化しないことの方が不思議だ。