【特集1】分断時代の国際情勢を読み解く 供給安全保障こそ政策の主眼に


米大統領選でトランプ氏が勝利し、米国は「ドリル・ベイビー・ドリル」の時代を迎える。
石油政策を巡る国際情勢が混迷を深める中、日本の取るべき針路を国際石油アナリストが解説する。

日本のあるべき石油・エネルギー政策を考える場合、その出発点は世界が深刻な分断の時代にあるという最も基本的な現状認識でなければならない。

ロシアのウクライナ侵略は西側・ロシア関係を決裂させ、中東ではイスラエルの酷薄なガザ侵攻がハマス、ヒズボラ、フーシ派など反イスラエル武装勢力、さらにはその背後にいるイランとの直接的交戦へと拡大しつつある。中国は南シナ海における不法な軍事拠点化と実効支配を続け、10月には台湾包囲の大規模軍事演習までも公然と行い、軍事力を誇示している。

一方、欧州では反EUの右派勢力が伸長し、また米国ではトランプ前大統領が再選され、政治・社会的分裂を背景に、内政・外交政策が流動する不安定さを改めて示した。日本は激しい内部対立を免れてはいるが、その見かけの安定は政府債務の異常な膨張に支えられており、近年の内外金利差の拡大と一段の円安がもたらす国内物価高は、慢性的な財政規律の喪失と引き換えの安定がもはや限界に達しつつあると示唆している。

イランおよび北朝鮮は軍事的支援を通じてロシアとの関係を緊密化させ、経済的盟主である中国を加えた4カ国が共に西側と軍事・経済的に対抗する構図が一層鮮明化している。欧州正面、中東および極東・東アジアにおける紛争が連動する可能性が高まっている。また西側・ロシア間の石油禁輸、中国が意に沿わぬ特定国を対象に随時発動する懲罰的な貿易管理、米国を先頭に戦略産業を中心とする対中・高関税などが示すように、政治的亀裂は一連の経済的分断を伴って進行している。

市場の秩序を維持・強化 サウジと連携で再構築へ

この分断の時代にあって、石油・エネルギー政策は、まず供給安全保障を主眼としなければならない。ここでエネルギー安全保障というのは、供給秩序の維持・強化を指し、必ずしも自給率の向上それ自体を目的視しない。政府の主たる役割は不測の供給ひっ迫時における市場機能の健全性の維持であり、その下で生産・消費双方の側での行動変容・技術革新を通じた、自律的・創造的な難局打開を導くことにある。本来的にエネルギー安全保障は市場を包摂してこそ成立する。

日本の石油供給に関し、しばしば中東依存度の高さが問題視されるが、より本質的に重要なのは、その中東からの石油供給が置かれている秩序、あるいは体制の在り方だ。現在の国際石油供給の在り方は、1985年末サウジアラビアによるスポット市場連動価格制への転換を起源とし、90~91年、実力での石油支配を目指したイラクのクウェート侵略を米国主導の外交・軍事力によって退けたことで、体制として確立した。これを市場本位の開かれた国際石油供給体制と呼ぶことができる。

米国の提供する安全保障の傘の下、石油備蓄の保有・放出を中心とする消費国による協調的緊急時対応、およびサウジによる生産余力の機動的稼働によって、不測の供給ひっ迫時における市場への即時追加供給能力を消費・産油国の協働で確保し、市場の暴走を未然に防いでその機能の健全性を守る構えである。

今世紀に入り米国の、とりわけ中東地域における外交・軍事政策は混乱し、また西側消費国が相対的影響力を低下させる中で、石油供給秩序の基盤は次第に脆弱化していたが、世界の分断化はこれをさらに動揺させている。この流れに抗し、2010年代シェール革命によって世界最大の産油国として台頭した米国を軸に、西側全体の協調をより強固にした上で、サウジとの連携を進めて秩序を再構築していくことを、日本の石油供給安全保障の第一義的な目標とせねばならない。

【特集1/座談会】2050年も経済・生活の根幹担う 資源戦略議論がエネ基の要


世界で地政学リスクが高まる中、エネルギー安保の生命線が岐路に立たされている。
国が難局打開に向けて直視すべき課題や施策を識者3人が語り合った。

【出席者】
大場紀章(ポスト石油戦略研究所代表)
平野 創(成城大学経済学部教授)
久谷一朗(日本エネルギー経済研究所研究理事)

左から順に、大場氏、平野氏、久谷氏

――中長期的な視点で今後の石油情勢をどのように見ていますか。


久谷 各国が掲げる温室効果ガス排出量の削減目標「NDC」や脱炭素政策を織り込んで世界のエネルギー情勢を予測すると、石油の需要は残り続けるでしょう。そうした見通しを、2050年を視野に日本エネルギー経済研究所(IEEJ)がまとめた年次報告「 IEEJアウトルック 」で示しました。国際エネルギー機関(IEA)のシナリオも、同じような予測結果です。50年のカーボンニュートラル(CN)実現に向けて中国のEV市場が大きく伸びているとはいえ、それ以外の各国のCN化の足どりは遅い状況です。その歩みを劇的に変えるためのハードルが高いことを踏まえると、引き続き石油は一定の役割を担い続けるのではないでしょうか。

大場 私も基本的に同じ見方です。ただ、従来の石油情勢とは異なり、需要に影響をもたらす変動要因が増えています。例えば、中国の自動車市場では、電動化が進む一方でLNGを燃料とするトラックの販売も伸びていて、輸送用ディーゼルの需要を脅かすほどになっています。EVが広がる東南アジアの動きも変動要因の一つで、従来よりも石油情勢が読みづらくなっています。


平野 石油製品の用途をみると、約半分が自動車などの「動力源」です。さらに4分の1がプラスチックなどの「石油化学製品の原料」として、残りの4分の1は家庭や工場の「熱源」などとして使われています。特に原料の需要は底堅く、将来的に残り続けるでしょう。ライフサイクル全体のCO2排出量でEVと内燃機関車を比べると、走行距離が11 kmを超えない限り、内燃機関車の方が排出量は少ない状況です。動力用途をみても、石油が優位性を発揮し続けると推測しています。

新潟県の岩船沖油ガス田。国産資源も供給を支える
提供:石油資源開発

命運を握る備蓄体制の維持 災害時の機動力も再認識

―ロシアによるウクライナ侵攻などの地政学リスクが高まる中、エネルギー確保を含めた経済安全保障の重要性が増しています。こうした視点からも認識をお聞かせください。


久谷 地政学リスクの高まりや災害に備えてエネルギーをいかに安定確保するかについて考えると、石油の備蓄機能を維持することが重要となってきます。石油は軍事的にも必要な資源で、戦闘機や軍艦などの動力源として欠かせません。まさに国家の安保を強化するためにも石油を残す必要があるでしょう。


大場 原油輸入の中東依存度は95%前後に達しています。これだけみると日本のエネルギー安保は脆弱なようにみえますが、昔と違い石油は最も堅牢なエネルギー源の一つです。緊迫したウクライナ情勢や中東紛争でエネルギー調達の不確実性が高まっているといわれますが、現実はむしろ石油の安定供給能力を示しています。例えば、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの経済制裁としてEU(欧州連合)がロシア産石油の輸入を禁止しましたが、市場は大きな混乱もなく流通が切り替わりました。また、仮に原油供給の大動脈「ホルムズ海峡」が完全封鎖され、他地域での増産がないとしても、代替の輸送ルートと世界の石油備蓄で約200日間はしのげます。


平野 超越した動乱が起きない限り、石油備蓄体制で経済安保上の役目は十分に果たせると思います。ただ、備蓄だけでは万全ではありません。製油所とのつながりに問題があり、備蓄する石油の払い出しが機動的に行えない備蓄基地もあるようです。軍事的な動乱や災害も想定し、有事に素早く動けるような手当てを考える必要があると思います。

―石油の国内需要減少が避けられない中、サービスステーション(SS)を含むサプライチェーン(供給網)全体の劣化が懸念されています。


平野 SSの維持は、国策として考えないといけないと思います。1月に発生した能登半島地震では、SSが防災拠点として機能し保管する製品在庫が役に立ちました。全国にくまなくあるSSは固定電話のように「ユニバーサルサービス」と位置付け、宅配や郵便などのサービスと一体化してワンストップで提供するという構想も考えられます。会員制スーパーの米コストコ・ホールセールが周辺SSの経営を圧迫する問題のほか、中東産原油を処理するよう設計された製油所を柔軟に切り替える課題にも目を向ける必要があります。多様な問題に細かく向き合うべきです。


大場 SSが過疎化して地域生活の利便性が落ちる問題に対しては、SSの維持や充電インフラ設置などの政策的な措置が必要になるでしょう。また、インバウンド(訪日外国人)需要が拡大する中で今夏、ジェット燃料の供給不足が顕在化し、これを機に燃料の流通経路を支える人材や設備を巡る問題が浮き彫りになりました。国際線の増便に伴う燃料需要増に対応するため、空港側が燃料輸入港を整備するのか、石油会社側が供給を強化するのか、方針はまだ定まっていません。


久谷 皆さんの問題提起を踏まえると、石油元売りには、ガソリンが減りジェット燃料が増えるという需要の変化に応じて適切に生産調整する対応が求められることになるでしょう。縮小する石油需要を見据え、どこまで製油所を維持するのかといった課題も無視できません。これまで消費地に近い場所に生産拠点を構えてきたわけですが、経営的に国内維持が難しいという元売りが出てくることを危惧しています。国は、そうした供給網をどこまで維持するのかという政策的な判断が迫られるでしょう。

【特集1】新市場に挑戦し成長軌道へ 業界を政策側から後押し


安定供給の使命と脱炭素化で揺れるエネルギー業界。

石油産業を巡る政策の今後の方向性は。和久田肇資源・燃料部長に話を聞いた。

【インタビュー:和久田 肇/資源エネルギー庁資源・燃料部長

―脱炭素社会を目指す中で、エネルギーとしての石油に求められる役割とは。


和久田 脱炭素化とは言っても、あくまでも排出されるCO2をいかに削減するかが鍵であり、安定供給の観点から石油が引き続き重要なエネルギー源であることに変わりはありません。例えば自然災害の際には、機動性、可搬性などに優れる石油がなければ、復旧の現場や避難所へのエネルギー供給に支障をきたしてしまいます。運輸部門では、脱炭素燃料を導入しながら既存のエンジン車を活用していく選択肢が重要になってきます。さまざまな脱炭素技術の中で、今、直ちにどの技術が優れているかを決めることはできません。過渡期においても必要なエネルギーがきちんと供給されるよう、脱炭素化の努力をしつつ、石油の供給体制を適切に維持していかなければなりません。


―世界的にも、石油をはじめ化石燃料に対する風向きが変わりつつあるようです。

和久田 確かに、各国がカーボンニュートラル(CN)を宣言した2020年ごろは、各国政府、企業ともに3E(安定性、経済性、環境性)のうち「環境」に重きを置く傾向にありましたが、最近はバランスを取る政策、事業戦略に転換する動きが目立ってきました。3Eのバランスの重要性は日本政府がかねてから主張してきたことであり、ようやく世界が歩調を合わせてきたと実感しています。

高止まりの中東依存度 調達の多角化が課題

―調達における中東依存度の高止まりが課題です。

和久田 なるべく多様な調達のポートフォリオを構築することは、エネルギー安全保障上、大きな意味があります。こうした観点から、中東に過度に依存している現状は、必ずしも強じんな調達構造であるとは言えません。1970年代のオイルショック以降、アジア地域やロシア、米州などからの調達を増やすなど、さまざまな形で多角化を目指してきましたが、経済発展によりアジア地域が輸入国に転じたこと、最近ではロシア・ウクライナ戦争などが影響し、理想通りに中東依存度を下げることができていないのが実情です。一方で足元では、OPEC(石油輸出国機構)の協調減産を緩めれば、日量550万~600万バレルの供給余力があると言われています。幸いにも、需給に余裕があり、ファンダメンタルズ面では価格が大きく上昇するような状況には陥っていませんが、高い地政学的なリスクにさらされていることは間違いなく、引き続き緊張感を持って中東情勢を注視していきます。

―長期的な需要の不確実性が高まっています。自主開発比率の目標設定についてはどう考えますか。


和久田 どのような状況下においても、日本企業が上流開発に参画する重要性は変わりありません。単なる調達に依存してしまえば、処分権を持つことができず、価格決定に関与することもできないからです。第6次エネルギー基本計画では、そのための重要な指標として自主開発目標を見直し、30年度に50%以上、40年度に60%以上という目標を明記しました。その方向性は変わることなく、第7次エネ基においても、自主開発目標の在り方を議論していくことになると考えています。

石油政策の行方は……

【特集2まとめ】都市ガス業界の移行期戦略 LNG転換と技術革新が基軸に



石炭や石油に比べてCO2排出量が少なく、供給の安定性にも優れる―。

そんな優位性を持つLNGの利用拡大に、改めて注目が集まっている。

脱炭素化へのトランジション対策として現実的かつ有効な選択肢だからだ。

そうした期待を背に、都市ガス業界は全国各地で多彩な移行期戦略に注力。

環境に優しい合成メタン(e–メタン)の製造技術の実用化も目指す。

燃料転換と技術革新を両輪に脱炭素時代に備える業界の最新動向に迫った。

【アウトライン】 LNG活用が現実的な選択肢 革新技術の実装に向け前進

【アウトライン】下水道施設からの革新の風 再生水と消化ガスを利用

【アウトライン】バイオ由来CO2でe―メタン製造 使用電力はLNG冷熱活用し発電

【インタビュー】ガスは日本の重要な熱源 CNと安定供給へ業界挙げ努力

【座談会】地域課題を解決に導く立役者 独自戦略で住民との接点拡大

【レポート】大規模ニーズへの対応も強化 技術・営業などの総力戦で勝負

【レポート】三島食品の工場燃料をクリーン化 業務の省力化も強力にサポート

【レポート】「鉄のまち」で実績づくり 社宅舞台にユニークな展開も

【レポート】24時間体制で保安管理 丁寧なヒアリングを基に営業

【インタビュー】「移行期」の取り組みを促進 経済振興踏まえて支援検討

【レポート】商業施設で目標上回る省エネ実現 関わる企業の三人四脚が奏功

【レポート】グループの総合力で低炭素化推進 病院のレジリエンスにも貢献

【レポート】札幌市の複合ビルでCN化を実現 電力・熱のCO2排出量が実質ゼロ

【トピックス」北陸で広がるカーボンオフセットガス 工業用の普及に向けて全力を注ぐ

【トピックス】LPガスインフラを業界でシェア 先端技術を駆使し環境対策を先導

【トピックス】沿線開発の活況を追い風に 流山市主軸の販売拡大に弾み

【トピックス】電力小売事業への第一歩 自社拠点への供給で知見蓄積

【特集2】24時間体制で保安管理 丁寧なヒアリングを基に営業


【八戸ガス】

北東北有数の工業都市で知られる青森県八戸市で都市ガスの供給を担う八戸ガスは、重油よりCO2排出量が少ない天然ガス燃料に転換する取り組みをけん引している。

その展開で大きな役割を担っているのが、ENEOSエルエヌジーサービスが運営するLNGの輸入・供給基地「八戸LNGターミナル」だ。この基地が2015年に運営を始めたことをきっかけに、工業設備向けボイラー燃料を重油からLNGに置き換える事業者の数が増加。脱炭素化の潮流に乗って、LNGが工場地帯を支えるエネルギーとして市内に広がっている。
燃転の際の売りが防災面の対応力だ。取締役の舘綾子営業部部長は「万全な保安管理が強みだ」と強調。有事に備え、素早く現場に向かい24時間体制で需要家のガス利用をサポートする体制を整えている。

舘氏が日々の営業活動で心がけている取り組みが「丁寧なヒアリング」。ガスを利用する工場を定期的に訪問して吸い上げた現場の声も、防災対策に生かされている。今後もこうした取り組みを武器に、市内産業の燃転ニーズの開拓を目指す。

保安管理に強みを持つ八戸ガス

【特集2】「鉄のまち」で実績づくり 社宅舞台にユニークな展開も


【室蘭ガス】

北海道南西部の室蘭市は、「鉄のまち」として歴史的に栄えてきた道内有数の産業集積地だ。この地で都市ガス事業を営むのが室蘭ガスだ。
市内で道唯一の銑鋼一貫製鉄所を運営する日本製鉄とは、密な連携体制を構築。都市ガス製造に関わる一部の設備は、日鉄系の企業と共同で運用している。そうした中、室蘭ガスは、工場隣接地の社宅を舞台としたユニークな燃料転換の実績を積み上げてきている。

もともと工場からの廃熱を生かし、日鉄が蒸気管を敷設して社宅向けに蒸気として熱を供給していた。ただ、日鉄にとって蒸気管の維持管理などが負担だったことから、室蘭ガスが燃転を提案。温水をつくるボイラーを新設し、社宅内の暖房設備を維持しながら、都市ガスからの供給に切り替えた。
昨年には、化学肥料メーカーの日東エフシーの燃転をサポートした。これまで同社では重油を用いていたため、バーナー(燃焼器)の洗浄に作業負担を強いられていた。こうした経験を土台に需要家の要望を満たす提案活動を強化し、燃転の好事例を重ねていく考えだ。

日東エフシー内の乾燥炉の缶体

【特集2】下水道施設からの革新の風 再生水と消化ガスを利用


【東京ガス】

「CO2ネット・ゼロへの挑戦」―。そんな経営ビジョンを掲げる東京ガスが横浜市と連携し、メタネーションの社会実装に向けた取り組みを着々と進めている。今夏には両者が、下水道施設からの「再生水」とバイオガスの一種「消化ガス」を原料に、e―メタンの製造実証を始めた。

共同実証は、両者が2022年1月に結んだ連携協定に基づく展開だ。すでに東ガスは23年7月から、同市資源循環局鶴見工場の排ガスから分離・回収したCO2をメタネーション原料に活用するCCU(CO2の分離・回収と利用)実証を進めてきた。これを弾みに両者は、連携をさらに深めていく。
具体的には同市北部下水道センター(鶴見区)で、下水処理した水をろ過した再生水と下水汚泥を処理する工程で発生する消化ガスを回収し、近隣にある東ガスの技術開発拠点「横浜テクノステーション」内の実証設備へ輸送。そこでe―メタンをつくるという流れだ。

下水道センターから受け入れた再生水

消化ガスの組成は、メタンが約60%、CO2が約40%という割合となっているが、一定ではない。メタンを生成するメタン菌の活性具合が季節によって変動するからだ。今回の実証では、CO2を分離させずに、組成の比率が安定していない消化ガスをそのまま使う。

東ガス水素・カーボンマネジメント技術戦略部の三浦隆弘氏は、「タンクに詰め込んだガス成分を気体の分析手法であるガスクロマトグラフで分析する。組成が変動するためガス密度が変わるが、流量計の計測値を補正するためにCO2の量を把握する」と説明する。
CO2量を計測した後、メタネーション反応に必要な適正な水素量を投入しe―メタンを作る。季節によってどれほど組成割合が変わるのか、年間を通じた実証が必要だという。

組成まで踏み込んで検証 環境価値の移転にも力

4月に始まった「クリーンガス証書」の活用も視野に入れている。e―メタンやバイオガスによる環境価値を証書にして取引する制度だ。東ガスは消化ガス由来で作ったe―メタンの価値創出にも意欲を示す。
技術開発面だけでなく、環境価値の訴求にも力を入れる東ガス。いよいよCN社会を見据えて次世代燃料技術を磨く挑戦が熱を帯びてきた。

消化ガスのタンク

【特集2まとめ】家庭用HPの脱炭素力 太陽光と組み合わせ徹底活用へ


家庭の省エネ化を後押しする手段として期待を集めるヒートポンプ(HP)。

中でも太陽光発電を組み合わる電気式給湯機「エコキュート」が快走中で、

太陽光の発電量が多い時間帯にお湯を沸かす機能などへの注目度が増している。

一層の普及に向けては、需要家が導入しやすい環境づくりや認知度向上が不可欠だ。

カーボンニュートラル達成に向けた「現実解」としてどこまで市場に浸透するか。

脱炭素化を促す切り札として有望視されているHPが広がる可能性を探った。

【レポート】HPが脱炭素化の「現実解」に 市場拡大への環境整備が急務

【座談会】日本が強みとする熱利用技術 創意工夫で社会の要請に応える

【レポート】熱需要のCN化が重要なポイント 普及を後押しする施策が重要に

【インタビュー】熱を賢く利用する視点が重要 電力ガス業界はCNで競争を

【レポート】エコキュート沸き上げを昼間にシフト 「直接上げDR」の実証実験を開始

【レポート】名産のミョウガとシシトウづくり 地下水HPで農業のエネコスト削減

【特集2/座談会】日本が強みとする熱利用技術 創意工夫で社会の要請に応える


家庭部門の温室効果ガス排出量削減に有効な手段となるHP。
各方面の関係者が長所を住宅市場で生かす方策を提言した。

出席者

西川弘記/日本PVプランナー協会顧問
塩 将一/積水化学工業住宅カンパニー 技術渉外グループシニアエキスパート
鈴木隆行/ヒートポンプ・蓄熱センター 業務部部長

左から順に、西川氏、塩氏、鈴木氏

―家庭用ヒートポンプ(HP)の普及状況や現状について、認識をお聞かせください。

西川 家電メーカーはエアコンなどのHP機器を含め、インバーターと電気利用システムを進化させることで快適性と省エネ性を叶え、創エネにも取り組んできました。電灯会社が電力会社となり、二股ソケットやアタッチメントプラグが開発されて照明が普及した頃を第一世代だとすると、インバーター技術を進化させたのが第二世代です。

 インバーターによる省エネ化で非常に効率の良い運転ができるようになり、HPも作られました。現状、世界の電力需要の約半分を「モーター」が占めています。日本のHP技術は、お湯を作る、空気中の熱を集めて運ぶといった点で優れています。これは、モーター駆動に用いられるインバーター効率の改善にも生かすことができます。

 私は1997年から商品開発に携わり、最初にPV(太陽光発電)住宅を手掛けて以来、PV一筋です。98年にPV住宅を始めた当初から、経済の合理性や電力の運用面を考え、PVとオール電化の組み合わせを進めてきました。電化で効率を上げるにはHPが一番だからです。PVで作った電気でHPを動かすと、PV自体は15~20%ほどしか太陽のエネルギーを使っていません。
 

一方、HPは大気熱を利用できるので、PVとの組み合わせは省エネを進める上で不可欠です。今後、50年の温室効果ガス排出量ゼロを目指す上で、HPの運用やエネルギー融通が焦点になると思います。

鈴木 当センターでは、家庭用、業務用、産業用という三つのセグメントでHPの普及啓発を行っています。環境省の地球温暖化対策計画の目標値を見ると、家庭用は割と目標値に近い形で進捗しているものの、産業用・業務用は苦戦している状況です。 
 

ただし、比較的順調な家庭用でも地域別に見ると、寒冷地では苦戦しています。北海道経済産業局の方々と意見交換をした際、HPに対するユーザーの認知度が上がっておらず、選択肢に入ってこないと話されていました。これからは、寒冷地でのHP普及をより一層注力すべきだと認識しています。

寒冷地での普及進まず 建物の断熱性向上が課題

―北海道の導入状況をどのように見ていますか。

塩 断熱性の低い既存住宅では、体感的に灯油文化が根づいていす。一方、新築住宅は断熱性があり、エアコンでの暖房も可能です。しかし、給湯を含め、オール電化やエコキュートはなかなか普及していません。機器の性能を上げても、文化や慣習を突き崩すブレイクスルーがないと、北海道でエコキュートまで含め普及は難しい状況かなと思います。
 

そうした中、冷房用としてエアコンの導入は進んでいるので、暖房においてエアコンの比率を上げていく方法はあると思います。また、ベンチマーク制度によるCO2の削減量は、北海道では、灯油を原単位とすると、エアコンの導入により、大幅な削減が見込めます。こうした点から、HPの稼働率などで評価するべきだと思います。

西川 世界の主要都市では暖房文化圏が非常に大きく、欧州ではウクライナ危機などでHPに補助金がつき、日本企業の工場が多く進出しています。欧州において、ボイラーとの入れ替えの際に要となるのは、システムインテグレートする人たちの教育にあります。
 

また、ほとんどのボイラーが遠隔監視され、メーカーが保証するルールで運用されていますが、日本メーカーは売り切りの文化です。今後は、遠隔監視して長期間メンテナンスを行うといった新しいビジネスの必要性を感じます。

鈴木 当センターは今年4月、ヨーロッパのエネルギー利用の実情の調査に行きました。ヨーロッパのHP先進国はノルウェーですが、あれだけ寒いところでも1000戸中、約650戸の比率で導入が進んでいます。

 これは、建物の断熱性が高いことや水力発電が多くて電気料金が安いこと、また、化石燃料を禁止する政策がとられていることが理由です。現状でも、HP機器導入の補助金制度が設けられていますが、今後は、建築物への手当てとしてHPが導入されやすいような枠組みも設けられていくべきだと考えます。

効率が高まっているルームエアコン

天気予報に応じて稼働 余剰電力の有効利用促進

―HPを活用した新しい動きはありますか。

西川 経済産業省の議論で言われているように、PVが増加していくと、晴れたら昼間は1kW時当たり0・01円になります。ところが、今は毎日出力抑制している状況です。そこで、昼間の需要を増やす上で、需要側のオンライン化、DR ready(デマンドレスポンスに対応可能な状態)が非常に重要になります。
 

30年度の電源構成で再生可能エネルギーが36~38%、原子力が20~22%、火力が40%くらいになると、出力変動の吸収には火力の運用とともに需要側の調整も必要です。しかし実際のところ、需要側のオンライン化はビジネス上では難しいのが現状です。一方で、需要側の供給地点番号と機器番号が一致していないという問題もあります。

―スマートメーターの地点番号がエコキュートとひも付いていないということですか。

西川 そうです。22年頃から家庭用のエコキュートはスマートフォンでも動くタイプになってきています。スマホで供給地点番号と電力会社との契約情報がマッチングできれば、すごく便利なソリューションになると思います。

 HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)で計測したエコキュートの消費電力量は、年間1327kW時で1日当たり4kW時です。これを季節別で見ると、夏場が1・5kW時、冬場が6kW時と4倍の差があります。夏場はPVの発電量が多いのにエコキュートの消費電力は非常に少なく、逆に冬場は全然足りません。一方で、PVは雨の日には発電しません。
 

そこで、例えば、電力消費量の少ない夏場には、雨の予報の前日までに、2~3日分をまとめて沸かすことで、PVの余剰電力を活用できます。「貯めると熱損失が生じて省エネにならない」との意見もありますが、本気でゼロカーボンを目指すのであれば、省エネと再エネを分けて考えるのではなく、ベストミックスによる最適な解答を考える必要があります。

鈴木 当センターでは、今夏に住宅設備のCO2排出量やコストをシミュレーションした結果を公表しました。設備構成を変えてシミュレーションしたところ、戸建てではPVの発電電力を使って昼間にエコキュートでお湯を沸かすことが、他の機器の組み合わせよりもCO2排出量、コストメリットともに有利であることが確認できました。
 

また、コスト面においては、イニシャルコストは多少かかるものの、ランニングコストで十分に回収できる結果でした。こうした優位性をユーザーにご理解いただくとともに、PPA(電力販売契約)の導入などと併せ、エコキュートの昼沸き上げのスキームを考えていく必要があります。

              住宅で導入が進むエコキュート

 

世界に誇る制御技術駆使 成長戦略の原動力に生かす

―電力需給の調整力を担う重要性も高まっています。


西川 
現在、日本の交流による電力系統網は火力発電などによる慣性力の存在によって電力品質の安定化が成り立っています。その慣性力が失われていくと、電気を使う側、つまり、いまのインバーター機器は安全確保のために解列します。ですが、例えばエアコンは多少の電力品質の変動を吸収できるよう、トップランナー方式で少しずつ変わってきています。こうした技術は今後、増えてくると思います。
 

一方で、慣性力を安定化させるグリッドフォーミングの技術を進める必要もあります。それから、PVや蓄電池が注目されがちですが、コントロールするのは脳みそであるインバーター側です。家電製品で細かい制御ができて高い性能のある技術は、全世界に勝てるものとして日本が誇るべき文化です。

鈴木 HPのコア技術であるコンプレッサーも日本固有の技術として成長戦略にしていくべきです。高い圧力に耐え得る圧縮器を、少ない材料で薄く作ることができる技術は、日本の強みです。

塩 今後、住宅が国全体に寄与するためにはエネルギー収支のバランスを変えなければなりません。日本は島国なので、再エネを入れて自己完結するには融通が必須です。例えば、雨の日に備えて蓄電池やEVに電気を貯めておく、足りない分をマンションからの協力を得るなどの方法があります。
 

まずは、その芽を出す上で、新築戸建てにエコキュートやHP、蓄電池を入れて、自給自足で完結するスタイルを広げていくことが、戸建てを中心とする住宅メーカーが50年に向けて進めるべきことです。そうした家が多く建ってくれば、アグリゲートするという次の段階に入っていけます。

VPP事業でメリット実証 社会実装を進める段階へ

―今後の普及に向けた課題についてもお聞かせください。

西川 電力システム改革では、市場の価格メカニズム制度の整備、機器のIoT化と価格シグナルへの対応、DR搭載機器の普及などが協議されています。これらを連動させて相互のつながりを作る一丁目一番地がエコキュートです。また、VPP実証事業が終わり、エコキュートや蓄電池の接続をはじめ、節電ポイントシステムなどの実績ができています。これらの仕組みを使えば、社会的資本として安く実装できます。その意味でまずはRA(リソースアグリゲーター)と小売りとの連携が不可欠で、本気で実装に取り組むべきです。

 新築戸建てにおいては、PVの導入やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の流れができているので、高効率給湯機器を入れてHPでの冷暖房は当たり前のものとして普及していきます。そうした中、新築に比べて、初期コストやいろいろな制約条件がある既存住宅への対応が、日本全体の課題だと思います。ユーザーに納得していたただけるよう、例えば、ダイナミックプライシングのように、時間に応じて価格差をつけるなど、導入しやすくなる制度面のサポートが求められます。

鈴木 設備が一度入ると、なかなか違う設備に入れ替えられない「ロックイン問題」があります。戸建てでは、機器が壊れるまで使って、壊れたら同じようなものに入れ替えます。また集合住宅では、耐荷重や電気設備容量が足りないなどの理由から、エコキュートが入れられる建物の仕様になっていません。 
 

こうした事情を踏まえ、まずは新築の戸建て・集合住宅に対して、経済的インセンティブが付与されるような誘導的施策が必要になると思います。またユーザーの認知度を高めるため、ハウスメーカーや地場工務店、電力会社、あとは行政もしっかりと巻き込み、ムーブメントを起こしていく必要があると感じています。

にしかわ・ひろき 松下電工(現パナソニック)入社。工場生産技術を経て、次世代の住宅提案などに従事。

しお・まさかず 1985年積水化学工業入社。98年から太陽光発電の専任担当。太陽光発電協会の監事なども務める。

すずき・たかゆき 大学卒業後、建築工学の知見を生かす営業に従事。現在、自治体などへのコンサルティングなどを担当。

【特集2】名産のミョウガとシシトウづくり 地下水HPで農業のエネコスト削減


高知県須崎市が環境省「脱炭素先行地域」に選定された。
栽培用ハウスに先進的な仕組みを導入し地域課題も解決する。

【須崎市】

高知県須崎市は、環境省が2023年4月に公表した「第3回脱炭素先行地域」の対象として選定された。その一つが、設備更新に合わせて331棟の農業ハウスに利用してきた空冷式ヒートポンプ(HP)を「地下水熱利用のHP」に置き換えるという取り組みだ。
特産品であるミョウガとシシトウは、育成にハウス栽培による加温が必要で、消費するエネルギー量はトマトの2倍に及ぶ。地元の農協「JA土佐くろしお」は、約10年前に重油ボイラーからHPに約1000台切り替えた。この設備の更新時期が迫っており、従来のHPでの課題を克服できる新たな設備導入の検討を始めた。

農業ハウスに設置するHPと蓄熱槽

同市などが出資する地域新電力、高知ニューエナジーの廣見哲夫社長は「重油からHPに切り替えてエネルギーコストを10分の1に削減した。現在の物価高、円安、国際情勢の不安定化など、将来のエネルギーコストに不安がつきまとう。さらにコスト削減を図る方法を考えなければならなかった」と、設備更新の考えを語る。

2台を先行導入し実証 農業関係者から集まる熱視線

従来設備のCOP(エネルギー消費効率)は、3。1の消費電力に対して、3の熱を生み出せる。しかし、12~3月の加温が必要な時期にこれが2に落ちてしまう。霜取り運転も欠かせない。そこで、目をつけたのが地下水利用のHPだ。15℃程度の安定した冷水によって霜取り運転が不要となるほか、COPを4に向上できる。今回、脱炭素先行地域に選定されたことで、まず2台の地下水利用のHPを導入し実証中だ。地下水を利用する場合、安定した水の確保が必要となる。

冬場の須崎市は降水量が少なく安定した地下水を得ることが難しい。また、地下水はいったん汲み上げてしまうと、水温が下がってしまう。この対策として蓄熱槽を設けることにした。廣見社長は「蓄熱槽の運用にも工夫が必要。さまざまな運用方法を試して実用化していきたい」と意気込む。

今回の実証は、他県の農業関係者からも関心を集めており、視察に来るとのことだ。地下水利用HPが農業分野の脱炭素化において切り札になるかもしれない。

【特集2】エコキュート沸き上げを昼間にシフト 「直接上げDR」の実証実験を開始


再生可能エネルギーの普及に伴い、昼間の出力抑制が課題だ。
中国電力は需要家の電気式給湯機を自動制御する実証を始めた。

【中国電力】

再生可能エネルギーの導入量の増加に伴い、春・秋季の昼間を中心に電力の供給量が需要量を上回る状況が発生している。中国エリアは、太陽光と風力発電の接続量が700万kWに上り、全国で2番目に再エネの出力制御が多い。この低減を図る方策の一つとして注目を集めているのが、電気式のヒートポンプ給湯機「エコキュート」の沸き上げ時間を夜間から昼間にシフトさせる取り組みだ。

中国電力は、昼間に割安な料金メニューや節電アプリサービスを開始するなど、需要家の行動変容を促すサービスを展開してきた。ただ、需要の昼間へのシフトを確実に行うという点で課題があった。そこで6月から、需要家が所有するエコキュートを同社が自動制御し「直接上げDR(デマンドレスポンス)」を行う実証実験を、エネルギー関連サービスのインフォメティス(東京都港区)と共同で始めた。エコキュートを販売するダイキン工業やパナソニックの協力も得る。

エコキュートの昼間沸き上げのイメージ

需要家からモニター募集 AIによる最適制御などを検証

実験では、通信機能を備えるエコキュートを所有する需要家からモニターを募集。各家庭にはHEMS(ホーム・エネルギー マネジメント・システム)機器を設置し、太陽光発電やエコキュートの使用量などのデータを取得する。この情報や再エネ出力抑制の予測値などを基に遠隔制御でエコキュートの沸き上げ時間を夜間から昼間にシフトさせる。
実験では、二つのステップを踏む。基本制御では、エコキュートや太陽光のデータ取得、HEMSからエコキュートへの制御指示に加えて、タイムシフトで朝方の湯切れを発生させないことなどを確かめる。最適制御では、AIで最適な時間に沸き上げができるか、太陽光の自家消費率向上にどの程度寄与するか、サービスの収益性について検証などを行う。

販売事業本部コンシューマ第二グループの山田憲司マネージャーは「実証実験を通して、再エネを有効活用しながら、需要家と当社の双方にメリットがあるサービスの実現を目指す」と語る。昼間に沸き上げることで、入浴までの保温時間が短縮され、さらに省エネになることも考えられる。エコキュートの昼間活用はさらに進んでいきそうだ。

【インフォメーション】エネルギー企業・団体の最新動向(2024年9月号)


【大阪ガス、ヤンマー/既設コージェネに水素混焼率30%の運転実証に成功】

大阪ガスとDaigasエナジーは、ヤンマーエネルギーシステム製のガスエンジンコージェネ(400kW)を使い、都市ガスに水素を30%混焼した実証運転に成功した。Daigasエナジーが構築した水素供給設備によって流量や圧力調整した水素を使用。コージェネ設備については既存機をそのまま活用した。実証では、コージェネ設備に対して大幅な設備改造をしなくても、都市ガス専焼の運転と同等の定格出力と発電効率を確認することができた。今回の試験結果を踏まえ、Daigasエナジーでは水素を燃料としたコージェネシステムの更なる技術向上に取り組む構えだ。

【東京都、東芝エネルギーシステムズ/次世代型ソーラーセルの室内での有効性を検証】

東京都港湾局と東芝エネルギーシステムズは8月から、都内の臨海副都心で次世代型ソーラーセルの有効性を共同で検証する。検証ではオフィスビル内などの室内環境における活用を見据え、発電能力の継続性や耐久性を確認していく。検証に採用するセルは、東芝グループが開発したペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を用いたものだ。16.6%に達する高い発電効率が特徴で、フィルム型モジュールの次世代型ソーラーセルである。同じタイプの次世代型セルと比べても世界最高水準の発電効率となる。両者はこの検証を通じて、脱炭素社会の実現を目指していく。

【コロナ/スマートリモコンと連携し床暖房の遠隔操作を実現】

コロナはスマートリモコン対応のヒートポンプ式温水システム「エコ暖フロア」の3機種と耐塩害仕様の2機種を発売すると発表した。スマートリモコン「Nature Remo」とスマホのアプリを連携させて、床暖房の遠隔操作を実現した。また、床暖房と既設のルームエアコンの操作を自動で連携するオートメーション設定により、無駄な運転を抑えた省エネ運転を行う。同社の試算によると、同設定で暖房効率は上がり、電気代も安くなる。
床暖房の温度設定は、室温運転のほか、運転時の室温、外気温、時刻から最適な温水温度を設定する自動運転が追加となり、使用者の使い勝手に応じて選択できる。

【京セラコミュニケーションシステム/初期費用ゼロで営農型太陽光発電システムを提供】

京セラコミュニケーションシステムは営農事業者向けに、太陽光発電設備を搭載した農業用ハウスを初期費用ゼロで提供する事業を開始した。同社が建設費用を負担し、発電した電気を企業などに販売する。営農者からは月額利用料を受け取る。まず岡山県玉野市で7月下旬に第1号の施設を稼働。森林伐採などを伴わない太陽光発電施設として普及を目指す。

【北ガスジェネックス/北ガスグループでLPガスによる初のZEB認証を実現】

北ガスジェネックスはこのほど、LPガスを供給するJAいわみざわ本所の新設事務所がZEB ready認証を取得し、建築の省エネ性能表示制度で最高ランクの5つ星を獲得したと発表した。同社は北海道ガスと連携してエネルギーシステムも提案し、小規模太陽光発電による創エネ、GHP空調設備採用などにより一次エネルギー消費
量を58%削減した。

【日本熱供給事業協会/海外視察報告会で熱供給の欧州最新事例を紹介】

日本熱供給事業協会が海外視察調査報告会を開催した。2023年11月にエネルギー事業者がドイツやデンマークなどを視察しその内容を報告した。デンマーク大使館の田中いずみ上席商務官が同国の「脱炭素社会の構築に向けた熱供給の役割」について基調講演し、その後「化石資源を使わない地域暖房」や「熱利用拡大に係る技術開発」などの講演が行われた。