【特集1・再エネ安全保障論】賦課金問題から見えてくる論点 電力システムへの統合が急務

FIT制度の開始以降、再エネの普及拡大とともに賦課金単価は上昇してきた。
今後は、費用負担の在り方とともに市場への統合がますます重要になる。

【寄稿:江田健二・RAUL代表取締役】

えだ・けんじ アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社後、エネルギー・化学メーカーの業務改善プロジェクトなどに参画。2005年から現職。

再エネ賦課金は、再エネの普及を支えてきた制度費用である。2012年度に固定価格買い取り(FIT)制度が始まって以降、太陽光を中心に導入が大きく進んだ。一方で、その費用は電気料金を通じて需要家が広く負担しており、26年度の単価は1kW時当たり4・18円となった。制度開始時の0・22円と比べると、負担水準は大きく変化している。単価は全国一律で、電力会社や契約メニューを変えても変わらない。電力使用量に比例して課されるため、家庭だけでなく、使用量の大きい店舗や工場にとっても無視できない制度費用となっている。

重要なのは、この単価を単なる「現在コスト」として見るのではなく、過去の導入拡大、卸電力市場価格、販売電力量などが反映された制度費用として読み解くことだ。賦課金の推移をたどると、日本の政策がどのように進み、どこに制度設計上の論点があるかが見えてくる。

初期FIT案件の影響反映 累計負担は数十兆円規模に

単価の推移を見ると、12年度から22年度まではほぼ一貫して上昇した。背景には、FIT制度のもとで高い買い取り価格が設定され、特に事業用太陽光の導入が急速に進んだことがある。初期に認定された案件は、20年間など長期にわたって固定価格で買い取られる。そのため、当時の買い取り価格が現在の賦課金単価にも影響している。

年度別の再エネ賦課金単価の推移

この点は賦課金を理解する上で重要だ。26年度の単価だけを見ると、現在の再エネ導入費用が高いように見える。しかし実際には、10年代前半に認定された案件の費用が、現在の電気料金にも反映されている。賦課金は、その年度の再エネ発電コストだけでなく、過去に導入された電源の買い取り費用も含めた制度費用である。

一方で、23年度には単価が1・40円まで大きく低下した。これは再エネのコストが急に下がったからではない。卸電力市場価格の高騰により、再エネ電気を買い取ることで本来避けられる火力発電などの費用、いわゆる「回避可能費用」が大きくなったためである。

賦課金は、買い取り費用から回避可能費用などを差し引き、販売電力量で割って算定される。市場価格が高い時期には差し引き分が大きくなり、賦課金だけを見ると低く出る。つまり、23年度の急低下は、需要家の料金負担全体が軽くなったことを意味するものではない。燃料価格や卸電力市場価格の上昇が、別の形で電気料金を押し上げため、賦課金だけが下がって見えた側面がある。

実際、24年度には3・49円、25年度には3・98円、26年度には4・18円と再び上昇した。前年度と比べると、買い取り費用などはほぼ横ばいである一方、回避可能費用などが減り、販売電力量もわずかに減少した。この結果、単価は4円台となった。

制度開始からの累計負担は、すでに数十兆円規模に達しているとみられる。これは、再エネの導入拡大を社会全体で支えてきた結果でもある。FIT制度開始前に比べ、太陽光を中心に再エネ導入量は大きく増えた。エネルギー自給率の向上、脱炭素化、燃料輸入リスクの低減という観点から、一定の政策効果があったといえる。

【特集1・再エネ安全保障論】グリッドコード厳格化と産業政策 既設維持なくして安定供給なし

グリッドコード改定で中国製機器の活用継続が難しくなりそうだ。
西村陽氏がポストFIT事業を取り巻く産業政策を問う。

【寄稿:西村陽・大阪大学招聘教授/公益事業学会政策研究会「電力」幹事】

かつて、日本で太陽光の話題といえば、過剰な高値買い取りとFIT特例の弊害、事業規律の悪さ、一部地域への集中による出力抑制などであった。ところが現在、太陽光発電の維持はサイバーセキュリティ対策によって風前の灯となりつつある。いまだ関係者の認知が不十分なのが不思議でならないが、グリッドコードの改定によって、来年4月から、JC-STARを取得していない太陽光発電システムは、系統接続分はもちろん、電気的に連系した屋根載せに至るまでの一切を日本で使えなくなる。

実は、日本において2010年代から圧倒的な価格競争力を持ってきたのは中国製であり、大半はJC-STARの取得見込みが立っていない。現状の製品はこのまま発電できるが、次の機器更新で安い中国製が使えないため、FIT期間の終了に合わせて廃業しようと事業者が判断すれば、日本の太陽光の主力であるポストFITへの継続は大幅に目減りし、10年も経てば電力安定供給上の脅威となる。通常電源の更新すらまともに進まない中、北関東の太陽光がゼロになった需給計画を考えれば、それは容易に想像できる。

課題は中級PCSの国産化
作り手と買い手の連携不可欠

太陽光発電PCSの日本・中国の実力差(イメージ)

図は、サイバーセキュリティの中核部品であるPCS(パワーコンディショナー)の日本製と中国製の分布と価格水準の大まかなイメージだ。圧倒的な量産効果で価格差がつくのは当然としても、最も致命的なのは「中級クラスの太陽光を更新しようにも中国産以外の製品がない」という現実だ。当局はメーカーに「中国製品を排除し、国産品で代替できるようになるのはいつか」とヒアリングし、来年4月から対応可能と判断したようだ。だが、メーカーの「製造可能」の回答と、実際にポストFIT事業に見合う価格と納期で供給できるかどうかはまったく別問題だろう。

現在、ポストFIT電源の集約と市場統合に挑もうとする適格事業者とその予備軍は、相当のノウハウと知識を持つ大型事業者だが、価格と納期が適切なPCSがなければ手も足も出ない。PCSに代表されるかつての日本の得意産業立て直しに向けて、日本の作り手、ポストFITに挑戦する買い手の連携、そして政策当局の賢い目と手立てが求められるのではないだろうか。

【特集1まとめ】再エネ安全保障論 責任電源に進化の時

イラン有事を受け中東産石油への依存度低減が不可避となる中、
元々化石燃料の輸入削減や安全保障強化に資するとして
導入が図られてきた再生可能エネルギーが改めて脚光を浴びている。
今や日本は太陽光を中心に主要国でも上位の導入量となったが、
電力システムを担う責任ある電源への変革への取り組みは緒に就いたばかり。
賦課金の国民負担や地域トラブルなど積年の課題も根深く残る。
ポストFITで再エネが次のフェーズへ進化するための道筋を探った。

【アウトライン】目前に迫るポストFIT対応 重要局面で問われる官民の本気度

【コラム】コスト競争力ある長期安定電源目指して 主力化政策の現在地と重点施策

【寄稿】賦課金問題から見えてくる論点 電力システムへの統合が急務

【座談会】日本に望ましい電源へと促せるか 欠かせない真の価値評価

【インタビュー】有事下の脆弱性と特定国依存 経済安保の現実直視を

【寄稿】グリッドコード厳格化と産業政策 既設維持なくして安定供給なし

【特集1・第3次石油危機】供給確保で高市政権の評価高まるが…批判相次ぐガソリン補助金の行方

一触即発の状況が続くイラン情勢を背景に、ホルムズ問題によるエネルギー有事は収まる気配がない。
石油安定供給への対応で評価の高まる高市政権だが、問題だらけのガソリン補助金には批判が相次いでいる。

本稿締め切りの4月23日現在、米国とイランの和平交渉は混迷を深めている。停戦期限が日本時間の23日午前に迫る中で、米国のバンス副大統領は21日のパキスタン訪問を取りやめ、イランとの2回目の和平協議は先送りとなった。

トランプ米大統領はSNSで、仲介役のパキスタン‌からイラン指導者らが統一提案を取りまとめるまで‌攻撃を控えるよう要請されたことに触れた上で、「イラン側との協議が決着するまで停戦を延長する」と表明。一方で、米軍にはイランの港に出入りする船舶への封鎖措置の継続を指示した。

これに対し、イラン側は「停戦延長を一切要請していない」と反論。対米協議の代表団を率いたガリバフ国会議長の顧問は、「トランプによる停戦延長には何の意味もない」「奇襲攻撃のための時間稼ぎを意味する」などとSNSに投稿した。

SNSでの空中戦 インサイダー疑惑も

このやり取りが象徴するように、今回のイラン戦争では米国とイランの首脳部同士でSNSを活用した空中戦が行われ、事態を二転三転させている。イランのアラグチ外相の投稿でホルムズ海峡の封鎖が解除に向かうかと思いきや、革命防衛隊はこれを否定。目まぐるしく変わるトランプ氏の投稿や発言が拍車をかけ、和平交渉の先行きは見通せない状況だ。

「世界各国の安全保障がかかっている重要な交渉において、当事者の代表がSNSで場外乱闘をやるのはもうやめてほしい。何か投稿がある度に原油などの相場が乱高下しており、トランプ政権内の関係者によるインサイダー取引疑惑まで浮上している」(永田町関係者)

テヘランの広場にはホルムズ封鎖を宣伝する巨大な看板が……(提供:EPA=時事)

確かに、3月以降の原油先物の値動きは激しい。WTIを見ると、4月6日に116・4ドルの高値を記録した後、上がったり下がったりを繰り返しながら、2回目の再協議が伝えられた21日には瞬間的に80・2ドルに急落した直後、88ドル台まで急上昇している。英BBCなどの報道によると、トランプ氏がSNSに紛争関連の投稿をする直前に原油先物などで売買高が増えており、米当局が調査を始めたという。戦争を利用したインサイダー取引が事実とすれば、イラン側が一段と強硬姿勢になるのも無理はない。

いずれにしても、現時点でホルムズ海峡の完全開放は見通せず、仮に実現したとしても中東諸国のエネルギー関連施設が軒並み破壊された影響で、石油・ガス供給が戦争前の状態に戻るには年単位の時間がかかる。そうした状況下で、日本はどのような対応を図っていくのか。