【東京ガス代表執行役社長 笹山晋一】技術とノウハウを武器に 迅速かつ低価格に 燃転の価値を提供する
成長投資を利益につなぐ 効率化へ他社との協業も
井関 今年度スタートした新中期経営計画の足元の進ちょく状況と手応えについて教えてください。
笹山 新中計ではROE(自己資本利益率)向上を掲げるとともに、前中計で推進したポートフォリオ経営をさらに進化させ、セグメントごとのROIC(投下資本利益率)を明確化して管理しています。過去に高い目標を達成してきた経営体力を基盤に、成長投資を確実に成果・利益へと結びつけていく取り組みを進めています。中東情勢など外部環境の変動はありますが、初年度の目標達成に向けて全体として極めて順調に進展していると実感しています。

井関 東京電力ホールディングスが進めているアライアンス先の選定への関心も含め、他社との協業の在り方についてどのような展望をお持ちですか。
笹山 個別の動向についてコメントする立場にはありませんが、企業間アライアンスは非常に重要です。先日発表した東京電力パワーグリッド、NTT東日本とのドローン活用によるインフラ保安点検連携のように、共同で効率化できる分野は積極的に推進しています。過去を振り返っても、日本へのLNG導入や第二次オイルショック後の電源不足の際には、東京電力と当社は連携して分散型電源の導入検討を行ってきた歴史があります。今また、送電線制約やDC急増、再エネ拡大に伴うボラティリティー上昇という課題に直面する中で、分散型電源や蓄電池などのリソースを最適運用する集中と分散のバランスにおいて、相互に補完し合える余地は非常に大きいと感じています。
e―メタン導入へ前進 多様な手段で脱炭素化
井関 ガスシステム改革の検証で、取りまとめが行われました。
笹山 これまでの制度改革は競争促進に重きが置かれていましたが、国際情勢の激変や脱炭素コストの上昇などを背景に、競争だけで全ての課題が解決できるわけではないという認識が広まりました。今回の検証で、ガスの有用性が再評価され、地方都市へのソリューション展開や企業間・地域間のアライアンス推進の重要性が明確に位置付けられたことは非常に大きな進展であり、評価しています。
井関 ガスの脱炭素化の切り札と期待されるe―メタン導入に向けたカナダにおける事業開発プロジェクトの最新の状況は。笹山 8月上旬にカナダの現場を視察し、e―メタン製造に必要な副生グリーン水素の供給体制や近隣でのCO2供給、現地パートナー企業との強固な協力関係を直接確認してきました。最終投資決定(FID)に向けた詳細設計(FEED)段階へと着実に前進しています。海外だけでなく、東京都の森ヶ崎水再生センターにおけるバイオガスを活用したe―メタン製造実証など、国内においても、多様なアプローチでグリーン化を着実に推進していきます。
井関 経済広報センターの「企業広報経営者賞」を受賞されました。
笹山 経営者個人というよりも、東京ガスグループ全体および広報部門の日頃の努力が評価されたものと感謝しています。「東京のガス会社」にとどまらない当社の多角的な事業内容や価値を世の中に正しく伝えていく上で、広報やステークホルダーコミュニケーションの果たす役割は極めて重要であり、今後とも一層力を入れていきます。
井関 ありがとうございました。
対談を終えて
自然災害の多発やLNG価格の上昇など、ガス業界全体が厳しい事業環境に置かれる中、東京ガスは直面する経営課題や中長期の取り組みなどで着実な手を打っている。新中計の滑り出しも順調だ。グループ会社では、新電力のTGオクトパスエナジーが独自の料金メニュー設定などが奏功し絶好調。そもそも英国法人のオクトパスに目を付けたのが笹山社長自身だ。今後の経営展開に、そのセンスがどう生かされるのか。


