2024年度末の完了に向けて、全国で設置が進むスマートメーター。これと切り替わるように今後は次世代メーターの設置が始まる。現在、その仕様が国で議論されているが、今後の動向を聞いた。
インタビュー:山中悠揮/資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課 電力産業・市場室 室長補佐(企画・市場制度担当)
――現在、大手電力各社はスマートメーターへの更新を進めています。取り組みをどう評価しますか。
山中 スマートメーターは2014年から本格導入が開始され、日本全体では24年度末の導入完了に向けて、順調に導入が進んでいると理解しています。アナログメーターがスマートメーターに置き換わることで検針業務の合理化が図られるだけではなく、近年の激甚化する災害の中で、電柱から各家庭への引込み線などで発生する隠れ停電の検知や、メーターのデータを基にした見守りサービスの提供も行えます。
――政府は「次世代スマートメーター制度検討会」が行われています。どのような内容ですか。
山中 電力メーターは送配電事業者が設置していますが、その検針値は小売電気事業者や発電事業者に提供されています。次世代スマートメーターは24年度から順次導入を進める予定ですが、送配電事業者や小売電気事業者などによる活用に限らず、将来の電力事業に関わる事業者のデジタルトランスフォーメーションを推進する観点から議論が行われました。
停電復旧の効率化に期待
脱炭素社会にも貢献
――次世代スマートメーターに期待することは何がありますか。
山中 次世代スマートメーターでは取得データを増やすとともにデータ活用を進めようとしています。
例えば、電力メーターを設置した需要家が停電した際に送配電事業者に警報を送るLastGasp機能が追加されます。これにより、送配電事業者は需要家ごとの停電状況を即座に把握でき、停電からの復旧の効率化が可能となります。
次に、電力量や電圧の5分値の情報を送配電網の運用などに活用できるようになり、送電時の電力ロスの削減や、CO2削減、更には高度な運用管理による再エネの接続可能量の増加が期待できます。地域の再エネを使ったマイクログリッドなどの新ビジネスへの活用も考えられます。
加えて、海外のスマートメーターとの比較検討も行いました。計量値の小売電気事業者への通知時間は、欧州でも北欧の一部の国を除けば、数時間に一度の通知が多い中、日本では60分以内に小売電気事業者などへ届けることとしています。計測粒度は需給調整市場などの取引単位の見直しに備え、30分単位を15分単位にソフトスイッチで見直せる仕様としました。また1分値をHEMSなどを介してリアルタイムで取得する際の欠損の改善も議論されました。
――今後の論点にはどのようなものがありますか。
山中 検討結果を踏まえ、各送配電事業者がコスト低減や仕様統一化、柔軟なアップグレードを可能とする仕様などを検討し、国としてもフォローアップする予定です。今後、EVや再エネの導入が一層進みます。充電器やパワーコンディショナーの計量機能を取引又は証明に使用できる「特定計量制度」が22年度にスタートする予定です。特定計量制度に基づく計量器の計量値をスマートメーターシステムに取り込む具体的な方法についても、引き続き検討していくこととされています。 さらに、低圧だけではなく、発電向け、高圧、特高向けメーターの機能の検討も行う予定です。カーボンニュートラル実現には、より発電や高圧需要家のメーターデータの活用が重要となります。電力事業のデジタルトランスフォーメーションへの貢献に向け引き続き議論を継続していきます。