【業界スクランブル/省エネ】
新型コロナウイルスの感染拡大対策として、さまざまな企業でテレワークが実施された。テレワークで通勤の時間と消費エネルギーが削減されたことになるが、旅客運輸部門の国内エネルギー消費量は2018年度実績で約1800PJ(原油換算約5000万kℓ)と大きく、この一部でも削減できれば大きな省エネ効果を達成できる。
当然、CO2排出量の点でも、自家用自動車で9700万t、鉄道830万t、航空1000万tと大きな排出量である。なお、輸送量当たりのCO2排出量の目安は、1㎞当たり乗用車133g、航空96g、バス54g、鉄道18g――となる。つまり、地方勤務者(自家用車で通勤し、営業車で移動など)がテレワークを実施し、ウェブ会議を活用することが、最も削減量が大きくなる。当然、都市部勤務者は人数も多く、遠距離通勤者も多いことから、削減量合計では都市部の方が大きい。
また、外出制限によるテレワーク強化は海外も同様である。いまは海外への渡航も難しいことから、海外とのウェブでの打ち合わせの機会が増加している。実際、対面と変わらない打ち合わせを実現できるので、時間とエネルギーを使って海外出張に行く必要性が減少している。
また、英語字幕の自動作成機能もあり、日本語対応がリリースされれば議事録作成業務が不要となり、対面会議より便利な面もある(ただ、時差による効率性を考慮する必要がある)。
テレワーク強化はオリンピックの都内交通混雑緩和のための取り組みにもなるが、ペーパーレス化、クラウド化の推進と同義であるため、企業のBCPにも貢献する。次のウイルス流行に対する事業継続対策は当然だが、災害などにより事務所が機能停止しても、すぐに別の事務所や自宅でフォローができるため、物理的な事務所停止に対するレジリエンスも強化される。
今年は政府の地球温暖化対策計画の見直しが予定されているが、テレワーク推進強化というのも温暖化対策の一つとして盛り込むべきだろう。(R)