日産の軽EV「サクラ」 東京のリアルEVライフ

【どうするEV】陰山惣一/『Eマガジン』編集長

昨年5月に登場以来、今年7月に受注累計が5万台を突破したという日産の軽EV「サクラ」。松たか子さんが出演するCMでは「家でクルマを充電 びっくりするけど ほんとこれだけ」という手軽な様子を訴求しているが、私の会社にもいち早くサクラを購入し、初めてのEVライフを満喫している同僚がいる。EC部門の責任者で商品企画も手がける田中君は、動画制作も行っているマルチクリエイター。趣味は自転車とゴルフで、数年前に町田市郊外の住宅地に戸建てを購入した。半地下のガレージにはクルマが縦に2台入り、奥にはBMWの「325iツーリング」(ワゴン車)にホンダの小型バイク「モンキー」、入り口にはホワイトパールのサクラが収められている。

「サクラを買ってから、BMWにはほとんど乗らなくなってしまいましたね。普通充電器は新しく15万円で取り付けたんですが、ゆくゆくは屋根にソーラーパネルを取り付けてサクラを蓄電池代わりにするVtoHを試してみたいと思ってるんですよ」とは田中君。聞くところによると、サクラを購入したオーナーの中で、太陽光発電を組み合わせたVtoHを実践する方は全体の3割もいるそうだ。

田中君と日産サクラ

田中君がサクラを購入した理由は、もともとEVに興味があったということのほか、東京都の補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)で優遇されてリーズナブルに購入できる点も魅力だったという。購入当時、国の補助金は55万円で東京都の補助金は45万円、合わせて100万円の補助金が適用されていた。しかも、当時はサクラの値上げ前だったため、購入したXグレード(オプション込み)の価格は270万円、差し引き170万円で購入できたと語っていた。「都はVtoHの助成金も優遇されていて、ウチの場合はソーラーとV2H機器、工事費から上限100万円が補助されるんです。なので、こちらも現実的かなと思っています(※要件による)」。ソーラーパネルで電気を生みサクラに蓄電、日常の電気を自然エネルギーで賄うという暮らしは環境にもお財布にも優しく、災害停電時にも安心である。

さて、この日は田中君がよく行くというゴルフの打ちっぱなしに同行したのだが、広々としたリアシートの片方を倒してゴルフバックを収納。身長180cm近い男2人がフロントに並んで座っても、たっぷりとしたベンチシートのおかげか窮屈さを感じさせない。そしてサクラの本領が発揮されるのは、なんといっても坂道だ。排気量の小さい軽自動車で急坂を登ると、どうしても低速ギア&高回転となり、エンジンを唸らせながらの走行となってしまう。その点、サクラは平地同様に何事もなかったかのようにスーッと急坂を登っていくのだ。坂を登りながら思わず出たのは「こりゃ、軽自動車は全部EVになっちゃうね」という一言。近所使いの小型車オーナーの皆さんはサクラをお試しあれ!

かげやま・そういち 『世田谷ベース』などライフスタイル誌の編集長を経て、EV専門誌『Eマガジン』を創刊。1966年式の日産・セドリックをEVにコンバートした「EVセドリック」を普段使いしている。

【火力】ヒートポンプは再エネ? 温・冷熱で事情異なる

【業界スクランブル/火力】

今回は毛色の違う話題に触れる。GX経済移行債の具体化に当たり、「大気熱という再生可能エネルギーを利用するヒートポンプ(HP)を投資先に加えるべき」との意見が出ている。HPは、有望な省エネ機器との認識は定着しているものの、再エネと言われると「あれっ?」と思う人の方が多いのではないか。実際、「HPが再エネなら冷蔵庫は再エネか!」という反論も聞こえてくる。火力発電では、HPが主要機器として使われることは稀だが、日頃熱を扱う者として、先ほどの意見のすれ違いを解説する。

HPは、大気中などにある熱を別な場所に汲み上げることで利用可能なエネルギーとして取り出す仕組みである(このことがヒートポンプの名の由来である)。熱を汲み上げるには動力が必要となるが、大気熱などを取り込むことで必要動力の何倍もの熱エネルギーを利用可能にできるのがミソとなっている。

問題は、どこまでを再エネとしてカウントするのかということだが、動力として電気を利用する場合、必要動力を火力発電の熱効率で割り戻した熱量を全体から差し引くことで、大気から取り出したエネルギー量を特定することができる。暖房の場合は、この考え方で化石燃料を単純利用する場合と比較でき、カーボンフリー電気ならばCO2削減効果をさらに大きくカウントすることもできる。

一方冷熱利用については、冷熱を作り出す方法がHP利用しかほぼなく、地下水などの冷熱を利用できるレアケースを除いて省エネになっておらず、その分を再エネの創出量としてカウントする理屈も成り立たない。

一言で熱利用と言っても、温熱か冷熱かで事情は大きく異なる。それでもHPの温熱利用を貴重な国産エネルギーとして見える化する意義は大きい。(N)

アルミ産業の一番川下から見る 日本の資源とエネルギー

【リレーコラム】谷山佳史/アサヒセイレン代表取締役社長

日本のアルミ産業は、エネルギー動向に強く影響を受けてきた産業です。アルミはボーキサイトからアルミナを抽出し、それを電気分解することで生み出されます。オイルショックにより、まずこの一次製錬(新塊)は国内で存続し得ない産業となりました。一方、日本国内で発生するさまざまなアルミスクラップを回収、溶解し、インゴット形状にする二次合金地金(再生アルミ)の生産は、右肩上がりで成長を続けてきました。二次合金地金は、燃費向上が至上命題となった各自動車メーカーの軽量化施策として、エンジンなどの主要部品に採用されてきたからです。

そんな再生アルミは、最近EUのタクソノミーでグリーン認定されたように、さらに注目されています。一次製錬では1tのアルミを作るのに1万3500kW時必要ですが、それに比べ再生アルミはその約3%しか必要としません。つまり、それだけ省エネで低CO2なのです。もちろん、不純物をほぼ含まないアルミ新塊と全く同じものが、全て再生でできるわけではありません。ゆえに、日本は今でも年間ざっと120万tのアルミ新塊を輸入しております。


アルミの輸出入は電力の輸出入

「アルミは電気の缶詰」といわれます。輸入される120万tに、単純に1万3500kW時をかけると、162億kW時になります。つまりこれだけの電力がアルミという缶詰になって海外からもたらされているともいえます。

計算によると、自動車などに形を変えて蓄積されてきたアルミは、その使用サイクルや輸出入を調整すると、2030年ごろまで、毎年約300万tものスクラップとして発生するとされています。これは、405億kW時と同等といえるかもしれません。しかし、その全てが有効に活用されているとは言い切れません。アルミスクラップはその価値に応じて、ざっとトン当たり20万円以上の有価で、世界中で取引されます。それは経済合理性に基づき海外にも輸出されるということでもあります。確かに、きれいなスクラップはアルミ新塊の代替として有効活用されていますが、混ざり合ったスクラップは選別にコストがかかり、リサイクルは進みにくいのです。まさしく「分ければ資源、混ざればゴミ」です。

現在国内に蓄積されたアルミはエネルギーであり、過去に邦貨を流出させて手に入れた貴重な資源です。それを国内に還流させることが、われわれアルミ再生屋が取り組む省エネルギーです。そのためにも「分ければ資源、混ざればゴミ」を認識いただき、分別回収やリサイクルに一層の理解を賜りたいです。

たにやま・よしふみ 1994年和歌山大学卒業後、アルミ二次合金を製造販売するアサヒセイレンに入社。その後、工場、営業、3か国の海外勤務などを経て、2017年から現職。

※次回は三井物産金属資源本部新金属・アルミ部次長の南野弘毅さんです。

【原子力】原子炉停止時に自動冷却 新規原発が稼働

【業界スクランブル/原子力】

久しぶりに米国から朗報が届いた。スリーマイル島(TMI)事故後に新規着工した初の原発が、7月に営業運転を開始したのだ。米電力大手サザンによるもので、ジョージア州で建設されていたボーグル原子力発電所3号機(出力111万7000kW)。安全性をより高めた革新軽水炉としても米国初の稼働となる。

建設を担ったサザン社の子会社ジョージアパワーは声明で「ボーグル3号機は今後60~80年間、顧客にクリーンで信頼性の高いエネルギーを届ける」と強調している。同社は同じ炉型の4号機も来年3月までに稼働させる予定だ。

ボーグル原発3、4号機は米ウェスチングハウス(WH)が設計した革新軽水炉「AP1000」を採用している。この炉は事故や災害で原子炉が停止した場合でも、運転員の操作や電源なしに重力による水の落下で自動的に冷却できる仕組みを持つ。3、4号機は2012年に米原子力規制委員会が建設・運転を認可している。

当初、3号機は16年に稼働する予定だった。米国ではTMI事故の後、原発の建設工事が途絶えたことから熟練の作業員が不足し、工期が大幅に延びた。その結果、建設費も増え、AP通信によると3、4号機合計の建設費は当初想定の約2倍の300億ドル(約4兆2000億円)を超えた。しかし、米バイデン政権が気候変動対策を看板政策に掲げ、発電時にCO2を出さない原発を重視していることが建設の追い風になった。

米国ではSMR(小型モジュール炉)の建設計画もある。わが国でも岸田政権は、原発の新増設・リプレースに向けて原子力政策を前向きに変えつつある。AP1000のような安全性を高めた原発の新規建設を後押しする政策に期待したい。(S)

【石油】産油国の2極化 脱炭素を巡る分断

【業界スクランブル/石油】

7月中旬の岸田文雄首相の中東歴訪。多彩な財界人が同行し、サウジ、UAE、カタールを回った。3カ国でわが国の原油輸入の85%を占め、原油生産はますます湾岸産油国に集中する傾向にある。加えてカタールは天然ガス埋蔵量世界3位、LNG輸出量トップであるが、2021年年末にはLNGの対日供給長期契約の更新を見送った経緯があり、ウクライナ戦争に伴うLNG争奪戦の中、関係修復が懸案となっていた。石油・ガスの安定供給のみならず、脱炭素、カーボンニュートラルを見据えて、水素・再エネなどにおける協力にも合意し、極めて有意義な訪問であった。

カタールはカーボンニュートラルの宣言はしていないものの、3カ国とも既に脱炭素に向けて、水素や再エネ、CCS(CO2回収貯留)の開発に着手している。ブルー水素を石油ガス改質とCCS、さらに増産のためのEOR(増進石油回収)との組み合わせでつくれるし、グリーン水素を降り注ぐ太陽光の電気分解でもつくれるから、水素供給源としてのポテンシャルは大きい。サウジはアンモニア化した貯蔵・運搬を目指しているようだ。

3カ国のような金持ち産油国はいい。問題はロシアを含めて、イラン、イラク、ナイジェリア、リビアといった脱炭素の準備が出来ていない一般の産油国である。脱炭素対応を巡り産油国にも分断が起こっている。ウクライナ戦争長期化の中で、「脱炭素潰し」がロシアの戦略目標の一つになったとの指摘もある。脱炭素も分断の大きな要素だ。

先進国を含めても、再エネ開発など脱炭素への対応が最も早かったのがUAEだ。先進国とグローバルサウスの分断の間で、今秋のCOP28議長国UAEがどのようなかじ取りを行うか注目される。(H)

【ガス】LPガス商慣行是正 「画餅」を避けるには

【業界スクランブル/ガス】

LPガスの取引適正化に向け議論を進める総合資源エネルギー調査会液化石油ガス流通WGの第6回会合(7月24日)が開かれ、罰則などを含めた新ルールの概要が示された。当日付、朝日新聞は朝刊1面トップで、「賃貸集合住宅のLPガス代に関係ない設備費上乗せ禁止」との見出しで、給湯器やエアコンなどガス供給と関係無い設備費用を上乗せすることを禁じることなどを報道。追随してNHKや一般各紙、地方紙でも大きく取り上げられ、LPガス料金の不透明さは消費者に大きなインパクトを与えた。

エネ庁が今回示した改正方針は、賃貸の設備料金と過大投資禁止、さらに三部料金制徹底など。取締強化のため、基準適合命令、登録取消し、30万円以下の罰金も科すなど、罰則規定のある条文に位置付けるとした。

課題は実効性の部分だろう。これまで賃貸集合住宅では、設備の外出しや三部料金制について省令改正したが、管理会社やオーナーなどからの反発もあり、多くのケースで基本料金に含めて費用回収されてきた経緯がある。LPガス側から発信してきた商慣行ではあるが、解決には管理会社やオーナー、住建メーカーが問題を認識し、さらに国交省や公取、消費者庁などとの連携が必須だ。

あるLPガス事業者は、猛暑が続く中、貸与したエアコンのメンテナンスなど、ガスに関係ないアフターサービスに奔走していると悲鳴を上げる。また法改正前の駆け込みや抜け駆けも横行し、オーナーからはエアコンなどの機器を「今のうちに新品に」と交換を求める話も舞い込んでいるという。エネ庁では、駆け込み寺ならぬ投稿フォームを整えるとしているが、どのような流れで指導や処分につなげるのかを明確にしないと、絵に描いた餅になりかねない。(F)

【マーケット情報/9月18日】原油続伸、中国需要回復の見通し

【アーガスメディア=週刊原油概況】

9月11日から18日までの原油価格は、主要指標が軒並み続伸。中国における回復の見通しで、需給逼迫感が強まった。

中国の政府系シンクタンクが、今年の同国における石化原料、および石油製品需要の強まりを予測。製油所における原油処理量も、前年比で9%増加するとの見方を示した。OPECも、今年の中国における石油需要見通しを上方修正した。

加えて、中国では、工業生産指数など、8月の景気指数が前月比で改善。景気刺激策が効力を発揮しているとみられる。中国人民銀行は景気低迷へのさらなるテコ入れとして、各銀行に求めていた現金予備率を緩和。これらにより、中国における石油需要が回復するとの予測が一段と強まった。

また、中国の製油所稼働率は8月、過去最高を記録。定修明けに加え、季節的なガソリン需要の強まりを前に、各社が稼働率を引き上げた。

供給面では、サウジアラビアとロシアの減産維持の影響が続いている。また、リビアでは洪水を受け、全ての輸出拠点が一時的に閉鎖となった。米国では、クッシングにおける原油在庫が減少し、2022年12月以来の最低を記録。ただ、全体の原油在庫は、輸入増を受けて前週から増加している。


【9月18日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=91.48ドル(前週比4.19ドル高)、ブレント先物(ICE)=94.43ドル(前週比3.79ドル高)、オマーン先物(DME)=95.20ドル(前週比3.62ドル高)、ドバイ現物(Argus)=95.21ドル(前週比3.72ドル高)

【新電力】長期安定のための電力調達 新たな契約を志向

【業界スクランブル/新電力】

今夏の電力卸市場は、記録的な酷暑であるにもかかわらず、昨夏とは対照的に極めて穏やかに推移している。大手発電事業者が、LNGの在庫積み増しや、大型火力発電所の運転前倒しなどの努力を行った結果と推察される。市場からの電源調達に依存している多くの新電力は安堵していることであろう。今冬の電力先物市場も安定した価格で推移していることに鑑みれば、新電力の経営は、ひとまず安泰といったところか。

一方で、一部のプレーヤーの動向で価格が恣意的に乱高下し得る市場は極めて脆弱な市場といえる。大多数の市場参加者には、供給サイド(発電事業者)・調達サイド(小売事業者)とも数カ月先の収支見通しを立てることすら困難であり、これでは業界全体の健全かつ長期的な発展は期待できない。市場制度設計者には、市場価格の予見可能性・透明性を高めるための真摯な努力を切に希望したい。

では、当面は脆弱な市場を利用せざるを得ない新電力はどうするべきか。

市場調達に全面依存するなら、市場連動メニュー導入により、調達面ではリスクフリーとなり、足元の市況では十分な利益の確保も可能である。しかし市場価格高騰時には、顧客離脱や消費者への説明不備の社会問題化というリスクは残る。理想的な調達は、市場調達と相対契約の適正なポートフォリオ構築であろう。ただし、従来型の相対取引は、引取量が硬直で顧客のデマンドと乖離し、また燃調付き相対契約では原料価格高騰時の逆ザヤリスクという課題がある。

新電力各社は長期安定経営のために、容量確保契約すなわち契約kW内であれば自社デマンドに応じた電力引取可能な相対契約、あるいはフロア・キャップ付相対契約など、新たな契約を志向する必要があろう。(S)

停電が常態化したアフリカ有数の豊かな国

【ワールドワイド/コラム】水上裕康 ヒロ・ミズカミ代表

南アフリカでは昨年から計画停電が深刻化しているという。1日の停電時間は最大で12時間に及ぶとのこと。南アと言えば、金やダイヤモンドなど、豊富な鉱物資源を産するアフリカ大陸有数の豊かな国、しかも世界有数の石炭輸出国である。そんな国で、なぜこれほどまでに電力事情が悪化したのか。

米ブルームバーグ誌によると、ズマ前大統領(2009~2018)時代に、国営電力会社エスコムは誤った政策決定や、同社への政治介入に悩まされたようだ。07年以降、同社のトップは14人を数える(ほぼ毎年トップが交代!)という事実がそれを象徴している。同社幹部によれば、原価に見合う料金設定が許されなかったとのこと。そのため、老朽化の進む送配電設備や発電設備の補修や改良にお金が回らなかったようだ。

停電は、もともと自国の石炭を燃料とする安定・安価な電力供給に依存してきた同国経済や国民生活に大きな影を落としている。水道も止まり、食べ物は冷蔵庫に入れられず、医療機器も使えない状況のもと、国民の健康や衛生も脅かされている。

国は停電解消に向け、必要な送配電網の修繕・改良に向けたエスコムへの資金援助や、発電に参入する民間事業者に対する許認可手続きの免除などの施策を打つ。しかしながら、老朽設備の補修や新規設備の建設は1年や2年で進むものではない。

料金、原子力、気候変動など、電力政策はどこの社会でも政策の目玉となりやすい。そして、いかなる失政も、もとは「改革」という美名のもとで始まるものだ。電力インフラの建設・維持は、極めて地味

な作業を、長期にわたり計画的に積み上げていく取り組みだ。一時の熱気で土台を崩してしまうと取り返しのつかないことになるということだろう。

【電力】秋本議員問題を契機に 再エネ議論の正常化を

【業界スクランブル/電力】

自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長である秋本真利衆議院議員に対して、日本風力開発から不透明な資金提供があり、東京地検特捜部が、洋上風力発電事業などを巡る収賄・贈賄容疑の適用を視野に捜査を進めている。流れた資金は現時点の報道では約6000万円とのこと。

洋上風力の開発・運営権を巡る入札は、第1回で三菱商事が全海域で圧勝するや、第2回入札は既に公募が始まっていたのに中断され、ばたばたとルール変更という異例の展開をたどった。こんな力業を当選4回の政務官クラスの議員が独力でできるとは考えにくいが、早々に外務政務官を辞任させ、離党もさせた政府・自民党の逃げ足が速い。再エネ議連所属の現閣僚や閣僚経験者のコメントが聞きたいところだが、マスコミや野党の反応が鈍いのは何を示すか。

唯一発言しているのは、日風開の寄付講座で特任教授のポストを得ている同社関係者で、経済誌のインタビューに「秋本議員の働きかけによって、公募ルールが事業者に有利になるようにねじ曲げられたという事実はない」と断言している。こちらは逆にしゃべりすぎじゃないかと他人事ながら心配になる。

同寄付講座では、第1回入札以降、異様な三菱商事たたきと自社がより落札者に相応しいとする言説が大々的に展開され、再エネ議連にも食い込んでいたようだが、筆者には大学教授の肩書でカモフラージュしたアジテーションにしか見えなかった。これに限らず同寄付講座発の一知半解な言説が、再エネ議連周辺で妙に重用されていた弊害はそれなりにある。

京都大学は結果的にこうした扇動の片棒を担いでしまっていないか。大学の信頼に関わるとの意見もSNS上で見られたが、むべなるかなだ。(V)

化石燃料で意見割れるG20 次なる戦いはCOP28へ

【ワールドワイド/環境】

7月22日、インドのゴアで開催されたG20エネルギー移行大臣会合は、化石燃料の低減などで合意が得られないまま閉幕した。2022年に続き、2年連続の合意失敗となる。

脱炭素に向けたエネルギー移行の在り方につき、各国で異なるエネルギー事情や産業構造を踏まえ「多様な道筋」を認めること、水素、アンモニア、太陽光、風力など再生可能エネルギー技術のイノベーションを進めること、クリーンエネルギー拡大に伴う重要鉱物の供給安全保障の重要性などは合意できた。他方、議論が紛糾したのは化石燃料の位置付けだ。議長サマリーには「化石燃料が世界のエネルギーミックス、貧困撲滅、増大するエネルギー需要を満たすうえで引き続き重要な役割を果たしていることから『いくつかの国々』は各国の異なる状況に応じて排出削減対策を講じていない化石燃料のフェーズダウンに向けた努力をすることの重要性を強調した。他方『他の国々』は緩和・除去技術がこうした懸念に応えられるという点について異なる見解を有している」とある。

ここ数年、1.5℃、50年カーボンニュートラルを絶対視し、化石燃料を排除する環境原理主義的な議論が欧米先進国やCOPの場で高まっている。G7広島サミットにおいて「遅くとも 50年までにエネルギーシステムにおけるネット・ゼロエミッションを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速する。他国に対して同様の行動を取ることを要請する」との文言が盛り込まれたのはその一環である。一方で、資源国や経済成長のために化石燃料を必要とする新興国・途上国は化石燃料フェーズアウト論を受け入れていない。サウジアラビア、ロシアなどは「自分たちが目指すのは排出削減であり、化石燃料フェーズアウトが所与の目的ではない」と主張。中国、ブラジル、南ア、インドネシアなども同調している。

G20の議論は12月のCOP28の前哨戦である。議長国UAEは①30年までに再エネ設備容量を3倍、②30年までにエネルギー効率を2倍、③30年までにクリーン水素を2倍、④排出削減対策を講じていない化石燃料火力のフェーズダウン―というグローバル目標の合意を目指すが、G20の議論を見る限り、少なくとも④については議論が紛糾するだろう。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院特任教授)

米テキサスのエネルギー事情 大手電力NRG社の事業転換

【ワールドワイド/経営】

米国テキサス州を本拠地とするNRGエナジー(NRG社)は国内に天然ガス火力、石炭火力など国内に約1300万kWの発電設備を有し、国内550万件の顧客に電力・ガスを供給している大手の電気事業者である。同社は2020年、脱炭素化に向けて老朽火力の閉鎖を進める目標(50年ネットゼロ)を決定し、発電事業から再エネPPA事業、事業用DR(デマンドレスポンス)、家庭用需要家向けDR事業に注力する姿勢を示している。

22年12月には、エネルギーサービス事業への転換を目指すことを明らかにし、米国内190万人以上の顧客にスマートホームサービスを提供しているVivint社の買収計画を明らかにした。Vivint社はホームセキュリティサービスを基盤に、スマート照明や高機能サーモスタットなどのエネルギー関連サービスで事業を拡大してきた。NRG社のグティエレスCEOはVivint社のプラットフォームを活用し、家庭用需要家向けのグリーン電力や蓄電池、EVなどとの連携を目指すと説明した。

しかし、NRG社の経済的持ち分13%以上を保有するヘッジファンドのエリオット・マネジメントは23年5月、Vivint社の買収計画発表以降、NRG社の株価が20%近く下落するなど財務不振を招いているとし、買収計画の見直しを求めた。また、21~22年にテキサス州の厳寒気象時に生じた発電設備の計画外停止によって経営陣が信頼を失っていると指摘し、取締役会の刷新と5億ドルのコスト削減を要求した。

NRG社はこれを受け、CFOの交代や原子力発電資産の売却などを進め、23年6月の投資家向け説明会では、新たに25年までに1・5億ドルのコスト削減の実施と取締役会を刷新する方針を示した。資本配分についても資本還元率80%に修正し、25年までに少なくとも27億ドルの自社株買いを実施してキャッシュフロー見込みを2倍以上に引き上げたため、株価は3%上昇した。

NRG社の事業戦略の転換について、投資家やアナリストは、同社が想定するエネルギーサービス事業の平均成長率30%達成には懐疑的とする一方、新たなエリアへ資本を投入することで成長を可能にし、既存の関係を活用することにメリットがあると分析している。発電事業から電化とスマート技術の融合が生み出す新たな価値に成長機会を見出し、発電事業から小売り、エネルギーサービス事業へシフトするNRG社。今後の動向が注視される。

(長江 翼/海外電力調査会・調査第一部)

鉱区発見で沸くナミビア 新たな資源大国となるか

【ワールドワイド/資源】

ナミビアは過去、沖合鉱区において南部および西部アフリカや地質相関性のある南米ブラジル・ガイアナでの油ガス田の発見を受け、注目を集めていた。同国では110億バレル以上の石油と2.2兆立方フィートのガスが存在すると推定されているものの、現在までに石油・天然ガスは生産されていない。

しかし、2022年2月4日に英シェルがOrange堆積盆地に位置するエリア(PEL39)において「Graff」を、わずか20日後の2月24日に仏トタルエナジーズが同堆積盆地内エリア(PEL56)において「Venus」を発見したことで、同国の有望な鉱区に対する期待が高まった。当該発表後もシェルが同鉱区内において「La-Rona」「Jonker」「Lesedi」の発見を発表するなど、業界の注目を集めている。なお、現在までにこれらの鉱区発見による公式な埋蔵量は発表されていないが、ナミビアは30年までにアフリカ最大の炭化水素生産国になる可能性があるとさえ報じられている。

このように短期間で複数かつ巨大な発見がなされたことに加えて、良好な石油契約が同国に注目が集まる理由の一つである。特に財務条件は世界の中でも非常に良好で、現状の政府の平均取り分は50~65%とされている。

ナミビアは独立前の1927年から探鉱開発を始めるも、実情と照らし合わせて石油・天然ガス産業の後発国であることから、他国での事例をもとに魅力的な財務条件・投資環境を構築できる状況にある。

今後、特に財務条件においては国内の政治的・経済的要請と国際競争力の均衡を保つことができるか。環境保全の要請に沿った投資環境を整備できるかが、同国を新たな資源大国たらしめるかを左右すると考えられる。

また、ナミビアでは中小独立系が有望鉱区を探鉱、その成果をメジャーズに売り込み、メジャーズがオペレーターとなった場合、中小独立系はマイナーシェアを維持または全権益を売却するモデルが多く存在する。今回発見のあったOrange盆地、またはその付近においてはすでに多くの中小独立系が活動しており、探鉱活動を活発化させている。これらの企業は買収対象となる可能性も考えられ、メジャーズのほか中小独立系の動きにも目が離せない。

同国では石油・天然ガスのほか、水素プロジェクト開発に向けた動きも加速させている。新たな資源大国となるか、ナミビアの今後に期待したい。

(野口洋佑/独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

【コラム/9月15日】変貌する電力顧客像

矢島正之/電力中央研究所名誉研究アドバイザー

最近、エネルギー分野における顧客の行動は大きく変化しており、電力会社はこのような行動変化を考慮して顧客に最適なサービスを提供していかなくてはならない。顧客の行動変化は、消費行動の変化(電力貯蔵や省エネルギーなど)、プロシューマへの変貌、フレキシビリティの取引などにみられる。このことは、顧客の要求の変化や新たな顧客グループの誕生、さらには顧客が積極的に電力市場に関与していくことを意味している。ドイツでは、再生可能エネルギー電源などの需要家電力資源の増大、VPPビジネスの発展やエネルギー自立を支援するソリューション・ビジネスの普及にともない、パッシブプレイヤーからアクティブプレイヤーに転換し、電力市場に積極的に関与している顧客も多い。本コラムでは、業界団体BDEWによる調査に基づき、その動向を考察してみたい。

電力の販売事業にとっての顧客グループは将来、つぎのように変化するであろう。

(1)引き続き、自己のエネルギー消費に影響を及ぼしたくない、または様々な理由から、フレキシビリティの利用・提供に関心のない「伝統的」または「スマートでない」顧客。

(2)エネルギー消費をインテリジェントに制御し、自己の持つフレキシビリティを、自己消費ソリューションの枠組みの中で利用するか、これを第三者に提供する「スマートな」顧客。後者(第三者への提供)の場合、顧客はフレキシビリティ(の一部)を販売事業者に売り、販売事業者は、そのフレキシビリティを、調達の最適化のために用いるか、それを「フレキシビリティを必要とする者」(配電運営者、送電運営者、再生可能エネルギー事業者など)に再販する。

(3)上述の「フレキシビリティを必要とする顧客」。
この顧客グループは、系統安定化やバランシングのために必要なフレキシビリティを販売事業者やアグリゲータから購入する。それにより、フレキシビリティを必要とする者は、販売事業者の新たな顧客グループに準ずるようになる。

顧客のフレキシビリティを引き出すアプローチは、つぎのようなものが採用されている。

(1)ローカルな最適化アプローチ

(2)集中的な最適化アプローチ

ローカルな最適化アプローチでは、顧客は、市場の直接的な価格シグナルに対して、もしくは、電力の供給約款(とくに、その料金契約)に対して最適化を図る。集中的な最適化アプローチでは、顧客は、そのフレキシビリティ(の一部)を第三者に販売する。そして、第三者はそれを需給調整市場などに販売する。需給調整市場に供出する場合、フレキシビリティの提供は、価格シグナルによるのではなく集権的に行われる。というのは、需給調整市場への販売やバランシンググループの運営では、フレキシビリティの供出は、そのコールには確実に応答しなくてはならないからである。顧客が、そのフレキシビリティを集中的アプローチの枠組みで販売する場合、契約上の合意に基づき、フレキシビリティの提供に関する主権の一部を第三者に引き渡すことになる。

最近の電気料金の高騰で、顧客のフレキシビリティを引き出すソリューション・ビジネスのチャンスが拡大しており、顧客の電力市場への関与はこれまで以上に高まっていくだろう。

その際重要なのは、顧客にとってのコスト便益比である。フレキシビリティの販売から適切な利益が得られなければ、フレキシビリティのポテンシャルはくみ尽されないだろう。

【プロフィール】国際基督教大修士卒。電力中央研究所を経て、学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学大学院特別招聘教授、東北電力経営アドバイザーなどを歴任。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力改革」「エネルギーセキュリティ」「電力政策再考」など。

マスコミ巻き込む再エネ疑惑 朝日が「秋本議員」と連携プレー?

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

またもや、再生可能エネルギーを巡る疑惑である。

日経8月5日一面に「秋本議員、3000万円受領疑い、風力発電巡り収賄容疑、関係先を捜索、東京地検」とある。「政府が推進する洋上風力発電を巡り、自民党の秋本真利衆院議員が風力発電会社『日本風力開発』(東京・千代田)から計約3000万円を受領した疑いがあるとして、東京地検特捜部は4日、東京・永田町の議員会館事務所などを収賄容疑で家宅捜索した」という。

さらに「秋本議員は、洋上風力発電の普及に向け全国一律の海域利用ルールを定めた2018年成立の再エネ海域利用法を推進した。同社は、政府が公募した洋上風力発電の整備促進区域に応募したが落選した。秋本議員は22年2月の国会で公募の運用指針を見直すよう質問。国は同10月に指針を改定した」と書く。

同日の読売から補足する。「秋本氏は国土交通政務官時代、洋上風力発電の普及のため、全国一律の海域利用ルールを定めた『洋上風力発電利用促進法』の整備を推進」。制度の生みの親である。

この制度では、「公募によって選ばれた事業者が最長30年間の運営を担う」。ところが、「初の大規模事業となった21年12月の選定では、三菱商事を中心とする企業連合が、秋田県と千葉県沖の3海域を全て落札。圧倒的に低い売電価格が評価された」。

関連が指摘される日本風力開発の落選に焦ったのか、「国交政務官を退任していた秋本議員が、国会で関連質問したのは翌22年2月の予算委員会。政府側に公募の際の評価基準について違和感を指摘し、『2回目の公募から評価の仕方をちょっと見直していただきたいというのが私の結論』と訴えた」と同日の日経は報じる。

業者から金をもらい、その業者の参入が可能になるようルールをねじ曲げろと国会質問で求めたとすれば、重大である。

この入札では、萩生田光一経済産業相(当時)が22年1月の記者会見で「低価格という指摘があったが、欧州に比べると高い。地元の評価や信頼性という総合評価で第三者委員会が決めているので、必ずしも売値が安いというだけで落札ができるという仕組みではない」と説明。翌月の国会答弁でも「途中でルールを変えるのはどうか」と疑問を呈している。それが指針改定に至ったのはなぜか。

興味深い記事がある。朝日22年2月3日夕刊「洋上風力、価格崩壊の衝撃」だ。

「すべてを三菱商事グループが落札した。この『総取り』以上に関係者を驚かせたのは、入札価格(発電コスト)」「国は種々のデータで計算し、3区域の上限を『1kW時あたり29円』と決めていた」「これに近い値での競争という予想は外れ、三菱商事グループは3区域で11.99円、13.26円、16.49円を提示。衝撃的だった」「業界は『あの価格レベルには対応できない』」。

理解に苦しむのはこの続きだ。「価格が欧州の安さに近づくのは朗報だが、日本企業による日本での発電所建設、経営は相当厳しいものになる」とある。三菱商事は日本企業ではないのか。さらに「国の導入計画の練り直しが必要かも知れない」とあり、唐突に「地元からは売電価格が低くなれば、発電会社による地域貢献が手薄になるのではとの不安も出ている。『地元が愛着を持つ洋上発電所』の関係をつくることが重要」と主張する。秋本応援団か。

秋本氏も朝日も、高い電気代にあえぐ国民は眼中にない。

いかわ・ようじろう  デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。