【火力】日欧の技術交流 欧州事業者の生の声

【業界スクランブル/火力】

5月に開催されたG7広島サミットは、ウクライナ情勢のことなどを踏まえ参加国の結束をアピールする場となった。特に、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日したインパクトは大きく、対面威力がいかんなく発揮された。

一方エネルギー政策については、2050年CNの理念を再確認するだけで具体的進展はほとんど無かったと言えるが、今後さらに勢いが増すのか、はたまたブレーキがかかるのか意見の分かれるところである。

さて、G7との関りはないが、コロナ禍の収束を受け、5月のGW明けに火力関連事業者の集まりである欧州のvgbe(欧州大規模発電事業者協会)とわが国の火力原子力発電技術協会との技術交流会が4年ぶりに兵庫県姫路市で開催された。そこでは、今が旬の水素・アンモニアやエネルギー貯蔵技術に関する取り組について日欧双方からの講演があり、そこでの質疑や、それ以外にもレセプションやテクニカルビジットなどの場を通じて活発な意見交換が行われた。

参加者によると、個々の講演の内容もさることながら、次のような点が印象に残ったとのことだ。

「日本と比べ国際連系線や系統規模など欧州の方が有利なこともあるが、彼らも一次エネルギー不足、調整力・慣性力不足など苦労しているところは同じ」

「状況は異なるが、日本の新技術の取り組みには注目している。また、技術動向にお構いなく政策が変わっていくが、事業者はそれに対応していくしかない」との前向きとも愚痴とも取れる本音も聞けたとのこと。

対面で見聞きする情報は、雰囲気を流すだけのマスコミ報道では決して得られない。これらをしっかりつかむことができれば、世の風潮に惑わされることも無くなるだろう。(N)

流動性欠く未熟な卸市場に風穴 価格リスク引き受けマネージ

【リレーコラム】城﨑洋平/エナジーグリッド 代表取締役社長

安定した価格で取引できる市場には、十分な流動性が担保されている。では、日本の電力取引市場はその流動性が高いといえるだろうか。長くエネルギー・コモディティ分野でトレーディング業務に身を置いてきたせいか、私はこの業界が抱える流動性に関する課題の大きさと根深さを人一倍強く感じてきた。同時に、おぼろげながら解決の糸口も見えていた。電力卸に特化したビジネスモデルは、こうした思いに端を発している。

日本の電力市場は、需要家向けの小売りが先行して自由化されたが、新電力が電気を調達する肝心の卸市場は構造的に未熟な状態が続いていた。多くの新電力がリスクを固定化できず、変動の激しい日本卸電力取引所に調達の多くを依存せざるを得なかったからだ。

この大きな要因の一つが、電力の出し手である電力会社や発電所所有会社が卸市場に十分な電気を提供していない点にある。仲介するブローカーは数社存在したものの、どのような状況下でも価格を出して引き受けるようなマーケットメーカーは不在であり、買い手の新電力が理想とするタイミングや価格での取引を臨める構造になっていなかった。

電力卸のマーケットメーカーに

当社が志向する電力卸のマーケットメーカーとは、どの電力会社の資本にも属さない独立系・中立というポジションから、電力の供給側と需要側の双方が抱える価格変動リスクを直接引き受け、金融の知見を生かしてマネージする存在。売りでも買いでも取引したいお客さまが必ず取引を執行できる価格を提示し、当社自身が取引相手となる。この安心感の醸成こそが流動性を向上させ、日本の電力マーケット全体の安定化につながっていくと考えている。

会社設立から間もなく2年。市場での取引開始から1年3カ月が経とうとしている今、こうした思いは有難いことに当初想定を上回る早さで届き始めている。当社の相対取引者数は60社超となり、取引電力量は98億kW時(金額ベースで2300億円)を超える規模まで急拡大した。当社を、単なるいちプレーヤーではなく、日本の電力業界が抱える課題解決に一緒に取り組めるパートナーとして認識いただいていることが何より大きい。

国際情勢は今なお予断を許さない状況が続いており、電力価格のボラティリティも依然として高い。だからこそ、私たちが果たせる役割は少なくないはず。電力の売り手も買い手もウィンウィンになる「電力の絆をつむぐ」ソリューションを、より一層磨き上げていきたい。

じょうざき・ようへい 東北電力、エンロン、野村證券、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスにてエネルギートレーディング&リスクマネジメント業務に従事。2021年エナジーグリッドを設立。

※次回はパナソニック オペレーショナルエクセレンスの山田泰也さんです。

【原子力】基準地震動を了承 泊再稼働へ前進

【業界スクランブル/原子力】

原子力規制委員会は6月9日、泊原発の再稼働に向けた審査会合を開き、原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」を、最大693ガルとする北海道電力の検討結果を了承した。審査の山場の一つを超えたが、まだ複数の審査項目が残っており終了は見通せない。

基準地震動は、原発周辺で起きる可能性がある地震の揺れの強さで、加速度の単位「ガル」で示す。北電はこの日、泊原発周辺の活断層が地震を引き起こした場合など、計19種類の基準地震動を示した。最大値は、過去に起きた地震を基に全国共通で考慮すべき地震の場合で693ガルになるとした。

基準地震動が了承されたことで、原発の耐震設計など再稼働に向けた審査が前進する見通しだ。ただ今後も、津波対策の目安となる基準津波の設定や、原発周辺の火山活動に関する評価、新設する防潮堤の設計などの審査項目が残る。

北電はこれらの説明を来年1月下旬に終える計画だが、今年に入ってからも、規制委から資料作成の不手際を指摘されて説明終了時期を度々、先延ばししてきた。予定通り審査を終えられるかは不透明だ。

こうした不透明さは泊原発だけではない。東通原発の審査が停止したままの東北電力なども置かれている状況は程度の差こそあれ大きく変わらない。

一方、6月の青森県知事選で人口五番目のむつ市の前市長、宮下宗一郎氏が当選し知事に就任した。宮下氏は青森県の経済について「地域の会議体を作り、原発の将来が地域の将来にしっかり一致していく流れを作りたい」と語っている。規制委の審査に不透明感が残る中、立地する地元が原発について考える事を地域の将来にかぶせるという視点は出色ではないか。(S)

【石油】OPECプラスが減産維持 国内価格への影響は

【業界スクランブル/石油】

6月4日、OPEC加盟国と非加盟主要産油国からなるOPECプラス閣僚級会合は、現行の協調減産の枠組みを2024年末まで維持することを合意した。同時に、サウジアラビアは7月の追加自主減産日量100万バレルを表明した。

事前には、価格回復のため減産を目指すサウジと増産を目指すロシアの対立が伝えられ、交渉は難航したもようだ。サウジとしては、70ドル前後で低迷する原油価格を下支えしたかったのであろう。

5日のWTI先物は71・88ドル(前営業日比プラス0・05ドル)とわずかに上昇した。既に実施中の日量166万バレルの自主減産、8月以降のサウジの減産の行方と相俟って、引き続き原油市場での不透明な状況は続こう。

さて、わが国では6月から燃料油補助金の縮減が開始された。2週間に10%ずつ補助率がカットされ、9月末には補助金は終了となる予定である。つまり6月第1週で見れば、従来ベースなら1ℓ当たり13・9円の補助金が、12・5円の支給に縮減となり、石油会社のスタンドへの卸価格は1・4円分値上げされることになる。

現行ベースの原油価格・為替水準が続くならば、2週に1・4円、一カ月に3円程度、四カ月にわたり石油製品の値上がりが続くことになろうが、原油価格上昇・円安があった場合には、値上がり幅は大きくなる。

昨年2月以来、補助金効果で、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格(ドル建て)高騰や急激な円安進行による輸入価格(円建て)上昇にもかかわらず、概ね安定的に推移してきた。

しかし国内石油製品価格も、今後は、原油輸入価格との連動性が復活することになろう。今後の原油価格と為替相場の推移が懸念される。(H)

【ガス】方向転換した東京都 エネ政策の行方を注視

【業界スクランブル/ガス】

東京都は今後のエネルギー政策を議論するために、「都エネルギー問題アドバイザリーボード」を発足させ、5月29日に第一回会合を開催した。

小池知事は本アドバイザリーボードを契機に、エネルギー問題に対する都の方向性を大きく転換した。もちろん「ゼロエミッション実現に向けた再エネの普及拡大に引き続き努力を重ねる」とは言っているが、気候変動問題や再エネ促進に関する言及はほとんどなく、①足元の深刻化する電力需給逼迫や電気料金高騰への対処、②新たなエネルギー源としての水素の可能性―にテーマを絞っている。

足元の電力問題に関しては、省エネの呼びかけやDRなどを繰り返すことのみで安定供給確保は難しいとの判断から、石炭・ LNG火力についてトランジションの観点でいかに都民などの理解を得ていくかというリアルな目線に切り替わっている。今までの理想論ばかりではなく、安定供給の観点で現実論が真剣に議論されることを歓迎するとともに、最終的な着地点がどうなるかに注目したい。

一方、水素に関しては、需要の拡大とパイプラインを含めた供給の仕組みの整備を効果的に進める戦略を第一の課題に挙げている。こちらは、都市ガス事業に直接影響を及ぼすテーマだ。パイプライン供給などに関する技術的な観点やメタネーションとの関係も含めて、慎重な議論をお願いしたい。

気になるのはボードメンバーの顔ぶれだ。電力関係の専門家が複数参加しているのに比べ、都市ガス関係者、特に技術系人材が見られないがより現実的な結論を出す場であればあるほど、偏りのない総合的な議論が必要となる。東京都の方針は他の自治体への影響力も大きく、ガス事業の利害に直結する。議論の行方が注視される。(G)

【新電力】値上げ水準引き下げ 不祥事よりも影響深刻

【業界スクランブル/新電力】

規制料金審査がようやく終わった。最終段階における消費者庁からの電力ガス取引監視等委員会への審査厳格化要請に対し、監視委委員から「法令に則り審査するだけ」と反論する場面があった。反論自体は真っ当ではあるが、監視委側の審査体制や思考が昨今の状況に合致していないことも明白であった。

値上げ申請の主因は、燃料費調整上限突破による逆ザヤだが、今回料金改定でも従来同様、全方面の効率化要請、原価審査が細々と行われ長期化した。この間、旧一電のみならず規制料金を参照している新電力小売りにも逆ザヤが居着いた。審査結果も必要以上に料金水準を引き下げており、新旧小売り全社の企業価値、競争環境を損なった。

あえて言うが、カルテル、不正閲覧などの不祥事よりも影響は深刻である。審査長期化と影響度合いは事前に予想できたのだから、審査プロセスの短縮、合理化をあらかじめ取り計らえなかったのか。燃料費調整基準価格変更の自動化もしくは分離審査、いくつかの外部原価のインフレスライド織り込み、宣伝費などマイナー原価項目の審査簡略化等々、先んじて考えられることはあったのではないか。一つ覚えの人件費効率化要請の反作用の大きさは、大震災後の東電離職者数から想像できよう。

他方、原子力再稼働見込みは楽観的で『料金水準引き下げ所与』のマインドがうかがえる。日本の電力制度設計では、国民負担軽減の名分で一部費用の事業者付け替えが構造化している。旧一電高コスト体質を批判するメディアもあったが、安定供給と競争環境維持の観点からは疑問視する声もある。制度設計側は今回の審査をレビューし、規制料金の存廃検討、維持する場合は審査プロセスの簡略化、合理化を行ってほしい。(K)

「高騰するのか」よりも大切なこと

【ワールドワイド/コラム】水上裕康 ヒロ・ミズカミ代表

世界的なエネルギー価格の下落が続いている。昨年末まで「欧州は冬を越せるのか」と騒いでいたのがうそのようである。6月上旬現在、LNGは最高値から約7分の1、 石炭は約3分の1まで下がった。

そこで話題になるのは、「価格は再び高騰するのか」ということである。単純な答えは「火種は十分」であろう。エネルギー危機の原因となった供給側の制約は変わらない。石炭の増産投資は相変わらずタブーだし、LNGも今後3年は大きな供給増がない。大幅に減ったロシアから欧州へのガス供給に回復の見込みもない。市場価格が落ちたのは、世界的な暖冬と景気の停滞による需要の低迷が原因だ。従って、景気が上向き、寒い冬が到来ということになれば、状況が一変する可能性は十分と思われる。

エネルギー価格の先行きに関して、電力経営者の関心は高い。ここ2年ほど、電力・燃料価格の騰落に翻弄されてきた企業としては当然である。私もかつて業界で燃料調達を担当したときには「市場を読むのがお前の仕事」と言われ続けたものだ。今だから言うが、正直、市場の現状は分析できても、先行きを「予言」するのは無理である。この数年だけをみても、コロナの流行、ウクライナの戦争、記録的暖冬など、予測不能な「事件」は必ず起こる。

電力市場が自由化されて以降、欧米の電気事業者が目指したのは、電力価格がどれほど乱高下しても一定のマージンを確保できる仕組みづくりである。電力や燃料を機動的に売買し、価格のヘッジを行うのは、相場を読んで大儲けするためではない。在庫が持てず、簡単に代替のきかない電力は、わずかな需給の過不足で価格が極端に振れる「この世で一番危険な市場商品」と言ってよい。「仕組みづくり」を進めつつ、不意に訪れる巨大な波に備えたい。

【マーケット情報/7月17日】原油続伸、需要拡大の見通し広がる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

7月17日までの原油価格は、主要指標が軒並み上昇。米国経済の景気回復と需要増の観測が強まり、買いが優勢だった。

米国では、新規雇用者数や生産者物価指数などの伸びが鈍化したことを受けて、インフレ緩和の見通しが広がった。このため、連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ政策の終了に対する見方が強まり、景気と需要の回復期待が高まった。また、米戦略備蓄原油(SPR)の在庫が、40年来の最低水準になったことも、油価の上昇圧力となった。米当局はSPRへの補充計画を明らかにしている。

中国では、製油所における原油在庫の減少を受けて、6月の原油輸入が過去3年で最高水準となった。一方、国内経済は、6月の生産者物価指数が9カ月連続で低下。第2四半期のGDP成長率も、前期比で0.8%にとどまるなど、景気低迷が続いている。そのため、週後半には先行き懸念から売られる局面もあったが、相対的に買いが先行した。

一方、供給面では、米エネルギー情報局(EIA)が今年の国内石油生産予測を前月から下方修正したことも、強材料となった。


【7月17日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=74.15ドル(前週比1.16ドル高)、ブレント先物(ICE)=78.50ドル(前週比0.81ドル高)、オマーン先物(DME)=79.61ドル(前週比1.32ドル高)、ドバイ現物(Argus)=79.56ドル(前週比1.37ドル高)

【コラム/7月18日】2023年度第1四半期の制度設計を振り返って

加藤 真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

2023年度も第1四半期が終わり、夏本番を迎えている。毎年のように夏冬の電力需要ピーク時期は節電や省エネを意識するようになっているが、今年もその傾向は変わらない。

一方で、電気事業をはじめとしたエネルギーに関わる政策や制度は、毎月のように多く開催される審議会などで議論・審議・報告されているように、その変化は終わりを知らないものとなりつつある。

今回は、この第1四半期の制度設計の状況について、簡単に振り返ってみることとしたい。


年度が替わっても相変わらずの慌ただしさ

筆者が追っている審議会などの開催件数は第1四半期の3カ月間で約100件と多く、その議論の内容も資源燃料から発電、送配電、小売り、その他、金融から省エネ、分散型エネルギーリソースの活用、保安、デジタル、地域、環境など、幅広に展開されており、その一つひとつを把握することに加え、それぞれの制度間の関係や、さらには事業への影響を踏まえた活用まで考えると、全体像を理解するのはなかなか困難なことである。

第1四半期は国や自治体、多くの企業にとって、年度の開始であるではあるが、通常国会の会期末であることに加え、毎年、この時期に政府が経済政策を打ち出すため、どうしても、その前までに各審議会などで議論を整理しておく必要があることも、上述のような慌ただしさの要因の一つではないかと考えている。


第1四半期に行われた議論

では、これだけ多くの審議会などで議論が行われ、様々な取りまとめがなされた第1四半期には、具体的に何があったのか。資料1に整理してみた。

大きな流れはこれまでと変わらないが、筆者の整理としては、3つの軸で進んでいると考えている。

1.「方針の提示」

これは政府が示す経済政策などの方向性になる。例えば、今で言えばGX推進のための政策である。第1四半期で言えば、新しい資本主義実現のためのグランドデザインの中に織り込まれているほか、G7の札幌会合でも日本の意を汲んだ内容が盛り込まれ、通常国会では2つの関連法案「GX推進法」、「GX脱炭素電源法」が審議され成立している。

2.「具体的な制度設計」

上記1における法改正や関連審議会の取りまとめがなされた施策については、実務で活用していくための詳細議論が行われる。例えば、GX推進法では、今後10年間で150兆円と言われる投資を支えるために国が主導して発行するGX経済移行債は既に今年度の予算措置が取られているが、その償還財源とされる化石燃料賦課金(28年度導入予定)と排出量取引における発電事業者への有償割当(33年度開始予定)の具体的な設計は、今後2年間かけて検討することとなり、その役割を担うのが、同法で規定されているGX推進機構(今後、創設)となる。

一方、GX脱炭素電源法では、原子力関連と再エネ関連の2つが織り込まれているが、そのうち再エネ特措法については、法成立後、直ぐに関連審議会での議論を始めており、その施行は来年4月を予定している。

特に、最近ではカーボンニュートラル実現に向けた具体策の議論は進んでおり、資源燃料関連であれば、水素・アンモニア、メタネーション、合成燃料、バイオガスなどが、発生したCO2の対応としてCCUSに関する政策の方向性は整理されつつあり、実用化に向けた技術開発支援(GI基金)や予算を活用した調査委託、関連法令などの整備といった準備や具体検討に入り始めている。

脱炭素施策の別の施策として再エネの普及・最大限活用が挙げられているが、特に送配電部門の対応の議論が進みつつある。例えば、系統増強では3月に公表されたマスタープランを踏まえた整備を進めるために「GX脱炭素電源法」の中で電事法を改正し、重要な整備計画などを大臣が認定、資金的な手当て(再エネ賦課金、広域機関による貸し付け)を行うことが規定されたが、この重要な整備計画などの規模について、具体的な制度設計を始めている。系統運用面では、再エネ出力制御量の低減や、ノンファーム型接続のローカル系統での受付開始を踏まえた、今後の系統混雑解消の対策や取り決めの議論を始めている。

エリア需給バランス維持のために行う再エネ出力制御については、この6月に関西エリアで初めて発動したことで、東京エリア以外すべてで実績が出ることとなった。30年度の電源構成上の再エネ目標を実現するには、案件形成やO&Mの高度化などによる発電量増加も必要だが、この再エネ出力制御量の低減も課題となっている。既に4つの包括パッケージを打ち出し、詳細検討や実施を始めているが、特に、需要側の対応(蓄電池の導入・活用、㏋給湯器による上げDR、それらを生かすことができる電力メニューの提供など)も重要と位置付けられ、エネルギー小売り事業者への間接規制や、機器へのDR Readyの搭載促進、揚水発電の最大限活用など、年内には包括パッケージの見直しを行うこととしている。

さらに、小売り電気事業者については、カルテル事案や情報漏洩発生も踏まえ、より一層、健全な競争環境構築について大臣指示が出ており、こちらも電取委含め、具体的な議論を始めている。

電力小売りで言えば、旧一電の内外無差別な卸売について、昨年度来、入札やブローカー取引、個別協議を各社が進め、この6月に電取委にて一定の評価が出された。結果として、北海道・沖縄の2社で内外無差別と評価されている。

【電力】関西電力の発販分離 みそぎのつもりなのか

【業界スクランブル/電力】

2023年4月、経済産業省から「関西電力に対し、小売電気事業の健全な競争を実現するための対応について指示を行いました」と題するプレスリリースが発出された。

いわく、同社が、「役職員による多額の金品受領問題に係る業務改善計画」を履行中にもかかわらず、一般送配電事業者の有する非公開情報の不正閲覧・情報利用、カルテル行為といった不祥事が重なったことを受け、一連の不適切事案の再発防止及び電力システム改革の趣旨に沿った小売電気事業の健全な競争を実現するため、「関西電力が保有する電源の内外無差別な卸取引を強化」「魅力的で安定的な料金、サービスの更なる選択肢の拡大」を速やかに検討するように指示したとのことである。

また、検討に当たっては、これらを実現するための発電事業・小売電気事業の在り方も併せて検討せよとのことで、関西電力社長は、発電と販売を分離する発販分離を検討することの表明でこれに応えている。

端で見ていると、非常に奇妙な話だ。まず、役職員による多額の金品受領問題も、非公開情報の不正閲覧・情報利用も、カルテル問題も、電源の内外無差別な卸取引とは何の関係もない。また、一部事業者に課している非対称な供給義務を放置したまま火事場泥棒的にそれを進めるなら、制度のゆがみが拡大するだけだ。

特に、現在のように燃料費調整に上限が課された規制料金を放置したまま発販分離をしたら、燃料市場が再び高騰した際には、小売会社はたちまち債務超過の危機に陥るだろう。この点は、東電EPが反面教師になっていないのか。

発販分離が、不祥事を重ねている関西電力のみそぎのつもりなのかもしれないが、愚策としか思えない。(V)

険しい世界の脱炭素化 問われるG20の本気度

【ワールドワイド/環境】

5月21日に閉幕した広島サミットではエネルギー・温暖化が主要な柱の一つだった。温暖化分野においては2025年までに世界全体の温室効果ガス排出量をピークアウトさせる、IPCC第6次評価報告書を踏まえ、世界の温室効果ガス排出量を19年比で30年までに43%、35年までに60%削減することの緊急性を強調。新興国に対し1・5℃を目標に整合的にNDCを見直し、COP28までに提出すること、50年カーボンニュートラル(CN)にコミットすることを求めるなどのメッセージが盛り込まれた。しかし世界全体の排出量に占めるG7のシェアは25%程度であり、世界の温暖化防止に決定的な影響力を有するのはG20である。60年、70年CN目標を掲げる中国、インドがG7の要求に応えるとは考えられない。

G7共同声明では「遅くとも50年までにエネルギー・システムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるというわれわれのコミットメントを強調し、他国に対してわれわれと共に同様の行動を取ることを呼びかける」としているが、23年のG20議長国インドは5月のG20エネルギー転換ワーキンググループにおいて、欧米の主張に対し、「複数のエネルギー経路」をG20のコンセンサスにすべきであるとの考え方を提示した。

インドはCOPなどで提唱される石炭フェーズアウト論に対し、「各国の置かれた事情が異なる。気候変動枠組み条約の共通だが差異のある責任に反する」との理由で反発してきた。インド電力省の石炭クリーン化計画においては欧米が排除する超超臨界、超臨界石炭火力発電の導入が柱として組み込まれている。こうしたインドのポジションは中国、南アなど、ほかのG20の支持も受けているようだ。G20の非OECD諸国は「目指すべきは脱炭素化であり、特定のエネルギー源のえり好みや排除ではない」という考え方であり、本年のCOP議長国であるアラブ首長国連邦(UAE)も同様であろう。エネルギー、温暖化に関しG7とG20は同じページにいない。

インドは欧州が導入を進める炭素国境調整措置に対しても「差別的であり、温暖化防止に偽装された保護主義を認めないという枠組み条約の趣旨に反する」とWTO提訴を検討しているという。脱炭素化への道は険しい。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院特任教授)

ネパールが電力輸出へ インドとの連携がカギ

【ワールドワイド/経営】

ネパール政府は5月16日、バングラデシュ政府との間で、4万kWの電力を輸出することで合意した。今後、年内の電力取引を実現するため、インド政府とともに三国間の電力取引協定の締結を急ぐとしている。

ネパールとバングラデシュは地理的に非常に近い位置にあるものの、国境を接しておらず、両国の間にはインドがある。ネパールはこれまでも雨季の余剰電力をインドに輸出していたが、この計画が実現すれば、インド以外の国に初めて電力を輸出することになる。

ネパールの国土は北部に8000m級の山々を擁するヒマラヤ山脈、中央部に丘陵地帯、そして南部には低地のタライ平原が広がる。タライ平原の最低標高は海抜70mで、南北の標高差が非常に大きい。このような地理的条件から水資源が豊富にあり、理論的な包蔵水力は8300万kW、技術的・経済的に開発可能な包蔵水力は4200万kWあるとされる。

一方で、開発済みの設備容量は5%にとどまる。同国の電源構成は95%が水力発電で、そのほとんどが流れ込み式水力である。そのため、発電電力量は季節変動が大きく、雨季(5~10月頃)には電力をインドに輸出し、乾季(11~4月頃)には不足分をインドから輸入する。政府は民間資本を誘致して水力開発を積極的に進めており、数年以内に電力の純輸出国となることを目指している。

なおネパールでは10年ほど前までは電力不足から1日12時間にも及ぶ停電が生じていたが、インドとの間で40万Ⅴ国際連系線が運開したこと、IPP(独立系発電事業者)による電源開発が進んだことなどから現在、停電はほぼ解消されている。同国では16年の総裁就任後、電力不足問題を直ちに解決したとして、ネパール電力公社のギシン総裁の人気が非常に高い。

ネパール政府は現在、さらなる水力開発を進めるため、インドへの輸出を念頭に、民間企業が電力取引に参加できるよう法改正を検討している。このほか、電力輸出量の増加に対応するためインドとの間で複数の40万V国際連系線の建設が計画されている。

ネパールの電力輸出を実現するには、中心に位置するインドの動向が鍵となる。インド政府は近年、周辺国との連系線強化など電力分野でも周辺国との連携を積極的に進めている。また、恒常的に電力が不足しているバングラデシュでは、41年までに発電電力量の40%をクリーンエネルギーで賄うこと、国外から900万kWの電力を輸入することを目標としている。

(栗林桂子/海外電力調査会・調査第二部)

ロシアが狙うガス輸出 中央アジア経由の可能性は

【ワールドワイド/資源】

 2022年のロシアの天然ガス輸出量は、それまで8割を占めていた欧州向けが2割まで落ちたことにより、全体で前年の約半分まで減少した。ロシアはその代替となる輸出先を探している。現実的なのは中央アジアだ。地理的、政治的、経済的にロシアと関係が近い上に、カザフスタン、ウズベキスタンは需要の拡大が見込まれ、旧ソ連時代からの輸送インフラを利用できる。

カザフスタンは近年の脱炭素の流れの中で、これまでの強い石炭依存からの脱却のため、石炭からガス利用への転換を推進している。ウズベキスタンは中央アジア諸国で最大の人口を抱え、人口増加に合わせてガス需要が伸びる一方、国内のガス田は生産量減退が続いている。両国とも自国内で生産されるガスを内需に充てるためにガス輸出を今年か来年にも完全停止する見込みだ。ロシアにとっては、需要のあるこれらの国にガスを供給し、さらに彼らが停止する中国向け輸出を代わりに実行するという可能性を追求できる。

ただし、いくつか課題がある。最大の問題は供給価格だ。カザフスタンでもウズベキスタンでも、国内のガス供給価格が低い。ロシアは従来、安い中央アジア産のガスをロシアの国内供給用に輸入して、自国で生産されるガスを高く売れる輸出に回すという構図を作っていた。中央アジア向けに輸出する場合は同地の価格に合わせる必要がある。22年1月には燃料価格の急騰を発端としてカザフスタン全土で暴動が発生した。ロシア産ガスの輸入が国内価格引き上げを起こす可能性があれば、中央アジア側から強い抵抗があろう。

ロシアが中央アジアへのガス供給を実現しても、その先の中国への輸出はまだ遠い。まず中国側にロシア産への需要があるのかが見通せない。中国のエネルギー需要は伸び代があるが、近年の中国には石炭を含めた国産資源での供給を志向し、ロシアから新しいガス調達ルートを確保しようという積極的な動きは見られない。中央アジア経由でなくとも、ロシアは中国向けのガス輸送ルートとして「シベリアの力2」パイプラインの実現を以前から目指しているが、中国側は沈黙を貫いている。

また世界4位の天然ガス埋蔵量を持つトルクメニスタンの存在も無視できない。同国もウズベキスタン、カザフスタンを経由するパイプラインで中国向けガス輸出を拡大中だ。ロシアが中央アジア経由でさらに東へのガス輸出を目指す場合、トルクメニスタンとも何らかの取引が必要になるだろう。

(四津 啓/独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

【インフォメーション】エネルギー企業・団体の最新動向(2023年7月号)

【東京ガス/法人・自治体向けEV導入支援サービスを開始】

東京ガスは、法人・自治体向けEV導入支援サービス「チャージプランナー」の提供を開始した。複数の車両を保有する法人や自治体が対象で、EV切り替え導入や充電設備の導入などに関する困りごとをワンストップで解決する。ガス空調やコージェネレーションシステムで培った設備コンサルティングのノウハウや、エネルギーマネジメント技術を活用する。自社で開発したEV充電マネジメントシステムで充電器を自動制御し、電気料金の上昇を抑制する。充電設備の導入では、設置から故障対応までトータルでサービス。導入の初期費用を同社が負担し月々のサービス料として提供することで、顧客は導入コストを平準化できる。サービスは関東エリアで開始し、順次拡大する予定。


【北海道電力ほか/1000kWクラスの水素製造設備の運用を開始】

北海道電力はこのほど、苫東厚真発電所の隣接地で1000kWクラスの水素製造用の水電解装置と水素出荷設備の運用を開始した。水電解による水素製造装置は、再生可能エネルギーの余剰電力や出力変動を吸収。再エネのさらなる導入拡大を図ることができるため、次世代エネルギー設備として期待を集めている。今回導入した水電解装置は寒冷地に対応する。運用することで、安定かつ効率的な水素製造に向け、運用・保守技術の確立を図る。また、水電解装置を製造した日立造船と水素の貯蔵・輸送技術を持つエア・ウォーターと協力し、得られた建設・運用・保守のノウハウを活用することで、北海道における水素供給体制の整備を進める。


【NTT/風力発電の風車を無停止点検する実証開始】

日本電信電話(NTT)は5月、世界で初めて風力発電風車の無停止点検を実現する技術の実証実験を始めた。この技術は、点検対象構造物を挟み込む形で飛行させた2機のドローンの間で、どこでも使用できる無線局免許不要の微弱無線の送受信を行い、その受信信号の変化を解析すると、送受信間にある構造物の損傷有無を検知できるものだ。従来は、風車を停止して点検を行っていたため、発電効率の低下が生じていたが、これを回避可能とすることで、発電効率が向上する。今後は、実際に屋外で運転中の複数の風力発電に対して実験を行い、実物でも損傷検知が行えることを確認する予定だ。同社はさらなる研究や実証実験を重ね、脱炭素への貢献を目指す。


【東北電力/佐渡島に蓄電池システムを設置へ】

東北電力ネットワークは、両津火力発電所構内(新潟県佐渡市)の敷地内で蓄電池システム(出力5000kW)の設置工事を開始した。同社は佐渡島において再生可能エネルギーの導入拡大に向け、蓄電池、内燃力発電、エネルギーマネジメントシステムなどを組み合わせた最適な需給制御の実現に向け取り組んでいる。今回の設置工事はその一環で、今年12月の営業運転開始に向けて、工事を進めていく。他のエネルギー設備も2024年度までに順次運用を開始する。


【大林組・東亜建設工業/大型洋上建設に対応 SEP「柏鶴」が完成】

大林組と東亜建設工業が共同で建造を行っていたSEP(自己昇降式作業台船)「柏鶴」が完成した。洋上風力発電設備の大型化に対応し、クレーンの吊り上げ能力を増強している。風車の基礎から組み立てまで対応できる。施行状況を3Dで可視化し、船の動きをリアルタイムで共有することも可能。基本設計から建造まで、ジャパンマリンユナイテッドが一貫して行った。国内の気象・海象条件を踏まえ、日本特有の建設条件に幅広く対応した仕様になっている。風車メンテナンスや地盤調査用の作業台船としても使用できる。


【清水建設/脱炭素アスファルト開発 バイオ炭でCO2を固定】

清水建設はグループ会社の日本道路とCO2固定効果のあるバイオ炭を用いて、道路舗装に使用するアスファルト合材に炭素を貯留する、脱炭素アスファルト舗装技術の共同開発を始めた。森林資源由来のバイオ炭を利用することで、製造過程で生じるCO2排出量を実質ゼロにする。CO2固定量が排出量を上回るカーボンネガティブのアスファルト舗装材の実用化を目指す。施工現場での実証試験を通じ、バイオ炭を混合したアスファルト合材の施工性や耐久性を検証し、今年度内に道路舗装工事に実適用する考えだ。


【三菱造船/舶用エンジン向けアンモニア供給装置を納入】

三菱重工グループの三菱造船はこのほど、舶用大型低速2ストロークエンジン向けのアンモニア燃料供給装置を、エンジンの製造などを手掛けるジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG)に納入したと発表した。J-ENGは現在、長崎市の三菱重工業総合研究所長崎地区で、新開発の舶用大型低速エンジンを使った多様な条件下でのアンモニア燃料試験を実施している。三菱造船が今回納入したアンモニア燃料供給装置も同地区に設置され、同試験でエンジンへの燃料供給を担っている。アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、温室効果ガス(GHG)排出削減に大きく寄与する。同社は今後も、海事業界のGHG排出削減と脱炭素化社会に貢献していく。


【ジャクリジャパン/新型ポータブル電源発売イベント開催】

ジャクリジャパンは6月、新製品発表会を開催した。同社で初めてリン酸鉄リチウムイオン電池を採用した「Plusシリーズ」を発売する。当日は、濱口優・南明奈夫妻によるトークセッションも行われた。「Jackery Solar Generator 2000 Plus」のポータブル電源は、従来機の高速充電性能を踏襲しながら、新たにリン酸鉄リチウムイオン電池を採用。バッテリーの長寿命化などを実現した。ソーラーパネルとのセットで、家庭用の発電システムとして使える。


【NextDrive/鳥取のPPA事業と連携 検針から請求まで管理】

NextDriveが提供するIoEプラットフォーム「Ecogenie+(エコジーニープラス)」が、中海テレビ放送のPPA向け従量課金システムのインフラに採用された。電力メーター管理システム、顧客管理システムと一体的に稼働し、差分計量データの取得から請求までを一気通貫で行う。各地で進展するPPAモデルに合わせた、充実したサービス提供を目指していく。


【ヒートポンプ・蓄熱センター/東京・虎ノ門地区が受賞 蓄熱とコージェネで運用】

ヒートポンプ・蓄熱センターが主催する「デマンドサイドマネジメント表彰」が開催された。資源エネルギー庁長官賞には、虎ノ門一丁目地区の地域冷暖房の事例が選ばれた。大型水蓄熱槽とコージェネを組み合わせたシステムでエリア全体の電力負荷平準化に貢献。電力のひっ迫時には需要家への影響を与えることなく消費電力を低減することが評価された。


【デンソー/工場のエネマネシステム実証実験を開始】

デンソーは、愛知県内の工場でエネルギーマネジメントシステム(EMS)の実証実験を5月から開始した。今回の実証は、同社が開発した固体酸化物形燃料電池(SOFC)を中心に、電気を工場に送電する蓄電池およびV2G(Vehicle-to-Grid)、太陽光発電パネルで構成され、愛知県の西尾製作所「ポケットパーク」内に設置する。同社のSOFCは、自動車用部品で培った熱マネジメント技術やエジェクターの燃料リサイクル技術が導入されたもので、世界最高レベルの発電効率65%を目指している。

報告書の内容を正しく知るには 日経よりまずAIで

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

好みもあるだろうが、国際エネルギー機関(IEA)の報告書を紹介する文はどちらがいいか。

まず日経6月2日「再エネ電源、世界で5割規模へ、発電能力が化石燃料に匹敵、送電・安定供給に課題」は、「世界で太陽光など再生可能エネルギーの導入が急拡大している。IEAは1日、2024年の再生エネ発電能力が約45億kWになる見通しを公表した。50年の二酸化炭素(CO2)実質排出ゼロに向けて各国が導入を加速したほか、ロシアのウクライナ侵攻で化石燃料の輸入依存への危機感が強まったのが要因」と書く。

流行りの「生成AI(人工知能)」の一つ、マイクロソフト版「bing」による要約は、「IEAは報告『再生可能エネルギー市場更新版』を発表した。その要旨によると23年の世界の再エネ容量は、上乗せ幅が過去最大の1.07億kWに達し、4.4億kW増える見通しだ。政策支援の拡充やエネルギー安全保障への懸念、価格競争力の改善が拡大を後押しした。課題として、金利上昇や投資コスト高騰、機器供給網の維持を挙げた」だ。

人間はバイアスをかける。AIは淡々とまとめる。差が分かる。例えば日経は、「2024年の再生エネ発電能力が約45億kW」について「原子力や火力発電所のように24時間発電できるわけではないが、原発4500基分」と解説する。再エネと原子力は能力や発電量、使いどころが全く違う。バイアスに何の意味があろう。

実は太陽光・風力発電は「出力が変動する再エネ」(Variable Renewable Energy、VRE)の名が与えられ特別扱いされている。

variable(移り気)の字義通り気まぐれで、太陽光発電は曇りの日は発電量が落ちる。夜は眠り、晴天の昼はフルに発電する。風力発電も本質は風まかせだ。だからVREが働いていない時は、火力発電など他の電源や蓄電池でバックアップし、ガンガン発電する時は、都市部など大消費地に電気を送り届ける。そのために発電所をいつでも運転できるよう待機させ、送電網も強化する、といった対策が求められてきた。

エコ(依怙)贔屓である。それでも、導入量が飛躍的に増えている理由は、variable(変幻自在)でもあるからだ。多彩な規模の発電設備を比較的速やかに造れる。運転時に燃料が要らず、温暖化ガスは出さない。

エコ贔屓はどこまで可能か。コストをかけず、悪影響を最小限に抑えるにはどうしたらいいか。メディアに必要な視点だろう。

朝日5日「関西で初の出力制御」は、「関西電力送配電は4日、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの受け入れを一時的に止める『出力制御』を、午前9時~午後1時半に実施した。これまで、発電量に比べて使用量の比較的少ない地域に限られていたが、太陽光発電の拡大を受け、関西でも初めて行われた」「電気の使用量と発電量のバランスを保って大規模停電を防ぐ狙いがある。4日は休日で工場の稼働が少なく、電気の使用量が減るが、晴天で発電量が伸びる予想だった」と伝える。

IEA報告書には「VRE普及で出力制限が増える」傾向を示す世界のデータが載っている。日本の出力制限はこれまで1%に満たない。送電網が充実した欧州でも、ドイツやイタリアは日本の10倍以上、島国の英国、アイルランドはさらに高い。中国も同じだ。

ギリギリまでVREを送電網に受け入れてきた関係者の努力のおかげだろう。少したたえていい。

いかわ・ようじろう  デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。