【インフォメーション】エネルギー企業・団体の最新動向(2023年4月号)

 【中部電力ほか/境港市で木質専焼バイオマス発電所を開発】

中部電力とNew Circle Energy社、稲畑産業、中部プラントサービス、NX境港海陸、三光の6社が出資する境港昭和町バイオマス発電合同会社はこのほど、プロジェクトファイナンスによる融資契約を結んだ。この合同会社は、木質専焼の「鳥取県境港市バイオマス発電所」の発電設備の開発、建設、運転、保守管理業務などを行う。発電出力は2万8110kW。想定する年間発電電力量は、一般家庭の約6万4000世帯分に相当する約2億kW時。燃料は、鳥取県や島根県など中国地方で調達する未利用間伐材や一般木材、建設廃材などからの木質チップと木質ペレットを活用する。今年11月に工事を開始し、2026年5月の運転開始を目指している。

【大阪ガス/カーボンニュートラル目指しガスビルをリノベーション】

大阪ガスは、大阪市中央区にあるガスビルのリノベーションとガスビル西館(複合ビル)の都市開発に着手する。都市再生特別地区制度により、ガスビル敷地と西側の社有地との間にある市道の上空を活用し、両敷地の一体的利用を図る。また、歴史的建築物であるガスビルの保存を中心とした都市再生への寄与による容積率の緩和を受け、敷地全体の高度利用を図る。商業施設を誘致し、周辺地域ににぎわいをもたらすと共に、上層階にはオフィスを整備し、高度な業務機能の集積と調和するビジネスゾーンの形成を進める。また、カーボンニュートラルビルの実現とガスビル・ガスビル西館、周辺地域のレジリエンス向上に取り組み、御堂筋周辺地域の活性化に貢献していく。

【東京ガス/レノバから太陽光発電と非化石価値を買い取り】

東京ガスは、レノバとの再エネ需給調整サービスを活用した電力購入契約に基づき、太陽光発電の電力と非化石価値の買い取りを開始した。買い取るのは三重県の四日市市と名張市にレノバが新設した、4カ所の太陽光発電所の電力約375kW。RE100に加入するなど環境意識の高い需要家に、この電力と環境価値を届ける。2023年度末までに最大1万3000kWの取引を計画しており、順次拡大する。東京ガスの再エネ需給調整サービスは、電力や非化石価値の買い取りのほか、再エネ発電予測・発電計画の作成・提出や、インバランスの費用負担を東京ガスが行う仕組み。再エネ発電所の開発と運営に強みを持つレノバと協業することで、FITに依存しない再エネの普及拡大を目指す。

【NTTスマイルエナジー/PPA導入でCO2削減を支援】

NTTスマイルエナジー(大阪市)はこのほど、浜松白洋舎(浜松市)の浜松白洋舎浜北工場に、法人向け太陽光発電設備PPAサービス「スマイルそらえるでんき」導入の契約を結んだと発表した。導入工事は、東海エリアで電気工事網の実績を持つスマートブルー社が担当する。発電した電力は工場内で自家消費する。年間発電量は約9万8000kW時を想定。これにより、同工場の使用電力のうち48%が太陽光発電由来となり、年間約40tのCO2削減を見込む。

【コスモエネルギーHD/トラックターミナル初 水素ステーション建設】

コスモエネルギーホールディングスのグループ会社、コスモ石油マーケティングは岩谷産業と共同で、水素ステーション事業を担う岩谷コスモ水素ステーション合同会社を設立した。同社が手掛ける最初のステーションは、京浜トラックターミナル内にある「京浜トラックターミナル平和島SS」に、2024年中の併設を予定している。今後の燃料電池(FC)商用車の増加を見据えて、短時間で充填可能な水素ステーションを計画している。脱炭素社会の実現に向けて、水素燃料の社会実装と水素の需要拡大を進めていく。

【スマートエネルギーWeek/新エネルギーの最前線 世界最大級の総合展】

国内外のエネルギー関連団体や企業が集まる世界最大級の総合展示会「スマートエネルギーWeek春2023」が、3月15日から3日間にわたり開かれた。水素・燃料電池、太陽光発電、二次電池、スマートグリッド、風力発電、バイオマス発電、ゼロエミッション火力の七つの展示会で構成し、多くの最新技術が並ぶ。世界各国から専門家も来場し、経済産業省や環境省、大手電力会社役員などによる講演会も開催。2050年カーボンニュートラル実現に向けて、エネルギービジネスを加速する商談の場にもなっている。

【東電設計/送電鉄塔の基礎工事を大幅簡略化】

東電設計は送電線の鉄塔の基礎をつくる際に使われる床板部分のプレキャスト(成形済み)化を実現し、製品の販売を始めた。送電鉄塔の基礎の施工は、鉄塔の組立に支障がないようにするため難易度が高く、専門の作業員が経験と技術を頼りに作業している。現場の条件に合わせたプレキャスト部材を工場で生産、現地では組み立てるだけにし、経験・技術不足の作業員でも基礎を構築できるようにした。既に東京電力が横浜市の現場で採用。他社も採用を検討している。

【三菱電機/系統安定化を支援 大規模停電の防止へ】

三菱電機は、北海道電力ネットワークから統合型系統安定化システム(IRAS)を受注した。IRASは電力系統の事故を瞬時に検知し、必要に応じ高速で制御を実施。大規模停電(ブラックアウト)を防止する。運用開始は2024年3月を予定している。同社は再エネの導入拡大のため、電力系統の安定化を支援し、安心して電気を利用できる社会の実現に貢献していく。

【損保ジャパンほか/財務影響分析サービス 洋上風力向けに開始】

損害保険ジャパンとSOMPOリスクマネジメントは、洋上風力発電事業者向けに、事業運営上の確率的なリスク評価に基づいたプロジェクトサイクルで保険料のシミュレーションを行い、財務への影響を分析するサービスを販売する。自然災害や故障などの発生や保険マーケットのトレンド、物価動向などを加味して保険料を算出できる。

【双日・日本製紙/バイオマス発電が稼働 燃料に未利用材を活用】

双日は日本製紙と共同でバイオマス発電事業会社「勇払ゆうふつエネルギーセンター合同会社」(北海道苫小牧市)を設立し、2020年5月から建設を進めてきた国内最大級のバイオマス専焼設備の営業運転を2月から開始した。発電出力は約7万5千kW。燃料は主に海外から調達する発電用木質チップとPKS(パームヤシ殻)のほか、北海道の未利用材(間伐材や林地残材の未利用資源)を積極的に使用する。未利用材の活用により、地域の森林環境の整備を促し、北海道の林業振興や雇用創出による地域活性化に貢献する。

【ENEOS/豪州でグリーンMCHの大量製造に向けた実証】

ENEOSはこのほど、水素キャリアの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH)を製造する実証プラントを豪州に建設した。同社は、独自に開発した低コスト型有機ハイドライド電界合成法(Direct MCH)を活用。再エネ由来のMCH(グリーンMCH)の大量製造に向けて、電解槽の大型化に取り組んでいる。この実証プラントでは、中型電解槽と250kWの太陽光発電設備を組み合わせた製造を行う。今年2月から9月までの実証期間中に、製造効率最大化のため、亜熱帯環境下での電解槽の耐久性の確認や、太陽光の発電量に合わせた運転・制御技術を開発する。こうした知見を生かし、25年度をめどに商用化に使用する5000kW級の大型電解槽の開発を目指す方針だ。

企業が得られる「ごほうび」 削減貢献量のコンセプト

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.13】関口博之 /経済ジャーナリスト

CO2の排出に関する「削減貢献量」という考え方に関心が高まってきている。国内企業からも要望の声が広く上がっている。削減貢献量は、企業の脱炭素技術が社会に与える効果を評価する指標。「環境性能の良いこの製品・サービスがなかったらこうなるが(ベースライン)、この製品・サービスのおかげでこれだけ排出量を減らせる」ことを表すものだ。省エネ技術もこの算定の中に入る。

概念は以前からあり、経済産業省も2018年にこれを定量化するためのガイドラインをつくったが、国際的には広がらなかった。ところが、今度は世界のGX(グリーントランスフォーメーション)をけん引する企業などでつくるWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が、削減貢献量を信頼性の高い指標にすべくガイダンスの策定を進めていて、3月中にも公表するという。さらにWBCSDはこれをたたき台に経産省とも連携し、日本が議長を務める今年のG7(主要7カ国)広島サミットでも削減貢献量の枠組みを提言したいとしている。一気に注目度が高まっているのもこのためだ。

GXリーグシンポジウムでも削減貢献量が議論された

そもそも削減貢献量は、スコープ3に表れる排出量の削減分と違うのか? という疑問もあるかもしれないが、こう考えると分かりやすい。メーカーがCO2排出量を従来品より2割減らした新製品を開発しても、この新製品が人気で、これまで100の売り上げだったものが倍の200売れたとすると、スコープ3での総排出量は増えてしまう。環境性能を高めた企業の努力を正当に評価し、市場にもアピールできるようにする狙いが、削減貢献量の考え方にはある。ただし、従来品や他社競合品の捉え方(ベースラインの置き方)次第では、貢献を大きく見せる水増しも起きかねない。

また“この商品がなかりせば”といった推定の要素も入り込む。環境性能を過大に語る「グリーンウォッシュ」にならないよう注意深い制度設計が必要だ。金融市場での評価にも耐え得るようにするためには、信頼性と一貫性のある基準づくりが欠かせない。WBCSDでは、実際に脱炭素化につながっているという適格性、算定方法、開示の仕方など明確な基準を設けたいとしている。

23年度から始まる「GXリーグ」に向け、2月に開かれたシンポジウムにはWBCSDのドミニク・ウォーレイ副代表がメッセージを寄せた。この中では「削減貢献量が制度化され、高い信頼性が得られるようになれば、企業はより多くのイノベーションを生み出すようになる。削減貢献量という指標は、リスクやコンプライアンスの対象ではなく、企業が得られる“プライズ”=ごほうびなのだから」とウォーレイ氏は述べていた。

確かに多くの企業にとって排出削減目標の達成、とりわけスコープ1の削減は、それが自主目標であれ、守れないと大変なことになるリスクと身構えてしまうものだ。対照的に削減貢献量という概念はイノベーションを促し、市場拡大や成長をイメージさせ、企業をやる気にさせる。その意味でもGXには必要なツールといえそうだ。


【脱炭素時代の経済探訪 Vol.1】ロシア軍のウクライナ侵攻 呼び覚まされた「エネルギー安保」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.2】首都圏・東北で電力ひっ迫 改めて注目される連系線増強

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.3】日本半導体の「復権」なるか 天野・名大教授の挑戦

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.4】海外からの大量調達に対応 海上輸送にも「水素の時代」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.5】物価高対策の「本筋」 賃上げで人に投資へ

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.6】なじみのない「節ガス」 欠かせない国民へのPR

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.7】外せない原発の選択肢 新増設の「事業主体」は

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.8】豪LNG輸出規制は見送り 「脱炭素」でも関係強化を

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.9】電気・ガス料金への補助 値下げの実感は? 出口戦略は?

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.10】“循環型経済先進国” オランダに教えられること

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.11】高まる賃上げの気運 中小企業はどうするか

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.12】エネルギー危機で再考 省エネの「深掘り」

せきぐち・ひろゆき 経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

経産省が牛耳るGX推進法案 国会機能軽視の危険な落とし穴

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

衆議院の本会議で審議入りしたGX推進法。今後10年間で20兆円規模のGX先行投資を支援するため、財源としてGX経済移行債を発行し、炭素に対する賦課金や排出量取引制度における負担金を徴収してその償還に充てるというものだ。脱炭素を巡り世界中が大規模な投資競争を行っている中、総論で反対する声はあまりない。が、こうした時こそ、条文ベースで制度を読み解くことが重要である。

まずGX債だが、法案第7条で2023年度から32年度までの各年度に限って発行することが規定されている。そして第8条で50年度までに償還するとされている。ところが、第11条で化石燃料賦課金は28年度から、第16条で排出量取引制度負担金は32年度から徴収するとされているが、徴収期限に終わりはない。つまりGX債の償還が終わった後も賦課金や負担金の徴収は続き、その使い道もこの法案では何ら定められていないことになっているのだ。

さらに、本来こうした国債の償還は税で行われることが大原則なのに、GX債は賦課金や負担金で行うことがミソである。税であれば憲法第84条に基づく租税法律主義によって税率は法律で定めなければならず、当然国会審議に付されるが、化石燃料賦課金の額は税ではないため政令で国会審議を経ずに決められる。排出量取引制度での負担金については、特定事業者にCO2の排出枠を割り当てその額はオークションで決定される。問題なのは、排出枠の割り当てやオークションの方法が第19条で「別に法律で定める」とされており、この法案では何ら明記されていないことだ。

負担期間など未定だらけ 問われる立法府の役割

事業者の負担額を国会で審議できず、負担額の決定方法も何ら決まっておらず、事業者の負担がいつまで続くのか、GX債償還後にこれらの収入が何に使われるのかも決まっていない法案を堂々と提出した時点で、財政民主主義を無視し国会の機能をなめ切った、極めて危険な法案と言わざるを得ない。

同法案は内閣官房で作られ、GX実行推進担当相たる西村康稔氏の所管。西村大臣の本務は経済産業相であり、同法案で認可などの権限を行使する大臣は経産相だけである。本来、脱炭素は運輸や建設・住宅などさまざまな分野に関わり、総合調整が必要なため内閣官房で行っているはずだ。が、同法案は経産相の所管で完結しているため、例えば特定事業者は法律上電気事業者だけ。つまり、内閣官房の衣を着た経産省が所管行政を遂行するために作られたものになってしまっている。

経産省が今後どのような政策を展開していくか、国会だけでなく資金を負担する業界も厳しい目で見続けていくことが必要だ。そもそも、この法案自身のそうした問題点を国会がどれだけあぶり出し修正できるか、立法府の役割が問われている。

ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

IPCC最新報告書の波紋 次の目標策定へ影響必至

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が3月20日、9年ぶりとなる第6次統合報告書を公表した。注目点は、産業革命前からの温度上昇を1.5℃に抑えるための中間地点となる2035年の目標水準を示すかどうか。報告書では初めて「温暖化ガスを35年に19年比で60%減」と明示した。今後のG7(主要7カ国)サミットや、温暖化防止国際会議・COP28への影響は必至だ。

今年のCOP28では、各国の温暖化対策の進捗を点検する「グローバルストックテイク」を初めて実施する。報告書の内容は、参考資料の一つとして活用される見通し。この結果を踏まえ、24~25年に各国に新たなNDC(国別削減目標)の提示を求める。

日本が現在掲げるNDCは30年度に13年比46%減。この過程では米国などからの厳しい突き上げがあり、日本は実効性に乏しいエネルギーミックス策定を余儀なくされた。ただ、重要なのは実現不可能な目標提示よりも、着実な対策の積み上げで世界全体のCO2削減に寄与することだ。ロシア有事が突き付けた現実を、温暖化議論で直視することはできるのか。

【マーケット情報/4月6日】原油続伸、供給のタイト化見通し強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

3月31日から4月6日までの原油価格は、OPECプラスの8カ国による自主的な追加減産の発表を受けて、主要指標が軒並み急伸した。特に米国原油を代表するWTI先物と北海原油の指標となるブレント先物は、それぞれ前週比5.03ドルと5.35ドルの上昇となった。

OPECプラスの8カ国が、5月から年末にかけて合計で日量116万バレルの自主的な追加減産を発表。ロシアも日量50万バレルの減産を年末まで維持すると公表したことを受けて、供給のタイト化が続くとの見通しから、積極的な買いが膨らんだ。

イラクとクルド人自治区の間で原油の出荷再開の合意が結ばれたが、実際の輸出には至っていない。

米国では、OPECプラスの減産計画と経済の先行き見通しに対する懸念の間で揉み合う局面もあった。米エネルギー情報局が発表した最新の統計では、原油在庫およびWTI原油の受け渡し地点となるクッシングの在庫はともに減少に転じたものの、景気の先行き不透明感から需要が抑制された。ただ、全体としては油価の下方圧力に至らなかった。

【4月6日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=80.70ドル(前週比5.03ドル高)、ブレント先物(ICE)=85.12ドル(前週比5.35ドル高)、オマーン先物(DME)=83.90ドル(前週6.11ドル高)、ドバイ現物(Argus)=84.64ドル(前週比6.77ドル高)

環境次官がCN政策テーマに講演 地域変革のけん引役として業界に期待

【都市ガス有志の勉強会】

3月中旬に開かれた地方都市ガスの有志が集まる勉強会で、和田篤也・環境事務次官が「カーボンニュートラル(CN)による地域の未来像」をテーマに講演した。環境省のトップが地方ガスの勉強会で講演するのは異例。和田氏は都市ガス事業について産業界、地域社会のスタークホルダー両方の側面を持つと評価した上で、「地域のCNとの親和性が高いビジネスだ」と強調。同省施策を軌道に乗せるドライバーとなることへの期待を示した。

政府が2020年秋に「50年CN宣言」を行って以降、同省は脱炭素政策の中でも地域や社会、暮らしなどの変革にフォーカス。30年度までに民生部門の電力のCNを目指す「脱炭素先行地域」では同年度までに100カ所を目指すなど、CN宣言以降の5年間に政策を総動員する。和田氏はその上で重要になるのが「ニーズオリエンテッド(最優先)」だと強調。「地方自治体、中でも市民目線のニーズを把握する市町村をバックアップし、そのソリューションツールがCNというストーリーを共有してほしい」と続けた。

ガス業界への期待を語った和田次官

メタネーションの可能性 「地域オリエンテッド」で

CN政策は、2月10日閣議決定のGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針を踏まえてさらに加速。カーボンプライシング(CP)やグリーンファイナンス強化、日本の技術移転で世界全体のCO2削減に寄与する「アジア・ゼロエミッション共同体構想」への貢献などが柱だ。

特に注目度が高く、炭素賦課金と排出量取引の導入が検討されているCPについては、「CPを今すぐ入れるという発想ではなく、まずは国が(GX移行債で)企業の取り組みをバックアップする。ただ、いつまでもCNにやる気を出さない企業には後からCPが課されるようになる」と、欧州などとの違いを解説した。

他方、日本は今年のG7(先進7カ国)サミット開催国としてこれらの方針を主要国にアピールする考えだが、石炭火力政策などを巡っては意見の隔たりがある。日本政府は着実に世界全体のCO2削減につながる国産技術として水素・アンモニアの活用を掲げ、安易な石炭火力全廃方針に言及しない対応を続けてきた。

和田氏は、水素を基軸としたe―メタンに関して既存インフラを活用でき、現実に則した「ジャストトランジション」(地域社会や産業などの公正な移行)が期待できるとの考えを示した。多くの業界がビジネスモデルの変革を迫られる中、「都市ガス業界はe―メタンにフックをかけることがジャストトランジションにつながる」と強調。「『地域ニーズオリエンテッド』な業界」としてGX時代をけん引することに期待を寄せた。

LPガス支援復活の愚策 背景に統一地方選対策か?

一度は見送られたはずのLPガス利用者などに対する政府の負担軽減支援が一転、7000億円規模で実施される運びとなった。

自民党の経済産業部会などは3月、LPガスの利用者や電力の特別高圧需要家の負担軽減などを求める提言案をまとめ、政府の新たな物価高騰対策に盛り込んだ。岸田文雄首相が党の萩生田光一政調会長に指示していたものだが、ことLPガスへの政府支援を巡ってはエネルギー業界内外から異論・反論が相次いでいる。

「LPガスの輸入価格はLNGや石炭ほどの高騰局面にない。小売り料金上昇は販売業者による便乗値上げの要素があるのに、国が支援する意味が分からない」(消費者団体関係者)、「政府は商慣行の改善などで、輸入価格の10倍といわれるほど割高な末端価格の構造問題を是正することが先決だ」(エネルギー会社幹部)――。

確かに、輸入価格指標のサウジアラビア産CP(契約価格)を見ると、プロパンの3月分は1t当たり720ドルで前月比70ドル、前年同月比175ドルも下落している。「春の統一地方選をにらんだ最悪の愚策。血税の無駄遣いもいいところだ」。有力学識者の声がむなしく響く。

CN対策で急務の運輸電動化 官・民で連携模索し導入加速へ

【業界紙の目】穐田 晴久/交通毎日新聞 編集局記者

運輸部門のCO2大幅削減が課題となる中、特にトラックなど商用車の電動化対策が急務だ。

関係省庁が電動化への政策支援に力を入れ、メーカー同士も連携して取り組みを活発化させている。

「2050年カーボンニュートラル(CN)」の実現に向け、トラックやバス、タクシーなどの商用車の電動化が大きな課題になっている中、自動車メーカーが新型のEVトラックの発表会を開催したり、量販FCV(燃料電池車)小型トラックの開発を発表したりといった動きを見せている。一方、環境省が経済産業、国土交通両省と連携し、23年度当初予算でトラックとタクシーの電動化への支援事業を新規で立ち上げるなど、政府の動きも活発化してきた。

商用車の電動化が急務となっているのは我が国全体のCO2排出量の約2割が運輸部門で、このうち約4割をトラックなどの商用車が占めるからだ。この課題対応として政府は、21年6月策定のCNに向けた「グリーン成長戦略」で商用車の電動化目標を掲げた。8t以下については30年までに新車販売の20~30%を電動車にし、8t超については累積5000台の先行導入を目指す。

矢野経済研究所が1月13日に発表した商用車の電動化に関する市場見通しによると、商用車の世界販売台数は35年に3053万台(19年比13.7%増)で、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、EV、FCVといった電動車が占める比率は、最大で49.1%まで拡大するという。21年の電動商用車の世界販売台数は29.9万台で、商用車全体に占める電動化比率は1.2%。中国や欧州が中心となって市場をけん引し、補助金などの普及施策を受けて販売台数を伸ばしてきた。

商用車の電動化では、バッテリーを含めた積載量や走行距離の短さが課題として指摘されてきたが、各国で対策が取られている。欧州ではEVやFCVに限定して積載量を緩和しており、米国でも同様の動きがみられる。

メーカー動向活発に  各社相次ぎ新商品投入

こうした中、国内メーカーの動きはどうか。

「カーボンニュートラル戦略」と「進化する物流への貢献」を進める、いすゞ自動車は、昨年5月に横浜市で開催された「ジャパントラックショー2022」で、小型トラック「エルフEモニター車」の実車展示を行った。22年度中の量産開始に向けて開発を進めていることを明らかにしたほか、大型FCVトラックの取り組みについてパネル展示や動画で紹介した。

また、トヨタ自動車が同年7月に商用車の電動化戦略を発表。いすゞ、日野自動車と共同で小型FCトラックを開発し、23年1月以降に実用化することや、スズキ、ダイハツ工業とは軽商用EVバンを共同開発し、23年度中に市場投入するとした。

両プロジェクトには、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やCNへの貢献を目的に、いすゞ、日野、トヨタが設立した新会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」(CJPT)も参画する。小型FCトラックはいすゞと日野によるトラック技術と、トヨタのFC技術を組み合わせた知見などを結集する。軽商用EVバンは、スズキとダイハツが培った小さなクルマづくりと、トヨタの電動化技術を組み合わせたサステナブル(持続可能)な移動手段の提供を目指している。

さらに、三菱ふそうトラック・バスは、昨年9月に横浜市内で開いた発表会で、小型EVトラック「eキャンター」の新モデルを公開した。eキャンターは17年に国内初の量産型EVトラックとして発売され、今回の車両はフルモデルチェンジした次世代モデルとなる。航続距離を短くする代わりに価格を下げた点が特徴だ。同社幹部は「ラストワンマイルから拠点間輸送まで多くの需要に対応できる」とアピールした。

このほか、ベンチャーの「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市)のEVバス2台が、東京・渋谷区のコミュニティバスに導入され、3月から運行を開始した。商用車を巡る動きが活発化している。

三菱ふそうトラック・バスが発表した新型EVトラック

業界直面の2024年問題 「CNは後手に」の本音

矢野経済研究所によると、中国ではNEV(新エネルギー車)向け補助金などの優遇を受けて電動商用車の販売台数が増加しており、特に大型バスではEVの新車販売に占める割合が高い。他方、欧州では電動化の中心は小型商用車だが、主要な商用車メーカーのラインアップ拡充によって、大型トラックでも電動化が進むと見られるという。

海外に対し日本政府の動きはどうか。環境省は、EV、HEV、天然ガストラック・バスの導入や充電インフラの整備を支援する目的で「環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業」(19~23年度)を実施。23年度当初予算の電動化促進事業では、改正省エネ法で新たに制度化される「非化石エネルギー転換目標」を踏まえた中長期計画の作成義務化に伴い、EV、PHEV、FCVの野心的な目標を掲げた事業者や、非化石エネルギー転換に伴い影響を受ける事業者などを対象に、車両導入費を集中的に支援する。約136億円を計上した。乗用車の導入支援などと合わせ、運輸部門全体の脱炭素化を進めたいとしている。

ただ、物流業界のCN推進に向けては、①中小事業、個人事業者にも車両導入を促せる補助的措置の必要性、②それぞれの用途でのニーズを満たす商用車の開発や生産力の確保、③EV給電、電池交換などの設備の整備―などの課題が横たわっている。

働き方改革関連法によって4月以降、自動車運転業務の年間時間外労働の上限が960時間に制限される。これに伴い発生する「2024年問題」も影を落とす。同法はトラックドライバーの労働環境改善が狙いだが、運送・物流業者の売上や利益の減少、ドライバーの収入が減少し離職に繋がる可能性もある。

労働力不足に拍車がかかる恐れなどが懸念されており、中小運送事業者からは「CN推進まで対応できない」との声も漏れる。こうした課題も含めた総合的な政策判断が今、求められている。

〈交通毎日新聞社〉〇1924年創刊○発行部数:週2回5万6000部○読者層:自動車・部品・タイヤメーカー、ディーラー、整備事業者など

運転期間見直しで異論噴出 露見した原子力規制委の課題

【論説室の窓】神子田 章博/NHK 解説主幹

原発運転期間見直しなどを盛り込んだGX脱炭素電源法案を巡り、原子力規制委員会で意見が分かれた。

今回の制度変更は、規制委、ひいては原子力産業が抱える根本問題を浮かび上がらせる。

原子力規制委員会は2月13日、原発の運転期間を巡る政府の新たな方針について異例の多数決で了承した。

原発の運転期間は、東京電力福島第一原発事故を受けて、原則運転開始から40年。1回に限り延長が認められ、その場合でも上限を60年とすることが、原子炉等規制法で定められている。新たな制度では、運転期間についての規定を、経済産業省が所管する電気事業法に移す。さらに、原則40年、上限で60年を原則としながらも、運転開始から30年目以降は、10年間隔で規制委が安全性を確認して認可を繰り返す制度を導入することで、経年劣化した原発の安全性を確認する。その一方で、規制委の安全審査などによる運転停止期間については、運転期間の計算から除外するとしている。

石渡委員が反対 独立性を疑う声も

規制委の中でとりわけ強い反対論が出たのは、この最後の部分だ。地震や津波などの審査を担当する石渡明委員は、「電力会社の責任で不備があって審査を中断するなどした場合でも、その分あとで運転期間を延ばしてよいというのは非常におかしいと思う」と主張。規制委は時間をかけてでも安全性をとことん追求することが求められているのに、審査に時間をかけるほど運転期間が延長され老朽化によるリスクが高まることになるというのは、大いなる矛盾だというのだ。

これに対し山中伸介委員長は、新たな制度では、運転開始から30年以降、10年を超えない期間ごとに機器や設備の劣化状況を確認して管理計画を策定し、規制委の認可を受けるとしていることを挙げ、「ある期日が来たときに基準を満たしているかどうか安全規制をするのがわれわれの任務だ」と強調。結局、採決では4対1で政府の方針が了承された。

記者会見する山中伸介委員長

この問題を巡っては、審査による停止期間が自動的に運転期間の延長につながることで、電力会社が審査を満たすための安全対策を急ぐインセンティブが薄れるという懸念が出ている。その一方で、企業としては1日も早い稼働で、莫大な投資の回収と収益性の向上につなげたいところで、故意に審査期間を延ばすようなことは考えられないという見方もある。

肝心なのは、規制委が独立した立場から厳格に審査することで、良いものは良い、ダメなものはダメと一切の忖度なしに科学的見地に基づいた判断を下し、安全性の維持を最優先するということではないか。

そこで次の焦点は、規制委の独立性が保たれるのかどうかだが、今回の経緯を巡って、それを疑う声も聞こえる。政府の方針について規制委が議論を続けることができる時間の制約の問題だ。

政府は、今回の制度変更を盛り込んだ法案を今国会で成立させようとしている。このため、規制委の議論も一定の時期までに結論を得るという、いわば枷がはめられた形になった。

これについて規制委の杉山智之委員からは、「外から決められた締め切りを守らなければならないという感じで、せかされて議論してきた。われわれは独立した機関であり、じっくりと議論すべきだった」という指摘が出された。これに対する山中委員長の見解は、「少なくとも4カ月間をかけて議論してきたが、法案を提出しなければならないという期限があったのは事実で、そこはやむを得ないところだと思う」というものだった。法案化に向けたスケジュールとの折り合いをつけるために、規制委での議論に時間的な制約がかかったことを認めたとも受けとられている。

もともと規制委は、福島の事故後、原子力発電を推し進める側の政府から独立し、透明性をもって安全性を審査する機関として発足した経緯がある。独立性を疑われることはすなわち、原発の安全性に疑いを持たれることにつながり、その結果、原子力の活用にブレーキがかかることになりかねない。

求められる人材確保 原子力産業が陥った悪循環

その一方で、規制委が無制限に時間をかけてよいということにもならないだろう。エネルギー情勢を巡っては、脱炭素という待ったなしの課題に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻後には、天然ガスの需給がひっ迫し、電力料金の高騰に跳ね返る中で、コストを抑えながら安定的なエネルギーをどう調達していくかも差し迫った課題となっている。そうした課題に応えるものとして原発の重要性が高まる中、審査のスピードアップが求められているのではないか。

もちろん、このスピードアップは、「せかされて」審査することで安全性が疎かになるというものになってはならない。安全性の確保について妥協のない形で審査をスピードアップするためには、規制委の体制強化を図る必要があるのではないだろうか。

ところが、ここでネックとなるのが、規制委の体制を強化するための人材の確保だ。もともと規制委は、原発を製造する大手電機メーカーなどから人材の供給を受けて発足したが、メーカーにとっても原発の製造のための人材が必要であり、規制委に供給できる人材には限りがあるという。さらに原子力政策を担う官庁側にも、原子力の専門家は欠かせない。その一方で、福島の原発事故以降、「産業としての将来性のなさ」を感じて、原子力を志す若い人材が減っているという。今回の政府の原発政策の転換には、原子力産業を存続させなければ、日本の原子力関連の技術も廃れてしまうという危機感もあったという。

福島の原発事故から12年が経った。原発の安全への信頼が失われたことで、原子力産業の将来性と潜在的な人材が失われるという悪循環が時間をかけて進んできた。この悪循環を止め、逆回転をさせるには、何よりも安全性への信頼を取り戻すことが重要で、それには相当な時間がかかりそうだ。規制委の体制強化で審査のスピードアップを図るといっても、そのこと自体、長い時間を必要とするものになりそうだ。

液石WGが7年ぶり再開 LPガス商慣行にメス

LPガスの料金透明化と取引適正化について検討する総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG、座長=内山隆・青山学院大学教授)の会合が3月2日に開催され、7年ぶりに議論を再開した。

テーマは、事業者が賃貸集合住宅へのガス供給契約獲得のためにさまざまな製品を物件オーナーに無償提供し、その費用を入居者からガス料金として回収する商慣行の是正だ。今後3回程度会合を開き、現行の商慣行を見直すとともに制度改正を含む議論を行い、7月ごろまでに方向性を示す。

昨今、オーナーへのリベートは給湯器やコンロといったガス機器のみならず、エアコンやインターホンといったガスと直接関係のない商材にまで及ぶ。そもそも、設備はオーナーの所有という整理に基づけば、その費用をガス料金に転嫁すること自体、つじつまが合わない。永井岳彦・石油流通課長は、「顧客獲得コストの上昇が、消費者の不利益になっている可能性がある」と指摘。事業者に無用な混乱が生じないよう配慮しつつ、早期の是正を目指す構えだ。

【覆面ホンネ座談会】原子力規制に改善見えず 「山中委員会」に物申す!

テーマ:原子力規制委員会の評価

国の原子力規制委員会が原子炉等規制法の改正に踏み切り、原発運転期間の延長が実現する。電力会社には朗報だったが、業界が切望する安全審査の改善は進展がない。業界関係者が「山中委員会」を見る目は依然厳しい。

〈出席者〉 A学識者  B電力業界関係者  Cジャーナリスト

―山中伸介氏が委員長に就いて半年が経つ。まず評価から聞きたい。

A 原発の運転期間延長を巡り、石渡明委員が最後まで原子炉等規制法の改正に反対した。それで、最後は山中さんが多数決で決めた。批判の声もあったが、規制委がNRC(米国原子力規制委員会)のような組織に近づいたと評価している。ようやく合理的な規制を行う機関に代わるのではないか。その兆しを感じている。

B NRCのように多数決を採用し、意見の分かれる課題に白黒決着を付けた。これは規制行政での普通の取り組みとして、よいことだと思っている。ただ、山中委員長の手腕については、評価をするのは時期尚早だろう。どう規制行政をリードしていくのか、まだ見えていない。

 大阪大学時代の山中さんからは、優秀な学者だが、遠慮がちで発言が少なく、リーダーシップを取るタイプとの印象は受けなかった。それは規制委の委員長になっても変わらない。委員会も原子力規制庁の用意したシナリオに沿って進めているように見える。委員会での発言を聞いていると、規制庁事務局と打ち合わせて、その枠の中からはみ出さないように慎重に話しているようだ。

リーダーシップに期待はするが…… 法律専門家が規制委のグリップを

―すると、期待はしていない?

B いや、そんなことはない。更田豊志前委員長、田中俊一元委員長は、記者会見での厳しい質問に対して、その場の思いつきで想定を越える発言をして、規制庁も後処理に困ったことが度々あった。もうそんなことは起きないだろう。

 一方、今の安全審査はとても科学的、合理的なものとはいえない。それで電力会社はひどい目に会っている。業界としては当然、それらを正すために山中さんのリーダーシップに期待している。実際は、かなり難しいかもしれないが。

C 運転期間の延長、それに柏崎刈羽原発の追加検査など、実務的にテキパキと仕事をこなしている印象は受ける。ただ、Bさんと同じく、田中さん、更田さんのような強烈なカラーは感じない。規制庁にとっては担ぎやすい委員長だろう。

 ただ、山中さんはあえて自分のカラーを打ち出す必要はない。規制委も国の行政機関の一つだ。ところが今、規制委の中に法律を正しく解釈する委員がいない。法律に詳しい規制庁幹部が、委員や職員をある程度、グリップしないと田中さん、更田さんの時のような「暴走」が始まってしまう。

―規制庁長官の片山啓さんは経済産業省出身の事務官だ。

C 法律に詳しい片山さんたちは、規制委も国の行政機関の一つであることをわきまえている。彼らが規制行政を法律に則って進めるべきだ。同時に金子修一次長のような海外の規制に詳しい技官幹部が、規制庁の職員をきちんと監督しなければいけない。

 かつての規制庁の原子力規制部は、「更田チーム」「石渡チーム」と委員が親分になって、やりたい放題の審査をしていた。あたかも、参謀本部のコントロールが効かなくなった「関東軍」のようだった。それが再稼働の審査が延々と続いた最大の理由だ。

A 行政手続き法では、原発の再稼動はおおむね2年間で審査することになっている。2年間で審査を終える体制にしなければ、行政組織として失格ということだ。ところが、延々と10年近く審査を続けているサイトがたくさんある。

原発の役割が重要性を増す中、原子力規制委員会への期待は高まるが……
提供:朝日新聞社/時事通信フォト

「活断層論争」に終止符 志賀原発再稼働に一歩前進

2014年の審査申請から約9年―。北陸電力志賀原発2号機を巡る「活断層論争」にようやく終止符が打たれた。3月3日、原子力規制委員会が敷地内の断層の活動性を否定する北陸電力の説明について「おおむね妥当」、つまり「活断層ではない」との判断を示したのだ。

志賀原発の「活断層論争」に終止符が打たれた

東日本大震災後、旧原子力安全・保安院は原発敷地内の断層の再評価を行った。論争はその評価会合に参加した専門家が、スケッチ図を見て「活断層に見える」と発言したことに端を発する。規制委が14年に設置した有識者会合も、科学的根拠なしに活断層だと疑い続けた。ないことを明らかにする〝悪魔の証明〟を求められた北陸電は、断層の評価方法に鉱物脈法を採用するなど努力を重ね、審査通過への望みをつなげたのだ。

だが、再稼働への道のりは長い。北陸電は昨年11月、規制料金の値上げを申請。この際、原価算定上で志賀2号機の稼働時期を26年1月として織り込んだが、今後の審査を考えると同時期に再稼働するかは不透明。再稼働による抑制効果は年平均で約120億円、規制料金の値上げ率を約2%抑えられるが、停止のままなら負担増になりかねない。北陸電の判断の是否はいかに。

【イニシャルニュース 】再エネ規制シンポ中止 裏に自民有力議員の影

再エネ規制シンポ中止 裏に自民有力議員の影

再エネの乱開発防止を訴える全国規模の住民団体、「全国再エネ問題連絡会」が3月15日に東京都内で予定していたシンポジウムが、土壇場で中止に追い込まれた。

このシンポジウムは「今、再エネ問題解決に必要な法改正は何か」をテーマに、経済産業省、農林水産省、国土交通省、環境省のほか、国会議員や地方議員、有識者らが参加。悪質事業者などによる乱開発に歯止めをかけるため、①再エネ固定価格買い取り制度(FIT)の改正、②都道府県知事の林地開発許可に関わる森林法の改正、③環境アセス法や地球温暖化対策法における罰則の強化―などを巡り幅広い議論を行う予定だった。しかし7日になり突如中止が決まったのだ。

同連絡会の共同代表を務める山口雅之氏は、「開催場所である衆議院第二議員会館の会議室が急きょ使えなくなったため」「政治の世界がいかに魑魅魍魎であるか体感させていただいた。心からお詫び申し上げます」「ようやく自分の限界を知るにいたりました」などとコメント。政治家による何らかの圧力が中止の背景にあることを言外ににおわせた。

再エネ事情に詳しい永田町筋によれば、自民党有力議員のF氏やK氏が水面下で動いた可能性があるという。「エネルギーの地産地消を推進する両氏は、再エネ普及拡大議連を主導する河野太郎グループや野党の再エネ勢力とせめぎ合っている。そんな中で、再エネ開発に待ったを掲げる再エネ連絡会の動きが目障りになったのかもしれない」

再エネ問題に揺れる自民党

いずれにしても、再エネ適正化政策がこれから本番を迎えようという矢先のシンポ中止劇。果たして、舞台裏で一体何があったのか、大いに気になるところだ。

保守分裂の青森知事選 混迷でも電力動けず

6月に投開票が行われる青森県知事選挙の行方が、原子力の先行きに影を落としそうだ。関西電力による使用済み核燃料の中間貯蔵施設の利用の問題があるためだ。青森市長の小野寺晃彦氏と、むつ市長を辞職した宮下宗一郎氏が出馬の意向だ。二人は共に自民党に推薦を求めていた。が、いったん小野寺氏でまとまりかけたものの、一本化できずに3月に自主投票を決めた。

小野寺氏は現職の三村申吾氏が強く支持する一方、宮下氏はネット配信などのパフォーマンスで知られる。混迷の様相を呈す中、下馬評では宮下氏がやや有利と伝わる。

東電と日本原電は中間貯蔵施設をむつ市で運営しているが、関電はそこに参加したい意向だ。関電は福井県と、県内の使用済み核燃料の処理方法を今年末までに決めると約束しており、その期限が迫る。

むつ市長時代の宮下氏は「なぜ関電が核のゴミを持ってくるのか」と批判を続けた。関電は三村知事、自民党E代議士らと共に受け入れの調整を続けていた。ところが宮下氏はこの二人と折り合いが悪い。宮下氏の行動には、関電の政治判断のミスと、その遺恨が背景にあると憶測された。

青森には原子力施設が集中する。電力会社は事業への政治的な介入を恐れ、どの選挙にも中立の立場だが、こと保守分裂の青森知事選では「一層、配慮せざるを得ない」(関係筋)。日本原燃にはS副社長、地元対応のO執行役員など関電出向組がいるが、何もできない状況だ。

ただし「宮下氏の批判は、三村さんに肩入れするなとの政治家としてのパフォーマンス。聡明な人なので利益が見えれば態度を変える」(同)との期待もある。しかし宮下氏の考えも選挙の先行きも不透明。電力・原子力関係者は、知事選の行方を、固唾を飲んで見守っている。

LPガス業界に衝撃 貸付配管で制度改正へ

資源エネルギー庁がついにLPガス業界長年の課題である「貸付配管問題」解決に向け、制度改正に着手した。エネ庁石油流通課は昨年末、業界の会合で改正について説明。そして3月2日に同庁が開いたワーキンググループで正式に論点を示した。屋内配管やガス機器などの費用は基本料金や従量料金と分離する、といった方向に見直す考え。

ただ、業界からは根強い反発の声が挙がる。エネ庁は昨年末から議論をスタートさせたかったところ、業界団体がWGのメンバーを選ぶのに時間がかかり、結局数カ月を要した。見直しを前向きに受け止めたのはT社などごくわずか。別のT社や、N社などの幹部は後ろ向きの発言をしており、こちらが多数派だ。

「エネ庁は取引の最適化と透明化を徹底させたいのだろうが、数十年前から議論が起きながら今日まで実施できなかった。不動産業者がこの商習慣を利用する面があるし、消費者団体も見直しを強く求めてこなかった」(業界関係者)

エネ庁は5月末までに3回ほどWGを開き決着させたい意向だが、どう落としどころを探るのか。

長年の商慣行に行政のメス

二つの再エネ議連 自民内でせめぎ合い?

いま自民党には、再生可能エネルギー事業を巡り二つの議連が存在している。

一つは、柴山昌彦元文部科学相が会長を務める「再生可能エネルギー普及拡大議連」(S議連)。小泉進次郎前環境相が会長代理、河野太郎内閣府特命担当相が顧問という顔ぶれで、「自民党内の脱原発派が揃う筋金入りの反大手電力議連」(エネルギー業界幹部)だ。

もう一つは、森山裕選挙対策委員長が会長を務める「国産再エネに関する次世代型技術の社会実装加速化議員連盟」(M議連)。こちらは岸田文雄首相、麻生太郎副総裁といった大物が発起人に名を連ね、2月に発足したばかりだ。再エネに加えて、原発も脱炭素電源として容認する方針を掲げており、柴山議連とはスタンスが大きく異なる。

「われわれはあんな恥ずかしい真似はしない」。そう言い切るのはM議連のH議員だ。S議連が昨年6月に洋上風力入札制度の見直しを求める要望書を経産省に出したことなどを受け、価格優先のルールがひっくり返されたことを批判する。議連事務局長の秋本真利議員を巡っては、同入札で落選した風力事業者から多額の政治献金を受けていた疑惑が取りざたされている。

M議連は、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電など次世代再エネを巡る技術育成や導入支援策を検討。5月ごろにも提言をまとめた上で、政府が6月に策定する経済財政運営と改革の基本方針に盛り込む構えだ。

一方の柴山会長は、3月の海外事業者ヒアリングの場で「入札ルールの変更で『後出しじゃんけんだ』と事実と異なる声も聞かれたが、今回のヒアリングでも日本の洋上風力市場は依然魅力的だと言われている」と述べ、党内の動きや報道にくぎを刺した。またS議連は、大手電力による顧客情報の不正閲覧問題の追及にも力を入れている。

「自民党には、一部事業者への利益誘導的な再エネ政策ではなく、国益をベースにバランスの取れた再エネ政策の検討を望みたい。原子力を含めた『S+3E』の原則さえ間違えなければ、両議連とも応援したいところだ」   

大手ガス会社幹部の期待に、議連関係者はどう応えるか。

東電EP社長に長崎氏 小早川氏の次は誰?

東京電力エナジーパートナー(EP)の次期社長に、長崎桃子・東電ホールディングス(HD)常務執行役が決まった。4月1日付で就任する。長崎氏は慶大法学部卒業後、1992年に東電入社。2017~19年に東電EP子会社、テプコカスタマーサービス(TCS)の社長としてエリア外の法人営業展開に力を入れた。これが引き金となって西日本地域での安売り競争が激化し、中部、関西、中国、九州の大手電力4社による価格カルテルを誘発したのは、知る人ぞ知る話だ。

「TCSは昨今の収益悪化からEPの取次会社に格下げと一部で報じられた。そのEPはHDから計5000億円もの増資を受け、経営危機からの脱却を狙う。長崎氏の経営手腕に注目だ」 いずれにしても、業界の次なる関心事は、東電HDの社長人事だ。現社長の小早川智明氏は17年就任から丸6年を迎えるが、まだ59歳と若いこともあって今のところ交代の話は出ていない。「A氏か、Y氏か、T氏か。次の候補選びは難航しそうだ」(大手電力関係者)

JERAが共同CEO体制 「相互補完」で難局乗り切る

JERAの佐野敏弘会長、小野田聡社長が退任し、4月1日付で、可児行夫取締役副社長執行役員が代表取締役会長・グローバルCEO(最高経営責任者)に、奥田久栄副社長執行役員が代表取締役社長・CEO兼COO(最高執行責任者)に就任する。

会見に臨む可児新会長(左)、奥田新社長

異例の共同CEO体制を敷く背景には、同社の主導権を巡る親会社である東京電力ホールディングスと中部電力との微妙な駆け引きが透けて見える。だが、両CEOの関係は至って良好であり、統合交渉から10年間タッグを組み、同社の中枢を担ってきたことで築いてきた信頼関係は、事業環境を取り巻く環境が激変する中で着実に成長を遂げるための原動力となりそうだ。

東電出身の可児氏は、資源確保やエネルギー事業開発といった豊富な海外経験を有することが強み。一方の中電出身の奥田氏は、経営企画の経験をベースに他社とのアライアンスなど従来の電力会社の企画部門の枠を超えた多彩な経験を持つ。世界的な脱炭素への対応と、国内の燃料調達と電力価格の安定化という課題に直面する中、異なる強みを「相互補完」し難局をどう乗り越えるのか。新経営陣の手腕がいよいよ問われることになる。

EVでエネルギーシェアリングを実現 コミュニティーで再エネを有効活用

【中部電力】

中部電力ミライズは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と連携し、長野県の軽井沢町で「でんきで絆をはぐくむ」街づくりに取り組む。

具体的には、3月1日にオープンしたコミュニティー施設「Karuizawa Commong—rounds(軽井沢コモングラウンズ)」内の書店やカフェなどの店舗、近隣の居住エリアに太陽光発電を導入する。書店南側の駐車スペースには、充放電機能を備えたEVを設置。再生可能エネルギーやEVを近隣の居住エリアを含むコミュニティー内で共同利用する。再エネの有効活用や防災拠点としてのコミュニティーの実現に取り組む。

軽井沢町は、持続可能な社会の構築に向けた協働や、環境の保全・創造を推進する「軽井沢町環境基本条例」を制定している。中部電力ミライズとCCCは、エネルギーの地産地消と最適化を目指した社会連携型サービスを通じた街づくりにより、地域のSDGsの目標達成とカーボンニュートラル社会の実現に貢献する。また、軽井沢コモングラウンズを中心とした、地域住民との連携による再エネの地産地消の取り組みを「でんきで絆をはぐくむ」街づくりの先進的な事例として、他の地域へ展開していく。

再エネの地産地消・有効活用を目指す

3社共同でエネマネ 再エネの地産地消を促進

このEVは、コミュニティーの利用者を対象としたカーシェアの車両としてはもちろん、蓄電池としても活用される。カーシェアの利便性を損なわず、蓄電池としての効果を最大化するため、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を試験的に導入している。

EMSの試験導入は、中部電力と中部電力ミライズ、デンソーの3社共同で実施される。

中部電力が提供するEMSは、電力需要や太陽光発電の予測、デマンド制御を行う。デンソーが提供するEVのEMSは、EVの充電率や充電状態を表す指標であるSOC(State Of Charge)の予測を行う。中部電力ミライズは、カーシェアの予約管理システムを提供する。これらの三つのシステムを連携させ、EVの最適な充放電や、書店やカフェなど店舗の空調管理を行い、環境性の向上を実現していく。

3社は、普及拡大が見込まれるEVを用いて再エネのさらなる拡大を目指すとともに、軽井沢コモングラウンズでの運用結果から、新たな価値を提案しカーボンニュートラル社会の実現に貢献する。