B 中部が7月末に規制料金以外の値上げと、最終保障供給料金の値上げにもかじを切り、他社も追従するかと思ったが一部にとどまった。このままでは新電力はすりつぶされる。低圧規制料金には触りたくないのが大手電力の本音だ。制度上は、燃調の基準価格の切り上げであれば、上がりも下がりもする可能性があり、認可でなく届け出でできると聞く。しかし物価高の状況を踏まえ、エネ庁が難色を示しているようだ。節電ポイントは規制料金にも適用されるようだが、低料金措置なのに参加表明で2000円与えるのもおかしい。これでは低圧でも競争にならない。
C エネ庁が燃調の見直しを嫌がっているというが、大手数社が発表した自由料金の改定では大幅に値上げしようという中、低圧の規制料金は安いままという状況を放置することはどうなのか。自由化の果実は高圧需要にも低圧需要にも平等に配分するという当初の思想に反するとも言える。一時期、高圧の標準メニューはダンピングだと指摘されていたが、今回も同様な指摘をされてもおかしくない。
B 英国政府も本来値上げすべきところにプライスキャップをかけ、日本とよく似た構造だ。日本より半年ほど先行している英国の場合、行き詰った小売り事業者が前払い金を踏み倒すケースが問題となり、日本でも託送料金や再エネ賦課金を踏み倒す例が出ている。両国とも需給対策が小手先の断熱や節電であり、需給構造の抜本見直しには踏み込んでいない。日本は英国の先例を見て、原発再稼働や電源の手当てなどの本筋の議論をしてほしかった。結局システム改革の三つの目標は何も達成できず、総括しないからパッチワークの対応ばかりだ。節電、節ガスは国内経済を沈滞させ、国力にもマイナス。英国の悪い先例を参照して、速やかに対策を講じるべきだ。知らなかったでは済まない。
各社の料金の判断はまちまち 秋以降市場はさらに大混乱
A エネ庁も自由化の失敗を分かっているが、もう元には戻れない。最終保障供給料金を市場連動とし需要家にリスクを取らせるようにしたことも、苦渋の決断だ。そして現在のエネルギー危機下などの最後の駆け込み寺として経過措置を残している以上、解除は永遠に来ないように思えてしまう。燃調で必要な切り上げを制限なく行えるようにすれば、日本の最終保障供給に当たる、米国の市場連動のデフォルトメニューに近い形にはなる。
C 今の燃調は中途半端で、電源構成が変われば原価の変化をカバーできない。ただ、米国のようなデフォルトメニューが理想的かは分からない。日本でも21年の価格高騰時は市場連動型メニューの価格が何倍もの高値になったことを振り返れば、デフォルトメニューが真の消費者保護となるのかは疑問だ。
A とにかく各社の状況による。例えばLNGの長期契約のウエイトが下がった理由は、新電力に需要を取られて長契を持てなくなった社もあれば、スポットが安いと思い込んだ社もある。それぞれの事情で料金も変わり得るし、必ずしも赤字になる訳ではない。
C 仮に自由料金を値上げする社の規制料金が十分に黒字なのであれば、そうした対応には矛盾を感じる。一方、規制料金の値下げ改定はとても無理で、するにしても値上げしかできないという声もあり、本当に事情はまちまちだ。
B いずれにせよ抜本的な原価の洗い替えは時間がかかる。よって燃調の上限切り上げはしやすいようにしていくべきだ。また、大手電力は現在、「戻り需要」の受け入れは市場連動を条件にしている。一部では戻り需要を標準メニューで受け入れることを求める意見があるが、やはり自社供給力を超えた分は市場連動とする形が自然だ。それが経済学者の好きな限界費用の理屈だろう。
A 確かに安値攻勢で破綻した新電力からの戻り需要に、これまで大手電力と契約し続けていた需要家と同じ料金を提供することは、ある意味道理に合わない。ただ別の視点として、昔からの商習慣を大事にして戻り需要を市場連動とするだけだと、電力・ガス取引監視等委員会や公正取引委員会の存在意義をなくしかねない。エネ庁はそこのバランスを取ろうとしているが難しい。これは、結局自由化はなんだったのかという本質的な話だ。
―最終保障供給料金は市場連動に見直されるが、目的通りに需要家は動くかな。
B 実装はこれからだ。需要家はこれから地獄が始まることに、まだ気がついていない。
A エネ庁は戻り需要に対して大手電力が標準約款を値上げして出すように言っているね。
C 見直し後の最終保障料金は9月から始まるが、多くのエリアでは新たな標準メニューは来年4月からしか出ない。その半年間は大変な状況になる。特に予算が決まっている自治体は料金が見通せることを重視しているから、パニックになりそう。
A 表面上はうまく進んでいるように見えるが、最終保障料金が上がり、次の料金体系が見えてくるまで、最終保障に逃げ込んだ人はまた困り、大手電力とずっと契約していた人の料金も2割増し程度になる。秋から年明けごろまではいろいろな場面で大騒ぎになる。