電力、ガスなど主要エネルギー各社の2021年度決算(22年3月期連結)が出そろった。対前年度比で見た全体傾向として、大手電力が減収減益だったのに対し、石油、都市ガス、LPガスは軒並みの増収増益と、明暗がくっきり分かれる格好になった。

まず沖縄を含めた大手電力10社については、北海道、九州を除く8社が減収。経常利益では全社が減益となった(収益認識に関する会計基準適用などで、東京が売上高、利益とも、沖縄が売上高で前年度比の記載はなし)。とりわけ利益面で厳しかったのが、東北(赤字492億円)、中部(同593億円)、北陸(同176億円)、中国(同618億円)、四国(同121億円)の5社だ。各社とも、燃料価格高騰による燃料費調整制度の期ズレの影響や、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格高騰が収支を直撃した。
一方でJERAは売上高62・5%増、経常60・9%減益となったものの、燃料調達費の期ズレ要因を除くと大幅増益に。またJパワーは電力販売価格の上昇などを受け、2割近い増収増益と好調だった。新電力大手のイーレックスは、電力調達コストや発電燃料費などが上昇する中で、営業力の強化による販売電力量の増加や価格の見直しなどが奏功し、売上高は62・5%の大幅増、経常は7・4%減にとどまった。
化石系事業者は好業績 過去最高益の更新も
大手電力とは対照的に、決算書上の好業績が目立つのが、化石エネルギー系事業者だ。石油元売りの出光興産は売上高46・7%増、経常323・8%増、ENEOSは売上高42・6%増、経常234・3%増と、いずれも大幅な増収増益。原油価格高騰に伴う在庫評価益の上昇やタイムラグによる製品マージンの改善などが影響した格好だが、在庫影響を除いた営業利益でも増益に変わりはない。コスモエネルギーも同様の状況で、3社ともに過去最高益を更新した。石油資源開発は売上高が3・8%増にとどまったが、経常は原油高騰の影響などで336・7%の大幅増益だった。
都市ガス会社はどうか。東京、大阪、東邦、西部、北海道、広島の主要6社は売上高がいずれも増加した半面、利益面ではLNG調達や電力販売など関連事業の状況により格差が出た格好で、大阪と西部が減益に。特に西部は調達国側のトラブルの影響で、割高なLNGスポット調達を余儀なくされたことが大きく響き、87・5%の大幅減益となった。
LPガス会社については、主要上場企業の岩谷産業や伊藤忠エネクスが増収増益。TOKAIは5期連続の増収に加え、各利益項目で過去最高を記録した。ニチガスは売上高13・3%増、経常8・1%減だったが、当期純利益では過去最高益を更新した。
総じて、大手電力の苦境が際立つ結果といえ、設備投資拡大などで資金不足に陥っている状況も浮かび上がる。一方、脱炭素時代と言われる中で、化石系事業者の多くが好業績だった点は興味深い。これが理想と現実の違いなのか。