【多事争論】話題:電力カルテル問題
大手電力4社が関わったカルテル問題に業界が揺れている。
真相を明らかにし、ルールに基づいた競争の原則を再確認すべきだ。
〈 電気事業合理化・効率化の障害に システム改革の見直しが欠かせず 〉
視点A:伊藤敏憲 伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役兼アナリスト
2022年12月、中部電力、中部電力ミライズ、中国電力、九州電力および九電みらいエナジーは、21年4月あるいは7月に特別高圧電力および高圧電力の供給に関して、独占禁止法違反(不当な取引制限、いわゆるカルテル)を行っていた疑いがあるとして、公正取引委員会が調査していた案件において、公取委から独禁法に基づく課徴金納付命令書(案)、あるいは排除措置命令書(案)とこれらに関する意見聴取通知書を受領したと公表した。
公取委の処分が決定されておらず確定情報ではないが、マスメディアの報道や関係者へのヒアリングから、カルテルが疑われている行為は、①18年ごろから行われていた、②3社の相手先はいずれも関西電力だった、③関西電力は、調査が始まる前に最初に違反行為を自主申告したため、独占禁止法におけるカルテル・入札談合に適用される課徴金減免制度により、課徴金が全額免除されるもようである(課徴金減免制度の適用事業者は後日公表される)、④3社に課される課徴金の総額が1000億円を超える可能性がある(中部電力は独占禁止法関連損失引当金繰入額275億5500万円を特別損失に計上すると公表)―などが明らかになっている。
電力小売事業は、2000年に受電規模2000kW以上の特別高圧領域が部分自由化され、04年および05年に高圧領域まで自由化範囲が拡大された。さらに16年に電力小売りが全面自由化され、併せて電力卸取引市場の整備など競争を促進する仕組みが導入されたことから、異業種からの新規参入、旧一般電気事業者(電力各社)による供給域外販売などが広がっていた。この影響により、電力各社の供給域内の販売シェアは低下し、小売り部門の経営が圧迫されていた。
ちなみに10年代後半には新電力がシェアを拡大していたが、電力系でも東京電力系のテプコカスタマーサービス(TCS)が特別高圧および高圧の販売電力量を15年度の57万4000kW時から18年度105億5900万kW時に、関西電力系の関電エネルギーソリューション(Kenes)が15年度1億2500万kW時から18年度11億2100万kW時へと域外販売量を大幅に増やしていた。
なお、15年度から17年度に特別高圧および高圧の販売電力量は、市場全体が2・2%増となる中で、関西電力(10%減)をはじめ北陸電力を除く電力各社が減販となった。18年度は、市場全体が前年度比0・1%減に対して、関西電力10・5%増と、電力会社では関西電力だけが販売量が増やした。これは、関西電力が原子力利用率の改善(17年度23・9%、18年度54・6%)によって電力供給コストが低下したことなどを背景に、拡販に取り組んだ成果だったと考えられる。
違法行為で企業価値が毀損 より公正な競争の実現も
経営が圧迫されていたとしても、カルテルなどの法令違反行為を行うことは許されることではない。違法行為が発覚すると、処分や課徴金が課されるだけでなく、お客さまや取引先、さらには社会一般からの信頼が損ねられ、企業価値が大きく毀損されかねないからだ。違法行為の発生を未然に防ぐためには、全ての社員に法令を正確に理解させる、法令を遵守するためのルールを作る、そのルールを社内外に周知徹底する、内部監査を適時実施するなどの取り組みが必要になる。
関西電力は、課徴金が免除される見込みであることから、当カルテルにおける直接的な損失は回避される見通しだが、調査開始前に違反行為を自己申告したということは、カルテルを行っていたことを自ら認め、独善的に対応したことになる。
別件ではあるが、関西電力では昨年末に送配電会社が管理していた新電力の顧客情報を社員が閲覧して利用するという違法行為を行っていたことも発覚している。法令順守に加え、信頼回復に努めるための取り組みも必要不可欠だろう。カルテル問題は、関連各社および電力業界の今後の対応いかんによっては、電気事業全体の合理化・効率化につながる事業提携・統合などの障害につながりかねない。速やかに適切な対策を講じることが求められよう。
最後に、電気事業の健全化を図るために電力システム改革のあり方を一部見直すことも検討の余地があるのではないだろうか。新規参入の促進は電気事業全体の合理化・効率化につながっておらず、電力の供給信頼性の低下、複数の電力会社の経営体質悪化などが起きていることなども勘案すると、電力各社に課せられている非対称規制、行為規制を撤廃するなどにより、より公正な競争環境を実現することが必要と思われる。

1984年東京理科大学卒、大和証券入社。大和証券経済研究所出向、HSBC証券を経て2012年から現職。






