【マーケット情報/3月17日】原油急落、金融不安が重荷

【アーガスメディア=週刊原油概況】

主要指標、軒並み急落。欧米における金融危機の懸念を受け、経済の冷え込みと石油需要後退の観測が強まった。

米国原油を代表するWTI先物は前週比9.94ドルの大幅下落となり、17日時点で、2021年12月上旬以来の最低を記録。北海原油の指標となるブレント先物も、前週から9.81ドル急落し、2021年12月下旬以来の最低となった。

米国のシリコンバレーバンク、およびシグネチャーバンクが破綻。さらに、米国金融機関の経営不安が欧州に飛び火し、スイスの大手クレディ・スイスの株価が急落。スイス中央銀行が収束に乗り出すこととなり、経済の減速、それにともなう石油需要後退の予測が広がった。

一方、米国では、市場対策として、連邦準備理事会が金利引き上げを停止するとの観測が台頭。また、OPECは、今年の中国の原油需要見通しを上方修正。ジェット燃料等の消費増を見込んだ。加えて、OPECとロシアは、現状の減産計画の年内維持を再確認した。ただ、油価の上昇圧力には至らなかった。

【3月17日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=66.74ドル(前週比ドル9.94安)、ブレント先物(ICE)=72.97ドル(前週比ドル9.81安)、オマーン先物(DME)=74.93ドル(前週ドル5.36安)、ドバイ現物(Argus)=74.92ドル(前週比ドル5.20安)

【ガス】貸付配管の商慣行問題 法改正を視野に検討

【業界スクランブル/ガス】

LPガス業界の懸案事項とされる「貸付配管・無償貸与問題」の解決への動きが新たな局面を迎えている。

資源エネルギー庁石油流通課は昨年12月に開催した全国LPガス協会流通委員会において、制度改正における基本方針を説明した。具体的には、消費設備、配管の費用を明確化し、ガス料金からの徴収を制限する仕組みを構築する考えだ。賃貸集合住宅の無償貸与については、昨年、朝日新聞が問題提起する形で連載し、それらを受け当時の経済産業大臣が会見で「解決すべき課題と認識している」と発言。社会問題化し、解決に向けた議論が再燃していた。

この問題はLPガス販売事業者が賃貸集合住宅などにガスを供給する見返りとして、ガス管や給湯器、さらにエアコンなどの設備を賃貸住宅オーナーなどに代わって負担。その費用を入居者のLPガス料金に上乗せして回収する、業界の商慣行だ。また戸建住宅においては、消費者がガス供給の解約を求める際に、配管などの費用として高額な違約金を請求するなどのトラブルも問題となっている。新制度では、ガス料金について「基本料金」、「従量料金」のみとし、設備費は除外するなど完全に分離。各種設備費については別途、売買契約の締結などを検討し、消費配管などの所有権は建物所有者への移転を検討する。

長年の商慣行、ビジネスモデルの転換にLPガス事業者からは「きちんとした猶予期間を設けてほしい」、「自由市場のLPガスの貸付配管の分離を求めるのは価格介入なのでは」との声も挙がる。いずれにせよ、新制度の実効性についてはLPガス業界のみならず、国土交通省、公正取引委員会や消費者庁などとの連携は必須となる。なお、改正に向けた議論は3月上旬からスタートする。(F)

【新電力】値上げ申請で痛感 おかしな規制料金

【業界スクランブル/新電力】

旧一般電気事業者5社の電力規制料金改定申請審査が、電取委料金審査会合にて昨年12月7日以降、本稿執筆の1月中旬時点までで4回行われた。いくつか雑感を述べたい。

各項目について非常に丁寧な審査、検討が加えられているがゆえに、改定に時間を要する。この間、申請各社だけでなく新電力各社の財務状況は悪化するばかりだ。エネ庁の議論は諸事細部まで丁寧に検討、議論を行うがゆえに情勢の変化への追随力が乏しい。

一定期間をカバーする料金であるのだから、燃料費以外にも調整要素を認め、審査を簡略化するような取り組みを行うべきだった。そもそも料金審査に限らず電力制度設計(例えば脱炭素オークション)にインフレ調整が織り込まれていない点が不思議だ。前年度CPI変動分の原価反映を織り込めば、面倒な手続きがかなり減るだろう。申請を受けてから個別審査では時間がかかるばかりだ。

好例が、全体費用の8%程度の人件費議論だ。今回消費者庁から3%程度の賃金引上げ要請が出ているところ、エスカレーションの織り込みは以前しないと決めたはずとの反論が委員から出て、話題になっていた。そこにこだわってどういう全体メリットがあるのか。

審査から話を移す。

新電力の中には規制料金維持を強く求めるところもあれば、撤廃を希望するところもある。前者は従来型の規制料金(比較的高い固定価格+燃調)が維持されると思い込んでいるのか。

原子力再稼働済みの関西、九州は値上げせず。中部電力も黒字転換の見通しが立ったためか、値上げ申請に踏み切る気配はない。居住地域次第で各家庭の電気料金が大きく違ってくる。規制料金は社会政策を負っているとされるが既におかしい。(K)

「兵站」SMRと戦艦武蔵

【ワールドワイド/コラム】水上裕康 ヒロ・ミズカミ代表

世界的なエネルギー危機にあって、原子力、なかでもSMR(小型モジュール炉)が注目を集めるが、ここに来て、その燃料供給に黄信号が灯っている。

多くのSMRは、HALEU(高純度低濃縮ウラン)と呼ばれる、濃縮度が20%程度のウランを使用する。通常の3~5%よりも高い濃縮度の燃料の採用により、炉の小型化や、燃料取替周期の長期化が図りやすいためだ。ところが現在、この燃料を供給できるのはテネックスというロシア企業一社であるため、ウクライナでの戦争開始とともに、その供給が怪しくなった。欧米の濃縮会社でも技術的には製造可能だが、許認可を取得して生産開始するまで、最低5年はかかるという。テラパワーおよびX-エナジーは、米国政府の助成を得て、2028年までにそれぞれ試験用原子炉を建設することになっているが、計画通りの運開が危うくなってきた。

この話を聞いて、吉村昭の小説「戦艦武蔵」を思い出した。武蔵は大和とともに海軍の期待を一身に背負った超弩級戦艦だが、南方の任務についた昭和18(1943)年には、重油の調達がままならず、トラック島の環礁に係留されていることが多かったという。自慢の46センチ砲も活躍の場が与えられなかった。戦艦や発電所にかかわらず、高性能の機械が誕生するのは胸躍る出来事だ。これに対し、燃料や消耗部品、糧食の補給などは、ともすると忘れられがちではないか。太平洋戦争で物資輸送に徴用された商船は、十分な護衛もなく、その損失は軍艦をはるかに上回ったという。折しも、世界は未曽有のエネルギー危機に見舞われている。エネルギー業界は、改めて自社の「兵站」を問い直すときではなかろうか。それにしてもSMRには期待どおりの活躍を祈るばかりだ。

保管から廃棄までをワンストップ 九電グループの文書電子化サービス

【九州電力】

九州電力と記録情報マネジメント、Qsolの3社は、紙文書の電子化サービスを開始する。

調査から電子化、廃棄処分までを担い、高いセキュリティー確保とDXにつなげる。

 九州電力とグループ会社の記録情報マネジメント(RIM)、Qsolは3社合同で「九電グループドキュメント電子化サービス」(Zeropaper)を開発した。

RIMのスキャニングサービスやQsolの電子文書保管システムといった、グループ会社の実績と強みを組み合わせ、紙文書の保管から電子化、廃棄処分までをワンストップで手掛ける。世の中のペーパーレス化や働き方改革、コロナ禍でのリモートワークの浸透を追い風に、2020年10月、九電はデジタル化サービス標準化ワーキンググループを設置し検討を始めた。現在、九電グループ内で試行運用を行っており、秋には本格提供を開始する。

RIMは、機密文書処理の専門会社だ。九電の新規事業育成支援制度の第5号として01年に誕生。福岡市近郊に「福岡セキュリティセンター」を構え、紙文書の保管・管理、台帳化、電子化するサービスを提供してきた。情報セキュリティーマネジメントシステムについての国際基準ISO27001を取得しており、山口県から九州エリアまで3000を超える企業・団体との取引実績を誇る。

Qsolは、20年以上前から「電子契約保管システム」を提供するIT企業だ。企業間取引の電子契約書についてe―文書法や電子帳簿保存法に対応したタイムスタンプなどの機能を搭載。電子での保管などもサポートし、管理コストの低減にも貢献している。

九電の宮島真一ICT事業推進担当部長は、「一見対極にあるような事業だが、以前からこの二つを組み合わせられるのではないかと考えていた」と振り返る。

(左から)永野部長、宮島担当部長、原取締役

顧客に合わせサービス提供 高いセキュリティーの確保

所有している膨大な紙文書について、「社内保管を減らし、スペースを有効利用したい」「移転に伴い整理し、賃料のコストダウンにつなげたい」という企業は多い。電子化へのニーズも高まっている。だが、保管・電子化・廃棄処分を社内で仕分けるとなると、なかなか進まなくなるのが現状だ。

Zeropaperでは、顧客は自社のニーズや予算に合わせ、紙文書の①調査、②改善提案、③保管、④台帳化、⑤電子化、⑥廃棄処分―といったサービスフローの中から、項目を自由に選べる。仕分けをせずに預けてしまうこともできるのだ。その後、依頼に応じてRIMが紙文書の調査、台帳化などを進める。

RIMの原淳一郎取締役営業部長は、「仕分けをする時間がない、電子化の予算がかけられないなど、保管や電子化のハードルは高い。まずは預かり、相談しながら対応できることがZeropaperの強み」と強調する。

ワンストップで文書を扱うことは、セキュリティー確保にもつながる。一般的に、紙文書を外部保管する場合は倉庫・物流業者に、データ化する場合はIT企業に、廃棄する場合は廃棄物処理事業者にそれぞれ委託する。複数社が関わると、何らかのアクシデントで文書の散逸や紛失が起こるリスクはゼロではない。

Zeropaperでは、紙文書は全て福岡セキュリティセンターに運ばれ処理される。企業から預かる際はニーズに合わせて、個人情報保護輸送モードや警送輸送などで運搬する。

福岡セキュリティセンターは、(一財)日本品質保証機構が示す「リサイクル処理センター安全対策適合認定」を取得し、検査基準に則った管理体制で運用している。この施設内で①~⑥のサービスフローに対応する。廃棄処分する場合は文章が読めない細かさに裁断。インゴット化しラップフィルムで梱包した後、契約製紙工場に運びリサイクルされる。

サービス概要図。九電はZeropaperの企画・営業支援を行う

DX推進にも貢献 広く外販を目指す

通常、文書を電子化する場合、検索しやすくするため担当者がルールに基づきキーワードを入力して指定のフォルダに保存していく。

Qsolは、DXの推進を視野に技術力を発揮し、この一連の作業を自動化する開発を進めている。将来的には一般文書や契約書、図面にも対応させる計画だ。

Qsolの永野裕和産業営業部長は、「電子文書を各担当部署が管理するのではなく、一つのシステムに一元的に保存すれば、検索性も向上し業務効率も上がる。だが、そのための作業が増えないようにしたい」と話し、自動化を人件費削減にもつなげたいと続ける。

九電グループは、経営目標として30年に連結経常利益の半分である750億円を、国内電気事業以外で達成することを目指している。九電の宮島担当部長は、「グループが協力して目標に挑む中で、ZeropaperはDXに貢献できる事業。広く外販していく。アナログとデジタルを融合させてグループの強みを最大限生かしたい」と抱負を語った。

福岡セキュリティセンター。左の施設(5階建、延床面積3889m2)を増設する

【電力】「二枚舌」は感心せず 原発再稼働の空売り

【業界スクランブル/電力】

電力・ガス取引監視等委員会の料金制度専門会合で、東北・北陸などみなし小売り電気事業者5社による料金改定申請の審査が行われている。

1月27日の会合では、3社が供給計画上は再稼働時期未定となっている原子力発電所について、料金算定期間中に再稼働する前提で、料金の上昇幅をいくばくか抑制していることを明らかにした。

事業者が自主的に行ったことなのか、経済産業省の指導があったのか筆者は知る立場にないが、供給計画との間で二枚舌を使うのは感心しない。今の電気料金も一定の原発再稼働を織り込んでいるが、事業者と経産省だけではどうにもコントロールできないことを安易に織り込んだ結果、フィクションと化してしまったのは周知の通り。泊の再稼働を新料金に織り込まず、再稼働したら値下げすると説明した北海道の方が誠実だ。

空売りを禁止するから安定供給は問題ない……これは、電気事業法に第2条の12の供給能力確保義務を新設する際に、当時の経産大臣が国会審議で使った言い回しだ。面白くも適切でもない喩えに苦笑したことを覚えているが、今回のことの方が空売りと呼ぶのにふさわしい。

そもそもなぜ料金改定が必要になったのか。西側諸国が結束してロシアの暴挙と戦っているからだ。海を隔てているとはいえ、わが国は中露の隣国だ。今は戦時中であり、その行方が安全保障上の自分ごととして返ってくるという緊張感がもっと必要ではないか。

すなわち、わが国は原子力を停止し続けていることで西側の足を引っ張っていることを自覚するべきだ。安易な空売りではなく、稼働できる原発は稼働、新安全基準への対応は稼働と並行して進めるくらいの大胆な行動が必要ではないか。(U)

秘密の温暖化外交にメス ケリー特使の調査開始

【ワールドワイド/環境】

米国では共和党が多数を奪還した下院において、ケリー気候変動特使について調査が行われる予定だ。下院監視・説明責任委員会のコーマー委員長(共和党)は2月2日にケリー氏に対し、バイデン政権における同氏の位置付けとこれまでの中国共産党とのハイレベル気候交渉に関して調査を行うと発表した。コーマー議長は「貴特使は貴オフィスのスタッフ、支出に関する我々からの度重なる情報開示要請を無視し、我々の経済成長を阻害し、議会権限を迂回し、気候変動に名を借りて外交政策に脅かす活動に従事してきた。議会は貴使の透明性をもった文書・情報開示を求める」と述べた。

ケリー氏の「大統領気候特使」というポジションはこれまで存在せず、上院の承認を必要としていない。国務省内に設置された気候特使室は45人のスタッフと年間1390万ドル(18億円)の予算を割り当てられている。バイデン政権の外交政策の重要な柱である温暖化外交のトップにある一方、その活動内容については固く口を閉ざしており、野党共和党からの批判にさらされてきた。

コーマー議長は2月16日までにケリーオフィスの予算、人員リスト、肩書、給与、ケリー氏の気候特使としての国内外出張の明細などを提出するよう求めている。ケリー氏は就任後から世界各地を回り、ハイレベル温暖化会議を含む気候外交に従事している。特に2021年には2度にわたって中国を訪問し、中国の60年カーボンニュートラル目標や30年ピークアウト目標の前倒しを働きかけたが、中国はこれを拒否している。

コーマー委員長はケリー氏が中国との気候交渉を推進する一方で、中国の人権侵害に対して弱腰であることも強く批判している。ケリー氏は21年11月に中国製のソーラーパネル製造における奴隷労働問題について「その点については承知しているが、自分の職務は気候特使であり、気候アジェンダを前に進めることだ」と発言し、共和党から批判を浴びている。

もともとケリー氏には気候変動問題を重視するあまり、米国にとって重要な他の戦略目的を犠牲にするのではないかとの懸念が民主党系のブルッキングス研究所からも出されていた。下院で共和党が多数をとったことにより、バイデン政権のエネルギー温暖化政策に対してブレーキをかける動きが顕在化してくることが予想される。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院特任教授)

【コラム/3月17日】需要家目線での制度のあり方とは

加藤 真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

激動の2022年度も3月を残すのみとなった。依然として国の審議会の開催は旺盛で、筆者が動向を追っている審議会の開催件数を数えてみたところ、年始休みのあった1月、そして日数の少ない2月という時期にもかかわらず、2か月で54件も開催されていた。

前回のコラムから約2か月が経ったが、その間、GX関連で2本の束ね法案が閣議決定し、1月に開会した国会に提出されたほか、来期以降のFIT/FIPの調達価格などの条件、CCS(CO2の回収・貯留)の長期ロードマップ、広域連系系統のマスタープラン、再エネの長期電源化・地域共生、原子力利用の基本的考え方、カーボンフットプリントレポート・ガイドライン等の取りまとめ案が提出された。

 また、2026年度分の容量市場のメインオークション、ベースロード市場、非化石価値取引市場といった各市場の約定結果も公表されている。

一方、一般送配電事業者とみなし小売電気事業者間での情報漏えい事案が判明し、報告徴収等が行われる等、電気事業のあり方についての議論も行われている状況である。

全体的に慌ただしく年度末を駆け抜けているようで、来年度も同様に進んでいくと見られている。

「複雑でわからない」「自社に関係するのか」などの意見多数

最近では、企業や自治体といったエネルギーを利用する立ち場である需要家も、カーボンニュートラルや脱炭素化、そのための省エネ実施や再エネ調達、燃料転換などに取り組むケースが増えている。その際、国の政策や制度に少しでも触れる機会があるのではないだろうか。

以前、法人企業の方々に制度動向の勉強会を行ったことがあったが、「内容が専門的で複雑すぎる」「制度の数が多くて追うことができない」「そもそもこの制度は自社の事業に関係するものなのか」といった懸念や不安の声を聞くことが多かった。

本業でエネルギー事業を行っている事業者ですら全体を網羅・把握し、かつ自社のビジネスのリスクとチャンスに生かせるかは見極めが非常に難しいのだから、需要家が理解するのは、もっと大変なことは言うまでもない。

また、カーボンニュートラルは今、始めることが重要でありつつ、その結果は中長期という時間軸で捉えればよいというものではあるが、一方で、足元のエネルギー価格高騰などによる電気料金の値上げについては、喫緊の課題として捉えないといけないといった、時間軸を踏まえた対応もしなければならない。

そう考えると、電気事業を始めとしたエネルギーや環境に関する政策・制度の動向は、その影響を直接受ける供給側だけでなく、最終的に電気料金や事業活動に反映されてくる需要家も、同じように大切だということが分かる。

電気料金に係る影響で制度を見てみると

 電気事業だけでも政策や制度が多く複雑で、かつ毎年のように変わっていく状況下で、エネルギー事業者は、自社のビジネスに関わる影響を調べ、分析し、対応を図っているが、利用する側の需要家にとっては、それがどのように影響するかは、よっぽど興味があるか、企業経営に大きなインパクトがあるといったことがないと、真剣に考える機会は少ないだろう。

 そのような疑問をもち、ここ最近、企業への講演や勉強会を行う際に、需要家目線の制度のあり方について話す機会も多くなってきた。今回は、その中で、企業における電気料金と制度の関係について簡単に取り上げたいと思う。

 ここでは、企業の電気料金を構成する要素に対して、電気事業に関する主な政策や制度が、どのように関わってくるのかを表してみた(資料1)。

 電気料金を構成する要素として、基本料金(kW単価)、電力量料金(kW時単価)、燃料費調整額、再エネ賦課金、そして環境価値(証書・クレジット)の4つに分類した。

 そして、それぞれの要素に対して、政策な制度が影響する範囲をプロットし、電気料金のコストアップ・ダウン、または状況に応じてアップにもダウンにもなり得るものに色分けしている(赤:コストアップ、青:コストダウン、橙:アップorダウン)。

 例えば、この4月から新たな制度に生まれ変わる託送料金のレベニューキャップ制度。既に電力取引監視等委員会の審査が終了し、申請されていた託送等供給約款が1月27日に認可された。認可された託送料金は、全てのエリア、全ての電圧帯において現行比で単価が値上げされている。特に、固定費の早期回収の必要性もあり、各社、基本料金の値上げ幅が大きくなっている。もちろん、電力量料金も一部を除いて値上げされている。これが需要家の電気料金に与える影響は、基本料金と電力量料金の値上げとなる。託送料金は小売電気料金の原価の一部であることから、託送料金の値上げ分は必然的に小売料金に反映されてくる。特に基本料金の値上げ幅が大きいということもあり、需要家にとっては、最大需要電力の最適化を図ることで、基本料金の値上げの影響を軽減できるケースも出てくる。同じ4月から施行される改正省エネ法でも電気需要の最適化が求められるが、DRを生かす場面が増えることが予想される。

 また、昨年来、原子力政策について国での議論が再燃し、基本的な方向性の整理が行われた。2月にはGX脱炭素電源法が閣議決定され、原子力に関する法改正も盛り込まれている。足下では次の夏以降に、追加で7基の再稼働を国が前面に立つことで対応するとの方向が出されたが、原子力発電の再稼働が進めば、その分、化石燃料の輸入、火力発電の稼働にも影響が少なからずあるため、燃調費の上昇の抑制に繋がることが期待される。

 また、最近、少しずつ採用が増えている自己託送制度。太陽光発電を活用したものが多いが、この制度で発電・利用した電力量については、燃料費調整や再エネ賦課金は課せられないため、足元の電気料金高騰下では、一定程度有用となる。一定程度と言っているのは、太陽光発電だけでは需要の全てを賄えないことから、不足分は依然として小売り電気事業者から通常と同じ電力小売が必要な点、資材価格高騰などで太陽光発電システムの価格が思ったほど下げ切れていないことと託送料金がこの4月から値上げることを踏まえてのことである。また、エネ庁の中間整理の中で、自己託送で受けた電気を需要地内の他の需要で使用するケースが存在の確認を踏まえ、その場合は小売り事業に該当するとの方向性が示されている。そうすると、再エネ賦課金は課せられることになる可能性があり、注意が必要である。

 今、紹介してきた施策はごく一部であるが、需要家が自分事として、このように電気料金を例に制度の影響を考えてみることも必要である。

 ただし、まだ専門的で難しいことが多いことから、エネルギー事業者やコンサルティング会社などが、自社のサービスと合わせて丁寧に教えていくことも求められるだろう。

【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

ガス火力に依存した英国 国民負担の増加続く

【ワールドワイド/経営】

近年気候変動対策を政策の主眼に据え経済成長を狙ってきた英国だが、2022年はウクライナ侵攻の影響を大きく受けた。

英国の電力部門では過去10年間、脱炭素化に向け、再エネ電源の導入と脱石炭が急速に進められ、代わりにガス火力への依存がさらに増した。これが、国際的なガス価格と英国の卸電力価格の高騰を直結させた。調整電源であるガス火力の発電コスト上昇が限界価格をつり上げたためである。

今冬の一番の懸念はガス不足に陥ることであった。幸い、年末年始の気候が温暖であったことから天然ガスの備蓄が安定し、エネルギー価格も多少下落した。しかし、1月後半には気温が低下し、電力需要抑制が呼びかけられた。他方、今冬までに閉鎖予定であった複数の石炭火力発電所も供給力不足時の切り札として延命されている。

英国では19年から規制機関が一般家庭の標準的な電気・ガス料金の単価に上限を設定している。卸電力・ガス価格の高騰に伴い、この上限は、直前の半年間と比較し22年4月に54%、10月にはそこからさらに80%上昇した。負担急増から国民を保護するために政府は22年10月から半年間、上限を一律で引き下げる介入措置を講じて給付金も支給した。それでも23年1月時点で電気・ガス料金の負担増加は前年比で実質2倍となり、消費者物価指数も約9%上昇を記録するなど国民生活を圧迫している。

政府介入による上限引き下げ措置では、もともとの上限との差額分を国がエネルギー小売り事業者に補填する。そのため国全体の負担は増加の一途にある。しかし、政府介入がなかった場合、23年1月の上限は前年同月比約3・5倍に達する。

料金上昇によりエネルギー貧困世帯の拡大が危惧される。英国では、電気料金を滞納しがちな需要家は、プリペイド式のメーターに半強制的に切り替えられる。消費者団体によると、昨年はプリペイド料金をチャージできずに電力供給を受けられなくなった軒数が過去10年間の累積数を上回った。

政府の対応は短期的には料金引き下げによる需要家の保護、その財源確保のための石油・ガス事業者や再エネ発電事業者に対する超過利潤税の適用となっている。

中長期的には陸上・洋上風力や太陽光のさらなる導入、原子力の新設、省エネの促進などによる化石燃料依存の低減がカギとなっている。また、卸電力市場の改革により発電種別や地域別の市場分割も検討されている。難局に対峙する英国の政策の動向が注目される。

(宮岡秀知/海外電力調査会・調査第一部)

環境都市構想研が設立10周年 「どうする日本」で記念講演会

【環境都市研究所】

元東京ガス副社長の草野成郎氏が代表を務めるエネルギー系シンクタンクの環境都市構想研究所が2月1日、設立10周年を祝う記念講演会を東京・銀座で開いた。日本総合研究所会長の寺島実郎氏ら5人の講師陣が世界情勢から日本経済、外交・安全保障問題などをテーマに講演。広瀬道明会長ら東京ガスの幹部・OBをはじめ、エネルギー業界を中心に全国から約130人の関係者が参加した。

会の冒頭、草野氏は次のようにあいさつ。「この10年を振り返ると、2008年にはリーマンショックがあり、11年には東日本大震災で大変な打撃を受けた。それ以降、さしたる回復もないままに、この数年は新型コロナに翻弄され、昨年はロシアによるウクライナ侵攻、そして安倍(晋三)元総理の暗殺。もはや停滞などというものではなく、劣化の一途をたどっている」「そうした中で、環境都市構想研究所が10年間やってこられたのは、活動の拠点を提供していただいている北海道石狩市や、関係者の方々のご支援・ご協力のたまもの。この10年を機に、支持をいただいた方々にどう報いるかを思い悩んだところ、沈滞した日本がここからはい上がる道は何なのかを議論する場を用意することではないかと考えた。本日は、この主旨に賛同する5人から『どうする日本!』の示唆をいただく」

会の冒頭にあいさつする草野代表

続いて来賓の広瀬氏があいさつし、「現在エネルギーは大変な状況になっている。円安とかウクライナとか(原因は)いろいろあるが、現実にこれだけ値上がっていることについては、お詫びするしかない」「(4月1日付で東京ガス社長に就く)笹山(晋一)さんには、草野さんのDNAが脈々と流れている。トヨタの豊田章男社長は(トップ交代の会見で)『クルマ屋を超えられない。それが私の限界』と言われたが、笹山さんにはガス屋を超えたガス屋になってほしい」などと述べた。

有識者・政治家が講演 日本の国力低下に危機感

記念講演の内容は次の通り。石川和男・社会保障経済研究所代表「日本が抱える諸課題と解決の方向」、小山堅・日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員「世界のエネルギー危機の本質と日本の課題」、斎藤健法相「経済不振・政治不信から脱却の道」、和田義明内閣府副大臣「日本の外交・安保戦略」、寺島氏「日本再生の道筋とシニア世代の役割」―。

5人の話に概ね共通していたのは、日本の国力低下が加速していることへの危機感だ。寺島氏は講演の中で、明治期(1868~1945年)、戦後期(45~2022年)、未来圏(22~2100年)と77年区切りで時代認識を整理し、未来圏の経済基盤として「レジリエンス力の強化―食と農、医療・防災、水、エネルギー」を提起した。

資源大国豪州の燃料高騰 安く国内供給できぬ理由は

【ワールドワイド/資源】

2022年6月、豪州東海岸3州(クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州)を襲った寒波に端を発した電力危機は、資源大国豪州が抱える国内エネルギー問題を露呈した。石炭火力発電所の早期閉鎖の動きと発電設備の老朽化と不具合による稼働率低下が主な原因。これを補う太陽光などの再生可能エネルギーは急速に拡大しているものの、電力需要に追い付いていないのが要因の一つに挙げられている。発電量のわずか8%を賄うガス火力発電も影響を受け、国際的なガス価格の上昇もあり、国内ガスの調達価格は高騰した。

国内でガスの供給が不足し、東海岸に三カ所あるLNG設備の所有者がLNGを輸出しようとする際、自社のガス田だけではガスが不足し、市場や第三者から調達しようとする場合に、関税法に基づいて政府が輸出規制を課すことができる豪州国内ガス安全保障メカニズム(ADGSM)という制度がある。長期契約を除く非契約LNGを海外スポット市場で販売しようとしても、国内向けに優先的に販売することになる。22年10月上旬、東海岸のLNG輸出業者は、23年に国内向けに十分な量のガスを供給することを政府と約し覚書を締結。これにより23年のADGSM発動は見送られた。

しかし、国内向け天然ガスの販売価格は海外市場価格と連動することから、ガスを使用する製造業と国民はガス価格に上限(プライスキャップ)を設けることを主張。労働党政権は22年12月9日に州政府と協議の上、プライスキャップを導入することを発表した。

ガス生産者はガス価格を1GJ当たり12豪ドル(mmBtu当たり8・74米ドル、豪ドル=0・69米ドルで換算)を超えて卸してはならなくなった。有効期間は1年間であるが、23年の供給契約はほぼ締結されていることから、効果は限定的でこの有効期間は延長される公算が高い。

「規制内容が定義されておらず将来の不確実性が高いことから、プロジェクトにおける新規供給への投資や、複数年の供給契約を結ぶことが困難となっている」との指摘があり、ガス生産者は政府の介入が逆に国内供給を確保する業界の役割を難しくしていると批判。ガス生産者は価格が現在より高かった数カ月前に供給契約を結んでいるため、卸売価格が下がってもすぐにエンドユーザー向けの価格を下げることができず、小規模製造業は、政府は行動規範を策定したものの発効するまでは高額な料金を支払い続けるとみられる。

(加藤 望/独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

三浦氏の「再エネ利権」疑惑 一歩踏み込んだ東京の報道

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

再生可能エネルギーは持続可能か。心配になるニュースだ。

東京1月21日「三浦瑠麗氏夫が代表、コンサル会社を捜索、東京地検」は、「再生可能エネルギーに関する投資やコンサルタントを手がける東京都千代田区の会社の代表が詐欺容疑で告訴され、東京地検特捜部がこの会社を家宅捜索していたことが、関係者への取材で分かった。代表は国際政治学者の三浦瑠麗氏の夫」と伝える。

何が起きたか。「捜索を受けたのは2014年に設立された『トライベイキャピタル』。同社を巡る訴訟の資料によると、東京都港区の投資会社側から19年に10億円の出資を受け、太陽光発電事業を共同で手がけたが、想定通りに進まなかった」とある。

問題は結末部分だ。「三浦氏は自身が代表のシンクタンク『山猫総合研究所』のホームページで『夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ない』とのコメントを発表した。その上で『捜査に全面的に協力する』としている」。三浦氏はこれまで、再エネや太陽光発電についてテレビやネットで頻繁に発信してきた。「知り得ない」には首をひねる。

さっそくネットに流れたのが2018年3月の発言だ。「再エネの可能性と課題」をテーマにしたテレビの討論番組で、太陽光発電、特に大規模なメガソーラー発電が議論になった際、「うちは事業者ですから、現場を見ているので、いくらかかるかも、何にかかってるかも分かってるんです」と語っている。

発言のタイミングも理解に苦しむ。太陽光発電の発電単価は原子力発電より安いとの他の出演者の主張に、評論家の池田信夫氏が「なら補助金なしで自由競争すればいい」と指摘したところ、三浦氏が割って入った。言うまでもなく、この「補助金」とは「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の賦課金」を指す。三浦氏の発言は「補助金がなくなると困る」との意味だろうか。

東京1月24日「三浦瑠麗氏、『夫の会社と無関係』なの?、『成長戦略会議』発言、利益相反の指摘も」は一歩踏み込む。「(三浦氏は)20年に菅義偉前首相が設置した『成長戦略会議』のメンバーで、自前の資料を用意し、複数回にわたり太陽光発電を推進する発言をしてきた」と指摘し、「無関係を強調する割には、太陽光発電推進に関心があるように見える」と皮肉る。

記事にある「自前の資料」も事業者側に立つ。20年12月の第6回会議の提出資料には、太陽光発電事業に関して政府による「地域社会との共生に関するモデル条例の提示」を求める項目がある。各地のメガソーラー反対運動を指すのか、現状は「事業者が困惑する事態」との記述がある。

再エネを支援するFITに関しては、電力料金高騰もあり、不満が広がっている。特に、山や森を切り開いて建設されるメガソーラーは自然破壊が懸念され、日本のFIT制度の提唱者である飯田哲也氏でさえ、1月31日のネット番組「videonewscom」で「(日本のFIT制度は)世界で唯一、最大の失敗」と批判している。

見直しが必要だが、政治への働きかけなどに取り組んできた「全国再エネ問題連絡会」の山口雅之共同代表は、「再エネ利権が深く広く政治の世界で与野党とも広がっている」と、22年12月のネット配信番組で懸念する。

利権は悪だ。家宅捜索の続報で政府を批判した東京新聞のさらなる取材・報道が期待される。

いかわ・ようじろう  デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。

【コラム/3月14日】ドイツの陸上風力法

矢島正之/電力中央研究所名誉研究アドバイザー

国内外でカーボンニュートラルの実現のために、再生可能エネルギーの拡大が急がれている。しかし、再生可能エネルギー、とりわけ陸上風力の大規模な増大は、景観への影響や騒音問題から地域住民の抵抗に会い、順調には進展していない場合が多い。

ドイツでは、陸上風力発電設備と住宅地の最低離隔距離を定めるルール(1000-Meter-Regelung)が存在しており、最低離隔距離を1000メートルと定めることで、設置に対する住民の抵抗を減じようとしている。しかし、この規定に対しては、風力発電の設置可能な土地が大きく減少するとの批判があった(この規定の適用により、風力発電の建設可能な土地は半減するとされる)。

さらに、州は独自のルールを制定している。バイエルン州では、10-Hルールという独自のルールが存在している。これは、風力発電所と最も近い住宅地との最低離隔距離が、風力発電の高さの10倍でなくてはならないというものであり、それは、通常2,000メートルとなる。住宅地とはいっても数件でも住宅地となり、バイエルン州では、風力発電所を設置することは非常に難しかった。

このような事情もあり、連邦政府は、2022年に「陸上風力法」を成立させ、2030年における風力発電の導入目標達成のため、ドイツ全土の2%を陸上風力発電の設置が可能な区画として指定することになった。このため、州ごとに設置可能な「区画の貢献値」を定め、2027年末と2032年末における達成を州に義務付けている。同法では、この法的に定められた面積目標を達成できない場合は、州で定められる最低離隔距離のルールは適用されないと規定されている。バイエルン州は、70,541km²の面積を有するドイツ最大の州であるが、5年後には州面積の1.1%、10年後にはその1.8%を風力発電の優先地域に指定しなければならない。

バイエルン州は、リヒテンシュタイン、オーストリア、チェコ共和国と国境を接するアルプス山脈の麓にあるドイツ南東部の州である。州都のミュンヘンは、毎年10月に開催されるオクトーバーフェストと呼ばれるビール祭り、美術館、華やかなニンフェンブルク宮殿などで知られ、カラフルで美しい街並みは人々を魅了する。また、ドイツ観光街道の一つであるロマンチック街道は、北西部のヴュルツブルクからのどかな村や中世の町を通って、ドイツ南部国境近くのアルプスの麓まで続く。街道の南の終着点のフュッセン市の南5kmにある優雅なノイシュバンシュタイン城はわが国でも有名である。筆者も何回かこの城を訪問したが、周辺の美しい緑の牧草地や咲き誇る野花などバイエルン州の自然の美しさは、筆舌に尽くしがたい。このような観光資源を有するバイエルン州の多くの住民は、当然のこととして、風力発電が数多く建設されることには反対である。因みに、筆者も、この観光地に風車が立ち並ぶ風景は想像したくない。

しかし、「陸上風力法」では、この法的に定められた面積目標を達成できない場合は、州で定められる最低離隔距離のルールは適用されないとしている。このため、バイエルン州の建設大臣クリスティアン・ベルンライターは、「『陸上風力法』により、風力発電は住宅の数百メートル先にも建設されることになり、人々の保護より風力発電所を優先している」として批判している。  ドイツは、再生可能エネルギー法2023で、2030年までに、再生可能エネルギー発電の総電力消費量に占める割合を少なくとも80%にする目標を設定しているが、そのためには、太陽光発電と風力発電の容量を倍増させる必要がある。太陽光発電、とりわけルーフトップ太陽光発電の設置は、これからも順調に進むだろうが、風力発電は住民の反対が多く、現状では大幅な拡大は難しい。そのため、同国は、風力発電の拡大のために、強権的な手段を用いざるをえなくなったようだ。そのための大義名分が、「再生可能エネルギーは、最も重要な公共の利益」(再生可能エネルギー法第2条)なのだ。このような再エネ至上主義的思考は、良い意味でも、悪い意味でもさすがにドイツ的と言わざるを得ない。

カーボンニュートラルに貢献できるか 原子力再生に二つの視点

【オピニオン】藤田玲子/日本原子力学会福島特別プロジェクト代表

 岸田文雄首相が原子力政策の転換を明確にし、再稼働の推進と老朽原子炉の廃炉の後のリプレース(建て替え)にも言及した。原子力を推進するべきと考えていた人たちにとっては朗報である。

しかしながら、東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故を教訓にせずに原子力を進めては国民の多くの賛同を得ることは難しい。ではどうしたらよいか。大きく二つの視点がある。

一つは2050年のカーボンニュートラル(CN)に向けて原子力のビジョンを明確にすることである。1F事故の後、原子炉の安全性が重要であることが再認識され、安全性の議論は活発である。一方、原子力の根本的な問題である廃棄物に関しては討議されているとは言い難い。安全性だけでなく、ぜひ廃棄物も含めたビジョンを策定するべきである。

二つ目は原子力政策を密室で進めないことである。第6次エネルギー基本計画にも述べられているように双方向コミュニケーションによって、さまざまなステークホルダーを入れて広く議論しながら政策を決めていくことが重要である。ややもすると、声の大きいステークホルダーの意見が十分な討議をせずにまかり通っていくことが多い。これでは国民の方々に対し原子力に賛同してほしいと言っても納得していただけない。

また、政策を決定していく過程はなかなか公開されない。例えば1F事故後は廃炉の跡地のリプレースに対し、電力会社だけなく地元の意見を取り入れて原子炉の炉型を決めていく必要がある。

福島県の双葉町と大熊町にまたがって建設中の除去土壌を保管する中間貯蔵施設を見学されたことがあるだろうか。原子力が必要と考えているわれわれでも中間貯蔵施設を見ると、改めて1F事故の大きさに打ちのめされる。大型原子炉の集中立地でなければ1F事故のように大きな事故にはならなかった可能性もある。現状がこうであるからと言って、その課題に対し技術的なデータに基づき多方面から検討や議論をせずに、一義的に決めてしまうことは誤った決断をする可能性が高い。

原子力は基礎研究から社会実装までに長い時間がかかることから、容易に政策変更ができない。それ故、将来を見据えて議論を尽くし、政策を公開の場で広く意見を入れながら決めることが重要である。また候補は一つではなく、必ず二つ以上の候補を選び、並行して技術開発を進める必要がある。1F事故のような天災やウクライナのような戦災など、どんな外的要因が入ってくるかは予測できないこともあり、代替できる候補についても技術開発する。これはリスクに対する備えとしてわが国の研究開発にとって極めて重要である。

CNに貢献できる原子力のビジョンを策定すること、政策は密室ではなく、透明性を持って策定することが原子力再生のキーとなる。政策の決定は技術的データに基づき、論理的な討議に基づき進めていただくことを切望する。

ふじた・れいこ 東京工業大学大学院修了(理学博士)。東芝電力システム社首席技監を経て内閣府ImPACTプログラム・マネージャー。日本原子力学会会長などを歴任。

【インフォメーション】エネルギー企業の最新動向(2023年3月号)

 【ダイハツディーゼル・日本ガス協会ほか/2000kW級大型ガスエンジの発電効率が48%へ】

ダイハツディーゼル、日本ガス協会などが取り組んでいた「コージェネ用革新的高効率ガスエンジンの技術開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構から優良評価を受け、2月に表彰式が行われた。2000~3000kWクラスのガスエンジンに対して発電効率の向上に取り組んでおり、ガスエンジンの副室機構内のシミュレーション解析を高度化し、エンジン内燃焼の相似性に関する知見を得た。従来比で効率を2.8ポイント以上と大幅に向上し、フル運転時には発電効率48%となる。ダイハツは耐久試験を続けながら、2025年度ごろから国内での受注活動を行う。ダイハツでは「1㎥ガス単価 100円、年間3000時間運転とすると、1000万円の削減効果がある」としている。

 【大阪ガス・JR九州/回生電力貯蔵装置を活用しDRサービスを実施へ】

DaigasエナジーとJR九州は、デマンドレスポンス(DR)サービスに関する契約を締結した。JR九州筑肥線唐津変電所に併設された回生電力貯蔵装置を活用した調整力公募にアグリゲーターとして参加する。この装置は、電車が減速する際に発生する回生電力を貯蔵し、電車が加速する際の電力として有効利用するため充放電する。これまで大阪ガスとJR九州は、同線の駅舎にDaigasグループが保有する発電所由来の環境価値が付与された再エネ電力を供給し、環境価値の地産地消を実現。今回、JR九州が保有している設備・施設などの有効活用と沿線の価値向上に向けた協業の検討を進めていた。貯蔵電力を電力需給ひっ迫時に放電してDRを行い、電力需給の安定化に貢献する。

【北海道電力/ZEB化を提案した外食店が初の認証を取得】

北海道電力がZEB化を提案した、トリドールホールディングスの讃岐うどん専門店「丸亀製麺 鈴鹿店」が2022年12月に国内の外食企業で初の「ZEB」認証を取得し、23年1月にグランドオープンを迎えた。高性能な断熱材や窓、電気式ヒートポンプや全熱交換器による空調・換気システム、制御機能付LED照明などの採用により、徹底的に省エネ化。屋根やカーポートなどに設置した太陽光パネルで消費を上回るエネルギーを創出し、一次エネルギー消費削減率106%を達成している。今回取得したZEBの認証は、4段階評価のうち削減率100%以上を求められる最高評価だ。同社はエネルギー利用のノウハウや知見を生かして、幅広い業種の脱炭素をサポートしていく方針だ。

【IHI/LNG貯蔵設備の燃料NH3転用を検討】

IHIはガス火力発電所近くに整備されているLNGの受け入れ・貯蔵設備を、燃料アンモニア(NH3)用に転用化する検討を始めた。腐食に関する知見や材料に関する実験技術を利用し、最小限の改造で転用が可能になるよう検討。2020年代後半の社会実装を目指す。既存設備の転用で大幅なコストダウンや土地の有効活用につながる。世界最大級の大型LNG貯蔵タンクの建造実績や、これらの技術を生かし、大型NH3受け入れ基地の総合的な開発を進めている。

【東京ガス/製造工程で水素利用 アルミ形材を熱処理】

東京ガスはこのほど、LIXILと共同で、LIXILの国内工場の製造設備で水素を利用したアルミ形材の熱処理の実証を行ったと発表した。アルミ形材の実際の製造設備での水素を利用した検証は世界初で、製品品質に問題がないことも確認できた。両社は、製造工程から発生する副生水素の回収・利用についても検証を進めている。アルマイト処理工程での検証試験では、発生する水素を90%以上の効率で回収することに成功した。東京ガスは、経済性の向上などに取り組み、回収した水素の利用も含めて検証を進めていく構えだ。

【中部電力ほか/福山でバイオ発電着工 25年5月の運開目指す】

中部電力が製造業などの6社と共同で出資する福山バイオマス発電所の建設が開始された。共同で出資するのは、稲畑産業、太平電業、東京産業、Solariant Capital、日立造船、愛知海運だ。同発電所は、広島県福山市に位置する木質バイオマス専焼の発電所。その発電出力は5万2700kW。年間発電電力量は約3.8億kW時を想定しており、これは一般家庭約12万世帯分に相当する。運転開始は2025年5月の予定だ。中部電力と6社は、地域と協力しながら、安全を最優先に工事を進めていく方針だ。

【大林組・大林道路/地熱由来の水素をアスファルトプラントで混焼】

大林組は、大分県九重町で地熱発電の電力を利用して製造したグリーン水素を、大林道路社が佐賀県で実証するアスファルトプラントの水素混焼バーナーに供給する。道路舗装に使用するアスファルト混合物は、製造過程で燃焼バーナーを使い骨材乾燥や加熱を行うため、このプロセスで多くのCO2を排出する。使用している都市ガスなどの燃料に水素を混焼することで、CO2排出量の削減を目指す。大林グループは2030年までの温室効果ガス排出削減目標のうち、事業活動からの排出を含むScope1+2で19年度比46.2%削減を掲げている。目標達成に向け建設現場での軽油代替燃料の導入だけでなく、イノベーションを活用した次世代燃料への転換に取り組んでいる。

【日本ガイシ・オムロン/自己託送用蓄電池が運用開始】

日本ガイシは、オムロンフィールドエンジニアリング(OFE)から受注した、再エネ電気の自己託送を目的とした蓄電池の運用を始めたと発表した。京都府宮津市内にある太陽光発電所内に設置し、遠隔地となるオムロンの京阪奈イノベーションセンタ(京都府木津川市)に一般送配電事業者のネットワークを介して送る。OFEは、蓄電池の大容量を生かし、災害時の自治体施設の非常用電源としての活用や、容量市場や需給調整市場への参入も検討している。

【ブレインジェネシス/インボイスセミナー開催 LPガス事業者を支援】

ブレインジェネシスは1月、「LPガス事業者向けインボイス(的確請求書)セミナー」をオンラインで開催し、約180人が視聴した。LPガス事業におけるインボイス対応指針や、同社のシステムにおけるインボイス対応の基本方針について、説明や解説を行った。同社のシステムはインボイスを発行、保存、検索、出力するなどの機能を備えている。

【ENEOS・関西電力/大規模メガソーラー 兵庫県赤穂郡で完成】

ENEOSが関西電力と共同出資した播州メガソーラー発電所(兵庫県)が1月に完成した。正式名称はパシフィコ・エナジー播州メガソーラー発電所。発電容量約77MW、敷地面積約85万㎡の大型発電所で、昨年11月から試運転を開始。同社の出資案件としては2番目に大きい発電所となる。同社は再エネを推進し、脱炭素社会実現に貢献する構えだ。

【九州電力ほか/ドローンで海上飛行 災害時物資輸送の実証】

九州電力はこのほど、宮崎県延岡市の離島地域で、モバイル通信で目視外の自律飛行を実現するスマートドローンを活用し、災害時を想定した日用品や物資を海上飛行で輸送する実証を行った。この実証は、同社とKDDIスマートドローンが共同企業体として、宮崎県から受託し、実施したもの。離島では、定期航路便の物資輸送が行われているが、災害発生に伴い汽船が運航休止した際は、物資の海上輸送が困難となる。同社は地域住民の日常生活の持続性を高めるためにも、ドローン物流の社会実装を目指していく。