【朝日 健太郎 自民党参議院議員】脱炭素は成長の源泉


あさひ・けんたろう 1975年熊本県生まれ。バレーボール選手として、大学時代から全日本代表に選出。サントリーではVリーグ3連覇。ビーチバレー転向後、2008年の北京五輪で日本男子として初勝利を挙げた。16年の参議院議員選挙で初当選。現在2期目。

199㎝の長身を生かし、バレーボールの日本代表選手として活躍した。

国土交通、環境大臣政務官を経験し、国土強靭化と脱炭素に力を入れたいと意気込む。

熊本市生まれ。小学6年生で身長175㎝。だが大きな体ゆえに体を上手く使えず、運動は苦手だった。

中学校でバレーボール部に所属。決して強いチームではなかったが、それが良かったと振り返る。「全国制覇など高い目標に向かってハードな練習を詰め込むことで、競技が嫌いになる人もいる。私の場合はバレーボールを楽しむことができた」

高校進学では悩みに悩んだ。勉強も嫌いではなく、受験勉強を頑張っていた一方で、全国屈指の強豪、鎮西高校からスカウトを受けていたからだ。最後まで迷ったが、「これからの競争を考えた時に、勉強とバレーボールなら分母は後者の方が少ない。バレーであれば勉強よりも高いレベルに進めるかもしれない」と自分を納得させて鎮西高校に進学した。3年次にはレギュラーとして、春高バレーとインターハイで準優勝。全日本代表にも選ばれた。

高校卒業後は法政大学に進学。部活だけでなく、学生選抜やさまざまな年代の日本代表選手として世界を飛び回った。大学を卒業した後はサントリーに入社。サントリーサンバーズではⅤリーグ3連覇に貢献した。日本代表でも中心選手となったが、心身は疲弊していた。「とにかくバレー漬けの毎日で、今自分が何のユニフォームを着ているか分からないくらい、感覚がまひしていた。当時はスポーツ選手のメンタルヘルスに対するサポートも手薄だった」

そして選手として絶頂期にあった27歳の春、スポーツ界を驚かせる衝撃の決断を下す。室内バレーボールからの引退─。周囲には「体育館でオリンピックに出られなかったからビーチで出たい」と伝えたが、モチベーションを維持できなくなった自分がいた。

〝脱サラ〟して飛び込んだビーチバレーの世界。室内バレーのトップ選手でも、最初の1年間はビーチバレー選手に手も足も出なかった。砂浜が舞台となる同種目では、室内競技よりも足腰の強さやスタミナが重要だと思われがちだ。しかし、実際は強風下でのボールコントロールなど細かな技術が求められる。体格を生かしたプレーを得意とする朝日氏が苦手とする分野だった。

それでも「また挫折してたまるか」との決意で練習を重ね、2008年の北京五輪への出場を決めた。日本男子として初勝利を挙げ、決勝ラウンドに進出。9位という成績を残した。続く12年のロンドン五輪出場を最後に現役を退いた。

ビーチバレー選手として活躍する一方で、海や砂浜の環境を考えるNPO活動などに携わり、当時から行政との関わりがあった。「アスリートは競技集中型か、ほかの活動をしながら競技力を高めていく二つのタイプに分かれる。自分は後者だった」

「EVバブル」は崩壊したのか CN見据えた自動車市場の行方


【多事争論】話題:EV失速

欧米を中心にEV販売台数の伸びが鈍化し、一時期の勢いを失っている。

この流れは続くのか。それとも次世代モビリティの主役の座は不変か。


〈 自動車産業の成長が最重要 各国は導入目標見直しにかじ 〉

視点A:古野 志健男/SOKENエグゼクティブフェロー

2023年から24年にかけて世界の自動車市場の潮流変化に関して、メディアではバッテリーEV(BEV)バブル崩壊の正否論争が盛んだ。筆者の見解は以下の通り。

BEVバブル崩壊は正しい。だからと言って、将来BEV市場が縮小するということではない。過剰な拡大傾向が鈍化し、BEVも含めてカーボンニュートラル(CN)に対応した全てのパワートレイン車両が市場ニーズに合わせて適正化していく。

非現実的な35年のCO2排出規制というマイルストーンに対して、欧州中心に世界の自動車メーカー(OEM)はBEVの利便性や充電インフラなど市場の受容性を充分に考慮せず、BEV開発と市場投入へ急激にかじを切り過ぎたのだ。各国政府も市場を直視せず、補助金と称してBEV普及をやみくもに推進し過ぎた。アーリーアダプター(新しい商品やサービスを早期に購入する消費者)にはBEVが行き渡ったが、ユーザニーズによっては課題も多く、その後の新車販売が急減速している。BEVに肩入れしすぎたOEMは、収益悪化や財政難に陥った。つまり、そのアンバランスがBEVバブル崩壊と言える。

一方、35年の各国の自動車CO2排出規制は変わっていない。欧州の「Fit for 55」パッケージでは、35年から販売する乗用車と小型商用車は、テールパイプでCO2排出ゼロでなければならない。中国では、35年から各OEMに対して新エネルギー車(NEV)50%以上を義務付けている。米カリフォルニア州でも35年までに新車販売を100%ゼロエミッション車にする法案(ACCⅡ)が成立している。米国環境保護庁(EPA)では、32年の自動車CO2排出量を26年比で56%削減する案のパブコメ中である。これらへの対応は現実的に厳しく、適正に見直される可能性がある。


経営不振に陥るフォルクスワーゲン BEV一辺倒ではなく全体最適へ

欧州委員会では24年12月1日、環境派のフォンデアライエン委員長の2期目がスタートした。新体制で同委員長が主導する「欧州自動車産業の将来に関する戦略的対話」では、欧州自動車産業の競争力を強化することが重要で、その上で脱炭素化の推進をしていくという。そのためには、BEVやハイブリッド車(HEV)の普及促進、再エネの利用拡大が焦点となる。つまり、欧州OEMの経営体力を向上する方向でのCN政策となるので、35年のFit for 55での乗用車CO2規制の見直しも有り得るのではないか。その背景には、BEVに大きくかじを切っていたフォルクスワーゲンが、大幅な収益悪化による経営不振で初めて自国の複数の工場閉鎖や人員削減の検討に入ったことがあると思われる。

中国ではBEV離れが顕著だ。BEV生産しか行わない国内OEMの倒産や淘汰が相次いでいる。BEV事業で収益を得ているのは、BYDくらいではないかとも言われている。未使用も含めたBEVの墓場が随所に存在するとの報道もある。経済も低迷していて、政府財政も厳しい。エンジン開発部門のあるBYDやジーリーは、エンジン熱効率46%台という超高効率な電動車専用エンジンの開発に投資し、それらを搭載した収益性が高いプラグインハイブリッド車(PHEV)をそれぞれ24年に市場投入した。中国でもやはり、まずはOEMの企業体質を強化しつつ、CNで収益性の高い電動車を推進する政策に移行していくのではないか。

米国では、25年1月20日に第二次トランプ政権が誕生する。EPAの32年CO2削減案が大幅に緩和される可能性が大きい。第一次トランプ政権でも、EPAはオバマ政権時代の自動車燃費基準の考え方を180度方針転換した経緯がある。またカリフォルニア州のACCⅡ規制について、米OEMの対応が困難を極める。ゼネラルモーターズ(GM)のメアリー・バーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「35年に全車をZEVにするのは困難な道のりで、最終的には顧客に従う」と述べている。フォードは、BEV事業の大幅赤字で製品の投入計画の中止や延期を決定し、今後はエンジン車も含めて全方位戦略へ方向転換すると宣言した。州政府としても見直しを余儀なくされるだろう。

いずれにせよ、CNへの取り組みは世界の自動車産業の持続可能な成長がベースにある。CNを追い求めて産業が崩壊すれば元も子もない。BEV一辺倒ではなく、各種電動車、CN燃料対応エンジン車、CO2回収や植林などのカーボンクレジット活用など、ほかのセクターとともに全体最適で対応していくしかないのだ。

ふるの・しげお 1982年豊橋技術科学大学電気電子工学課程修了、トヨタ自動車入社。エンジン先行開発部部長など歴任。2012年現SOKEN転籍後、専務取締役を経て、20年から現職。

【政策・制度のそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年1月号)


トリガー条項の問題点/原発再稼働時の地元同意

Q 今、話題のトリガー条項には、どのような制度上の問題があるのでしょうか。

A トリガー条項は、ガソリン価格の高騰から国民生活を守るために設定された緊急避難的な政策です。トリガー条項は小売物価統計の全国平均価格が1ℓ当たり160円を3カ月連続で超えた場合に、特例規定(暫定税率)を停止し、130円を3カ月連続で下回った時に解除するものです。しかし2011年4月に東日本大震災の復興財源確保のための特例法によって凍結されて以降、発動されたことはありません。 

トリガーには対象油種がガソリンと軽油に限られ、灯油、重油、ジェット燃料などが対象外であること、地方揮発油税分の減収(1㎘当たり5200円)による財源問題などがあります。

この制度の最大の問題は発動価格を固定していることです。例えば消費税一つとってみても160円が設定された時は5%でしたが、現在では10%になっています。エネルギー価格や物価の上昇の中で、事実上基準は押し下げられています。

もしトリガーをスタンバイ政策として機能させようとするならば発動価格は物価にスライドさせるなど、いつでも発動できる仕組みを作る必要があります。しかも小売価格はガソリンスタンドで最も高く売られている価格(フリー価格)が基準となっており、競争による効果を組み込んでいません。エネルギー価格の高騰対策を減税や補助金にのみ頼っていることは不自然で、取引慣行や価格表示を含めた公正な競争を前提とする仕組みに変えていく必要があります。

トリガーにはさまざまな議論がありますが、ガソリン税にさらに消費税をかける二重課税を正当化する人はいません。まずここから制度設計を見直していくべきと考えています。

回答者:小嶌正稔 /桃山学院大学経営学部教授


Q 原子力発電所を再稼働する場合、地元の同意は必要とされるのでしょうか。

A 原子力事業者が原子力発電所を再稼働させるか否かを判断するに当たっては、安全性の確保について、原子力規制委員会によって原子炉等規制法に定める基準に適合すると認められることを要するとされていますが、法令上、それ以外に国の判断、または意思決定は要件とされるものではありません。

一方で、従前から、立地自治体(道県および市町村)は住民の安全を確保するため、トラブル時の通報連絡体制の確立などを定めた「原子力安全協定」(正式名称や一部の内容は自治体によって相違があります)を事業者と締結しています。この協定では、「施設変更時の事前協議と了解」条項を設けているなど、再稼働のために規制基準に適合するように施設の変更工事を行った事業者は、立地自治体に対し、事前に協議ないし了解(同意)を得ることが、契約上の義務となっています。

なお、わが国で初めて締結された「原子力安全協定」は、1969年に福島県と東京電力との間で結ばれたものです。それ以降、他の立地自治体でも原子力事業者と同協定を結ぶことが慣例となりました。現在では、全ての立地自治体が締結しています。

また、福島第一原発事故後は、緊急防護措置を準備する区域(UPZ)などの防災対象範囲の拡大もあり、立地自治体以外の周辺自治体も、事業者と協定を結ぶ例が増えています。ただし、その協定の内容は、「事前協議・了解」の項目が無い場合が多いのが実状ですが、地域によっては、「事前協議・了解」を協定の内容に含める場合や、事業者が周辺自治体に再稼働について事前説明を行うなど事実上、事前了解を得ている場合もあります。

回答者:小林 勝/TMI総合法律事務所参与

【需要家】電気ガス補助政策の行方 省エネ努力の喪失に


【業界スクランブル/需要家】

ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格高騰対策のために2023年1月に始まった、政府の電力・ガス料金の軽減措置は24年5月に一度終了したが、その後物価高対策に目的を変えて再開し、延べ1年半以上にわたり続けられた。石破茂政権に代わった後もこの政策が継承されるのか注目されていたが、軽減措置の予算が盛り込まれた24年度の補正予算案が閣議決定され、年明けから再開される見通しだ。

光熱費の増大が家計に与える影響は低所得者ほど大きく、収入に対して光熱費の占める割合の高い状態、いわゆる「エネルギー貧困」への対策という側面では一定の意義があるかもしれない。一方で省エネの観点からみると、光熱費の割引を長期的に続けることによって、将来を見据えた積極的な省エネ対策や省エネ投資に取り組む機会や意欲が失われてしまうという副作用が現れてくるのではないか。

家計負担を減らすための割引が、かえって増エネや浪費を引き起こすといった事態は避けなければならない。例えば、自社サービスなどを通じて消費者に省エネの取り組みを促すなど、供給事業者が消費者に積極的に働きかけることを補助の要件に盛り込むということも今後検討の余地があるだろう。

物価や賃金の先行きが見通せない中、電気・ガス料金に対していつまで補助を続けるべきなのか。その行方には、今まさに議論されている今後のエネルギーミックスや排出削減目標も大きく左右するだろう。目標達成に向けて需要家にはどのような負担や努力が求められるのか、そのシナリオについて丁寧な説明を期待したい。(K)

【コラム/1月24日】元旦紙面を考える~研究・技術開発報道の今日


飯倉 穣/エコノミスト

1、ミレミアムの第2の四半世紀に

ミレミアムから四半世紀を経た。次の25年間の経済の方向は明確である。実現性はともかく2050年カーボンニュートラル(CN)経済(脱炭素経済)への移行である。第7次エネルギー基本計画の原案(24年12月27日)の意見募集があった。経過目標(2040年)は、一時エネ供給量4.2~4.5億KL程度、内訳はシナリオで異なるが、再エネ21~31%、原子力12%程度、水素2~5%、化石エネ68~52%(うち天然ガス18~26%、石油21~27%、石炭10~14%)である。二次エネの電力は、1兆800億kwh~1兆2000億kwh(電力化率55~60%)、内訳は再エネ51~45%、原子力20%前後、火力29~45%である。

経済成長をめざしながらエネルギー量の確保と脱炭素を目指す。再エネと原子力の達成可能性が気に掛る。成否は、経済水準維持に必要な化石代替エネ量を、再エネで目一杯の開発、原子力取組姿勢強調で確保出来るかに尽きる。それぞれ再エネや原子力等も研究技術開発頼りの前提がある。またその先2050年までのシナリオは、主張はあるが、明解でない。

加えて今後の長期的な経済動向も気に掛る。今後の経済展開の要点は、経済成長に寄与する、エネ確保技術開発と同時に全般の研究技術開発も重要である。その取組み状況や成果、今後の期待を元旦の報道に期待したが、関心が低いことに驚いた。日本経済に絡んで元旦報道から考える。


2、主要6紙元旦報道

現在はデジタル化情報時代で新聞の話に関心を持つ人はどの程度だろうか。新聞の発行部数は、衰えたとは言え26百万部ある(2000年53百万部)。依然報道情報の正確性、記録性や報道事項の軽重の捉え方で貴重である。匿名性なきおしゃべりではない。

元旦の主要6紙(朝日、産経、東京、日経、毎日、読売)を拝見した。各社の一面見出しは、能登半島関連4紙、安全保障関連1紙、戦後80年関連1紙、韓国政治関連2紙、米国・世界危機関連1紙等だった(一面に複数記事掲載あり)。政治と歴史の話題なら、例えば昭和100年で次の展開を考える。「百年の未来への歴史 デモクラシーと戦争」(朝日25年1月3日)連載である。戦争と為政、法の支配等を採り上げる。また同様に「デモクラシーズこれまでこれから戦後80年」(毎日同1日)特集もあった。歴史から学ぶことも大切だが、現在国際政治で起きている現象と今年の展望を描いたものは稀少だった。

その紙面を受けたのか、各社の元旦社説は、いずれも国際的な不確実さ、日本政治・民主主義の再構築、国内政治運営、国際協調等だった。見出しは以下の通りである。「不確実さ増す時代に 政治を凝視して強い社会を築く」(朝日)。「変革に挑み次世代に希望をつなごう」(日経)。「平和と民主主義を立て直す時 協調の理念を掲げ日本が先頭に」(読売)。「戦後80年 混迷する世界と日本「人道第一」の秩序構築を」(毎日)。「年のはじめに 未来と過去を守る日本に」(産経)。「あわてない、あわてない 年のはじめに考える」(東京)。中身は、論理的展開より思い優先の印象だった。

今年の関心事は、継続する国家間紛争に加え、トランプ政権誕生、各国政情流動化等に見られる国際政治・米国政治の不確実性が焦点となった。内外の政治情勢を意識した政治一色だった。これほど各紙社説の取り上げ内容が類似性を持つことは珍しい。

ポストFIT支援や出力抑制解消へ 蓄電池併設で再エネの高度化図る


【エネルギービジネスのリーダー達】河野淳平/グリーングロース代表取締役

電源開発、アグリゲーション、電力小売り、再エネ調達までをワンストップで支援する。

ビジネスプロデューサーとして発電所の価値最大化に取り組み、業界の課題を解決する。

かわの・じゅんぺい 北九州市出身。早稲田大学商学部を卒業後、レノバに入社。メガソーラー、バイオマス、洋上風力などのマルチ電源でプロジェクトマネージャーに従事。2021年に退職し、22年4月にグリーングロースを設立。

「再生可能エネルギー領域のビジネスプロデューサーを目指す」―。再エネの事業開発支援を展開するグリーングロースの河野淳平代表取締役は、自社の将来像をこう語る。2022年4月の設立以来、同社は電源開発、アグリゲーション、電力小売り、再エネ調達をワンストップで支援してきた。次のフェーズで目指すのは、自ら保有する再エネ電源と、発電事業者向けに導入支援した蓄電池によって地域のエネルギー需要を支える「次世代インフラ」の構築だ。


事業者目線で最適な提案 市場取引まで伴走支援

設立当初は、再エネと系統用蓄電地の開発コンサルティングを主力事業としていた。やがて、出力抑制の深刻化、FIT(固定価格買い取り)制度の買い取り期間終了など、次第に再エネ事業における課題が浮き彫りに。「開発だけでは脱炭素を志向する企業や地域の要望をカバーしきれない」(河野氏)と、自社で電力小売りライセンスを取得し、調達した再エネ電力を日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場で取引する事業に着手した。24年12月にはアグリゲーターライセンスを取得。需給調整市場への参画も可能となった。開発したプロジェクトは運営事業者に譲渡するか共同事業化し、同社が充放電運用や市場取引を担う仕組みを整えた。

23年以降は、FIT太陽光発電所の保有者に対し、FIP(市場連動価格買い取り)制度への移行とともに蓄電池設置を提案するプロジェクトマネジメントの代行に力を入れている。併設の提案、採算性の提示、社内意思決定のコンサルテーション、蓄電池の発注に加え、市場取引の運用まで伴走支援する。今まで築いた蓄電池メーカーとのパイプや事業企画のノウハウを生かし、事業者目線で最適な選択肢を提案できるのが強みだ。

社内コンサルにも近い立ち回りを可能とする理由の一つに、多様な強みを持つ人材の活躍がある。電力だけでなく他業界のコンサルティング経験者など社員のバックグラウンドは幅広い。エネルギーに関する豊富な知見と盤石なプロジェクトマネジメント力で体制を強化してきた。

これまで事業開発支援を行ってきたのは、多種多様な業種の企業20社ほど。「この半年ほどで、事業がようやく実を結んできた」と自信をのぞかせる。

グリーングロースが掲げるミッションは、「次世代のインフラをつくる」こと。そのためには、リソースの確保に加え、蓄電池の併設で「変動性再エネを調整可能な形にすることが重要だ」と語る。M&Aを通じた発電所の取得も含めて、30年までに100万kWの再エネを確保することを中間目標に据える。

直近では大手新電力会社から、共同買収などの提案も寄せられており、パートナーシップの締結を含めた検討が進む。事業開発支援に加え、発電所のオーナーとしての立ち位置を確立し、「総合商社のように事業投資、トレーディング、ソリューション販売など多様な機能を全て備えていきたい」と意気込む。

30年以降、「再エネがインフラの主役としてコスト競争力の最も高い電源になる」と見る河野氏は、その時期において「地域のエネルギー源として、地場産業への優先供給や、低コストのモビリティサービスの提供などで再エネの可能性を最大限引き出したい」と力説する。


温暖化のリアルに直面 業界の旗手として奔走

設立からわずか3年足らずで事業を急成長させた背景には、環境・エネルギー問題に対する河野氏の強い思いがある。その原点は、早稲田大学商学部在学時にさかのぼる。大学のサステナビリティプログラムに参加し、ミクロネシア連邦のヤップ島を訪れた際、地球温暖化の現実を目の当たりにした。

現地では、海面上昇の影響で橋が通行不能になるなど、「現地住民が直接関与していない問題でありながら、そのあおりを大きく受けているという不合理さに大きな衝撃を受けた」と振り返る。これを機に、エネルギー業界への接点も増やし、福島第一原子力発電所の事故後の視察にも赴いた。「エネルギーと環境をひも付け、社会を変えられる」との思いを深めていった。

大学卒業後は再エネ開発大手のレノバに入社。メガソーラー、バイオマス、洋上風力などのプロジェクトマネジメントと事業開発を担当した。佐賀県唐津市のバイオマス発電所(5万kW)の融資決定に向けた案件を推進するなど、大規模プロジェクトにも従事。開発全般の知見とスキルを磨くとともに、「地域共生」の視点を取り入れた事業運営のバランス感覚を培った。

「思い描く将来像は確かに壮大だが、われわれ世代で作り上げなければならない」と力強い。新たな時代を切り開く旗手として、これからも奔走していく。

【再エネ】太陽光のリサイクル義務化 コスト負担が課題


【業界スクランブル/再エネ】

環境省と経済産業省の合同ワーキンググループで、太陽光パネルのリサイクル義務化に向けた検討が佳境に入った。国内では自動車リサイクル法や家電リサイクル法、容器包装リサイクル法などが既に整備されている。

太陽光は2032年からFIT期間終了を迎え、30年代半ばから最大年間50万t程度までパネル排出量が増加すると想定されており、埋立処分量の抑制対策が必要であることは理解できる。廃棄パネル量の増大に対してリサイクルに必要な再資源化施設は年間処理能力7万t程度と大幅に不足。今後、必要な地域に適切な施設数を整備する必要がある。処理事業者の設備投資意欲を確保しつつ、リサイクルコストの低減という難しい課題への対処が求められている。ガラスを中心とした再資源化された素材が高く買い取られるような仕組みを構築し、サーキュラーエコノミーが実現できるよう、国がしっかり枠組みをプランニングしていくことを期待したい。

今回の政府案では、再資源化費用はパネル製造事業者や輸入事業者に負担を求めている。その費用は新規に販売されるパネルに上乗せされることに加え、交付金額の設定によってはパネル排出時に発電事業者に費用負担が発生し得る。将来のリサイクル技術の進化やコストをどう見込むのか、再資源化された素材の利用義務を課すのかで、最終的なコスト負担は大きく変わるため、再資源化費用算定は慎重を期す必要がある。義務化だけが法制化され、高額なリサイクル費用が再エネ拡大意欲のある事業者の負担となる、あるいは不法投棄や放置につながらないよう、丁寧な議論が必要と考える。(K)

これからも地域で事業を営むために 社を挙げてブルーカーボン実証へ


【事業者探訪】房州ガス

千葉・館山を中心にガス事業を約90年営む房州ガスは「地域と運命共同体」との意識が強い。

本業に加え、地場産業を支える海で課題となっている磯焼け解消の実証にも乗り出した。

千葉県館山市は房総半島の南端、東京中心部からは100km圏にある。西は館山湾、南は太平洋に面し、農水産業や観光業などが盛んだ。2024年秋に関連映画が公開された南総里見八犬伝ゆかりの地でもある。長年この地域のガス供給を支えているのが、設立91年目の房州ガスだ。現在は、24年3月に代表取締役に就任した本間充氏が経営のかじ取りを担う。

41歳の5代目経営者・本間氏

都市ガスは、館山駅周辺の2200~2300件、年間約45万㎥を供給する。実は同社の都市ガスは天然ガスではなく、プロパンガスと空気を混合して13A相当の熱量にした「PA13A」だ。平成の熱量変更の際、資金面や、ローリーが入れない狭い道が多いといった理由から選択した。プロパン原料は、県内のガス会社から卸供給を受ける。

この他、プロパンガスを同市の他エリア、南房総市、鴨川市、鋸南町の一部など3200件に、館山市内の団地とリゾートマンション2カ所の150~160件に簡易ガスを供給する。ガス事業の現状については、「供給件数は横ばいだが、1件当たりの販売量は減っている」(本間氏)と危機感をにじませる。

電力事業にも参入しており、大多喜ガスの電気を代理店販売する。「社員は30人ほどで、ガス事業の現場作業に人手を取られ、需給調整などを自前でやることは難しかった」ためだ。ちなみに大多喜ガスとのつながりでいうと、本間代表自身、同社での勤務経験があるという。


地場産業の課題解決へ 藻場の再生目指して

「これまでも館山で事業を営み、これからも地域とは運命共同体にある。地域に元気がなければ、当社の商売は立ち行かない」と強調。これまでは策定してこなかったが、25年度に経営ビジョンをまとめたい考えだ。全国的な課題でもある少子高齢化を踏まえ、特に高齢者が増えていくことを前提にした新たなサービスの検討に意欲を見せる。

加えて、地域特有の課題が「磯焼け」だ。海藻が著しく衰退・消失して「貧植生状態」となる現象のこと。諸説あるが、気候変動に伴う海水温の上昇や、それに伴い海藻が育つ時期に海藻を食べる魚の活動の活発化、といった原因が考えられる。磯焼けが発生すると、藻場の回復に長い年月を要し、沿岸漁業に大きな影響をおよぼす。

藻場再生実証に関係者の期待が高まる

ガス事業は炭化水素を売り、使用段階でCO2を出す。しかも同社の都市ガスは天然ガスよりCO2排出係数がやや高いPA13Aだ。本間氏は、社長就任前からCO2回収の取り組みを手掛けるべきだとの思いを抱いていた。特に、沿岸・海洋生態系が光合成でCO2を取り込み、炭素を海に蓄積する「ブルーカーボン」に興味を持ち、地域の状況を調べたところ、深刻な磯焼けが見られることを初めて知った。漁業関係者以外、地元でもあまり知られていない話だという。

そんな折、業界紙で釧路ガスの「昆布の森づくり」構想の記事を目にし、同社にコンタクト。構想に関わるジャパンブルーカーボンプロジェクト(JBP)とつながり、24年11月、館山で世界初となる藻場再生の実証がスタートした。

【火力】市場の不備棚上げ 相場操縦の指摘に疑義


【業界スクランブル/火力】

2024年11月、JERAが電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受けた。卸電力市場取引において、相場操縦に該当する事案があったとのことだが、この発表を受けてJERAを批判する報道が相次ぎ、中には「刑事処分に値する」といった内容のものまであった。電取委の発表資料を丹念に読んでいくと、勧告は多くの仮定を前提にしているように見えてくる。

問題視されたのは、系統制約などで出力制約が生じた際に、一部は供出可能であるにも関わらず電力を卸市場に出していなかったこと。21年11月の特定のコマにおいては、約定価格を1kW時当たり50円以上高騰させた可能性もあることが、相場操縦に該当すると指摘された。

資料によると、3年間で約54億kW時の売り入札ができ、そのうち約6億5000万kW時が約定した可能性があるとしている。つまり、「約88%が約定しない、イコール相場に影響しなかった」ということになる。価格高騰がほんの数コマだったことを考えると、こんな非効率な相場操縦をJERAが行うとは思えない。

実際、JERAは不適切な状況があったことは認めつつも意図的ではなかったと表明しているし、1年も前に当局の指導に従い不備のあったシステムの改修を行っている。

そもそも、火力設備の稼働には事前に人員配置や準備作業が必要であり、他の検討会では、事業者へのインセンティブについて、これから検討する必要があると整理されたところだ。

市場取引の不備を棚に上げたまま、改善勧告を受けた事業者には「お気の毒さま」と言うしかない。(N)

レッスン開始から半年経過 K―POPダンスにはまったワケ


【リレーコラム】近藤寛子/マトリクスK代表

東京・青山の女性専用スタジオで、K―POP専用のダンスレッスンを始めてから半年が経った。月に1曲を仕上げる「ユニットレッスン」に挑戦している。きっかけは、娘と一緒に見たオーディション番組「Produce 101」。

練習生たちの姿に魅了され、軽い気持ちで始めたものの、今では本格的なプログラムに取り組む日々を過ごしている。

レッスン初日、若い世代に混じり、自分が素人で場違いだと感じる瞬間があった。

ようやく振り付けを覚えたと思えば次でつまずき、挑戦の難しさと新鮮さを実感した。それでも、レッスンメンバーとともに経験を積みながら一歩ずつ前に進む過程は、貴重な体験だ。

これまで数多くのプレゼンを経験し、自分は「表現は得意だ」と思っていた。しかし、K―POPダンスを通じて初めて、言葉に頼らない「体一つで感情を伝える個人の表現」と、メンバー全員で一つの作品を完成させる「チームの表現」、この両方が求められることを知ることができた。


隙間時間でコツコツと

その一方で、ダンスを完璧に仕上げるためには自宅での努力も欠かせない。通勤途中には、振り付けを頭の中でシミュレーションし、家では愛犬とストレッチをしたり、歌詞と振り付けをエクセルにまとめて分析したり――。そんな毎日の積み重ねこそが、上達を信じて取り組む原動力となっている。

レッスンの度、メンバーがダンス動画を撮影し、K―POPアイドルの手本と比較する映像をつくりシェアしてくれる。

完成度にはまだまだ課題があるが、少しずつ形になっていく、この過程が私にとっての宝物といえる。

K―POPダンスで学んだことは、挑戦することの意義とその喜びだ。そして、この経験はエネルギー分野にも通じる学びを与えてくれた。

例えば、異なる専門性や立場を持つ人々が協力し合い、一つの目標に挑むプロセスは、イノベーションの実現を目指す現場と重なる。多様な専門家が連携してこそ、新たな成果が生まれるのだ。

さらに、挑戦には失敗や困難がつきものだが、それを乗り越えることで見えてくる新しい景色がある。K―POPダンスは、そうしたプロセスを通じて得られる達成感を改めて教えてくれる。

次の挑戦が待ち遠しい。とはいえ、まずは腹筋を鍛え直し、踊りの完成度をもう一歩上げたいと思う。

こんどう・ひろこ 内閣府「イノベーション政策強化推進のための有識者会議『核融合戦略』」委員、原子力規制委員会「原子炉安全専門審査会」委員、経済産業省「総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会」委員などを務める。

次回は、核融合科学研究所の吉田善章所長です。

【原子力】需給シナリオ分析 原子力の増加を想定せず


【業界スクランブル/原子力】

第7次エネ基を議論中の基本政策分科会で、6機関がシナリオ分析の結果を提出した。2040年にCO2排出量を13年比73%減とすることを前提にコスト最小の配分を探るもので、変数は再エネ技術革新、水素・アンモニア普及、CCS活用である。いずれの機関も5割以上の再エネ拡大を必要とし、CO2限界削減費用、エネルギーコストは上昇せざるを得ないとしている。「73%減」だけが一人歩きし、コスト上昇の問題がマスコミ報道から消えてしまうことを懸念する。

分析では原子力の発電比率はおおむね20%に固定され、変数とされていない。新増設のファイナンスを支える制度導入にまだ年数を要すると考えると、暗たんたる気持ちになる。一方、地球環境産業技術研究機構(RITE)の参考資料に載る原子力ゼロシナリオでは、電力コストが数割上昇し、CO2限界削減費用は倍増するとしている。つまり逆に原子力を20%から増やせば、日本全体の電力コスト低減、国際市場での産業競争力の改善につながるのだ。女川、島根とBWR再稼働が加わり、原子力の比率増に伴うCO2排出量と電力コストの低減、供給危機回避が実績として表れ、国民の納得を得られることを期待する。

第7次エネ基策定における経済産業省の最大の挑戦は「原発依存度を可能な限り低減する」という文言を消せるかどうかにある。水面下で奮闘中だろうが、新たな政治情勢のもとでいかなる結果となるか、それは間もなく明らかになるはずだ。新設は廃炉と同一サイトでなくとも、同一会社の保有サイトであれば良いとするのが精一杯の前進なのだろうか。(H)

【シン・メディア放談】一般紙記者注目の2025年動向 政治・エネルギーニュースを大予想


〈エネルギー人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙

振り返ればさまざまなニュースがあった2024年。

続く25年を一般紙記者はどう見通すのか。

―2025年6月に新潟県の柏崎刈羽原子力発電所6号機に燃料装荷すると東京電力が発表。政府も対応を加速させている。

A紙 現地の記者に聞くと、24年2月頃から政府や県の動きが活発化し、詳細な報道が増えてきた。また、さまざまな世論調査で再稼働に賛成と反対が5分5分に近づいてきた。新潟日報の衆院選時の世論調査も興味深い。全体は反対46・5%、賛成36・2%だが、30代では賛成が46・1%となり、現役世代の方が賛成が多くなっている。

B紙 東京から見ると、花角英世知事の姿勢が明確でない。県議会も慎重姿勢で、東電や政府の焦りは感じるが、急速に物事が進むようには思えない。キーマンは知事かと思うが、衆院選の新潟小選挙区での自民候補全敗がどう影響するだろうか?

A紙 今、衆参で自民党議員は2人となり、しかも党の中枢にいる人はゼロ。花角氏は基本、自民のバックアップで選挙をやってきた。特に花角氏が官僚時代からパイプがあったのが引退した二階俊博氏。しかし状況が変わり、政府の意向が県に伝わりにくくなったと言えそうだ。しかも新潟は県議の力が強く、ベテラン中心に再稼働慎重派がいる。25年7月に任期満了となる参院選を控える中、花角氏が「県民の信を問う」方法はやはり知事選になるが、動きづらくなっていることは事実だ。

―26年6月任期満了となる次の知事選まで花角氏が判断を示さないのでは、との見方もある。

A紙 市町村長との非公開の懇談会で「県の判断はいつになるのか」との質問に対し、花角氏が「次の知事選より前には県民の意思が固まるのでは」と答えたという。つまりお尻が決まった感じだ。

ただ、私は25年春に一つの山場が来ると思っている。花角氏の指示の下、県民が判断するための議論が広範にわたり行われ、その結果が3月末に出そろう。となれば、何らかのアクションを迫られるのではないか。


いよいよ柏崎動くか 連立組み変えの行方は?

―24年も足早に過ぎ去った。印象に残ったニュースは?

B紙 女川2号機、島根2号機とBWR(沸騰水型炉)が動き出したこともあるが、一番大きかったのは敦賀2号機の基準不適合だ。また、六ヶ所再処理工場は27回目の完成延期が発表された。日本原子力発電と日本原燃、2社の在り方を真剣に議論してほしい。そして、脱炭素にブレーキをかける燃料油補助金を継続させ続けることも、いい加減にやめてほしい。

A紙 原子力を取り巻く変化は確実にあった。衆院選の公約を見ると、共産以外は再稼働に基本賛成。特に立民は野田佳彦氏が代表になったこともあり、既存原発の稼働は条件付きで容認した。そして、エネルギー基本計画では原発のリプレース方針に踏み込んだ。

C紙 メディアや市民団体のトーンも変わってきた。使用済み燃料の乾式貯蔵などに市民団体が意外と騒がなくなり、「原子力がなくても乗り切れた」報道も盛り上がらず。また、NDC(国別目標)を決める審議会で環境省側の委員のハチドリ電力社長が「欠席時に意見書を出そうとしたら止められた」と訴えたが、朝日でもかつてのようにキャンペーンを張らなかった。

B紙 25年は数十年ぶりの衆参同時選挙となるのかが焦点だ。各党連携の在り方を模索しており、立民と維新が選挙区を調整し始めたら面白いね。

C紙 少数与党ともなれば普通は多数派工作をする、あるいは石破茂首相は辞めているはずだが、森山裕幹事長は何も動いていない。いろいろなオプションがあるのに、本予算を人質に3月に政局が起きるのを待っているようにしか見えない。

―その他の注目点、あるいはニュースを大胆予想してほしい。

C紙 まず、予算がどのタイミングで通過するのか。立民の安住淳・予算委員長は今、優等生然としているが、今後暴れるのか。その後も自民をがたがたにするカードとして夫婦別姓がある。エネルギーとは無縁そうだが、閣議決定した新エネ基を動かす段階で、自民党に一悶着あると大変だ。

ズバリ予想するなら、参院選を見据えた連立組み替え。自・公・国、あるいは考えにくいが立・維主導で自民が割れるという展開もゼロではない。

A紙 大胆に予想すれば、柏崎6号機の再稼働方針が決まるのではないか。先に燃料装荷した7号機は10月に特重(特定重大事故等対処施設)の期限が来るため、東電は6月に燃料装荷予定の6号機優先に切り替えるように思える。また、先述のように議論疲れがある。花角氏はぶら下がりでも強硬な姿勢の時があり、やる時はやる人のようだ。さらに避難道に関する議論が市町村長を交え進んでおり、具体化していけば首長が「再稼働反対」とは言えないだろう。

B紙 いや、個人的には柏崎は国政に振り回され、苦しい状況が続くように思う。それより、北海道電力の泊3号機は審査がかなり前進した。また、東北は女川3号の審査をなぜ申請しないのかな。どうせ動かすなら新しい方がいい。そして先ほど指摘した原電、原燃のトップをいつまで東電が出し続けるのか―。最後に、エネ基でリプレースに踏み込んだけど、タイムリミットはもう過ぎていると思う。それでも電力会社がメリットを享受できる仕組みを作れるのか、政府の手腕が問われる。

―25年も喧々諤々のメディア放談をお届けできるよう、引き続きお付き合い願いたい。

【石油】ガソリン補助の段階的削減 混乱防止へ周知を


【業界スクランブル/石油】

石油元売り・販売業界は、難題に直面している。2024年11月決定の総合経済対策で12月19日と25年1月16日に約5円ずつ2段階の「ガソリン補助金」縮小が決まったことで、石油業界はサービスステーション(SS)などの小売価格への計10円前後の値上げが必要になる。一度に5円の2段階転嫁が可能か、消費者や需要家に受け入れられるかが、大きな問題だ。

業界全体で製品価格5円の価格転嫁は、月間収益約500億円に相当するから頭が痛い。対策には、補助金の段階的縮小と新年以降の延長がセットで明記されたが、報道では「燃料油価格激変緩和補助金」の延長だけが前面に出ており、縮小を報じる向きはごく少数。対策には2段階の補助率縮小は明記されたが、それが5円の値上がりに相当するとは書いていない。手取り増加と物価対策が目的の対策なので、物価上昇の話は書けなかったかも知れない。国民民主党にすれば値上げは「話が違う」ということになる。

補助金が縮小する直前の仮需(買い急ぎや駆け込み購入)も心配だ。石油商社や独立系特約店がタンクローリーを手配したとの噂も聞こえてくる。直前は発注が急増するだろうし、SSには給油待ちの行列ができるであろう。現場で混乱が起きないか不安だ。

補助金は、灯油や軽油、重油、ジェット燃料向けにも支給されている。このため暖房需要期の灯油、ハウス栽培や漁船で使う重油の値上げも憂慮される。トラックやバスなどの物流コストの上昇、航空運賃のサーチャージ値上げもありうる。国民は穏やかな新年を望んでいる。混乱防止には、製品価格値上げの事前周知が必要不可欠だ。(H)

【コラム/1月20日】仕掛けの24年から仕込みの25年へ


加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

2025年が明けて、はや3週間ほど経つが、国内のエネルギー業界は昨年末までの慌ただしさから一服して、落ち着きを見せている。
昨年末には、GX2040ビジョン、第七次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画と、令和の政策3本柱とも言える政策の原案が提示され、パブリックコメントが1月下旬まで行われている。

24年は、その他の制度設計も忙しなく行われてきたことは、このコラムでもお伝えしているが、今回は、昨年の振り返りと今年の展望を記していく。


24年の審議会はどのようなものだったか

著者は、毎月、経産省(資源エネルギー庁含む)と環境省を中心に審議会の動向を追っているが、24年の1年間の特徴を整理してみた。

ご存知のとおり、各審議会は、毎回、複数の議題の報告や決議が行われているが、それらを各月、電力のバリューチェーンとその他関連キーワードで分類してみた。全体的にバランスの取れた議論が展開されているが、カーボンニュートラルや脱炭素が、ある意味、デファクト的に織り込まれるようになっており、全体に占める割合も2割を超えている。

電力バリューチェーンでは、やはり再エネの話題が多く、それに紐付く系統増強や運用面が関わることから送配電分野の議論も活発である。


24年度第三四半期は取りまとめと足元の制度の並行運用の季節

直近の四半期である24年10〜12月は多くの取りまとめが行われたほか、足元の制度設計や例年通り、多くの入札が行われた。

第3四半期の政策・制度設計の状況を見ると、大きく4つのポイントに整理される。

まずは、今後の政策の柱に関する取りまとめ作業・議論が加速したこと。言わずもがな、上述の3つの政策・計画が取り纏められたことが挙げられる。他にも、付随して26年度から本格運用が始まる排出量取引制度の制度設計や同じく26年度から実行フェーズに入る地域脱炭素のあり方、政府実行計画、ペロブスカイト太陽電池に代表される次世代太陽電池の戦略、30年度半ばから後半にかけて排出ピークを迎えるとされる使用済み太陽光パネルのリサイクルのあり方等が整理された。

2つ目は、足下の制度設計・運用は着々と進展していることである。例えば、昨年の通常国会で成立・公布された水素社会推進法やCCS事業法の具体設計や、事業用のFIT・FIP太陽光発電を卒FIT・FIP後も長期に活用するための新たな認定制度、託送料金レベニューキャップ制度の第1次規制期間初年度の期中評価等が挙げられる。

転換期の世界の勢力図〈上〉ウクライナ・中東で新展開


【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

2024年は分断と統合が同時進行した。BRICSは拡大する一方、G20(20カ国・地域)あるいはグローバルサウス諸国が目指す方向は一つではない。エネルギー動向に関してはクリーン化の流れは変わらない中で、エネルギー価格は横ばいで推移した。その中で原油価格動向を見ると、OPECプラスは12月5日、閣僚級会合を開催し、日量220万バレルの自主減産に関し、減産幅の縮小開始を25年1月から4月へと延期することを決めた。

エネルギー資源の増産を唱える米国のトランプ次期大統領就任後の原油価格への影響を見定める構えだ。米国新政権は、エネルギー開発の規制撤廃と再生可能エネルギー向けの税額控除廃止を打ち出しており、燃料供給増は中国の景気減速を主因とする燃料需要の停滞と相まって石油価格を下落に導く恐れがある。他方、産油国であるイラン制裁の強化で供給を引き締める可能性も指摘され、トランプ政権の政策がエネルギー価格にどう影響するのかが読みづらい年明けとなった。

では、国際政治の主要な懸案であるウクライナと中東に対し、25年、国際社会はどう対応しようとするか。ウクライナに関しては、トランプ氏の再登場で、ロシアが侵攻を断念する可能性は基本的に遠のいた。日々の戦闘がなくなり、紛争凍結のシナリオはあり得るとしても、ウクライナが奪われた領土を取り戻すことはなくなった。未来志向で、ウクライナへの侵攻を許してしまった過ちを繰り返さない方策を考えることが重要である。ウクライナ国内に西側諸国の部隊を派遣し、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟構想を維持すれば、ロシアが再び攻撃することは防げる。換言すれば、こうした措置が採られない限り、紛争凍結の後、ロシアが再びウクライナを攻撃するのを抑止することはできない。

目を中東に転じると、中東地域の鎮静化のシナリオが進行している。ガザでは、鎮静化の兆しは既に現れている。イスラエルにはもはや攻撃する標的が多くは残存していない。多くの指導者を殺害し、トンネルを爆破し、ミサイルや兵器の保管場所を破壊した現在、イスラエルにとって大規模な軍事作戦は終了した。

ガザとは異なりレバノンについては、いまだそこまでには至っていないが、早晩同じ状況がもたらされる公算が大きい。イランは、イスラエルにとって大敵であり続けるが、両国は国境を接しておらず、エネルギー問題との接点でいえば、両国の軍事作戦の展開により、ペルシャ湾の原油航行に支障を来さない限り、重大な原油供給問題へのエスカレートは考えにくい。

注目がシリアに移るや否や12月8日、反政府軍の進攻開始後わずか12日でアサド政権が崩壊した。ダマスカスの制圧はシャーム解放機構(HTS)が主導したが、国内勢力の分布はモザイク状態である。新たな国造りには紆余曲折が予想され、注視する必要はあるものの、国際エネルギー供給の基本的構図は当面変わらない。

(須藤 繁/エネルギーアナリスト)