【特集2】初のアウトドア用COアラーム開発 家庭用ガス警報器の知見を生かす


【新コスモス電機】

コロナ禍を経てブームとなったキャンプでの一酸化炭素中毒による死亡事故が発生している。

新コスモス電機は家庭内にとどまらず、アウトドアでの安全にも貢献していく。

たき火は冬のキャンプの醍醐味だ。暖をとりながら、料理を楽しむこともできる。テント内を暖めるためにストーブを使用する人もいるだろう。こうした楽しい冬のアウトドアに潜む危険がある。それは一酸化炭素(CO)だ。

COは無色無臭で毒性が強い、危険なガスだ。吸い込むと頭痛やめまい、吐き気などの症状が現れ、最悪の場合は死に至る。近年、キャンプや車中泊中にCO中毒事故が発生し、死亡するケースもある。たき火やストーブなどの不完全燃焼で発生したCOが原因だ。

こうした状況を深刻に捉え、新コスモス電機はアウトドア用一酸化炭素アラーム「COALAN(コアラン)」を発売した。一酸化炭素の「CO」と警報の「ALARM」を掛け合わせて命名。同社初のアウトドア用製品だ。

付属のカラビナで吊り下げて使う


日本語音声での警報 使用者自身による点検も

開発の背景には、コロナ禍を経たキャンプ人口の増加がある。同社ではこれまでの家庭用ガス警報器の知見を生かしたアウトドア用COアラームの開発を検討していた。そうした中、顧客やキャンプで有名なユーチューバーなどからも要望が寄せられたという。

3年ほどの開発・試験の後、コアランは昨年12月12日に発売された。1万3000台の限定販売だ。販売は住設機器などを扱う専門商社の山善が手掛ける。山善を通じて、家電量販店やアウトドア用品店、ホームセンターなどに流通するほか、楽天市場や山善の直販サイト「山善ビズコム」などネットでの購入もできる。

楽天市場では発売前の段階でランキング入りし、発売日以降は山善がコアランを卸したストアが1位から3位までを独占。山善ビズコムにおいても、週間ランキングで1位を獲得するほどの人気ぶりだ。日本製のセンサーを搭載していることや、同社の家庭用ガス警報器メーカーとしての確かな実績が購入者からの反響につながっている。コアランには4つの特徴がある。①保護等級IP54 相当の防塵・防滴構造、②厳しい試験をクリアした耐衝撃・耐振動性、③日本語音声による警報、④使用者自身による機器点検――だ。

特に注目すべきは③と④だ。海外製のCO警報器はアラーム音のみで、何がどう危険なのか分かりにくいこともあるという。その点、コアランは日本語の警報を発し確実に危険を伝える。

またコアランには専用の点検用スポイトが付属している。カセットコンロなどからCOを採取し検知部に吹きかけることで、正しく反応するかを確認できる。これが④だ。この点検用スポイトには使用者を守る工夫が施されている。

COはわずかな量でも人体に影響を及ぼすため、とても危険だ。ゆえに万が一の事態にも備え、スポイトのパイプ部分にあえて穴をあけることで、濃度が高くならないよう設計されている。点検方法を分かりやすく説明する動画もあり、自分の命を守る機器を使用者自身が点検できる。

「ガス事故をなくしたい」という思いのもと、ガス警報器の開発・販売を手掛けてきた新コスモス電機。家庭内にとどまらないアウトドア向け製品で、ガス事故の犠牲者減少に貢献していく。

【特集2】電事法改正で用途が拡大 広がるスマメデータの利活用


【GDBL】

一般送配電事業者が国内8000万軒にも及ぶ全需要家を対象に導入を進めてきたスマートメーター。全国で約5000万軒の家庭向けを含め、ほぼ導入が終わりつつある。整備してきたこのインフラとそこから生み出されるデータを、電力使用量の計測以外で有効に活用できないか―。そんな思いの下、東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力送配電、NTTデータの4社が共同で出資し、2022年4月に設立したのがGDBL社だ。

前身のグリッドデータバンク・ラボ有限事業責任組合が行ってきた「スマメデータ活用」の本格展開に向けて立ち上げた株式会社でもある。

「スマメから読み取れるデータは計器ID(位置情報)や1日48コマで区分する30分間隔の電力使用量情報だ。スマメ導入以前は、月単位による総電力消費量しか把握できなかったが、30分値となったことで情報の精度が高まった」。同社の芦谷武彦データ活用事業部長はこう話す。

例えば世の中には、住民票を移さないまま生活するケースもある。住民基本台帳では把握できないことなど、スマメデータで経済活動をよりリアルな傾向として把握できる。

昼間の在宅傾向、通勤・通学から帰宅ピークの時間帯といった世帯活動、過去データと比較することで生活パターンの変化や異常を検知するなど、活用方策は多岐にわたる。これらは、統計データとしても活用できる。近年、社会問題となっている空き家対策にも有効だ。

異業種データと組み合わせることも可能だ

こうした展開は、電気事業法の改正により、電力事業用途以外にもデータを利用することが可能となったことが背景にある。需要家の同意を前提とし、国の認定を受けた一般社団法人電力データ管理協会がこれらデータの提供・利用を厳格に管理する。この仕組みの下で、電力データを需要家の許諾を得た第三者へ提供したり、統計加工されたデータを利用できるようになった。


自治体向けにデータ活用 脱炭素へ行動変容促す

同社では今、個人や世帯、あるいは自治体・法人などに向けて「ZeroCa」という脱炭素の活動を支援するサービスを打ち出している。スマメデータは電気の使い方や生活者の環境活動の可視化が可能になる。例えば節電要請を行った断面で、X地区とY地区では、そこに住む人たちの行動にどんな差が生じたか。比較することで住民の行動変容を促し、結果的に脱炭素につなげるといった利用が考えられる。

スマメデータの扱いは、まだ緒に就いたばかり。とりわけ家庭用の多様なサービスの創出や社会貢献に資する取り組みがこれから本格化していく。

【特集2】スマートリモコンで電力使用を最適化 家庭用エネマネで脱炭素社会目指す


【Nature】

自然との共生をテクノロジーでドライブする―。Natureが掲げる企業理念だ。スマホで家の外からエアコンなど電気機器の操作ができる「ネイチャーリモ」やスマホHEMS「ネイチャーリモE」の開発・販売を行う。これらを利用し、電力の需要をコントロールする機器制御型のDRにも対応ができるようになっている。2022年の夏には関西電力にDR支援サービスを行った。関電への支援サービスは、昨年からの冬のDRプロジェクトでも採用されている。

ネイチャーリモの使い方は簡単だ。家電のリモコンのボタンをネイチャーリモに向けて押すだけでいい。するとネイチャーリモがリモコンの代わりに赤外線で家電を操作する。赤外線方式の家電ならば、メーカーや型番・年式などに関係なく使用できる。

ネイチャーリモEは設置工事が不要

帰宅前に、エアコンを猛暑の時は冷房、厳寒期は暖房のスイッチを入れる―。家庭でのより快適な生活をもたらすものだ。


進化したネイチャーリモE 電気利用を最大限効率化

ネイチャーリモEは、家庭での電力使用の状況をスマホでリアルタイムに確認することが可能だ。またエコキュート、太陽光発電(PV)やEV、蓄電池などエネルギー機器と連携し、スマホからの操作や自動制御もでき、電気の利用を最大限効率化できる。

その使い方はさまざま。例えば、エコキュートで指定した時間帯にPVの余剰電力が設定値を超えたら、自動にたき増しし、逆に買電量が設定値をオーバーしたら自動的にたき増しを止める。また、EVや蓄電池の残量を確認し、余剰電力の様子を見て充放電が可能になる。

塩出晴海社長は、大手電力などと協力してDRを行うのは、「まだHEMS活用の初期段階」と話す。視野に入れているのは、電力システム改革の進展により誕生した容量市場、また低圧電源の参入の検討が始まった調整力市場への参加が可能となるようなエネルギーマネージメントのプラットフォーム構築だ。「家庭のエネルギーリソースをつなぎ、火力発電に代わりDRで柔軟な調整力を実現し、クリーンな電力への移行に貢献していきたい」と考えている。

【特集2】スマメ普及で一変する家庭用 サービス内容の進化に期待


大手電力が導入を進めてきたスマートメーターは家庭用をどう変えるのか。

神奈川工科大学の一色正男特命教授にスマメ導入の意義や今後の展望を聞いた。

【インタビュー】一色正男/神奈川工科大学 研究推進機構特命教授

―スマートメーター(スマメ)の導入が進んでいる。

一色 旧一般電気事業者が頑張ってきた。約5000万軒の家庭用では導入が終わりつつある。家庭用のHEMSとつなぐBルートの無線方式としては現在Wi-SUN通信方式で国際標準通信規格であるECHONET Liteを採用している。どの家でも細かい電力使用量のデータを標準化された通信プロトコルで取れるようになったことは大変意義深い。

また2025年度から導入が始まる次世代スマメではWi-Fi通信も可能になるため、今後活用の幅が広がると期待している。

―スマメによって、家庭用のエネルギー利用の在り方、機器の使い方はどう変わるか。

一色 月1回だった検針値が、スマメによって30分値を取得できるようになった。住宅サービスを深める上で重要だ。「これぐらいの電気を使ってる」や「過去との比較」といったデータを提供することで、電気の使い方を評価したり反省を促したりすることも可能になる。また、次世代スマメでは、さらに細かい時間分解能のデータ取得が可能となる。これまでと比べてもきめ細やかなサービスが可能になるだろう。「高齢者見守り」といった生活支援や「エアコン温度を最適にする制御」といった省エネサービスが進む。そうしたサービスは、エネルギー事業者が直接手掛けることもあるだろうし、ハウスメーカーのケースもある。自治体と連携する動きも出るだろう。スマメによっていろいろなモデルが生まれていく。

―電力会社からするとデータが増え、運用が大変だ。

一色 細かいデータを全部サーバーにためていく考えと 、エッジ側(家側)で処理(減ら)して上側にためる。そんな2つの考えがある。恐らく有用なデータのみをためる制御の仕方が必要になっていくだろう。


ZEHへ果たす役割り インフラ輸出への期待

―省エネ法改正でZEHが進む。

一色 エネルギー資源が乏しい日本としてはエネルギー自立化を考える必要がある。しっかりと資源を調達し、同時に上手にエネルギーを消費することが大切だ。その意味でスマメとHEMSを組み合わせてZEHへ取り組むことの意義は大きい。

―ガスメーターのスマート化は?

一色 もちろん期待している。水道メーター含め一括検針に関する検討も次世代スマメでは行われている。

―日本のこうしたインフラ構築の仕組みは、世界に誇れるものなのか。

一色 われわれの研究所には海外の新興国などからも多くの見学者が訪れている。電力供給が不安定な国の政府関係者の見学もあり、スマメを通じてより詳細に電力使用実態を把握したいというニーズは海外でも関心が高いと感じている。日本の技術を海外に展開する「インフラ輸出」につながり、ECHONET Liteが海外でも活用されるきっかけになることを期待している。

いっしき・まさお 1982年東京工業大学卒、東芝入社。空調機器の省エネ技術開発、世界初のネットワーク家電システムの実用化に従事。2009年慶応大学特任教授、12年神奈川工科大学教授。22年同大特命教授。

【特集2】買い替えるだけで省エネ 家電の性能向上を制度が支援


高効率な現行製品を超えることを目指すトップランナー制度。

消費者にとっては家電の買い替えそのものが省エネにつながる。

近年、省エネ家電がめざましい進化を遂げている。その背景には、コロナ禍を経た在宅勤務の普及や「おうち時間」の充実、燃料費高騰による光熱費の値上がり、環境意識の高まりなどがある。


高効率な最新家電 便利な機能も多数

資源エネルギー庁の資料によると、家庭における電気の使用割合は、夏季はエアコンが38・8%、冷蔵庫が12・0%、照明が14・9%、冬季は暖房が32・7%、冷蔵庫が14・9%、給湯が12・6%となっている。空調の温度設定や不要な明かりの消灯、追いだきが必要ないよう間隔を空けずに入浴するといった省エネ行動も重要だが、高効率な家電への買い替えが省エネとなるケースもあるという。10年前と比較して、エアコンは約15%の省エネ、年間電気代は約4120円の節約、冷蔵庫は約35~42%の省エネ、年間電気代は約4560~6110円の節約になると算出されている。

省エネだけでなく空気清浄や自動掃除機能も充実

エアコンの省エネには温度設定のほか、フィルターの掃除も有効だ。掃除の際は長期使用製品安全表示制度の「設計上の標準使用期間」の確認もしておきたい。同制度は経年劣化による事故が多い製品に標準使用期間や注意事項の表示を義務付けたもの。期間が過ぎた場合は異常な音や振動、臭いなどがないかに注意し、買い替えも視野に入れたい。

冷蔵庫は24時間365日稼働することから、消費電力量が多い家電の一つだ。購入の際は家族の人数や買い置きの量など、生活スタイルに合ったものを選ぶことが省エネにつながる。また設置スペースに対し、本体サイズだけでなく放熱スペースの加味も大切だ。

家電の省エネ性能の向上に資する制度の一つに、トップランナー制度がある。同制度はエネルギー消費効率の決め方の一つで、現在商品化されている機器のうち、最も効率の高い機器の性能を超えることを目標としている。定められた基準を目標年度までに達成することが求められる。1998年に改正された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の中で、民生・運輸部門の省エネ施策として採用された。

対象となるのはエアコンや冷蔵庫、照明、テレビ、温水機器など全31項目だ。トップランナー制度は事業者側の義務のため、消費者の買い替え自体が省エネとなる。

最新家電には便利な機能も数多く搭載されている。エアコンには気流制御のほか、空気清浄機能や除菌機能が付いたものもある。冷蔵庫では湿度・温度設定による鮮度維持、急速冷凍などの機能が人気だ。省エネだけでなく自宅で快適に過ごすため、一度家電の見直しをしてみるのもよいだろう。

【特集2】エコキュート&エネファームが進化 脱炭素促すエネルギー有効利用


【電力・ガス業界】

電力業界が推し進めてきたエコキュート、ガス業界によるエネファーム―。両アイテムが市場に投入されたことで家庭用の給湯事情は大きく変わった。

2000年代初めにエコキュートが登場した頃、電力各社は深夜の割安な料金メニューを打ち出しながら、オール電化住宅とともにエコキュートを普及させていった。

片やガス業界は10年前後にエネファームの本格普及に向け本腰を入れてきた。11年の東日本大震災以降はレジリエンス性を強調し、停電時でも動くエネファームの普及に注力した。

これまでの累積導入台数はエコキュートのおよそ1000万台に対し、エネファームは50万台。イニシャルコストに差があるため普及に温度差があるのは仕方ないが、それぞれ高効率ヒートポンプ式給湯器、家庭用コージェネレーションという新しい市場を生み出した点で、電力・ガス業界が果たした役割は大きいだろう。

1000万台程度普及したエコキュート

今後、家庭用の脱炭素時代に向けた次世代への展開はどうなっていくのか―。電化の流れを受けエコキュートは再エネとの親和性を追求していくことになるだろう。戸建て住宅の屋根に設置した太陽光発電の自家消費を促していくような運用の仕組みだ。それを訴求していく電気料金メニューも生まれている。

エネファームはどうか。「エネファームは数万にも及ぶ部品から構成され、これまでに部品のブラッシュアップが進んだ。もしコストが高いからと諦めていたら、まともな部品も調達できず、現在の水素ブームに完全に乗り遅れていた」「停電時や災害時のエネルギー供給などレジリエンス性の観点からもニーズは大きい」。メーカーや業界関係者はこう口をそろえる。水素社会の本格到来を見据えた戦略商材になっていこう。

水素社会を担うエネファーム


VPP運用への期待 電力需給調整の役割も

また、両アイテムともにVPP(仮想発電所)といった新しい運用を支えていく分散型リソースとしての活躍が期待されている。

最近は、火力発電所側での燃料調達懸念や火力電源の減少、さらには電力需給のバランスを乱す再エネの大量普及など、電力不足や電力系統の不安定化が生じる機会が増えている。そうした際の電力需要の「上げ・下げ」の調整機能としての役割も期待されている。エコキュートには、再エネ余剰電力の吸収源としての役割もある。

新しい市場をつくり、そして進化してきた給湯アイテム。これらは、メーカーの協力も得て電力やガス業界が互いに切磋琢磨してきた成果でもある。今後も両技術開発の進展が期待される。

【特集2】二つの新モデルがラインアップ 省エネと豊かな生活を実現


【リンナイ】

昨年9月、リンナイが展開する「ECO ONE X5」シリーズに新モデルがラインアップされた。屋外コンセント対応のプラグインモデルと、マンション向けの集合住宅専用モデルだ。

一般的なヒートポンプ式給湯機は、設置するときに専用電源配線や基礎工事が必要だ。これに対し、プラグインモデルはシステム全体の電力を監視しヒートポンプ運転時の消費電力を抑えることで、既設の屋外コンセントを使用可能にした。設置のハードルを下げることで、従来の給湯器からの交換を促し、既築住宅の省エネを後押しする。

集合住宅専用モデルは、バルコニーや玄関横など限られたスペースへの設置というマンション特有の事情に対応したコンパクトな設計だ。マンションのZEH化促進に貢献する。

また同社のエコワンは高い省エネ性能が認められ、昨年から国の補助金の対象となっている。昨年の支給額は5万円だったが、今年は15万円が支給される予定だ。補助金の効果で、販売台数も大きく伸びているという。施工店や販売店などからの評判も上々だ。営業本部営業企画部の伊藤敬一次長は「エンドユーザーにとって補助金で初期投資を抑えられるのは重要。ガス代や電気代などもお得になり、月々の負担が軽くなっていく」と話す。

既設の屋外コンセント使用で工事は不要だ


独自のバブル技術を搭載 生活の質を向上していく

リンナイが提供するのは、省エネ性能による経済性だけではない。お湯に微細な泡を溶け込ませる独自技術「エアバブルテクノロジー」により、豊かなライフスタイルも実現する。

同技術ではウルトラファインバブルとマイクロバブルの2種類の泡を作り出す。二つの泡の違いは大きさとお湯の見た目だ。ウルトラファインバブルは1マイクロメートル未満と細かく、目視できないためお湯の見た目は透明だ。マイクロバブルは少し大きい1~100マイクロメートル未満で、お湯は白く濁って見える。

「ECO ONE X5」の上位モデルにはウルトラファインバブルを発生させる装置が組み込まれており、キッチンや浴室など家中にバブル入りのお湯を送ることができる。通常のお湯と比べてバブル入りのお湯は洗浄効果が高く、水垢や排水溝の汚れなどが付きにくい。そのため、日々の掃除の負担軽減につながる。

さらに、マイクロバブル内蔵モデルの場合は、マイクロバブルのお湯で毎日入浴することができる。バブル入りの白いお湯は浴室を非日常的な空間に演出。また気泡が体を包むことによる温浴効果や肌がしっとりするといったうるおい効果、毛穴にたまった皮脂などの汚れを落とす洗浄効果が高く、1日の終わりに癒しをもたらしてくれる。

伊藤氏は「われわれは地球環境問題への対応と生活の質の向上の両立を目指している。『リンナイの給湯器にはエアバブルが付いているから欲しい』と思ってもらえるよう、エアバブルテクノロジーをさらに展開していきたい」と抱負を語った。

【特集2】「コト売り」で付加価値を希求 省エネと快適性の両立を実現


【パーパス】

家庭内でも省エネ意識が高まっている中、節水型シャワーヘッドやカランなどを取り入れるユーザーが増えている。パーパスは、こうした消費者のニーズを取り入れて、エコジョーズのブランド「AXiSシリーズ」に「AXiSシリーズ FLash」を新たにラインアップ。給湯暖房用熱源機のリニューアル新製品を発売した。

本製品は従来品と同様に、特許も取得している同社の独自技術「高温水分配方式」を採用。快適に利用しながら省エネを実現する機能はそのままに、本機の魅力がより伝わりやすくなるよう「FLash」と名称を改めた。

本体色もフラッシュゴールドに変更


湯量に左右されない給湯技術 省エネ商材の機能引き出す

本製品の主な特徴は四つある。①最小給湯能力0・1号/最低作動流量毎分1・9l、②給湯加熱速度約2秒、③体脂肪測率※などが簡単に測れる「カンタンヘルスチェック」機能搭載、④塗装が耐重塩害試験基準をクリア―だ。

①では、少ない湯量でガス給湯器を使用する際、安全機能が働いてお湯が冷たくなる課題を解決。シャワーを利用している時に、台所でお湯を使うと湯量が変わり、安定した温度で供給できないことがあるが、独自技術によって低温・少流量の出湯でもガスの燃焼が止まらないため、いつでも安定したお湯を供給し続けられる。

また②により、水栓を開けるとすぐに給湯器本体からお湯が出るので、捨て水が少なく経済的だ。これらの機能で節水はもちろん、ユーザーが導入した商材の性能を存分に引き出せる。

③では、水中体重秤量法を基にした技術を使用。「体脂肪率測定」「消費カロリー計算」「半身浴モード」など、入浴するだけで簡単に健康チェックが可能だ。④は、海に面した地域でもサビが発生しにくい塗装により実現した。

鈴木孝之営業企画部長は「給湯器はお湯が出ればいいというものではない。いかに付加価値を付けて『コト売り』として販売していくかが重要だ」と話す。時代とともに移りゆく消費者の要望。パーパスはユーザーの目線に立って、求められている製品をこれからも提供していく。

※ 体脂肪率測定機能はGX/GHシリーズのフルオートタイプのみ利用できる。

【特集2】冬期の節電プログラムを開催 独自の特典など創意工夫


【東急パワーサプライ】

東急パワーサプライは昨年12月1日~3月31日の4カ月間、「冬の節電プログラム2023」を実施している。同プログラムは、需要家にメールやLINEを通じて節電を要請し達成した場合、ポイントを付与するもので、22年冬期、23年夏期に続いて3回目の開催となる。

22年冬期の1回目は、国内の電力需給ひっ迫などを背景に国が節電要請を行った時期と重なる。節電対策を促進するため、経済産業省と東京都は冬季の節電達成特典に対する補助金事業を行った。このため、同社の節電プログラムでもウェブサイトからエントリーすると、2000円分のポイントが給付された。これが多くの需要家の参加につながったという。

23年度は経産省の補助金事業が終了。このタイミングで節電プログラムを終える事業者もあったが、同社は続ける決断をした。カスタマーリレーショングループの千葉悠子チーフは「継続するか、さまざまな角度から議論があったが、節電プログラムによって需要家の行動に関し多くの知見を得ることを重視した」と背景を語る。

ウェブサイトから簡単に参加できる


朝と夕方に節電要請 効果次第でポイント獲得

需要家にはウェブサイトからプログラム参加のエントリーを行うと、節電要請が実施日時の前日夕方と当日朝にメールなどを通じて送られてくる。節電時間には「スーパー節電タイム」と「節電タイム」の2種類があり、スーパー節電タイムは獲得ポイントが10倍。参加者は要請時間に節電すると、経産省のERAB(エネルギー・リソース・アグリゲーション・ ビジネス)ガイドラインの「High 4of5」(DR実施日の直近5日間のうち、DR実施時間帯の平均需要量の多い4日間)のベースラインに基づき、節電効果があると判断されると、ポイントが付与される。この獲得ポイントに応じて、QUOカードPayを最大2000円分もらえる。さらに東京都の需要家は期間中に5日間以上の節電達成で2000円分、合計で最大4000円分を受け取ることができる。

同社ではグループの東急ストアと共同で、日々の買い物でポイントを獲得できるキャンペーンも用意した。1月9日から3月31日の間、節電時間中に同店舗で買い物すると、「TOKYU POINT」がたまる「まる得ポイント+eco(プラスエコ)」を実施している。同西田実佳氏は「外出することで家庭の節電につながる。またポイントを付与することで行動変容を促進できると考えている。当社と需要家の双方にメリットがある」と話す。

節電プログラムで得た知見はさまざまな角度から検証し今後の事業運営に活用していく方針だ。「23年夏期は17万3264kW時の節電効果があった。今後は、需給調整市場などに生かせるかどうかなどを検証する」(西田氏)

東急パワーサプライは「新しい生活体験を、エネルギーとともに。」というスローガンの下、エネルギーと暮らしの関係を考えた新たなサービスを今後も展開する。

【特集2】節約応援プランで料金低減 アンペア見直しニーズに対応


【静岡ガス】

静岡ガスは昨年9月、低圧ユーザーのニーズに応える新電気料金プランを打ち出した。今冬から「節約応援プラン」を本格的に展開し、同社ブランド「SHIZGASでんき」の販売に注力する。

節約応援プランは、ユーザーの電力の使用実態に合わせて基本料金を変動させる。一般的な電気料金は、基本料金、電気の使用量に応じた従量料金、燃料費調整額、FITの額で構成されており、基本料金は契約する電力のアンペアに応じて決まっている。

節約プランで料金を抑える

このアンペアは年間のピーク電力使用量からはじき出される。少人数の世帯だと20~30A、世帯人数が多かったり電力使用量が多いユーザーは40~60Aで契約することが一般的だ。静岡ガスのプランは、この契約アンペアを下げて、料金を減らそうとするユーザーが増えたことに対応した。

「家族人数の多かった世帯で、若者の県外移住などによって世帯人数が減少傾向にあった。これまでは契約アンペアをそのままにしているケースが多数あった。一方、昨今の資源価格の高騰や電気値上げなどで、従来以上に電気料金にシビアなお客さまが増えている。そうした中で、アンペアを見直すニーズが出てきた」(営業本部戦略推進部営業企画担当の吉田公春さん)


需要家の使用実態を把握 対面営業の強み生かす

契約アンペアを下げて料金を抑えるプランはいたってシンプルだが、ユーザーの電気使用実態を把握して、アンペアの最適解を見つけ出すのは手間の掛かる作業だ。それでも同プランを手掛ける意義は何か。「これまでガス事業を含め対面を中心に営業を進めてきた当社ならではの強みを生かしたいと考えている。お客さまと接する中で、実際の電力使用実態を把握し、契約アンペアをどれくらい下げれば最適な料金プランになるのか、お客さまと相談しながら決めていく。結果的に契約アンペアの見直しを後押し、節約をサポートすることで『SHIZGASでんき』を選んでもらいたい」(同)

ユーザーと接してさまざまなことが分かった。例えば、省エネ家電が浸透する中、それに伴い、電力消費量も減少傾向にあること。普段からどのような機器を使っているかを把握しておくことも、ユーザーの電力使用実態を調べる上では重要なことだという。

また大手電力各社が整備してきたスマートメーターによって「30分値」を取得できるようになったこともサービスを進化させている。電力消費実態を把握する上で重要なデータとなっており、そのデータは同社が独自で開発したアプリとも連携させている。ユーザー自身もスマホの端末から使用量を把握でき、ユーザー自らも節電や節約の意識を高めるようなシステムを構築した。

単純に単価を下げるような販売では、事業環境によっては事業者自らも首を絞めることになる。それでは高い公益性が求められる事業者として持続可能な事業を営むことは不可能だ。静ガスはユーザーと事業者が互いにウィンウィンになる手法の導入を目指していく。

【特集2】エネファームを戦略商材に デジタル化推進で最適提案


【東京ガス】

都市ガスと電気、それぞれ小口の販売件数が2023年9月、およそ875万件、360万件となった東京ガス。そんな同社が家庭向け戦略商品に掲げているのが家庭用燃料電池「エネファーム」だ。脱炭素に向けた水素社会への流れを受け、日に日に期待が高まっている商材である。都市ガス業界が09年から本格的に販売を開始し、今冬で累積導入台数が全国50万台に到達。東京ガスでも17万台を突破している。

「初期に導入された機器がリプレースの時期を迎えている。当社が手掛けるエネファーム販売で特徴的なのは、リプレースされるお客さまの約9割近くが再びエネファームを採用していること」。リビング技術部技術企画グループ技術企画チームの寺村朋晃チームリーダーはこう話す。

エネファームのラインアップも拡充されている。従来は固体高分子形(PEFC)と呼ぶパナソニック製のみであった。これは給湯や暖房など熱を多く使うユーザーに適しているが、固体酸化物形(SOFC)となる発電主体のアイシン製や京セラ製も商材に加わったことで、多様な需要家ニーズに適応できるようになった。

発電を主体とする製品が商材に加わった

また、アイシン機や京セラ機は、「後付け設置」も可能となっている。エネファームは発電・貯湯ユニット、ガス給湯器で構成されている。後付け設置とはガス給湯器のみを使用しているユーザーが給湯器をそのままに、発電・貯湯ユニットのみを新規に導入するやり方である。イニシャル費の低減に課題を抱えている中、ガス事業者やメーカーが知恵を絞って編み出した、少しでも費用を抑えるための工夫だ。さらに、最近では天気予報と連動させるなど、エネファーム本体側の制御面でも技術開発が進み、最適なユーザー運用をサポートしている。


価値共創型の取り組みに昇華 デジタル化で運用の最適化

東ガスではエネファームや蓄電池などの多様な分散型エネルギーリソース(DER)を活用し、関西電力、パナソニックや京セラなどと連携してVPP実証も進めてきた。実証ではDERを束ねるための仕組み作りが課題と分かり、その後、再エネ事業を手掛けるスタートアップ企業の自然電力が構築したプラットフォームの活用を開始することになった。

リビング技術部技術企画グループソリューション企画チームの白井良和チームリーダーは次のように話す。「多様な企業とこのプラットフォームを共同利用することで運用費を最小化し、電力系統の安定化とユーザーメリットにつなげる価値共創型の取り組みに昇華させたい」

今後、東ガスでは20年に戦略的提携を開始した英国オクトパスエナジー社のシステム「クラーケン」や「クラーケンフレックス」も活用してDERの価値向上と顧客体験の向上を目指す。「全社一丸となって高度なデジタル技術をベースに、火力や再エネ発電所はもちろん、お客さま先の設備、電力市場取引までを一元管理した運用の最適化を進めている。23年11月に発表したソリューションブランド『IGNITURE』のもとで脱炭素、レジリエンス、最適化した価値を届けたい」。白井氏はこう将来の展望を語っている。

【特集2】電気・リース料金をパッケージ化 「電化のサブスク」を家庭に提案


【関西電力】

気候変動問題に高い関心を持つ人や快適な生活を過ごしたい人など、家庭用の需要家が電力会社に求めることは多様化している。関西電力はそれらの声に耳を傾けて、社会の求めに応える電気料金プランの提供に努めている。

2021年6月から受け付けを始めた「はぴeセット」は、一定量までの電気料金とエコキュートのリース料金をパッケージにした月々の料金を10年間支払うという「電化のサブスクリプションメニュー」だ。

夫婦二人世帯など向けのSプランの場合、基本料金は月1万400円で、基本料金に含まれる電気使用量は月200kW時。オプションとして特別タイプのエコキュートへの変更(月200円~)、IHクッキングヒーター(同1620円~)、EV充電器(同660円~)を加えることができる。基本料金は、一定量の電気料金とエコキュートのリース料金に加えてエコキュートの標準的な取付工事費、機器修理費込みの値段。家庭にとってメリットは大きい。

初期投資の負担を軽減した

「はぴeセット」には、ほかに子育てファミリーや二世代家族向けのMプラン(基本料金月1万5200円、電気使用量450kW時)、大人数ファミリーなど向けのLプラン(同20000円、同700kW時)のプランがある。

いずれも使用量が基本料金に含まれる量を超えると従量料金を支払う内容となっているが、逆に使用量が下回った場合、使わなかった分は1kW時当たり10ポイントの「はぴeポイント」で還元する。

「オール電化の採用をご検討いただくものの、初期投資の高さがネックになるというお客さまの声があることを踏まえて、初期投資の負担を軽減し、多様なライフスタイルにお応えするサービスとして開始した」。ソリューション本部リビング営業計画グループの田中友貴マネジャーはこう話す。


太陽光発電をセットに 災害時対応にも力発揮

22年10月からは、関西エリアの新築の戸建てを対象に「はぴeセットソラレジ」のサービスも始めている。気候変動に加えて省エネや節電などの意識の高まりから、太陽光発電(PV)の設置を希望する人たちが年々増加。そのため、PVの機器リースと一定量の電気料金をパッケージにしたメニューの提供を始めたのだ。

プランはSプランからLプランまであり、例えばMプランの場合、基本料金は月1万4300円で、基本料金に含まれる電気使用量は月400kW時。使用量が基本料金に含まれる量より増減した場合の取り扱いは、はぴeセットと同様。PVの電気は宅内の自家消費に自由に使え、余った電気はFIT制度での売電で収入を得ることも可能だ。

PVに加えて、エコキュート(月2860円~)、蓄電池(同9900円~)、V2H(同1540円~)などもオプションでリース契約ができ、初期費用を軽減しながら住まいの災害レジリエンス向上も期待できる。

ソリューション本部では、需要家のニーズに応えられるものを届けることを重視してきた。「新しい価値の提供を続け、今後も当社のサービスを選んでいただくようにしたい」(田中氏)。次なる提案に注目が集まる。

【特集2】太陽光発電の「地産地消」進める 家庭向けアセットサービス始動


【東京電力エナジーパートナー】

全国で累積1000万台近く導入が進んだエコキュート。深夜の割安な電気料金を活用してお湯を沸かして貯湯し、お風呂などの給湯に利用されてきたが、太陽光を始めとした再エネの普及で、そんな使われ方が変わりつつある。太陽光発電の電気を直接利用して昼間に沸き上げて貯湯する「おひさまエコキュート」が登場しているのだ。これに東京電力エナジーパートナー(EP)は力を入れる。お客さま営業部の花尾美智子・電化推進グループマネージャーが言う。「カーボンニュートラル(CN)に向け、『でんきの地産地消』を提案している。今後、東電管内でも再エネの出力を制限するケースが出てくると思う。電力系統の安定化のためとはいえ、余剰だからといって再エネの出力が抑制されるならその分を上手に使った方が合理的で、CNの流れにも沿う。そこで新たな料金プラン『くらし上手』を設け、おひさまエコキュートの普及に注力中だ」

おひさまエコキュートが登場している


太陽光とエコキュート 初期費用ゼロで蓄電池

同プランは東電管内で、太陽光発電とおひさまエコキュートを併設する、主に戸建て向けが対象だ。基本料金に加え、月間使用量が120kW時までは定額(3694・4円)。それ以上は1kW時当たり30・92円の従量料金だ。通常の戸建てでは120kW時を超えることが一般的だが、両設備によって太陽光発電の地産地消を促す。東電EPは業界に先駆けてこうしたプランを打ち出した。

地産地消をさらに促すために東電EPでは家庭向けのアセットサービス「エネカリプラス」も始めている。太陽光発電設備や蓄電池のPPAサービスだ。ユーザーは初期費用ゼロで、10年または15年の長期間で月々定額のサービス料金で設備を利用できる。仮に太陽光発電(7kW級)と蓄電池(9・5kW時)のセット利用では、毎月のサービス料金(15年間)は約1万4500円(税込)だ。蓄電池も加えてさらに再エネの地産地消を進める。この間の設備の自然故障に伴うユーザー負担はゼロだ。

こうしたアセットサービスは、これまでは法人向けに「エネルギーサービス」として導入されてきた。東電EPの取り組みをきっかけに、家庭分野でも同様のサービスが本格化しそうだ。

【特集2】省エネ強化へ「三本柱」推進 非化石転換とDRも同時に実行


カーボンニュートラル実現に向け、家庭部門では省エネ、非化石転換、DRの「三本柱」に取り組む。

2023年度の補正予算では経産、国交、環境3省連携の省エネ支援で4215億円を計上している。

2050年カーボンニュートラル(CN)実現の鍵を握るのが業務・家庭部門の省エネだ。資源エネルギー庁によると、業務用、家庭用、運輸など、くらし関連部門のCO2総排出量は日本全体の約5割を占めるという。

この対策として国が進めているのが、省エネと非化石転換、デマンドレスポンス(DR)の三つだ。家庭や中小企業の省エネは産業部門に比べて、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が少なく、省エネへの取り組みによる金銭的メリットは必ずしも多くない。このため、需要家にとっての省エネインセンティブが弱く省エネが進みにくいといわれている。

そこで、家庭部門では、産業部門のような直接的な規制ではなく、省エネを行う消費者行動を促す間接的な施策が主に採られている。代表的なものに、資源エネルギー庁が21年に創設した「省エネコミュニケーション・ランキング制度」がある。エネルギー事業者が需要家に対し、エネルギーに関する情報提供を行い、一層の省エネに取り組んでもらうことを目的としたもので、電力会社と都市ガス会社、LPガス会社を対象に、省エネに関する情報・サービスの提供状況を調査し、ランキング形式で評価・公表するものだ。

家庭部門の省エネの鍵を握るのは給湯器だ

例えば、太陽光発電や蓄電池などの設備を需要家に初期費用ゼロで提供する条件で電力購入契約を結ぶ、PPAサービスなどの存在を知らせるのが代表的だ。住環境計画研究所の鶴崎敬大研究所長は「エネルギー事業者が家庭向けに手軽に再エネ設備や蓄電池を導入できることを発信し、需要家が省エネ行動を促進する良い流れをつくっている」と評価する。


住宅の省エネ支援に注力 高効率給湯器導入を促す

23年度の補正予算では、経済産業省、国土交通省、環境省の3省連携による住宅省エネ化支援で4215億円が盛り込まれた。

同補助金事業の柱となるのが、高効率給湯器の導入だ。家庭部門のエネルギー消費量の約3割を占める給湯器を、高効率品に更新する効果は大きい。最近は、再生可能エネルギー拡大に伴う出力制御対策や寒冷地における光熱費の高額化も問題となっており、設備更新を後押しする。補助額は、ヒートポンプ給湯機「エコキュート」の昼間の余剰再エネ電気を活用できる機種で10万円、家庭用燃料電池「エネファーム」のレジリエンス機能搭載機種で20万円、ヒートポンプ給湯機とガス給湯器を組み合わせたハイブリッド給湯機の昼間の余剰再エネ電気を活用できる機種で13万円となっている。

ハイブリッド給湯機では、リンナイが「ECO ONE X5」シリーズの新モデルとして、屋外コンセント対応のプラグインモデルと、マンション向けの集合住宅専用モデルを展開する。プラグインモデルはシステム全体の電力を監視しヒートポンプ運転時の消費電力を低減し、既設の屋外コンセントを使用可能にした。設置のハードルを下げることで、従来の給湯機からの交換を促し、既築住宅の省エネを後押しする。

【特集1/座談会】大幅な制度変更に弊害はあるか 電力システムの最適化を


業界からは、大幅な制度変更の弊害を懸念する声が聞こえてくる。

こうした声を踏まえ議論をどう進めるべきか。キーパーソンが意見を交わした。

【出席者】
石坂匡史/東京ガス 執行役員電力事業部長
市村 健/エナジープールジャパン 代表取締役社長兼CEO
市村拓斗/森・濱田松本事務所 パートナー弁護士
岡本 浩/東京電力パワーグリッド 取締役副社長執行役員

左上から時計回りに、市村(拓)氏、石坂氏、市村(健)氏、岡本氏

―同時市場改革の必要性について、どのように考えますか。

市村(健) 電力システム改革以降、それまで電力会社に課されていた供給義務が供給能力確保義務に形を変え、送配電事業が分離された中でも、バランシンググループ(BG)に30分計画値同時同量を課すことで安定供給確保を目指してきました。ですが実態ではそれが誠実に履行されておらず、そのしわ寄せを一般送配電事業者(TSO)が受けています。そうであるならば、供給と需要のリソース情報をTSOに集約しようという議論になることは至極合理的です。これに加え、対策を必要としているのが太陽光発電です。大量導入が進めば系統の混雑管理をしきれなくなりますから、TSOがワンストップで管理するという、同時市場の考え方に合理的なソリューションを見出すことは理解できます。

岡本 TSOの立場として、同時市場の議論が始まったことを歓迎しています。需給ひっ迫を何度か経験する中で、最も怖かったことが、情報が足りず打つ手がなかったことです。2021年1月上旬のひっ迫時は、連絡できる自家発電のお客さま全てに電話で協力を求めましたが、対応いただけるのは三が日明けの1月4日になってしまうなど、当時は何ができるのかさえ分からない状況でした。こうした経験から、同時市場の中で需給に関わる情報をTSOや電力広域的運営推進機関に集約し共有することが必要だと強く感じています。ただ、供給力確保策としてはこれで十分ではありません。容量を確保するには、日々の需給運用の前提となるユニットの起動が可能であることと、そのための燃料が確保されていること、さらに長期的な燃料契約や設備投資が促されなくてはなりません。同時市場の議論を端緒に、全体の議論をしていただければと思います。


予見性失うことに危機感 供給力確保の仕組みは別途必要

石坂 20年度冬季の需給ひっ迫時は、LNGが不足していて設備が足りないということではなかったのですが、TSOと発電事業者双方がより効率的な仕組みを考えなければならないという問題意識を持つきっかけとなりました。需給調整市場が始まると、三次調整力①の不足と価格高騰というさらなる問題が発生し、同時市場の勉強会が始まったことは歓迎すべきです。とはいえ、事業者からすると、急激に制度が変更されると予見性を失いかねません。他のソリューションも含めて検討した結果、最終的に同時市場がふさわしいというのであれば、事業に大きな影響が出ない形で進めていただきたいと考えています。

市村(拓) 同時市場において実現すべきことは、電源情報の一元的把握と短期市場の効率化と考えています。前者は岡本さんコメントの通りですが、後者はkW時と⊿kWを別々の時間軸で調達することの非効率や、卸電力市場におけるブロック入札の精緻化の限界があるため、スリーパート情報に基づき市場運営者が落札していく方が、短期市場がより効率化されます。よく申し上げているのは、同時市場は供給力があることを前提として機能する仕組みということです。容量市場や長期脱炭素電源オークションなどの整備が進んでいますが、それだけでは十分ではないため、同時市場は価格・量両面での安定的な燃料・供給力確保を阻害しないような仕組みを追求していくべきです。