A エネルギー供給構造高度化法は、電力小売り事業者に非化石価値の調達義務を課すもの。2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減するという目標(NDC)を政府が掲げる以上、現行の非化石電源比率44%では整合が取れないため、本来なら変えるのが望ましいが、政府目標があくまでも野心的なマニュフェストであるとすれば、制度として法律に落とし込んでしまうのは性急な感じがする。
B 30年度46%削減といった瞬間にエネルギーの供給側だけではなく、需要側に相当手を入れなければならなくなった。需要家側の取り組みをサポートするような制度に変える必要がある。実際、今回審議される法案はそれを実現するための制度改革に力点が置かれはじめているのが分かる。44%は矛盾が生じるけど、供給側の規制でしかない高度化法はむしろ骨抜きにしてしまった方がいい。
C NDC46%と高度化法との整合という点で課題があるのは明らかだが、今回の改正では水素やアンモニア、合成燃料を非化石エネルギー源として位置付けることが一つの大きな狙い。その方向性については歓迎したい。都市ガス業界には、バイオガスの混入比率の目標があるが、今後は供給事業者にメタネーション(合成メタン)などが義務化されていくことになるだろう。裏表の関係にある省エネ法でも、同じような扱いになるはずだ。
今国会でも重要法案審議が目白押しだ
脱炭素化の主役は需要家に 高度化法は形骸化する
――国の政策目標との矛盾、制度間の矛盾がますます顕著だ。
A 高度化法の理念は正しいが、ステークホルダーの意見を聞きすぎて外部から見るとあまりに複雑で訳が分からないものになっている。それに加えて、大企業を中心に脱炭素化の取り組みを加速させるための「トップリーグ」改め「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」が始まる。これは産業技術環境局が所管していて、省庁間のみならず経済産業省内の縦割りも大きな問題だよ。
C それぞれの政策の司令塔が、その人の思いで制度を作っているので全体の整合が取れていないのだろう。カーボンプライシングと同じ文脈で、経産省がGX、環境省は恐らく税制で規制をかけてくるはずだ。
B 昨年11月に非化石価値取引市場に、需要家企業が直接FIT再エネ価値を調達できる再エネ価値取引市場が創設されたが、企業の国際競争力を低下させないため1kW時当たりの下限価格が0・3円に設定された。これに対し、(小売り事業者の)高度化法義務達成市場は0・6円が下限だから、小売り事業者が再エネ価値を売ることはほぼ不可能となる。省エネ法でも、企業の非化石エネルギー導入目標を設定しようとしていて、再エネ価値市場で調達したものをカウントできるようになってしまうと、省エネの取り組みも、再エネ投資も何の意味も持たない。つまり、需要家を助けるための施策が、既存の制度を無意味なものにしてしまっている。
A 高度化法をここまで骨抜きにしてしまうくらいなら、いっそガラガラポンで新しい仕組みを作ってしまえばいいと言いたくもなるね。再エネ価値取引市場はFIT電源が対象なので、FIT電源以外の非化石価値を顕在化させる高度化法義務達成市場の存在意義はなくならないだろうが、おっしゃるような懸念は確かにある。
C 46%目標にどこまで引っ張られてしまうのだろうか。製造業の熱利用分野には電化しにくい領域がある。法改正には、足元からの積み上げが必要で、逆に目標に引っ張られてしまうと、GXリーグにしろ、省エネ法の非化石導入目標にしろ、コミットメントしようとすれば事業から撤退するか海外に出ていくしかない。産業界にそのどちらかを迫っているのだということを自覚して、国が法改正を進めているのか甚だ疑問だ。
B 岸田首相の一声で始まったクリーンエネルギー戦略は、当初は原子力政策も入っていたようだが、会議資料からは、今はとにかく熱分野の電化を進めたいのだということがよく分かる。会議は、産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会の合同会議の立て付けだが、実際は資源エネルギー庁主導で供給側の論理で需要を語っている。供給コストが上がるというが、産業界の国際競争力と資金調達力向上という重要な視点が不足している。
C 将来的に、非化石の導入義務化まで踏み込めるのだろうか。産業部門のエネルギーの7割が化石エネルギー由来の熱。そこで46%削減にひもづいた目標を作れと言われても実現できるわけがない。
B 何を熱として供給すれば産業が残るのか、そういう技術的ソリューションを探りたいとは思っているのだろうけど、そう簡単なことではないよ。