A 当時の状況を振り返ると、非常に大変だったの一言に尽きる。新型コロナウイルス禍の影響で年度当初から需要が落ち込み、新規顧客の獲得も難しい中で、市場価格も低迷する状況が年間を通じて続くことを念頭に事業を行っていた。だから12月中旬に市場価格が上昇に転じても、一過性なのではないかと考え、すぐに高騰に手を打てず、それなりの損失が生じてしまった。
B 新電力の選択肢は、調達を断念してインバランスを発生させるか超高値で市場で調達するかの二択しかなかった。1月の3連休明けから当社を含め新電力各社が資源エネルギー庁と折衝を重ね、その甲斐あってインバランス単価の上限設定や需給カーブの公表が決まったけど、その時には相当の損失が積み上がっていた。これがトラウマになって、2月以降は大手電力会社との相対契約に走る新電力が多い。しかし、価格水準は上がっているので合意しにくい。
C 当社は相対契約でかなり調達しているが、それでも相当なダメージを受けた。起きたことは仕方がないとしても、事業の継続性にまで関わる問題なので、制度上想定していなかったことが起きたのだという認識をして、こうした事象が起きた際のインバランス料金の考え方や、同時同量義務の在り方などを丁寧に議論してもらいたいと思う。
C 新電力のグループがいくつか形成され、各所にそうした支援を求める要望書を出していた。市場調達に頼っていた新電力は、年度の前半は安い調達コストで利益を出していたわけで、高くなったら助けてくれというのでは、ベースロード市場などでヘッジしている事業者とフェアではなく、さすがに筋が通らないのでは。当社にもいろいろ声をかけてもらったけど、結局、どこにも参加しなかった。新電力として、自由化の制度をより良くするための意見を出すべきで、起きてしまったことをぐずぐず言っているようでは世間からますます「けしからん新電力」と見られてしまうよ。
B 当社にも相談が持ち掛けられたが、その新電力は結局大手電力会社の取り次ぎに落ち着いたようだ。そういう事例も多いんじゃないかな。参入障壁が低すぎて、資本金数百万円で会社を立ち上げ需給調整は他社に依存するというビジネスモデルが成り立ってしまっているが、そうした新電力はある程度淘汰されても仕方がない。当社としても他人事ではなく、本業ではない事業でこんなリスクが生じるのかと社内全体がそんな雰囲気に陥っている。
A 今後、電力小売り事業をどうしていくのかという議論になっているのは当社も同様だ。このようなリスクが発現してしまうことは理屈では分かっていたけど、こういうレベルでこういう時間軸で出てくるとは誰も予想できなかったからね。1月の時点で3月末には新電力の倒産が相次ぐだろうと予想されたけど、実際はFパワー以外の倒産の話がほとんど出てきていない。相当厳しいはずなのに無理やり存続させているところもあると考えられ、そうした話はこれから出てくるのかもしれない。一部の新電力の無理な主張は、新電力業界に対する社会の信用低下につながるのではないかと危惧している。