テーマ:暫定税率の廃止
衆参ともに少数与党となったことで、いわゆるガソリン税の暫定税率廃止が現実味を帯びている。与野党は代替財源確保に向けた協議を開始したが、折り合えるのだろうか。そもそも、理にかなった政策なのだろうか……。
〈出席者〉 A学識者 B業界関係者 C石油アナリスト
─8月1日に野党7党が11月1日に暫定税率を廃止する法案を衆議院に再提出した。
C 日本を覆う「財政ポピュリズム」を深く憂慮している。2022年1月以降、政府は累積予算8兆円の燃料油補助金を投入してきた。いわゆる暫定税率の廃止は、これを減税という形で恒久化する政策と言っていい。
B 補助金は国内で都市と地方、企業・資産家と家計・消費者の分断が進む中で、都市から地方への所得移転・贈与になった。暫定税率廃止も地方住民へのプレゼントだ。ただガソリンだけでなく、漁船に重油を使う漁師、ビニールハウスの加温機で灯油を使う農家などにも配慮が必要だろう。
C 燃料油価格上昇の主因は円安だ。だから価格を下げるには、円高誘導が筋だろう。ところが、日本は財政支出を増やして石油を大安売り。財政の悪化、原油輸入の下支えで円安圧力となり、日本の払う原油代に上昇圧力をかけてしまう。こうした政策を「物価高対策」の名の下に多くの政党が支持していることに愕然とする。暫定税率廃止で〝手取りを増やす秋〟になっても、円安で〝物価が上がった冬〟を迎えては意味がない。
A 同感だが、参院選の結果を受け、赤字国債を発行してでも減税やむなしという雰囲気だ。自民党は消費税減税こそ渋っているが、衆参共に少数で廃止法案が可決してしまうため、応じざるを得なくなった。
C 大体、「安ければいい」とばかりに、61年前の道路財源として決まった本則税率に回帰するのはおかしい。第1次石油危機の1974年以降に暫定税率を適用したのも、道路整備に関わる諸条件をその都度見直すためだった。つまり、2009年に一般財源化した時に、税率を本則と暫定に分ける理由は既に失われていた。その無意味な本則税率を何の修正もなしに用いる理由が、どこにあるのだろうか。

「25・1円」安くはなるわけではない 値下げで消費は減るのか
B 立憲民主党の野田佳彦代表や国民民主党の玉木雄一郎代表など、旧民主党のメンバーにとってはリベンジマッチだ。09年の総選挙では旧民主党が暫定税率廃止を政権公約に掲げて勝利したが、財源を確保できずに断念した経緯がある。思い入れは強いのではないか。
─国税のガソリン税だけが対象で、地方税の軽油引取税は対象外となっている。
B 昨年末の自公国幹事長合意でも、軽油引取税は触れられていなかった。軽油引取税の暫定税率を廃止すれば、地方の5000億円の税収が失われる。端的に言えば、全国知事会が「うるさい」から切り離したのだろう。
A 国は国債を発行すれば失われる税収をバックアップできるが、地方公共団体はそうはいかない。一方で、今回は物価高対策という名目なので、まずは家計の負担軽減を優先したという見方もできる。ガソリン税を下げた恩恵は家計が受けるが、軽油を使うのは物流業界やバス事業者、建築業者などの企業だ。
B 廃止の対象がガソリン税だけとなった場合、補助金の廃止と合わせれば、ガソリンと軽油の価格差が逆転し、軽油の方が高くなる。灯油・重油価格も1ℓ当たり5円上がる。灯油はこれから需要期なので、何らかの手当が必要ではないか。それにガソリン税の暫定税率は25・1円だが、その分だけ価格が下がると思ったら大間違いだ。「10円値下げ」の補助金も廃止になるので、15・1円しか安くならない。
















