【業界スクランブル】
国際エネルギー機関(IEA)や米国エネルギー情報局(EIA)の月報など、2020年の世界石油需要見通しの上方修正が相次いでいる。理由は二つある。世界各国の新型コロナウイルス感染拡大の影響による第2四半期の需要減少が想定より小幅だったこと、さらに、経済再開後の需要回復が想定より早いことである。おそらく、最近の原油価格の急速な回復や今後の油価見通しの上方修正も、そうした認識が背景にあるからであろう。
国内の石油需要も同様である。月間で最大の需要減少を示した4月も前年同月比14.3%減にとどまり、6月時点で10%減近くまで回復していると見られる。内需減少幅は油種によって大きく異なる。やはり、ヒトの移動の停滞による輸送用燃料への影響が大きい。5月時点でガソリン22.6%減、軽油10.2%減。また、多くの人が航空機を避けたため、ジェット燃料は75.4%減であった。石連週報に基づく6月推計では、需要は、ガソリンで10.1%減、軽油で5.5%減まで回復している。
しかしながら、中長期的に見れば、新型コロナウイルスによる石油製品の内需減少は加速化されるとの見方が一般的である。ウィズコロナの長期化が懸念される中、新しい生活様式の定着や企業活動の変革に加え、国民経済・景気の本格的回復には数年を要するからだろう。
ただ、ウイズコロナの中で、通勤・買い物などのマイカー回帰やペーパードライバー返上の動き、またレンタカー・シェアカーの不振も伝えられている。さらに、在宅勤務や巣ごもり消費の拡大によって、宅配便の好調を含め、灯油やLPGなどホームエネルギーの消費増加もあり得る。それらに加えて、自動車産業の変革、「CASE」や「MaaS」の動きへの長期的影響も注目される。そう考えると、石油製品消費は19年度の水準には戻らないにしても、ウイズコロナの長期化によっては、今後の減少スピード減速のシナリオもあり得るのではないか。(H)