7月3日午前10時半ごろ、静岡県熱海市で未曽有の土石流災害が発生した。長引く大雨の影響で伊豆山上部の盛り土が崩落。海岸へと続く逢初川を大量の土砂などが流れ落ち、瞬く間に人や家屋を飲み込んだ。報道などによると、7月20日現在、死者19人、不明者9人で、被害を受けた家屋は約130棟に上る。

「今回の災害は人災だ」。多くの専門家や地元関係者は、異口同音にこう指摘する。というのも、崩落現場(伊豆山赤井谷)にあった人工の盛り土が大雨によって岩盤ごと崩れ落ちる「深層崩落」が発生。大規模な土石流となった可能性が高いとみられているからだ。
問題の盛り土は、2006年9月21日に同土地の所有者となった不動産関連企業の新幹線ビルディングが宅地開発を目的に造成。同社の破綻を受け11年2月22日に熱海市がいったん差し押さえ、3日後の25日に現所有者である麦島善光氏の手に渡った。その後、現在までの約10年間にわたって事実上放置されていたもようだ。一部では、盛り土が県条例に基づき熱海市に届け出られた計画の高さ15mを超え、50m近くになっていた可能性も指摘されている。
加えて、崩落との因果関係が指摘されているのが、盛り土現場の南西側すぐ隣にある大型の太陽光発電所だ。ネット上では災害直後から「適切な雨水対策が講じられていないように見受けられる」「防草シートなどによる保水力の低下が原因では」「発電所上部が盛り土現場よりも高い場所に位置するため、大量の水が流れ落ちて崩落につながったのかも」などと指摘する声が上がっていた。
太陽光発電を巡る疑惑 所有者側は関連否定
実は、この発電所の土地所有者も麦島氏である。同氏が役員に名を連ねるZENホールディングス(東京都千代田区五番町)が13年10月に、「46・2kW×11件(合計508・2kW)」で固定価格買い取り制度(FIT)の事業計画認定を受け、発電所を開発・運営している。気になるのは、厳しい安全規制が適用されない「低圧分割案件(17年度からFITの適用除外)」として制度の抜け穴を利用していることに加え、県の土砂流出防備林保安林指定区域とみられる地域に立地していることだ。県が開発を認めているため違法とはいえないが、事実なら県の責任も問われる可能性がある。
こうした疑惑に対し、麦島氏の代理人はいち早く「発電所内の雨水は、盛り土とは反対側の斜面に流れるように設計されている。崩落との関係はない」と否定。また盛り土自体についても「麦島氏は10年前に盛り土の土地を購入してから、一度も手を加えたことはないと言っている」などとして、火消しに躍起の状態だ。
ただ災害の前まで、盛り土付近をトラックなどの重機が頻繁に往来していたと証言する住民も。また崩落現場周辺では、麦島氏と関連のある別の企業が大型太陽光発電所の建設を計画していることも本誌の調査で判明した。果たして実態はどうなのか。(本号28頁の「調査報道」で詳報)



