少なくとも核燃料サイクルの第一歩が動き出す」(新潟県柏崎市の桜井雅浩市長)
青森県とむつ市、リサイクル燃料貯蔵(RFS)は8月9日、むつ市に立地する使用済み燃料の中間貯蔵施設について、施設の使用期限を50年とする安全協定を結んだ。同施設は昨年8月に原子力規制委員会の審査が終了し、今年3月に安全協定締結に向けた議論に着手していた。9月中にも柏崎刈羽原子力発電所から使用済み燃料が運び込まれる見込み。
再稼働を目指す柏崎刈羽原発の使用済み燃料の保管量は、6号機で92%、7号機で97%と余裕がなくなっている。桜井市長は再稼働を認める条件として6、7号機の保管量をおおむね80%以下にするよう求めていた。保管量が最も少ない4号機の使用済み燃料を中間貯蔵施設に搬入し、6、7号機から4号機へと号機間移動を行うとみられる。 青森県の宮下宗一郎知事は7月23日、長期保管の懸念払しょくのため、経済産業省で斎藤健経産相と面会。斎藤経産相は搬出先について、六ヶ所再処理工場を念頭に次期エネルギー基本計画で具体的に盛り込む方針を示した。安全協定を締結した3者とRFSに出資する東京電力ホールディングス、日本原子力発電は同日、事業実施が困難となった場合に、使用済み燃料の施設外搬出を求める覚書を交わした。同様の覚書は1998年に再処理工場を巡って青森県と六ヶ所村、日本原燃が結んでおり、踏襲した形だ。また青森県とむつ市は中間貯蔵施設への搬入後、それぞれウラン1㎏当たり年620円の使用済燃料税を徴収する。

原子力と共存共栄 業界の不安は解消か
むつ中間貯蔵施設を巡っては2020年12月、電気事業連合会が関西電力など原発を保有する各社での共同利用を申し入れた過去がある。当時むつ市長だった宮下氏は「あり得ないことだ」と猛反発。結果的に関電は、原発敷地内での中間貯蔵施設建設などの対応策を打ち出し、共同利用の必要はなくなった。こうした過去から電力業界では「宮下氏は原子力政策に理解がないのでは」と不安視する向きもあった。しかし知事就任以降は、むしろ原子力政策と「共存共栄」する姿勢を示している。
宮下知事は「立地地域に光が当たっていないという思いがずっとあった」として、地域が発展するための取り組みを自治体と国、事業者が一体となって検討する「原子力共創会議」の開催を国に要請。資源エネルギー庁はこれまでに2回の会合を開き、今秋をめどに具体的な取り組みの工程表を策定する。
こうした動きは、津軽地方の実情を理解する宮下知事ならではといえよう。宮下知事が昨年6月の県知事選で掲げた「国策としてのエネルギー政策に協力し……電源立地県としての責任を果たしていきます」との選挙公約は実行されつつある。