A 最大の注目は福井2区じゃないか。旧安倍派の幹部で非公認となった高木毅さんに、高市早苗さんの夫で8回の当選を誇る山本拓さんが挑む。山本さんは前回2021年の衆院選で比例単独だったにもかかわらず、21位という順位で登載され次点で落選した。今回は野党も含めて大混戦で、全国的に注目されている。福井県の原子力施設は全て福井2区に立地しているし、エネルギー業界とも関係の深かった保守の両者の対決を複雑な気持ちで見ている人も多いだろう。
B 経済産業相経験者では、兵庫9区の西村康稔さんと東京24区の萩生田光一さんが不記載問題で非公認。知名度が高く、選挙特番では大々的に取り上げられるだろうね。
総裁選後の政局に注目が集まる
A 経産相経験者の商工族といえば、神奈川20区の甘利明さんに触れないわけにはいかない。前回は現職幹事長ながら小選挙区で敗れて復活当選。自民党史上、最も任期が短い幹事長となってしまった。自民党の比例代表登載には「73歳定年制」という党則が適用されるので、今回は重複立候補できない。商工族のボスで霞が関としても大注目だろう。
C 経産省幹部いわく「甘利さんは政策好きの人」で、成長戦略、通商問題など経産省との関係は深かった。額賀福志郎さんも衆議院議長になり、経産相を務めた茨城4区の梶山弘志さんの存在感がより高まっていくだろう。
D 柏崎刈羽原発のお膝元、新潟4区からも目が離せない。自民党の公認候補は鷲尾英一郎さんだが、同じく自民党の元新潟県知事、泉田裕彦さんが立候補。野党で受けて立つのは前知事で立憲民主党の米山隆一さんだ。妻でタレントの室井佑月さんとの二人三脚の活動で、地元でよく浸透しているとのこと。自民党といえども泉田さんは再稼働に消極的だし、米山さんは住民投票を求めている。その中で再稼働推進の鷲尾さんはどうなるか。
B 新潟2区では原子力推進の有力議員である細田健一さんが非公認となった。細田さんは前回まで柏崎市と刈羽村を含む旧2区で戦っていたが、区割り変更で新2区での出馬となり柏崎刈羽地域を離れた。相手は立憲民主党の菊田真紀子さんで厳しい戦いが予想される。愛知7区の鈴木淳司さんは自民党の原子力規制に関する特別委員会の会長として、規制の効率化などを求めるなど議論をリードしてきた。だが不記載問題で総務相を辞任することに。前回は小選挙区で通っていて、その再現が期待されている。
自民党内大荒れか 「大連立」の可能性も
C 環境族は引退などが続き、存在感のある議員が少ない。そんな中で丸川珠代さんは参議院からの鞍替えを目指して東京7区から出馬する。不記載議員なので小選挙区の一発勝負だが、相手は日本維新の会の小野泰輔さんと立民の松尾明弘さん。もともと不記載が明るみになる前から激戦が予想されていた。
B 公認問題でいえば、不記載額が大きかったにもかかわらず「政治倫理審査会に出席した」という理由で福岡11区の武田良太さんと千葉3区の松野博一さんは非公認を免れた。でも政倫審に出席したからというのは建前で、武田さんは総裁選で石破さんを支援していたし、松野さんは安倍派でも岸田文雄さんに近い。非公認は「安倍派潰し」と見られても仕方がない。
A となれば自民党はどの程度の議席減に抑えられるかにもよるが、総選挙後は荒れるだろうね。無所属で西村さんや萩生田さん、和歌山2区で離党した世耕弘成さんが当選し、選挙に弱い旧安倍派議員が比例復活できずに落選したとする。「仲間」を失った彼らがどれだけ数の力を誇れるか分からないが、火種はくすぶり続ける。早くも週刊誌は旧安倍派や麻生派、旧茂木派が高市さんを立てて「石破降ろし」に走るなんて書いている。茂木敏光さんと高市さんは当選同期の〝不仲〟で有名だから簡単にはいかないだろうが。
B そうなれば石破さんが立民代表の野田佳彦さんと組んで「大連立」なんてことも。それを呑めない自民党内の右派と立民内の左派は党を割る。そもそも第二次安倍晋三政権以降に勢力を膨らませた「安倍チルドレン」と旧岸田派などの伝統的な議員は、理念や政治家としての作られ方が違う。そうした違いを包含しながら政権政党を維持してきた自民党内で「恨みと妬み」が勝つのか、総選挙後の政局はどう動くか。