安定供給支えた歴代の火力技術 未来はいつだって過去の発見から


【オピニオン】増川浩章/火力原子力発電技術協会専務理事

今日の電力安定供給は、火力発電の技術開発なくしては実現していない、と言い切っても過言ではない。

昭和に遡る。大学生の私に、「増川君、これからは太陽光発電がどんどん入ってきて、昼間に火力がDSS(日間起動停止)するようになるよ」と、電力系統が専門の恩師が言ったことを思い出す。ちょうどコンバインドサイクル発電が営業運転を開始し始めた頃で、俊敏性とその後の熱効率の格段の向上はまさに技術の進歩といえる。昼間のDSSは、kWとΔkWの話だが、熱効率の高さはkW時に効いてくる。

さらに時を巻き戻すと、コンベンショナル機の大容量化による熱効率向上があった。また環境問題(この当時は「公害」)に対しては、電気式集じん機の他、脱硫や脱硝装置の設置、さらには燃料転換(石炭から石油)と、火力機が時代に合わせ柔軟に対応してきた。これも技術開発の裏付けがあって達成できたことだ。オイルショック後、IEA(国際エネルギー機関)の勧告を受け、日本では石油火力の新設をしない方針となったが、既に導入していたLNGが安定供給に貢献した。もちろん、原子力の貢献も大である。

未来に目を向けると、カーボンニュートラル時代までのトランジション期間は、地政学的リスクが高まり、そしてブロック経済化が進む中、資源に乏しい日本が買い負けしないことが肝要である。そのためには、石炭が石油に、そしてLNGへと主役が移り変わったように、アンモニアや水素に燃料転換する技術開発とサプライチェーン構築を進めることが必須である。ただし、1次エネルギーだと勘違いされやすい水素、アンモニアを安価に大量に製造・運搬するには、CCUS(CO2回収・利用・貯留)技術が活躍することになる。トランジション期間において、技術開発とサプライチェーンを構築していくことが、日本経済発展の鍵となる。

とはいえ、昨今、「投資予見性」とか「安定供給の所在があいまい」との声がネットや紙面で散見される。消費者の頭には、安定供給の所在が、かつての発送一体時代のまま、まるで大きな慣性力をもって記憶にとどまっているかのようだが、全てが曖昧なままでは、技術開発の切れ味にも関わってくる。制度面と頭の中の整理が必要である。

最後に、定量的な話をいえば、60万kW級の火力機を、LNG焚きコンベンショナル機から最新鋭のコンバインドサイクル発電にリプレースした場合、利用率を70%とすると、約50万tのCO2排出が削減されることになる。まずは最新鋭機でCO2削減を図り、順次カーボンフリー燃料に転換していくことが、過去の教える未来と考える。寡黙と勘違いされる火力屋だけど、どんどん発言していきたい。

ますかわ・ひろゆき 1987年東京大学工学部卒、東京電力入社。東火力事業所計画部長、広野火力建設所副所長、火力部部長代理などを経て、2022年より現職。

これも「脱炭素時代」の流れ 高炉跡地が〝先進水素拠点〟に


【脱炭素時代の経済評論 Vol.08】関口博之 /経済ジャーナリスト

川崎市臨海部にあるJFEスチール東日本製鉄所京浜地区の高炉が昨年9月休止した。222haの跡地のうち鉄鉱石や石炭の原料ヤードだった場所を今年7月、日本水素エネルギーが賃貸借することになった。この会社は世界初の液化水素運搬船を開発した川崎重工業と岩谷産業が設立した。大型船用バースがある21‌haの用地に今後、5万㎥の水素タンクやローディングアームなどを設置する計画だ。

日本の産業近代化と、京浜工業地帯のシンボルだった高炉の火が消え、そこが水素供給拠点に変わる─何とも脱炭素化時代を象徴する光景がここに出現することになる。国内各地でさまざまな水素プロジェクトが構想されているが、中でも川崎市は先進地と言える。

2015年、国に先駆け「川崎水素戦略」を打ち出し、それを発展させた形で一昨年には「川崎カーボンニュートラルコンビナート(CNK)構想」を策定した。石油・化学・鉄鋼・電力を主要産業とする臨海部に特化し、何より産業競争力の維持・向上を主眼とした水素活用構想なのが特徴だ。コンビナートはCO2の排出源なだけではなく、これからはエネルギー供給を通じ「カーボンニュートラル化の原動力にもなれる」、これがコンセプトだ。

川崎CNK構想のパンフレット

前述の水素供給拠点は国のグリーンイノベーション基金事業である「液化水素サプライチェーンの商用化実証」で水素受け入れ地として選定された。30年にも豪州で作られた水素を液化水素運搬船で運び込むことを想定している。将来はタンクも増設し商用化に移行する考えだ。

川崎市では水素需要の将来推計も行っている。それによると市臨海部と隣接する東京・羽田エリア(空港施設への水素供給も想定)、横浜エリアを含め、日量2300tの需要ポテンシャルがあることが分かった。需要拡大が見込めるものの、それには約67㎞に及ぶパイプラインが必要で総建設コストは1500億円に上ると試算された。

水素を使う側で期待されるのは水素発電。企業も動き出している。化学メーカーのレゾナック(旧昭和電工)は、川崎事業所内の火力発電所1基を改修し、30年に水素混焼発電を始める。出力100MW以上を想定し川崎重工とも協業する。まさに〝ファースト・ペンギン〟を目指す動きといえよう。

今年5月、国の「水素社会推進法」が成立したこともさまざまな動きに弾みを付けている。新法では水素の供給、利用をする事業者が共同計画を策定し認定されれば、15年にわたって化石燃料との価格差を国が補填・支援したり、インフラ整備の助成をしたりする。公募は年内にも始まる見込みだ。川崎市もまずは、この制度に採択される案件を市臨海部から、と意気込む。

水素にまつわるプロジェクト自体、従来は〝こんなことに使える〟的な小規模な案件でも意義があったが、いよいよこれからは商用化を見据える段階だ。

「改めてコストに本気で向き合わざるをえない」(川崎市の担当者)という。ファースト・ペンギンに続く、セカンド・ムーバーもしっかり出てくるのか。事業性の見極めも含めて、本格化する水素戦略の焦点だ。

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.01】ブルーカーボンとバイオ炭 熱海市の生きた教材から学ぶ

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.02】国内初の水素商用供給 「晴海フラッグ」で開始

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.03】エネルギー環境分野の技術革新 早期に成果を刈り取り再投資へ

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.04】欧州で普及するバイオプロパン 「グリーンLPG」の候補か

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.05】小売り全面自由化の必然? 大手電力の「地域主義」回帰

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.06】「電気運搬船」というアイデア 洋上風力拡大の〝解〟となるか

・【脱炭素時代の経済評論 Vol.07】インフレ円安で厳しい洋上風力 国の支援策はあるか?

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せきぐち・ひろゆき 経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

DR資源の可能性を広げる挑戦 「PEMS」の社会実装に向けて


【電力中央研究所】

坂東 茂/電力中央研究所グリッドイノベーション研究本部ENIC研究部門(兼)社会経済社会研究所 上席研究員

需要側資源の活用をテーマに研究活動を行っているのは電力中央研究所の坂東茂上席研究員。

2010年にこの課題に着手し、海外事例の調査から実証実験まで多様な研究手法を展開してきた。

フレキシビリティ供給源としての需要側資源の活用―。電力中央研究所グリッドイノベーション研究本部ENIC研究部門の坂東茂氏が取り組むテーマだ。再生可能エネルギーの普及が進む中、ヒートポンプ(HP)給湯機、産業プロセス・機器はDR(デマンドレスポンス)資源として重要視され始めている。坂東氏は、DR資源を束ねて制御するVPP(仮想発電所)事業について、国内で経済的に運用するための技術や設計などの評価を行っている。

電中研に入所した2010年から需要側資源の活用をテーマに据え、多様な研究手法を駆使してきた。VPPの事業性について、先行していた国外の事例を対象に、事業性の確保やリソース拡充に向けた工夫を分析し、国内でビジネス展開する上での課題を探った。国内調査においては15年に、産業用需要家を対象とした予備力型DRへの対応可能性を調査するため、大規模なアンケートを実施。 21年には、資源エネルギー庁のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会が実施した調査にも協力した。双方とも結果として、電気炉や電解設備などが有望なDRリソースであることを明らかにした。

宮古島におけるフレキシビリティ供給が可能な植物工場の実証施設
提供:電力中央研究所


DR対応可能な植物工場 離島の経済循環に貢献

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの委託事業で、DR活用が可能な「植物工場用エネルギーマネジメントシステム(PEMS)」を開発した。主な電力消費機器である、発光ダイオード照明機器、エアコン、培養液循環ポンプの3点をDRの対象とした。これらは太陽光発電(PV)をメイン電源とし稼働させる。PV出力の余剰分を蓄電池で貯蔵し、夜間は蓄電池からの供給で、再エネ由来の電気で運用を目指すというものだ。さらには、電力系統側からの要請があればDR対応も可能である。もちろんDR対応で植物の生長に影響が出ないようにする必要がある。実験対象となったレタスは、光の強度や照射時間、室内温度が適切でないと生長障害を引き起こすため、影響が出ない範囲を特定し、DRメニューとして組み込んだ。

実証地には沖縄県宮古島を選んだ。21年から二年間検証した結果、DR信号に反応して、需要の上げ下げが設計通りに行われたことを確認した。

「宮古島は約5万5000人の島人口に対し、毎年100万人ほどの観光客が訪れる。だが顧客に提供する食料やエネルギーは島外に依存しており、地産地消による経済循環が求められていた。このような離島の課題に対して一役買えないかと思い、実証を検討した」

こうした取り組みは国外でも反響を呼んでいる。今年5月にはNEDOからの委託事業でイギリスを訪れ、現地の政府関係者や農業関係者、学識者と意見を交わした。特に冬期の日照時間が短いイギリスでは、風力発電の余剰電力を植物工場で活用したいという要望が強い。


一つのテーマにこだわらず 「ワクワク」が原動力

学生時代には異なる分野の研究に専念していた。

東京大学工学部産業機械工学科では、HP給湯機などのライフサイクル評価を卒業論文のテーマにした。その後、東大大学院新領域創成科学研究科に進学し、修士課程では火力発電所の排ガスからのCO2分離技術の経済性評価に焦点を当て、博士課程ではCCS(CO2回収・貯留)へとテーマを変えた。

博士課程修了後の05年、東大大学院工学系研究科の特任助教として、分散型エネルギーシステムの最適な設備規模・運用などの設計技術について研究した。テーマをコロコロ変える研究者は珍しいというが、「ワクワクするテーマには心が動かされる」と語る。助教時代には電中研の研究者と話す機会が多かった。その際、研究熱心な姿勢や活発な議論が交わされる点に興味を引かれて入所を決意した。

今年6月と9月には電中研の主催で、VPP・DRに関するセミナーが開かれ、坂東氏も登壇した。オンラインと対面のハイブリッド形式で開催し、延べ500人ほどが参加した。

「今回宮古島で実証した植物工場のように、電力需要を制御することにより、需給バランスの調整に協力できるDR資源を探索することは重要だ。こうした役割を果たすVPP事業に関して研究者として最新の動向も踏まえた研究成果や情報の発信を心掛けたい」

11月にも「研究報告会」 が開催される。14年間にわたり需要側資源の活用に関する研究に従事してきた坂東氏の研究報告に注目が集まる。

※1 「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」
※2 23年度「スマートコミュニティ実証事業に関する技術のシステム化検討と海外展開ポテンシャル調査」

ばんどう・しげる 東京大学大学院新領域創成科学研究科博士号(環境学)取得。2010年に電力中央研究所入所。研究分野はエネルギーシステム工学、熱流体工学、エネルギー経済。

ガザ紛争激化から1年 石油価格はどう動いたか


【マーケットの潮流】野神隆之/エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)首席エコノミスト

テーマ:国際原油価格

イスラエル・ガザ戦争開始後、この1年間の国際原油価格はどのような値動きを見せたのか。

そして終結が見通せない中での今後の展望は―。JOGMECの野神隆之氏が解説する。

昨年10月7日にイスラエルとイスラム武装勢力ハマスとの間で、ガザ地区における戦闘が開始されてから約1年が経過した。戦闘は両者間に限らず、最近ではイスラエルとイスラム武装勢力ヒズボラとの間で、レバノンを舞台にし、激化しつつある。世界の主要な産油地域である中東情勢の不安定感が増しつつある中、石油市場はどう反応しているのだろうか。足元にかけての約1年間を中心に、世界石油市場の動向とその背景、今後を展望する上で重要と考えられるポイントなどにつき説明したい(10月18日時点の情報に基づく)。

2023年10月以降の原油価格の推移
出所:CME及びICEデータをもとに作成

まず、昨年10月以降の原油価格(WTI、以下同)を概観したい。イスラエルとハマスとの戦闘が開始した直後には原油価格は上昇基調となり、19日には1バレル当たり89・37ドル(終値、以下同)に到達した。また、その後も原油価格は、しばしば上昇する局面が見られた。例えば今年4月5日、7月3日、8月12日および10月7日には局所的な高値に到達した。


当事者間の対応が抑制的 局所的高値は沈静化へ

局所的な高値の要因は、全てイスラエルとイランおよびイランが支援するイスラム武装勢力との戦闘を含む中東情勢に関連する。昨年10月の高値は、イスラエルとハマスとの戦闘開始に伴うもの。今年4月は、1日にシリアにあるイランの在ダマスカス大使館周辺に攻撃があり、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」の上級司令官が殺害された。7月は3日にイスラエル軍がレバノン南部を攻撃した結果、ヒズボラの上級司令官が死亡した。8月はハマスの指導者ハニヤ氏がイランの首都テヘランで攻撃を受け死亡した旨が7月30日夜(米国東部時間)以降報じられ、10月は、9月27日にレバノンの首都ベイルートを空爆した結果、ヒズボラの指導者ナスララ師が死亡した、といった具合である。

しかし、4月5日の高値は86・91ドル、7月3日は83・88ドル、8月12日は80・06ドル、そして10月7日は77・14ドルと、その水準は時間を追うごとに下振れしている。背景には、中東情勢の不安定化に伴う石油供給途絶の可能性を巡る市場の懸念が後退しつつあることがある。イスラエルとハマスとの戦闘が開始された当初は、ハマスを支援するイランが軍事面を含めどのように行動し、中東の石油供給にどのような影響が発生するかを巡り、不透明感が相当強かった。不透明感の強まり故に市場関係者間では、中東からの供給途絶の懸念が増大した結果、原油相場が押し上げられた側面がある。

その後、イスラエルとイランとの対立が先鋭化する場面が見られ、両者がお互いの領土への攻撃を実施したと見受けられる場面があったものの、両国の対応は総じて抑制的で、石油供給が実際に脅かされる場面は見られなかった。対立の先鋭化をもってしても、石油供給への支障が発生する可能性は低いとの感覚が市場関係者間に広がった結果、原油価格の上昇が抑えられる格好となった。

敦賀2号機「不許可」は非科学的 規制委は専門家の意見反映を


【石川和男の白熱エネルギートーク】

敦賀2号機を巡り原子力規制委員会が近く、日本原電に対して「不許可」を通知するとみられる。

地震地質学が専門の奥村晃史・広島大学名誉教授は、規制委の判断を「非科学的」だと喝破した。

エネルギーフォーラムは9月24日、地震地質学が専門の奥村晃史・広島大学名誉教授、ジャーナリストの石井孝明氏を招き、オンライン番組「第25回石川和男の白熱エネルギートーク」を配信した。その一部を紹介する。


合理性無視した議論 規制委の〝伝家の宝刀〟

石川 ズバリ、敦賀2号機の審査における最大の問題は何でしょうか。

奥村 専門家の意見が反映されていないことです。審査書を見ると、「不確かさが多い」「複雑で分からない」「可能性は否定できない」といった文言が多用されている。科学者ではなく役人が書いた文章だとすぐに分かります。

石川 原子力規制委員会は専門家の集まりではないのですか。

奥村 地震・津波を担当した石渡明元規制委員は、地震や若い岩石の専門家ではありません。ほかのサイトでも誤った判断や間違った調査を指示していて、科学的な専門性はないと言わざるを得ません。また審査チームに地質調査の経験がある人はいても、断層や地震、若い地層について学識が豊かで科学的な判断ができる人はいないでしょう。

石渡明委員の後任・山岡耕春委員

石川 ほかに問題はありますか。

奥村 設置許可基準規則(新規制基準)3条3項では将来活動する恐れのある断層(活断層)の上に、原子炉建屋など耐震重要施設の建設が認められていません。敦賀2号機は1982年の着工前に調査をして、当時の基準では問題がなかったから政府が設置を許可した。ところが、2013年に施行された新規制基準では不許可となる公算が大きい。これは法律的に不適切ではないですか。政府の誤った判断によって企業が損失を被れば、通常は企業が国を提訴する。しかし電力会社はそれができない。

石井 理不尽なことをされても、日本の電力会社の社員は「審査に向けて頑張ります」と意気込みます。ある社員に私が「なぜ怒らないのですか」と尋ねると、ポカンとしていました。電力マンは真面目でいい人たちばかり。「国や規制と戦う」という発想がないのでしょう。

石川 12万~13万年前以降に活動した断層は「活断層」とみなされるわけですが、将来活動する可能性はどのように判断するのでしょうか。

奥村 断層が地層を食い違わせる、これが地震です。一番シンプルな確認方法が上載地層法で、地震を起こした断層の上に載っている地層が12万~13万年前よりも古いかどうかを判断します。日本原子力発電は上載地層法で、焦点となったK断層が「12万~13万年前以降に活動していない」と主張しました。一方で規制委側は「活動した可能性を排除できない」と判断した。

石井 原電は地層の年代を推定するために光ルミネッセンス(OSL)年代測定という手法も用いました。すると、焦点となっている地層の作られた年代が「13・3万年(誤差±0・9万年)」という結果になった。しかし規制委は、誤差を考慮すれば13万年前より新しい時期に作られた地層の可能性があるとして突っぱねたのです。

奥村 地層の年代を推定するための個別データには、必ず不確かさが含まれています。「若い年代をとれば13万年前より新しい時期になるからアウト」というのは幼稚な議論。不確かな事実を集めて合理的な判断をするのが科学者です。

石川 なるほど。志賀2号機や東通1号機は「活断層論争」に終止符が打たれましたが、敦賀2号機との違いはどこにあるのでしょうか。

奥村 そこまで大きな違いはありません。「可能性が否定できない」という論法を使えば、不許可となっていた可能性があります。新規制基準3条3項は規制委にとっての〝伝家の宝刀〟ですよ。志賀や東通には刀を抜かなかっただけ、という見方もできる。

【フラッシュニュース】注目の「政策・ビジネス」情報(2024年11月号)


NEWS 01:革新的な電力流通モデル開発 NTTなど再エネ接続後押し

NTTアノードエナジーなど8社はこのほど、配電網の潮流データを分析し、電流容量の増加や電圧上昇時に蓄電池制御を一体的に行う、革新的な電力流通モデル「Internet ofGridプラットフォーム(IoGプラットフォーム)」を開発したと発表した。スマートメーターで系統電流や電圧などを計測し潮流データを分析。配電網の容量を超過する場合があれば、余剰分の電力を蓄電地へ充電し配電網の負担を抑える仕組みを実現した。これにより太陽光などの再生可能エネルギーを配電網に接続しやすくする。

実証試験で使う蓄電所の一つ(八百津町)
提供:NTTアノードエナジー

IoGプラットフォームのスマートメーターは、従来型とは異なり、通信部に新たな機能を搭載できる「サービス基盤」を内蔵する。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)を介さずに家庭の機器と直接接続することも可能だ。電気給湯器やEV充電器などの需要家リソースを直接制御し、再エネの発電量に応じた運用も展開できる。

同社はこの一連のシステムを一般送配電事業者などに販売するほか、自ら配電事業を手掛ける際に利用することも視野に入れている。実用化に向けて同社は今年9月から約3カ月間、岐阜県八百津町で実証試験を行う。同町とNTTの施設に5台のスマートメーターを設置し、電圧上昇時に蓄電池へ充電されるかを確認する。再エネ普及を後押しするカギとして、同モデルの実用化に期待がかかる。


NEWS 02:第5回の先行地域決定 3年目で案件80超到達

環境省が9月下旬、「脱炭素先行地域」の第5回選定結果として新たに9提案を追加すると発表した。取り組みが3年目を迎える中、これで38道府県108市町村の82提案となった。2025年度までに少なくとも100か所という目標にあと数回の選定で到達する見込みだ。

今回選定されたのは、①北海道厚沢部町、②岩手県陸前高田市、③岩手県釜石市、④三重県度会町、⑤神戸市、⑥広島県東広島市、⑦山口県下関市、⑧福岡市、⑨長崎県五島市―。例えば五島市では、洋上風力などの立地が進む中、地域が系統末端部に位置するため、地域全体で出力抑制回避に向けた策を講じる。地域新電力がダイナミックプライシングを活用した再エネメニューを創設。加えて系統混雑緩和に向け、新設アグリゲーターがデマンドレスポンスを行う。これらに伴う風力発電事業者の収益を地域に還元する狙いだ。非化石価値のマネジメントや地産地消も促す。

評価委員会は、第5回の総評の中で、地域の脱炭素の取り組みが着実に広がり、先行地域などで目標前倒しの動きもあると指摘。例えば千葉市は、公共施設の電力消費に伴うCO2排出量実質ゼロ目標を、30年から26年に前倒して達成する見通しだ。この施策を機に、「計画に記載されている以上の取り組みが加速し、地域脱炭素の政策として位置付けられていくことは大変意義深い」と強調した。

一方、自然・生活環境への配慮の不足や、営農型太陽光で肝心の農業生産をないがしろにするといった再エネトラブルは拡大傾向にある。これについては、「先行地域のように、地域の実情を把握している地方公共団体が主導し、地産地消型、地域裨益型の再エネ導入を推進することが重要である」と訴えた。


NEWS 03:「高レベル」の青森県搬入 宮下知事反発の背景は

「理解も協力もできない」

電気事業連合会が9月10日、フランスからの放射性廃棄物返還に関する新方針を青森県に伝えると、宮下宗一郎知事はこう一蹴した。

日本は使用済燃料の一部を、英国とフランスの工場に委託して再処理している。その際に発生した放射性廃棄物は返還され、日本原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県六ケ所村)で保管する。

フランス分についての高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体1310本)は、2007年までに12年かけて返還が完了した。今回焦点となったのは低レベル放射性廃棄物だ。その数、およそ1800本。日仏事業者間の交渉で設定した返還完了期限は33年だが、8月に貯蔵管理センターのしゅん工時期が26年度へと2年以上延期。過去の国際輸送実績を踏まえても33年までの返還は困難だ。

そこで電事連は、高レベルのガラス固化体約20本に交換した上での搬入を青森県に申し入れた。この「交換返還」はすでに英国分で実績がある。体積や輸送回数が減る一方で、放射線の影響は等価。貯蔵管理センターの貯蔵量低減や最終処分場の規模縮小にもつながる。

宮下知事は強い拒否感を示したが、実は英国分の交換返還の際も事業者の申し入れから約半年後に三村申吾知事(当時)が了承した過去がある。宮下知事は昨年6月の就任以来、むつ中間貯蔵施設の事実上の操業容認など原子力政策に協力的な姿勢を示してきた。複雑な県民感情が絡み合う問題だけに、今は〝小休止〟が必要な時期なのかもしれない。

とはいえ仮に宮下知事が了承しても、貯蔵管理センターが原子力規制委員会の審査に合格する必要が……。いばらの道は続きそうだ。


NEWS 04:WANO総裁に小早川氏 廃炉への取り組み評価か

世界原子力発電事業者協会(WANO)は9月30日、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで開催した隔年総会で東京電力ホールディングスの小早川智明社長を総裁に選出した。

WANO総裁に就任した小早川智明氏
提供:東京電力ホールディングス

WANOはチェルノブイリ原子力発電所の事故を契機に1989年に発足した。緊密なコミュニケーションにより、原発の安全性と信頼性を最高レベルに高めることが使命だ。東電ではかつて91~93年に那須翔元会長が総裁を務めたが、それ以来の就任となる。現在、CEOには関西電力出身の千種直樹氏が就任しており、理事会のメンバー3人のうち2人が日本人に。小早川氏は東京で予定されている2026年の隔年総会に向けての準備を担当する。

就任あいさつで小早川氏は福島第一原発の現状を説明した上で、「26年の隔年総会では福島第一の視察ツアーを企画している。皆さんには、ぜひ福島の復興状況や廃止措置の状況を視察していただくことを望む」と次期総会への展望を語った。

原子力が専門の学識者は小早川氏の総裁就任について、「東電が行う福島事故の原因究明、廃炉作業から多くの知見が得られ、世界の原発の安全性を向上させている。小早川氏の総裁就任はこうした姿勢が認められている証左だ」と分析。国内では批判の矢面に立つことが多い東電だが、国際的には廃炉への取り組みが評価されている。

オンカロが試験操業開始 「10万年後の安全」を求めて


長い旅が始まろうとしている。フィンランドの使用済み燃料深地層処分場「オンカロ」が8月30日、試験操業を開始した。同国はいわゆる「核のごみ」の最終処分を巡り、世界のトップを走る。もちろん最終処分場の試験操業は世界初だ。使用済み燃料を再処理せずに直接処分するため、放射能が天然ウラン程度に低下するまでの期間は約10万年とされる。10万年もの間、誤って掘り起こされることはないか、言語の変遷などが想定される中で危険性を伝え続けられるか……。人類の壮大な挑戦と言ってもいい。

オンカロでは6500tの使用済み燃料を埋設予定だ

試験操業開始に際して、最終処分場建設の実施主体であるポシバ社のイルッカ・ポイコライネン社長兼最高経営責任者(CEO)は「今回開始した最終処分の試験運用は、ポシバ社にとっても全世界にとっても歴史的なマイルストーンだ」とその意義を強調した。

オンカロの視察経験がある日本の学識者は「世界初ということで感慨深い。原発活用国にはEUタクソノミーで2050年までに最終処分場のめどをつけるように求められている。各国への希望と刺激になるだろう」と分析。フィンランドのほかにスウェーデン、フランス、米国は既に処分地が決定している。

一方、日本は北海道寿都町と神恵内村で処分地選定プロセスの最初のステップである文献調査が行われてきたが、8月に国による報告書案の審議が終了した。また6月には3地点目となる佐賀県玄海町での文献調査が始まった。オンカロの試験操業が文献調査地拡大につながるといいのだが。

「災害復旧指揮車」を初導入 拠点の始動迅速化で支援に集中


【中国電力ネットワーク】

能登半島地震の復旧支援に初出動し、活動の指揮を執る現地拠点を迅速に立ち上げた。

積み重ねた経験をもとに多様な災害規模に応じた車両導入計画につなげる。

中国電力ネットワークは、2023年3月、他の一般送配電事業者に先駆けて、災害復旧指揮車(DREC:Disaster Recovery Command vehicle)を配備した。大規模災害時に速やかに出動し、被災地の復旧活動を指揮する拠点として機能する。

同社でDREC導入に向けて中心的な役割を担ったのが、配電技術部配電工法・安全グループの佐伯豊副長だ。これまでさまざまな災害現場に駆け付ける中で「最も大切なのは、復旧活動の指揮命令を統括する現地拠点が一刻も早く始動すること」と語る。支援に当たる多くの作業班が集まってきた際に、系統立った指示を出せる現地の司令部を確立していることが、復旧活動に不可欠であり、最重要であることをこれまでの経験から感じていた。

全長9.85m、全幅2.48m

拡幅時は全幅5.93mを確保。20人程度が同時にデスクで執務可能(約16畳相当)となる

観測史上最大級の勢力で関東地方に上陸し、千葉県を中心に甚大な被害をもたらした19年9月の台風15号。気象庁がのちに「令和元年房総半島台風」と命名したこの災害でも、佐伯副長は現地で対応に当たった。当時は自分たちの現地拠点を確保するために施設の会議室を借用したり、必要な資機材をレンタルするなど、現地拠点の設置に多くの時間を要した。さらに、現地の復旧状況により拠点の移動が必要であったため、移動のたびに拠点を再設置する必要があるなど、効率的な活動を行うことが難しかった。「こうした反省を踏まえて、広島に帰ってからも、自分たちの支援のあり方についていろいろ考えていました」と振り返った。

そしてその1カ月後、死者100人を超える大惨事となった台風19号が東日本に甚大な被害を与え、佐伯副長は再び災害現場に向かった。この時は1カ月前の教訓をもとに、拠点設置に必要な資機材を携行していたのだが、資機材の車両積み込みなどの事前準備に約1日を要した。エアテントで設営した現地での拠点設置においては、電源確保や空調設備の設置に加え、天候対策など執務環境の整備に課題があった。また、通信環境が整っておらず、指示内容を紙出力できずに口頭連絡となるなど、正確な情報伝達が難しい状況にもあった。

この二つの台風の災害復旧支援の経験から、車両本体に拠点機能を付加することで、出動要請があれば、その車両で現地入りし、復旧活動をすぐに開始できるのではないかと思い、DREC導入に向けて本格的な検討をスタートさせた。


正確な情報伝達可能に 平時は広報活動に貢献

自然災害の頻発化、激甚化が一層進んでいる。これまでにもあった台風や大雪などに加えて、近年では、豪雨などで毎年被害が発生している。出動要請の増加が今後も想定される中、検討開始から約3年後の23年3月、DRECは同社配電技術部配電工法・安全グループ(広島県安芸郡坂町)に初配備された。24年元日の能登半島地震に初出動。現地拠点を迅速に立ち上げ、支援体制を整えることができた。従来であれば、極寒の屋外でテントを張らなければならなかったが、今回はボタン一つ、わずか3分で車両を拡幅でき、15分程度で活動拠点が完成。復旧活動に携わる作業員の労力軽減と復旧支援への集中につながった。

また、DREC内にWi―Fi設備を設置し、社内セキュリティーの要件を満たすパソコンの利用環境を整えることでプリンターが使用できるようになったことに加え、複数の映写モニターを備え付け、関係箇所との連絡や調整などにおいて効率的で正確な情報伝達を行うことができるようになった。

さらに、精神的なタフさが求められる災害復旧支援活動の現場で、DRECの存在は心の安心感にもつながった。厳寒期の積雪の中で、復旧作業員にとってDRECは居場所を提供し、再び被災現場へ発つための休息の場になった形だ。

出動がない時、DRECは広報活動にも貢献している。自治体の防災訓練や地域の防災イベントなどに展示することで、多くの人が実際にDRECの車体を見て、中に入って災害時の司令部を体感してもらう絶好の機会となっている。「DRECを導入する際には想像もしていなかったことですが、見学された方は、DRECを実際に自分の目で見て、その機能を体感することで、われわれ中国電力ネットワークに対して、安心感や信頼感を持ってくれるようです」と佐伯副長は語る。

能登半島地震の災害復旧支援活動では、土地の隆起などにより、大型車が通行できる道路に制限があった。そのため、今後はもう少しコンパクトなDRECがあれば、もっと迅速に細かい支援を届けられるケースもあるのではないかと考えている。現在の車体は約13tで運転には大型免許が必要だが、「中型免許で運転できるサイズの新型DREC導入を検討したい」と佐伯副長は語る。まずは現行のDRECで経験を積みながら、次世代の災害復旧指揮車の開発につなげていく。

石破新内閣はエネ安保を中核に 政策の策定に必要な高い視座


【論説室の窓】井伊重之/産経新聞 客員論説委員

原子力の最大活用に前向きな姿勢を強調する新内閣の経産相。

緊迫化する国際情勢も踏まえ、安定電源を確保すべきだ。

石破茂内閣で経済産業相に就いた武藤容治氏は、今回が初入閣だが、これまでに経産副大臣や自民党の経済産業部会長、総合エネルギー戦略調査会事務局長を経験しており、エネルギー政策に通じている。家業である建材商社の経営を率いた経験もあって中小企業政策にも明るい。

初入閣した大臣の場合、就任記者会見の直前、役所の事務方が作成した想定問答を使いながら、主要政策に関するレクチャーを受ける。ただ、武藤氏の場合は「原発政策を含めてレクする必要がないほど、経産省の政策を深く理解されていた」(同省幹部)という。

その武藤氏は、就任会見で現在策定中の次期エネルギー基本計画について「原子力の最大利用は、安全という前提の中で進めていくのは当然だ」と指摘。その上で「再生可能エネルギーを最大限使いながら、原子力も安全に最大限再稼働し、さらに次世代革新炉も検討する」と述べた。これまでのエネ基で「可能な限り原発依存度を低減する」としていた原発の位置付けを転換する考えを強調した。

天然ガスの調達も重要な課題だ

東京電力の柏崎刈羽原発についても「地元に寄り添い、結論を出していくのが石破政権での仕事になる」と語った。同原発を巡っては、岸田前首相は自身が退陣する直前の9月、原子力関係閣僚会議を開き、地元自治体が求める避難路整備などを関係省庁に指示。これを踏まえて武藤氏は、新潟県を含めた地元自治体から再稼働に向けた同意を取り付けることが、石破政権の課題であるとの認識を示した。

石破首相は岸田政権の経済政策を踏襲する方針を掲げており、原子力政策も同じだ。岸田氏はGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を主導し、脱炭素電源として再エネと並んで原発を最大限活用する方針を打ち出してきた。とくにデジタル化の進展に合わせてデータセンターや半導体工場の増設が相次ぐ中で、拡大が見込まれる電力需要に対応する必要があるとの立場を示してきた。石破政権が原発活用の方針を継続するのは当然だろう。


首相官邸の体制が不安材料 GX会議の実行力も未知数

しかし、不安材料は残る。それは石破政権を支える首相官邸の体制だ。岸田前政権では嶋田隆元経産次官が筆頭の政務秘書官として、原発政策に関する政府の実質的な司令塔として機能してきた。岸田氏が主催するGX実行会議を支えてきたのも嶋田氏だった。出身母体の経産省と連携しながら、GX実行会議で原発を最大限活用する方針を示すなど、実務を取り仕切ってきた。新たに発足した石破政権の下で今後、そのGX実行会議がどのように位置付けられるかは不明である。

石破氏は、筆頭の政務秘書官に元防衛審議官の槌道明宏氏を抜てきした。槌道氏は石破氏が防衛相時代に秘書官を務めた経験があり、旧知の間柄だ。もう一人の政務秘書官には、石破事務所で20年以上も秘書を務める女性の吉村麻央氏を起用した。さらに6人の事務秘書官には外務、財務、経産などの各省から一人ずつ派遣されたが、この事務秘書官にも防衛省出身者を一人充てた。防衛省出身の秘書官が二人体制で官邸に配置されるのは極めて異例だ。

第2次安倍晋三政権では経産省出身の今井尚哉氏が長年、政務秘書を務めて安倍氏を支えてきた。安倍政権や岸田政権に比べ、石破政権では経産省の存在感が大きく低下したのは間違いない。そうした中で国民の間に不安感が残る原発を巡り、明確な活用路線をどこまで継続できるかを注目する必要がある。

石破政権に何より求めたいのは、エネルギー安全保障の確立である。ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢のさらなる緊迫化などで、国際的にエネルギー安全保障の重要性は高まるばかりだ。資源輸入国の日本にとってエネルギーの安定調達が実現できなければ、電気・ガス料金の抑制や温室効果ガスの排出削減も達成できない。防衛政策に理解がある石破氏には、エネルギー安全保障でも明確なビジョンを打ち出してほしい。


資源開発の投資促進に課題 電力自由化の見直し不可欠

これまでの日本のエネルギー政策は、温室効果ガスの排出削減や電力自由化にばかり重点が置かれ、エネルギー安全保障に対する視座が欠けていた。岸田政権は脱炭素電源としての原発の優位性に注目したが、石破政権はその視点をさらに高め、エネルギー安全保障をエネルギー政策の基本に据える必要がある。

その点で新内閣の発足直後に広島県で開催された「LNG(液化天然ガス)産消会議」は、大きな成果を挙げた。会議に参加したイタリアとの間で、LNGの安定確保について覚え書きを交わしたからだ。同国の炭化水素公社(ENI)は、カタールと新規のLNG契約を結ぶなど関係は親密だ。我が国ではJERAが2021年にカタールとの長期契約を更新せず、同国との関係が冷え込んでいるが、ENIを通じて新たなLNG調達の道が開かれた。

日本の場合、海外からの資源調達は豪州に大きく依存している。日本に輸入される発電用石炭の7割、LNGも4割を豪州から輸入している。日本もJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じて海外鉱山の開発投資ができる仕組みを導入したが、実際に日本向け輸入を担う民間の電力・ガス会社との関係を緊密にすることで実効性を担保する必要がある。

エネルギー安全保障の精度を高めるには、電力自由化の見直しも不可欠だ。国内の電源不足に対応するための予備的電源の最初の入札は不調に終わった。政府は電力自由化の枠組みの中で電源の安定確保を目指す構えだが、自由化と安定電源の確保は半ば相反する。自由化の進展で大手電力は、運転コストがかかる老朽発電所を相次いで廃止しており、電源の新規投資には消極的だ。新たなエネ基では原発の新設解禁も検討されているが、安定電源の確保は自由化とは異なる枠組みで用意すべきだ。

【覆面ホンネ座談会】石破政権を徹底分析 どうなる⁉ エネルギー政策


テーマ:衆院選と石破政権

自民党総裁選と立憲民主党代表選、さらには首相就任後史上最短での解散総選挙など、この秋は政局に嵐が吹き荒れている。エネルギー政策に与える影響と自民党・石破茂政権の行方を占った。

〈出席者〉 A政治家 B政治部記者 C経済部記者 Dジャーナリスト

─本号発行時には衆議院選挙が終わっている。読者には結果とともに楽しんでもらうとして、まずは注目選挙区から聞こう。

A 最大の注目は福井2区じゃないか。旧安倍派の幹部で非公認となった高木毅さんに、高市早苗さんの夫で8回の当選を誇る山本拓さんが挑む。山本さんは前回2021年の衆院選で比例単独だったにもかかわらず、21位という順位で登載され次点で落選した。今回は野党も含めて大混戦で、全国的に注目されている。福井県の原子力施設は全て福井2区に立地しているし、エネルギー業界とも関係の深かった保守の両者の対決を複雑な気持ちで見ている人も多いだろう。

B 経済産業相経験者では、兵庫9区の西村康稔さんと東京24区の萩生田光一さんが不記載問題で非公認。知名度が高く、選挙特番では大々的に取り上げられるだろうね。

総裁選後の政局に注目が集まる

A 経産相経験者の商工族といえば、神奈川20区の甘利明さんに触れないわけにはいかない。前回は現職幹事長ながら小選挙区で敗れて復活当選。自民党史上、最も任期が短い幹事長となってしまった。自民党の比例代表登載には「73歳定年制」という党則が適用されるので、今回は重複立候補できない。商工族のボスで霞が関としても大注目だろう。

C 経産省幹部いわく「甘利さんは政策好きの人」で、成長戦略、通商問題など経産省との関係は深かった。額賀福志郎さんも衆議院議長になり、経産相を務めた茨城4区の梶山弘志さんの存在感がより高まっていくだろう。

D 柏崎刈羽原発のお膝元、新潟4区からも目が離せない。自民党の公認候補は鷲尾英一郎さんだが、同じく自民党の元新潟県知事、泉田裕彦さんが立候補。野党で受けて立つのは前知事で立憲民主党の米山隆一さんだ。妻でタレントの室井佑月さんとの二人三脚の活動で、地元でよく浸透しているとのこと。自民党といえども泉田さんは再稼働に消極的だし、米山さんは住民投票を求めている。その中で再稼働推進の鷲尾さんはどうなるか。

B 新潟2区では原子力推進の有力議員である細田健一さんが非公認となった。細田さんは前回まで柏崎市と刈羽村を含む旧2区で戦っていたが、区割り変更で新2区での出馬となり柏崎刈羽地域を離れた。相手は立憲民主党の菊田真紀子さんで厳しい戦いが予想される。愛知7区の鈴木淳司さんは自民党の原子力規制に関する特別委員会の会長として、規制の効率化などを求めるなど議論をリードしてきた。だが不記載問題で総務相を辞任することに。前回は小選挙区で通っていて、その再現が期待されている。


自民党内大荒れか 「大連立」の可能性も

C 環境族は引退などが続き、存在感のある議員が少ない。そんな中で丸川珠代さんは参議院からの鞍替えを目指して東京7区から出馬する。不記載議員なので小選挙区の一発勝負だが、相手は日本維新の会の小野泰輔さんと立民の松尾明弘さん。もともと不記載が明るみになる前から激戦が予想されていた。

B 公認問題でいえば、不記載額が大きかったにもかかわらず「政治倫理審査会に出席した」という理由で福岡11区の武田良太さんと千葉3区の松野博一さんは非公認を免れた。でも政倫審に出席したからというのは建前で、武田さんは総裁選で石破さんを支援していたし、松野さんは安倍派でも岸田文雄さんに近い。非公認は「安倍派潰し」と見られても仕方がない。

A となれば自民党はどの程度の議席減に抑えられるかにもよるが、総選挙後は荒れるだろうね。無所属で西村さんや萩生田さん、和歌山2区で離党した世耕弘成さんが当選し、選挙に弱い旧安倍派議員が比例復活できずに落選したとする。「仲間」を失った彼らがどれだけ数の力を誇れるか分からないが、火種はくすぶり続ける。早くも週刊誌は旧安倍派や麻生派、旧茂木派が高市さんを立てて「石破降ろし」に走るなんて書いている。茂木敏光さんと高市さんは当選同期の〝不仲〟で有名だから簡単にはいかないだろうが。

B そうなれば石破さんが立民代表の野田佳彦さんと組んで「大連立」なんてことも。それを呑めない自民党内の右派と立民内の左派は党を割る。そもそも第二次安倍晋三政権以降に勢力を膨らませた「安倍チルドレン」と旧岸田派などの伝統的な議員は、理念や政治家としての作られ方が違う。そうした違いを包含しながら政権政党を維持してきた自民党内で「恨みと妬み」が勝つのか、総選挙後の政局はどう動くか。

AZEC首脳会合で原則再確認 実質ゼロへ「多様な道筋」


日本政府が呼び掛け発足したアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の第2回首脳会合がラオスで10月11日に開かれ、「今後10年のためのアクションプラン」と題した共同声明に合意した。石破茂首相も参加し、気候変動対応・経済成長・エネルギー安全保障の同時実現を目指す「トリプル・ブレークスルー」、「一つの目標、多様な道筋」といった原則を再確認。「1・5℃」の必要性を明記しつつも、欧州主導の議論と一線を画し、アジアの実情を考慮した道筋を示した。

AZEC会合は石破首相(右から3番目)の外交デビューの場ともなった(提供:朝日新聞社)

AZECにはミャンマーを除くASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国や日本、豪州の11カ国が参加。共同声明では、各国の政策策定などを支援するため、今夏設立したアジア・ゼロエミッションセンターを通じて協力する方針を提示。関連技術としては、再生可能エネルギーや送電網、省エネ、ゼロエミッション火力などさまざまな分野がある。また、天然ガスやLNGが移行燃料として重要な役割を果たすことや、原子力エネルギーの安全・平和的利用に関する協力の可能性にも触れた。

東京大学公共政策大学院の有馬純特任教授は、「AZECは、その原則を日本一国ではなくアジアの声として発信することで、現実に即したエネルギー転換の重要なプラットフォームとなる可能性がある。岸田文雄前首相の発案を踏襲し、この原則を首脳レベルで再確認できたことが大きかった」と指摘。さらに、「第1回と異なりASEAN首脳会合とセットで開催し、位置付けがランクアップしたことも意味がある」と解説する。

稼働に対するメリットが必要 地元に「非化石価値」の還元を


【原子力発電所の再稼働】

インタビュー:本部和彦/東京大学公共政策大学院TECUSEプロジェクトアドバイザー

再稼働を巡り、国や需要地が立地自治体に寄り添う姿勢が求められている。

原子力政策に詳しい本部和彦氏は、交付金など従来の仕組みにとらわれない利益還元策を提案する。

─わが国の原子力発電の必要性についてどう考えますか。

本部 急増が見込まれる電力需要への対応、パリ協定が求める国が決定する貢献(NDC)で示した温室効果ガス(GHG)削減目標達成のために、原子力発電所の再稼働は必要不可欠です。また再生可能エネルギーは開発が太陽光発電に集中したことで、全国で出力抑制しなければならない状況となっています。風力発電も電力需要が高い夏場には利用率が低下するなど課題があり、GHGを排出しない大型のベースロード電源としては当分の間、原子力しか選択肢がありません。

再稼働の経済的メリットとは


原子力の価値を再考 企業誘致にもつながる

─政府は8月、柏崎刈羽原子力発電所(KK)再稼働に焦点を絞った原子力閣僚会議を開催しました。再稼働に向けて避難道路の国費での整備といった方針を確認しています。

本部 現在も電源立地地域対策交付金が新潟県に交付され、KKが立地する柏崎市と刈羽村以外も恩恵を受けています。また柏崎市と刈羽村、周辺自治体には電力契約に対する給付金が存在します。今後は女川原子力発電所で作られた電気が新潟県に流れてくるでしょう。しかし小売りが自由化されたとはいえ、

新潟県は東北電力の管内で、「KKが再稼働しても電気は首都圏で使われて地元にはメリットがない」という声が根強いのも事実です。これまでは交付金や給付金など税金で地元の負担に「お返し」をしてきましたが、これは立地に対してのお礼的な意味合いがありました。しかし、これからは原子力発電所の「稼働」に対して、新たなメリットを与える必要があります。

─何か手立てはありますか。

本部 原子力が生み出す価値とは何でしょうか。一つは私たちの生活に欠かせない電気を作ることです。電気は需要地に運ばれて初めて価値を持ちます。

もう一つの価値は非化石価値を生み出すことです。いま非化石価値の取引は固定価格買取(FIT)制度の電源を対象とした「再エネ価値取引市場」と、原子力を含む非FIT電源が対象の「高度化法義務達成市場」の二つに分かれています。現状では、KKの非化石価値は東京電力の供給区域に広く薄く配分されることになりますが、非FIT非化石価値を立地自治体に還元する仕組みを作ってはどうでしょう。交付金や給付金は限りある税金の振り分けで財源的な制約があります。しかし発電事業者の保有する非FIT非化石価値であれば、そうした制約はありません。

例えば新潟県に立地する企業が、非化石価値を優先的に購入できるようにする。企業はGHG排出規制への対応が容易になり、データセンター(DC)などを手掛ける電力多消費企業の進出も期待できます。

【イニシャルニュース 】法改正が起爆剤? LP業界の合従連衡


法改正が起爆剤? LP業界の合従連衡

「コンサルタント会社に持ち込まれるLPガスのM&A案件が急激に増えていると聞く。今後、相当なスピードで業界再編が進んでいくのではないか」

こう語るのは、エネルギー業界通のK氏だ。かつて3万を超える販売事業者が存在していたLPガス。現在は1万6000社程度と半減したものの、今も全国津々浦々、都市ガスが行き届かない地域のエネルギー供給を担っている。その業界にM&Aの嵐が吹き荒れる背景には、過疎化や他エネルギーとの競争などで需要が減り続けていることもあるが、「液石法改正が起爆剤になっている」(業界関係者D氏)との見方も。

中小LPガス業者の行方は?

資源エネルギー庁は今年4月、LPガス業界の不透明な商取引の是正に向け液化石油ガス法を改正した。第一弾として、7月にはガスの契約を獲得するための過大な営業行為が制限された。問題は来年4月に施行を控えた、第二弾の「三部料金制の徹底」だ。

三部料金制には、ガスの消費とは関係ない設備の費用が料金に上乗せされている現状を是正する目的がある。だが、システムの変更やマニュアル作りなど大掛かりな対応に迫られるため、「特に零細事業者にとっては困難。廃業の引き金になってもおかしくない」(業界紙記者A氏)。これを機に、業界再編が加速しそうな情勢となっている。

目下、LPガスの大規模M&Aの案件として業界関係者が注視するのが、M銀行系の投資専門子会社Sが全株式を取得したR社の行方だ。「Sは1年以上R株を保有する気はない。新たな買い手を探しているはずだ」と前出のK氏。事業規模を考慮すると、業界最大手の一角を担うN社が最有力といったところか。


津波想定が25mに どうする浜岡の防潮堤

中部電力浜岡原発の防潮壁が、さらにかさ上げを迫られることになりそうだ。原子力規制委員会は10月11日の審査会合で、南海トラフ地震で巨大津波と海底地滑りが重なった場合、浜岡に到達する津波の高さが最大で25・2mに達するとの中電の評価を概ね了承した。現在の防潮壁の高さは22mのため、中電では壁のかさ上げも含めて対応を検討するとしている。

2011年の東日本大震災以降、中電は浜岡の防潮壁について当初は標高18mで工事に着手。しかし国の有識者会議が想定津波を最大19mとしたことを受け、22mに引き上げ15年12月に完成した。ただ、想定津波はその後も21・1m→22・5m→22・7m→25・2mと段階的に引き上げられてきた格好だ。

中電はさらなる追加工事を行うのか。専門家K氏は「既存の防潮堤(20mの鉄筋コンクリートの上に、さらに2mの鋼板を載せている)で、さらに3m以上のかさ上げは、構造的にも強度的にもさすがに無理があるのでは」と指摘する。

「既存の防潮堤の前面に津波の高さ、津波力を弱める構造物を造る方法も考えられるが、相当な費用が必要になり、新たに造った構造物が既存の防潮堤に悪さをしないなどの実証試験が必要となる。最も現実的な手段は、現行の審査基準である『ドライサイト』をやめることだ。敷地内に津波が流入しても、重要施設に津波が侵入しない構造とすることで対応するべきだ」

今後、新たな知見が出て津波想定がさらに引き上げられる可能性もある。そのたびに、「ドライサイト」の判断基準で防潮堤の引き上げを行うことは非現実的といえよう。すでに地元住民からは、浜岡を守るための防潮壁ばかりに津波対策の関心が向かう風潮に疑問の声が聞こえている。

「25mといえば7階建てのビルくらいの高さだよ。そんな巨大津波が押し寄せてくれば、遠州灘沿いどころか静岡県は壊滅状態になる。その時、われわれ住民を津波から守るための対策を、国や自治体はどう考えているのか。正直言って、浜岡原発がうらやましい。現状では浜岡だけが津波から守られ、避難所となるのは想像に難くない」(浜松市内に住むS氏)

エネ価格補助またも延長か 維新は選挙公約で見直し提起


物価高騰対策で岸田政権時代から続く燃料油・電気・ガス価格への補助金が、またも延長される可能性が濃厚だ。

自民党は今回の衆院選公約の中で、「電気・ガス料金、燃料費高騰対策と併せて、物価高が家計を圧迫する中、国民の皆さまの生活を守るため、物価高騰の影響を受ける事業者や低所得者、地方などに寄り添ったきめ細かい対応など、物価高への総合的な対策に取り組む」と、継続の方向を提示。公明党も公約に「家計を圧迫している電気・ガス料金、ガソリン等の燃料費への支援を続ける」と明記した。

「1ℓ175円」をターゲットに官製相場と化したガソリン価格

化石エネルギーの価格相場が落ち着きを見せている中で、電気・ガス補助は10月分まで、燃料油補助は年末までと、岸田政権では出口戦略の方向性を示していた。にもかかわらず、選挙対策のため、国費11兆円投入の効果や課題などを検証せず、なし崩し的に継続するような公約に対しては、エネルギー業界内外で疑問の声が渦巻いている。

こうした中、日本維新の会だけが公約で、価格補助について事実上の見直しを提起した。〈事業者への補助金投入ではなく需要家への直接給付、最終消費者の省エネ・節電へのインセンティブが働く激変緩和制度の導入、一過性の対策ではなく、持続的に省エネ・節電に資する設備・家電への投資の促進、価格高騰による影響が大きい低所得層への手厚い対応を行う〉

「維新のみが『激変緩和措置廃止』に伴う激変緩和策として、代替案を提示してきたことに注目している。これを機に、補助廃止への議論が盛り上がってほしい」(国際石油アナリスト)

【コラム/11月7日】BRICS首脳会議を開催 脱炭素至上主義より現実的政策を宣言


杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 

BRICS会合が開催された。
日本貿易振興機構(JETRO)のHPhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2024/10/cfad94d12688624c.htmlで以下のように紹介している。

“BRICSは10月22~24日、ロシア西部のカザンで第16回首脳会議を開催し、36カ国が参加した。原加盟国の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)に加え、2024年1月から枠組みに加わった4カ国〔アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプト〕を含む拡大体制となったBRICSとして、初めての首脳会談開催となった。

首脳会議は「公正な世界の発展と安全保障のための多国間主義の強化」をテーマとした。全体会合で採択された共同宣言では、ドルに依存しない自国通貨での新たな決済システムの必要性を確認し、その導入の検討を継続することや、新たに「パートナー国」の制度を創設することが盛り込まれた。パートナー国は加盟国に次ぐ立場にあたる準加盟国に相当し、加盟国との経済協力や会議への参加に対する権利を持つ。パートナー国の創設は、グローバルサウスの結束力を高める狙いがあるとみられる。パートナー国には13カ国(インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ、トルコ、アルジェリア、ナイジェリア、ウガンダ、ボリビア、キューバ)が候補と複数のメディアで報じられた。„(以上、JETROのHPから引用)

あまり大きく報じられていないようだが、インド、中国をはじめ、これだけのグローバルサウスの国々がロシアを訪問し、共同で宣言をまとめたことは、今の世界情勢を認識する上で極めて重要なことである。西側諸国の意図に反して、ロシアは孤立などしておらず、多くの仲間がいる。むしろ、いま孤立気味なのは、欧米の西側先進国、特に米国なのかもしれない。

今回まとめられた共同宣言である「カザン宣言」は一読の価値がある(原文機械翻訳)。

一貫して主張されていることは、「いかなる国であっても、一方的に善悪を決めつけ、多国間主義に反する行動を取ってはならない」、という非難だ。

念頭にあるのは、明らかに、西側の近年の行動である。特に、イスラエルの軍事行動を支持し、支援している結果、周辺諸国において多くの犠牲者が出ていることを強く非難している。
また、これは名指しでは書いていないが、西側によるロシアに対する経済制裁と、それにまつわる二次制裁は、ロシアと貿易をしている多くの国にとって不評を買っている。ロシアはエネルギー、穀物などの物資を輸出してきた。今でもその輸入を継続する国々は多くある。

どの国も、大なり小なり、ジェンダーやマイノリティの人権問題などの火種を抱えている。それが西側によって、ロシアのように制裁対象にされて、西側の金融機関に預けていたドルやユーロ資産を没収されたのではたまらない。それで、西側に依存しないBRICSの決済システムを構築していこう、ということが今回の宣言でも大きなテーマとなった。