【巻頭インタビュー】大山 力/電力広域的運営推進機関 理事長
電気事業を巡る課題が次々顕在化し、電力広域的運営推進機関の存在感が増している。
現在、そしてこれからの同機関の役割とは。大山力理事長に話を聞いた。

―2021年4月に理事長に就任し、3年が経過しました。
大山 20年度冬季に全国的な電力需給ひっ迫を経験した直後の就任でした。その後も地震が発生したり、端境期の需給ひっ迫が起きたりとさまざまな困難に直面しましが、職員数も少なく、当機関だけで対応できることが限られている中で、電気事業に関わる事業者の協力を得て何とかか乗り切ってきました。この間、経済産業省から電力需給(kW、kW時)モニタリングや、FIT/FIP制度の賦課金の徴収・交付金の交付業務、将来の需給シナリオの検討などが新たにタスクアウトされ、就任時と比較すると実に多岐に渡る業務を手掛けるようになりました。
―さまざまな制度設計を主導する上で、心掛けていることはありますか。
大山 足元の課題解決を目指すだけではなく、将来を見据えて検討し、システムを動かしていくことが重要だと考えています。将来を見据えた業務を進めるためには、職員一人ひとりが良い電力システムを築き上げていくのだというマインドを持つ必要があります。そこで今年2月9日には、当機関が社会において果たすべき使命・目的として、「日本の電力の今を支え未来を切り拓く」というミッションを策定しました。
電気事業は今、大きな変革期にあります。問題が顕在化してから対応したのでは手遅れです。例えば再生可能エネルギーの大量導入は既にさまざまな電力システムの課題を顕在化させていますが、将来のさらなる大量導入に備え、システムの在り方をあらかじめ検討しておかなければなりません。当機関の「専門性」「先見性」「積極・主体性」という価値観を大切にしながら、より良いシステムの確立を目指し業務を遂行していきます。
―広域系統長期方針(マスタープラン)が昨年3月に策定され、その具体的な整備計画の策定が進んでいますが、本当に必要なのかといった意見も散見されます。
大山 現在、地域間連系線の整備については、再エネを全国大で活用するという視点で議論されているケースが多く、コストとベネフィットを踏まえメリットが低いという指摘があることは認識しています。各電力エリアの電源構成に差がなかった時代は、連系線は非常時に備えるものに過ぎませんでした。しかし、再エネが今後ますます拡大していけば電源の偏在性も高まりますし、今年度の容量市場の約定結果で北海道と九州が高い価格を付けるなど、供給信頼度にも課題があります。電源の偏在性を解消するため、そして安定供給を確保するためにも、連系線の活用は欠かせません。