A 今年、中部の社長交代があった場合には紆余曲折が予想されたが、留任となり順当な人事になった。関西の森望社長が就くとの観測もあったけど、関西が電力カルテル疑惑の中心的存在だと目されている以上、業界がまとまらなくなる可能性があったからね。
B 業界に衝撃が走ったのは、1月末に伊藤久德前副社長が中電シーティーアイ社長に就任することが発表され、社長レースから外れることが確定したことだ。これで林さんの電事連会長が見えた。それにもかかわらず、ダイヤモンド・オンラインが3月12日に「有力候補は関西電力社長、中部電力社長に絞られているがどちらも一長一短で決め手に欠く」などという記事を配信したり、日本経済新聞が「金品受領問題から年数が経っているから(関西でも)大丈夫だった」といった記事を書いたり、メディアはあまりにも雑な見方をしていた。流れをきちんと見ていれば、林さん以外あり得なかったよ。
C 林さんが電事連会長を1期2年務めることになれば、次は神谷泰範中部電力ミライズ社長で決まりじゃないかな。もともと中部は技術系の会社。神谷さんは技術系だけど企画にも携わってきたという点で、水野明久相談役とキャリアが似ている。
B この4月に就任した伊原一郎、鍋田和宏両副社長も候補かもしれないが、来年副社長に就任する人が最有力候補になるのだろうね。そう考えると、電事連会長1期2年が個社の人事に与える影響は大きい。
池辺氏(左)から会長を引き継いだ林氏はどう手腕を発揮するのか
電力業界が担う脱炭素化の中心的役割 林欣吾新会長に求められる手腕とは
―林さんに期待される電事連会長としての手腕とは。
A 中部は浜岡原発がすぐ動くわけではないから、その点では再稼働していたり準備段階にあったりする他電力との間で温度差があるのは否めない。原子力は会長マターの話にはならないだろう。電力はこれから、低炭素を飛び越えて脱炭素に向けて取り組まなければならない。原子力と再生可能エネルギー、火力についてはアンモニアと水素は専焼が難しいので切り札とはならない。需給バランスを考えると、これからも化石燃料による火力を使っていかなければならないのだから、どのように社会全体で費用を分担しながら安定供給を確保していくかが電力業界全体の課題としてのしかかってくる。各社の主張を取りまとめ、電気事業全体として脱炭素化とエネルギー安定供給の中心的な役割を果たせるか。もちろん、料金の経過措置規制廃止に向け音頭を取ることも重要な役割となる。
B 核燃料サイクル・中間貯蔵の話となると業界全体の話複数の都道府県にまたがることになるから、どうしても電事連が関わらざるを得ない。ただし、林さんの在任中に大きく進展することはなさそうだ。
―この座談会実施時点ではまだ発表がないが、九州は池辺さんが続投との見方が強い。
B 池辺さんは、これまで電事連会長としての仕事が忙しく思うように社業に取り組めていなかったからね。電気新聞は早くから電事連は代わるが九州は代わらないと見ていたし、3月15日の電事連の会見では、本人が社長として林会長を支えるということを何度か言っていた。直後に交代を考えている人があそこまでは言わないだろうから、続投を確信した。
C 池辺さんの後任は西山勝常務執行役員が最有力かな。池辺さんからも瓜生道明会長からも信頼が厚く経験も十分だ。中野隆常務執行役員もバランスの取れた人なので、対抗馬の一人だと見ている。