「電気運搬船」というアイデア 洋上風力拡大の〝解〟となるか


【脱炭素時代の経済評論 Vol.06】関口博之 /経済ジャーナリスト

例えば沖合かなたにある洋上風力発電で作った電気を、蓄電池を載せた船で港に運んでくる―。そんな構想が進行している。念押しのため繰り返すが、電気で動く船ではなく、電気を運ぶ船の話だ。

これをビジネスとして提唱しているのがパワーエックス。蓄電池や充電器の開発製造で成長するベンチャーだ。世界初というその電気運搬船の計画によると、船はコンテナ型蓄電池を96個搭載、陸上の大型蓄電所並みの24万kW時の電気を1隻で運ぶ。電動で300㎞の航続距離を目指す。今治造船と共同で来年初号船の建造を始め、2026年完成が目標だ。プロジェクト本格化のため今年、事業を分社化もした。

パワーエックスの電気運搬船イメージ図
提供:パワーエックス

再エネ電源が増える中、出力制御せざるを得ない余剰電力を今後どう生かすかは課題。送電網の増強や系統用蓄電池の活用、水素に変換して貯めたり運んだり。どれも重要だがコストが莫大だ。そこで考えられた電気運搬船だが、果たして成算はあるのだろうか。

第一の用途は「系統送電網の補完」だという。たとえば北海道で余った再エネ電力を充電してきて、本州側の拠点で放電する。もちろん連系線拡大ほどの容量は担えないが、機動的な融通には役立ちそうだ。

第二の用途が「洋上風力電力の大消費地への供給」。つまり海底ケーブルの代わりだ。洋上風力について政府は40年までに3000万~4000万kWの案件形成を目標に掲げる。そのため対象海域をEEZ(排他的経済水域)まで広げる法案も閣議決定。その主力は浮体式洋上風力になる。

概して陸から離れるほど風況は良く、その平均風速がわずかに上がるだけでも発電量は格段に増えるとされる。そこはおのずと水深も深くなるが、従来、海底ケーブルの敷設実績があるのは水深300mまでの区域だという。これでは浮体式にしたとしても海域が限られ、ポテンシャルを生かし切れなくなる。今後ケーブル敷設技術が進展するにしても、船で運べば早期に実現できるという発想なのだ。

適地はあるのだろうか。パワーエックスが想定する一つが相模湾沖。洋上風力で作った電気を現地で充電し、横浜港に運んで系統設備につなぐ。現時点ではこのエリアに洋上風力の計画自体ないが、こうしたことが実現できれば関東地区も北海道や東北と同等の洋上風力のポテンシャルを持つことができると試算する。可能性を見据えて今年、横浜市および東電パワーグリッドと3者で連携の覚書も結んだ。そこには横浜港に入る大型クルーズ船向けの陸上電力供給というプランも盛り込まれている。

電気運搬船という構想は、まだ夢物語のようでもある。そもそもがパワーエックス創業者で、前職では通販サイトZOZOの取締役も務めた伊藤正裕社長の「素人のアイデア」(同社関係者)だったという。今回筆者が意見を求めた業界人も無言で首をかしげてしまった。ただこの電気運搬船、実は昨年改定された国の海洋基本計画にも文言が書き込まれている。こうしたベンチャーの挑戦を実らせてこそ、新産業の創出も可能になるのだ、とワクワクもしている。

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せきぐち・ひろゆき 経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

【コラム/9月13日】急増する米国の電力需要


矢島正之/電力中央研究所名誉研究アドバイザー

米国では、過去20年ほど横ばいであった電力需要が最近急増し始めている。その背景としては、CHIPS法、インフレ抑制法(IRA)やインフラ投資・雇用法 (IIJA)などの連邦法の支援による半導体やクリーンエネルギー分野などでの投資の活性化、データセンターの爆発的な増大、AIの急速な普及が挙げられる。クリーンエネルギー分野での投資の活性化に関しては、エネルギー省(DOE)長官ジェニファー・グランホルム氏は、民間部門の投資が、これまで2,000億ドルを超え、この3年間で1,500万人近くの雇用をもたらしたと述べている(2024年3月18日)。

ニューヨークタイムス紙(NYT)は、このような事態に直面して、米国の電力会社は、2028年までの需要増加の想定値を過去1年間にほぼ2倍に引き上げたとの調査結果を紹介している(2024年3月14日)。また、同紙では、夏季ピーク電力は、今後5年間に全米で38,000MW増加するという予測も紹介している。本稿では、米国で異常ともいえる高まりを見せる電力需要の実態とそれがもたらす課題はどのようなものかを論じたい。

NYTによれば、EVや太陽光パネルなどの生産工場が多く建設されているジョージア州では、同州最大の電力会社であるジョージア電力は、現在、今後10年間の電力需要の増加を2年前の予測の16倍と見込んでいる。また、IRAの支援を受けてEVやヒートポンプの利用拡大も、電力需要の増大に寄与している。カリフォルニア州では、州政府独自の豊富な支援策もあり、EVの販売が好調である。同州における2024年第一四半期のEV販売は、過去最高の102,507台を記録、新車販売の4分の1を占めた。同州のエネルギー委員会は、すべての新車販売をゼロエミッション車とすることが義務付けられる2035年には、ピーク時の電力使用量の10%をEVが占めると予測している(2022年時点では1%)。

さらに、リモートワーク、ビデオストリーミング、オンラインショッピングなどの増加により、全米でデータセンターが急速に増大している。そして、AIの台頭で、この傾向は加速している。NYTによれば、全米最大級のデータセンター拠点の一つであるバージニア州北部では、2019年以降少なくとも75の施設が開設されており、地元の電力会社ドミニオン・エナジーは、データセンターの容量がわずか5年で倍増する可能性を指摘している。ボストン・コンサルティング・グループによると、2030 年には全国のデータセンターの電力需要は、2022年の約3 倍の390 TWhとなり、これは約4,000万世帯分の消費電力に相当する。

このような電力需要の急増がもたらす懸念は、まず系統の負荷増大に対応して、その拡大・増強が間に合わない可能性である。米国最大の独立系統運用者であるPJMは、今年になり、2029年と2038年における夏のピーク需要の予測を昨年のそれと比べ、それぞれ10,000MW、22,400 MWほど嵩上げしている。NYTによると、PJMの系統計画のリーダーであるケン・セイラー副社長は、「我々のような大きな系統システムでも、突然このような事態が発生するのは深刻なことだ」と述べたとのことである。米国では、送電線の増強は、許認可手続の遅延や住民の反対などから10年単位の時間を要している。米国で昨年完成した送電線は、わずか251マイルにとどまり、送電線の建設はこの10年の間に大きく減少している(Statista)。(因みに、バイデン政権は、IIJAを踏まえ、今年のアースウィークで、今後5年間で、10万マイルの送電線をアップグレードすると発表しているが、現実とは大きくかけ離れていると言わざるを得ない。)

電力需要急増で次に懸念されるのは、気候変動問題への影響である。EV、バッテリー、太陽光発電などのクリーンエネルギー技術への移行によって増大する電力需要は、皮肉にも、国の気候変動対策計画を危うくする可能性がある。NYTは、いくつかの州の例を、つぎのように紹介している。ノースカロライナ州では、2021年に制定された法律に従い、同州最大の電力会社デューク・エナジーは、二酸化炭素排出量を2030年までに70%削減することを義務付けられたが、今年1月に、2033年までに最大5基の大型ガス火力発電プラントおよび5基の小型バージョーンを建設するという新たな計画の下では、目標達成は少なくとも5年遅れる可能性があると述べている。そして、同社は太陽光発電と洋上風力発電の大幅な拡大に努めているものの、需要の急速な増大に追いつくためには、ガス火力発電プラントの追加的な建設が必要であると強調している。デューク・エナジーの事業部長ケンダル・ボウマン氏は、「この前例のない需要の成長のなかで二酸化炭素削減を実現することは、特に短期的にはチャレンジとなる」と述べている(NYT)。

同様なことは、バージニア州でも起きている。データセンターの需要増加に対応するため、ドミニオン・エナジーが再生可能エネルギー発電と天然ガス火力発電を組み合わせた発電計画を提案しているが、この計画により同社の二酸化炭素排出量が増加する可能性がある。また、ジョージア州では、ジョージア・パワーは天然ガスと石油を燃料とする新規のプラント3基の建設許可を申請しており、計画されていた古い石炭火力発電プラント2基の廃止を延期するかどうか検討中とのことである。南部環境法律センター(SELC)によると、南東部全域の電力会社が2038年までに約33,000MWの天然ガス火力発電プラントの建設を計画しており、これは気候変動との闘いと完全に矛盾している。

わが国でも、CN実現のための取り組みやDXの推進が積極化するなかで、今後、電力需要が急増していく可能性は否定できない。その場合には、米国が直面する同様な課題の解決が迫られる可能性があるだろう。


【プロフィール】国際基督教大修士卒。電力中央研究所を経て、学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学大学院特別招聘教授、東北電力経営アドバイザーなどを歴任。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力改革」「エネルギーセキュリティ」「電力政策再考」など。

世界三大ガス市場価格の動向 相互影響深化で安定化が重要に


【マーケットの潮流】橋本 裕/日本エネルギー経済研究所 上級スペシャリスト

テーマ:主要ガス価格の推移

2010年代前半までアジア太平洋、欧州、北米の三大天然ガス市場は需給構造が異なっていた。

16年に米国からのLNG輸出が開始され、三大市場の連動性が高まっている。

スポットLNG・ガス価格は今年6月末時点で年初とほぼ同じ価格帯に入っている。アジアスポットLNGは100万Btu(英国熱量単位)当たり11・5~13米ドル帯、欧州大陸スポットガス価格は同10・5ドル相当となった。いずれも3月末までにこの水準よりも2ドル程度下がったが、6月以降底堅く、時折上昇傾向を示している。

7月、米国でのハリケーン影響による一部LNG生産の停止により、北半球夏季としては相対的に高水準を維持した。その後も、欧州向けロシア産パイプラインガス供給に関してウクライナ経由の輸送契約の先行き、建設中のLNG生産プロジェクトの稼働開始時期への不安感が、次の北半球冬季に向けて価格を押し上げる要因となっている。

主要ガス価格の推移


新興市場の開発でも重要 価格変動への対応が顕著に

欧州ガススポット価格の主要指標TTFは、オランダのパイプラインネットワーク上の、特定の引き渡し地点ではなく、仮想(バーチャル)地点での取引価格である。欧州向けパイプラインガス・LNG売買取引の価格指標として用いられ、アジアとのLNGカーゴのやり取りの際も参照される。TTFのオリジナルの取引価格単位は、MW時当たりユーロだが、国際取引との参照上は、100万Btu当たり米ドルに換算した参考値が常用されている。アジアのスポットLNG価格と比較され、TTFが高い場合には、スポットLNGカーゴが欧州に向かいやすい状況となる。

TTFは、2015年から18年前半まで概ね4~7ドル台で推移した。18年第4四半期以降、8~10ドルに上昇し欧州へのLNG輸入が増加した。しかしパンデミックでエネルギー需要が冷え込んだ20年、4月下旬から7月までは2ドルを下回る水準が続いた。その後20年秋以降徐々に上昇傾向を続け、21年7月に13ドル近辺で熱量等価換算で原油価格を上回り、23年4月まで一貫して原油価格を上回る状況を続けた。21年12月末、60ドル近くまで高騰し、TTFに連動する翌月引き渡し分のパイプラインガス価格を高水準で固定し、22年1月には、これを下回る値決めをしたLNGカーゴが欧州市場に大量流入した。

当時の急上昇については、低水準の欧州地下貯蔵ガス在庫量、ウクライナ経由ロシア産パイプラインガス供給量の低迷、ドイツ規制当局によるノルドストリーム2の承認手続き停止、欧州・ロシアの寒冷化によるエネルギー需要増加、風力発電の低下、ロシア・ウクライナ対立懸念などが指摘された。さらに22年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、3月初旬には一時70米ドルを超え、8月には100ドル近くまで上昇した。同年を通じてTTFがアジアスポットLNG価格に対して常態的にプレミアムで取り引きされ、LNG物流の欧州向けシフトにつながった。

退陣する岸田首相の功績と失敗 自民党は骨太の政策を構築できるか


【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

本号の原稿を、日本原電敦賀2号機の原子力規制委員会の判断について書いていたところ、岸田首相退陣のニュースが飛び込んできた。

私は、客観的に見て、岸田首相は内政面でも外交面でも歴代政権の中で平均点以上の総理大臣だったと思う。官邸周りも、それなりにうまく動いていた。とりわけエネルギー政策では、東日本大震災以降、安倍政権が放置し結果的に「脱原発」に向かってしまっていた原子力政策を、再び重要電源として息を吹き込んだことは特筆すべき決断であったと評価すべきである。ただ、GX戦略のような大風呂敷を広げたものの政策効果の怪しげな政策を打ち出したり、「増税メガネ」と言われると全く意味のない定額減税に固執したり、いきなり派閥解散を言明したりと、時々に見せる権力を維持するためだけの、あざとく姑息な判断が国民に嫌われたのだろう。

私は、今回の岸田首相退陣劇を眺めていて、「自民党の民主党化」が進んだと見ている。それは、かつての自民党では、国民的評価が低くても客観的に見て結果をそれなりに出している首相は、政権与党の矜持として歯を食いしばって支えていたのが、2012年の政権再交代以降、自力で選挙を戦えない議員が半数近くになる中で、選挙前に選挙の顔を求めて党内が右往左往する姿に見てとれるのだ。


国民ウケなきエネ政策 求められる政治主導

こうした与党の矜持なき自民党の総裁選では、目先の選挙受けを狙った派手な人気取りの政策が提示されないかが心配だ。エネルギー政策では、不透明な国際情勢が続き、ドッグイヤーでの技術革新が進み、巨額のマネーが世界を駆け巡っている中で、今ほど現実的で骨太の戦略的政策体系を構築しなければならない時はない。岸田首相が動かした原子力政策にしても、単に東日本大震災前の政策に戻すのではなく、国際的な動きをにらみながらの新型炉開発の加速、原子力産業と発電事業の再編、規制と危機管理体制の再構築など大きな政治判断が必要なことが山積みである。

こうしたエネルギー政策は、決してスカッと分かりやすい、国民受けするようなものではないかもしれない。しかしエネルギーの安定供給は国の礎であり、これこそ政治のリーダーシップをもって構築しなければならないものなのだ。

私は、目先の政権の維持が優先される小選挙区比例代表並立制の下での自民党政権では、もはや中長期的視点に立った骨太の政策体系を作ることは無理だと実感している。自民党総裁選の結果、次の総理が誕生したとしても、既存の政党の枠組みを超えた政治の刷新を求める声が強くなるのではないだろうか。

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ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

【フラッシュニュース】注目の「政策・ビジネス」情報(2024年9月号)


NEWS 01:FIP移行促す新たな措置 出力制御をFITから実施へ

資源エネルギー庁がFIT(固定価格買い取り)からFIP(フィードインプレミアム)への移行を促す新たな措置を講じる。早ければ2026年度から優先給電ルールでの出力制御の順番をFIT、次いでFIPとする方針だ。FIPは当面出力制御の対象とならない見通し。一方でFITの制御確率は高まる。

FITの出力制御確率は上がることに

FIPは再エネ電源の市場統合を図る制度で、収入は市場価格に連動する。価格が低い時間帯に蓄電し、高い時間帯に供給をシフトすることなどで収入を増やせる可能性がある。また、FIP電源はエリアで出力制御が発生していても指令対象とならない場合、その時間帯にプレミアムが交付されない仕組みで、需給バランスへの貢献度が高い。

ただ、23年度のFIP認定量は、太陽光ではFIT・FIP全体の約3割にとどまる。そのためエネ庁は、需給バランスへの貢献面でFITとFIPの公平性を確保すべく、8月7日の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小員会で今回の案を提示。優先給電ルールの見直しに加え、FIPへの移行が一定程度進むまで、蓄電池の活用や発電予測などの支援を強化する方針も示した。エネ庁案に対し、同日の会合にオブザーバー参加した太陽光発電協会の増川武昭事務局長は、「必要性と効果に疑問がある。案の通り進めることに賛同することは難しい」などと述べ、再考を求めた。


NEWS 02:膨れ上がる調整力コスト 送配電事業の収支に打撃

大手エネルギー各社の2024年度第1四半期決算が、7月末までに出そろった。多くの企業が過去最高の経常利益を記録するなど好決算だった前年同期から一転、大手電力10社のうち、四国、沖縄を除く8社と、東京、大阪、東邦の大手都市ガス3社が大幅な経常減益を余儀なくされた。この背景には、原・燃料費調整制度に基づく期ずれ差益の縮小があり、減益幅も想定の範囲内と言っていいだろう。

一方、浮き彫りとなったのは厳しい送配電事業の収支状況だ。北海道、東北、東京、中部、関西、中国、九州で経常減益。中でも関西は56億円の赤字(前年同期は158億円の黒字)となり、グループ全体の収支にも影響を及ぼしている。

これには、需給調整市場の入札不調により膨れ上がっている調整力の調達コストが大きく影響している。24年度に同市場で予定されていた全ての商品が出そろったが、多くのエリアで一週間前に取り引きする商品区分で募集量に対し応札量が大幅に不足する「未達」状態にある。それゆえに、価格が高騰し送配電事業者にとって大きな負担となっているのだ。7社とは逆に、エリア内の調整力の調達コストが低下した北陸、四国は経常増益となった。

電力業界関係者の一人は、「スポット市場同様、大手電力の発電部門に対し限界費用ベースの価格規律を押し付けていることが、この問題の諸悪の根源となっている。翌週の市場がどうなっているか分からないにもかかわらず、ほぼ利益もなしに1週間前の応札などあり得ない」と指摘する。

26年度には、現行1週間前に取り引きされている一次~三次①が前日取引に移行することが決まっている。その前に打てる手はないのか。


NEWS 03:SAFを身近な航空燃料に 環境価値の取引で魅力を認知

航空業界の脱炭素化につながる「SAF(持続可能な航空燃料)」の魅力を認知させる試みが動き出した。ENEOSや伊藤忠商事、日本航空(JAL)などの7社は8月、SAFの利用に伴うCO2排出量の削減効果を「環境価値」として取引する実証試験を始めた。次世代燃料を利用拡大に弾みをつける仕組みとして、今後の展開に注目が集まりそうだ。

成田空港(千葉県成田市)で始動したのが、温室効果ガス排出量を供給網全体で捉える「スコープ3」の環境価値をやりとりする試験。このプロジェクトには、日本通運の持ち株会社NIPPON EXPRESSホールディングス、成田国際空港、みずほ銀行、みずほリサーチ&テクノロジーズも参画した。航空輸送の関係者が一堂に会してこの種の環境価値をやりとりする試みは世界初という。

具体的には環境価値の販売情報と購入情報を、情報を集約するプラットフォーム(基盤)上で結び付ける。ENEOSや伊藤忠が成田空港にSAFを供給するとともに、CO2削減効果を証書にして基盤上で環境価値を提供。JALもSAFの使用に伴って発生する環境価値を届け、こうした価値を基盤を通じて運送事業者や旅客などが受け取るという。

SAFは従来の航空燃料と比べると高額なため、航空機のチケット代に跳ね返る可能性がある。CO2排出量の低い輸送や出張に価値を見い出したい買い手は潜在するとみられ、環境価値を伝える対応が求められていた。試験は12月まで進める計画で、その間に生み出される価値は最大で約160t(CO2削減効果)を想定している。SAFの供給体制づくりと並行し、空の脱炭素の切り札として身近な存在する需要面の工夫も求められている。


NEWS 04:「常陽」が再稼働へ前進 高速炉開発の巻き返しなるか

高速炉開発の巻き返しに向けた一歩となるか─。茨城県は8月2日、日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速実験炉「常陽」の再稼働に向けて原子力審議会を開催した。再稼働について「基本的に了承」と評価し、今後は茨城県と立地する大洗町が同意の上で安全対策工事が行われる見込みだ。

再稼働を目指す常陽

高速炉開発については近年、経済合理性の観点から計画を凍結・中止する国が相次いだ。日本も2007年に常陽が装置破損で運転休止、16年には高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定し、世界の「先頭集団」から脱落。先行するロシアや中国、インドは30年代の実用化を狙う。こうした中で専門家は「高速増殖炉とナトリウム流動の実験ができる施設を持つことは、日本の優位性を高める」と経済安全保障上の意義を語る。

政府は22年末、高速炉開発の巻き返しを図るべく、「戦略ロードマップ」を改訂。昨年7月に実証炉開発の中核企業に三菱重工を選定し、40年代半ばの運転開始を目指す。今年7月には、政府とJAEAが常陽の燃料確保に向け、新たな製造工場の新設検討を表明した。

既設炉の再稼働のみならず、次世代炉開発の前進も原子力政策の正常化に向けた重要なピースだ。まずはJAEAが「26年半ば」とする再稼働を実現し、実証炉の運開に向けた貢献に期待したい。

脱炭素の革新技術で覇権争い 日本勢の開発促進も待ったなし


【論説室の窓】宮崎 誠/読売新聞 論説委員

有望なCO2回収技術のダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)。

国内企業も積極的にDACに関与し、将来の成長の種とすべきだ。

DACは大気から直接、CO2を回収する技術だ。脱炭素の実現に向けた革新的な対策として、欧米勢が主導している。

米石油大手オキシデンタル・ペトロリアムの傘下で、DACを手がける「ワンポイントファイブ」は7月、マイクロソフト(MS)と大型契約を結んだ。ワンポイントファイブは、テキサス州でプラントの建設を進めており、2025年の稼働を予定している。MSは、そこで回収されたCO2のクレジット(排出枠)を6年間で計50t購入するという。

ワンポイントファイブは35年までに、世界で100カ所のプラントを建設する計画だ。一方、スイスの新興企業である「クライムワークス」は今年5月、アイスランドで世界最大のDACプラントを稼働させた。さらに米国内でも27年に事業を開始する予定だ。

アイスランドに設けたプラントのCO2回収能力は、年間3万6000t。米国での事業規模はこれを大きく上回り、30年までに100万tに引き上げる計画を示している。

米バイデン政権は、21年に制定したインフラ投資法で、DACの建設補助に35億ドルを割り当てた。翌年に成立したインフレ抑制法でも、CO2を1t回収するごとに、最大180ドルを支援すると定めた。こうした枠組みが、DACの商用化を強く後押ししている。

CO2多排出産業も注目するDAC


排出枠の争奪戦が激化 米ビッグテックも参入

国際エネルギー機関(IEA)も、50年のカーボンニュートラル(CN)の達成に向け、DACが重要な役割を担うとみている。今後、再生可能エネルギーなどの導入が最大限進んだとしても、鉄鋼やセメントのほか、大型トラックや航空機、船舶などは一定程度、化石燃料に頼らざるを得ず、CO2の排出が残るからだ。

こうした残余排出量は、50年時点において、世界で年20億~100億tに上ると試算されており、DACによる排出枠を巡って争奪戦が生じる可能性が強まっている。

DACを利用する業種は従来、先に挙げた航空や海運、鉄鋼などが想定されていたが、それらに加え、米国のビッグテックの購入が目立つようになっているからだ。

MSのほか、米アマゾン・ドット・コムも昨年、ワンポイントファイブから、25万tの排出枠を10年にわたって購入する契約を結んだ。

ビッグテックは、生成AIで使うデータセンターの電力需要が急増する中、CO2の排出を抑制する手段として太陽光や風力で発電した電気の調達に全力を挙げているものの、それだけでは足りずに、DACの排出枠確保に走っている。

米ビッグテックは、脱炭素に熱心に取り組むことで企業ブランドを高める戦略を進めているとみられ、今後、各社が競うようにDACの排出枠購入に動く可能性がある。

金融界も争奪戦に参入している。米金融大手JPモルガン・チェースは、クライムワークスとの間で2000万ドル以上を支払い、9年間に2万5000tの排出枠を購入する契約を締結。米ボストン・コンサルティング・グループもクライムワークスと長期契約を結んでいる。いずれも、将来、排出枠が値上がりし、他企業に転売することで利益を得る狙いがあるとの見方が出ている。

蓄電池システムの最適運用へ 劣化診断と保守サービスの実証開始


【関西電力/東急建設/東芝エネルギーシステムズ】

関西電力、東急建設、東芝エネルギーシステムズ(ESS)の3社は7月、東急建設の相模原蓄電所において、蓄電池の寿命予測を行う「アセットマネジメントサービス」と、蓄電池システムの運用・保守をサポートする「スマート保守支援サービス」の実証を開始した。

7月29日に開かれた相模原蓄電所の開所式

アセットマネジメントでは、運転を継続しながら蓄電池の異常や安全性を総合判断し、精緻に寿命を見極め、火災などによる事業リスクを低減する。スマート保守支援サービスでは、蓄電池システムを遠隔で常時監視し、設備保守に必要な情報を提供する。

実証期間は7月29日から1年間を予定。「実証の中で事業のリスク低減や、事業者の投資・運用コストの最適化といった有用性を分析、評価した上でサービスを展開していく」(関電ソリューション本部の児玉智副本部長)方針で、今年度中のサービス提供開始を目指す。


再エネ有効活用に期待 安全対策が大きな課題

液系のリチウムイオン電池は、発火による火災事故が国内外で起きており、利活用に向けては安全対策が重要な課題の一つとなっている。関電と東芝ESSは、こうした故障やトラブルを未然に防止するべく、2022年11月に劣化診断技術を活用した蓄電池分野(定置用、EVなど)でのサービス創出に向けた検討に着手。23年度以降は、スマート保守支援サービスと合わせた、大容量蓄電池向けのトータルソリューションサービスとしての確立を目指してきた。商用運転中の系統用蓄電池向けに、サービスを提供するのは同蓄電所が初となる。

相模原蓄電所は、系統用蓄電池事業への参入を目指してきた東急建設が手掛ける第1号案件だ。システムは、出力1999kW/容量4064kW時のファーウェイ製蓄電池とパワーコンディショナーなどで構成。東京都地球温暖化防止活動推進センター(クールネット東京)の「令和5年度系統用大規模蓄電池導入促進事業」に採択された。

同社は、卸電力、容量、需給調整といった各種電力市場での取引による収益化を目指すとともに、国内の電力需給の安定化や再生可能エネルギーの余剰電力の有効活用といった電力システムの課題解決に貢献していきたい考えだ。システムの運用については、関電の子会社であるE―FLOWが手掛ける。

【覆面ホンネ座談会】混迷の米大統領選の行方 どうなる? エネルギー情勢


テーマ:米大統領選とエネルギー政策

米大統領選は民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領による「ハリトラ」対決が確実となった。軍配はどちらに上がるのか。エネルギー政策への影響に関心が高まっている。

〈出席者〉 Aアナリスト B研究者 C学識者

―まずは米大統領選の現状から。ジョー・バイデン大統領は7月21日、大統領選からの撤退を表明。後継にハリス氏が躍り出た。米国在住のAさんは現状をどう見ている?

A バイデン氏は6月27日の第1回候補討論会で言葉に詰まるなどの失態を演じ、民主党陣営は大混乱に陥った。「認知症疑惑」はかねて一部で取り沙汰されていたが、いよいよ全世界に知れわたった格好だ。その後、猛烈な勢いで「バイデン降ろし」が始まり、81歳と高齢の大統領に対して、再選を断念するよう求める声が党の内外から上がった。

さらに7月13日には東部ペンシルベニア州の集会でトランプ氏の暗殺未遂事件が発生。紙一重で銃弾から逃れ、右耳を負傷しながら拳を突き上げた姿に、多くの米国人が英雄を見た。これでトランプ氏の勢いは加速し、まさに「確トラ」といった状況にあった。そんな中でのハリス氏の出馬表明は、民主党にとっては起死回生への大きな転換点。ようやく選挙戦が始まったという感じだ。

米大統領選の軍配はどちらに?

B 米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が行った世論調査結果には驚愕した。8月5~9日に激戦州であるミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの3州で実施した世論調査で、ハリス氏の支持率が50%と、46%のトランプ氏を上回ったのだ。現在、勢力は拮抗している。

A だがトランプ氏がその3州でリードを許したとしても、最終的に結果がどう転ぶかはわからない。というのも、前回の2020年の大統領選で両候補が獲得した票数は1億5500万票。そのうちバイデン氏の当選を決定づけたのは、接戦だったジョージア、アリゾナ、ウィスコンシンの4州で、バイデン氏がトランプ氏を上回ったのはわずか4万票だ。16年のヒラリー・クリントンVSトランプではクリントン氏の勝利を多くの人が予想していたし、選挙結果は予測できない。どちらかの勝利を決めつけるのは危険だ。


突然の「ハリス旋風」に唐突感 厳しい排ガス規制に国民の受容度は

C 次回9月10日の討論会でハリス氏がどう攻めるのか注目だ。ハリス氏は元検察官でカリフォルニア州の司法長官を務めた経歴を持つ。機密文書持ち出しや20年大統領選の手続きの妨害など、トランプ氏が抱える四つの刑事裁判を材料に責め立てるだろう。一方のトランプ氏は「魔女狩りだ」と猛反発するとみられ、実りある政策論争が行われるか不安は残る。

A ハリス氏の追い上げはすさまじいが、彼女に強力な実績があるわけではない。現政権発足当初にバイデン氏から与えられた南部国境の移民対策では、なかなか現地に足を向けず、具体的な対策も講じることなくこの問題を放置した。むしろ「不法移民はアメリカに来ないで」と発言したことで、支持基盤である左派からも不興を買った。インフレに適切に対応できなかったことや、バイデン氏の健康不安を隠してきた点もマイナスに働くはず。トランプ陣営はこうした姿勢を、有権者に印象付ける戦略だろう。

C Aさんが言うように、ハリス氏は最近までバイデン氏に負けず劣らず不人気で、指導者としての力量が問題視されていた。手のひらを返すようにハリス氏を持ち上げる民主党の姿勢には首をかしげたくなる。それに日本に住んでいると現地の生の声を聞けない分、メディアの報道や論調に影響を受けやすい。ニューヨーク・タイムズやCNNなどの大手メディアは民主党寄りで、特にトランプ氏に対しては手厳しい。彼らが世論調査で「ハリス氏優勢」と報じるのも、いくらかバイアスがかかっているはず。朝日や毎日の世論調査で自民党政権の支持率が低く出やすいのと同じだ。

A 米国ではグローバル化で栄える人々と取り残された人々の間に厳しい分断がある。インフレ、不法移民の流入が長引く中で、白人中間層のみならずラテン系などにも不満が高まっている。この「反グローバル化」層がトランプ氏の支持基盤だ。果たして民主党はこの不満の広がりに対し、有効な一手を打てるだろうか。ハリス氏が副大統領候補に指名したミネソタ州知事のティム・ウォルツ氏は長く高校教師も勤めた庶民的な人柄だが、ハリス陣営の政策は全体的に左派色が強く、刷新感を欠く。

地域の環境を守ることが第一 安全対策工事に真摯に取り組む


【日本原子力発電】竹内公人/執行役員 東海発電所・東海第二発電所 所長代理「工事管理センター長」

東海第二発電所の安全性向上対策工事は、数千人規模で進める大型プロジェクトだ。

長年設備の保修・管理に携わった竹内公人氏が工事概要や現場での交流を語る。

日本原子力発電の東海第二発電所は2018年に、新規制基準の適合性が認められ、運転期間の延長の認可を得た。現在、再稼働に向け安全性向上のための対策工事を進めており、その現場で指揮を執っているのが東海発電所・東海第二発電所長代理の竹内公人・工事管理センター長だ。

安全性向上対策工事を行う東海第二発電所
提供:日本原子力発電

東北大学と東北大学大学院で、原子核工学のうちプラント工学分野を主として専攻した。卒業後、研究者としての道も視野に入れていたが、実際に発電している軽水炉に携わりたいとの思いから、1992年に日本原子力発電へ入社。その後の約20年間は、敦賀発電所と本店の発電管理室を行き来しつつ、設備の保修や管理を担当した。不具合が生じた際の対応策、通報連絡を徹底する重要性を学んだ。設備・保修時代に経験したこれらの教訓は後輩たちに着実に引き継いできた。

2008年には、敦賀3、4号機の新設に伴い、開発・計画を担う開発計画室の一次系・主機設計グループマネージャーに就任した。だが、11年の東日本大震災を受け、新設計画は一時中断に。同年、自治体やメディアなどに対応する地域共生部の技術・報道グループマネージャーとなり奔走した。14年には発電管理室設備管理グループマネージャーに就任し、東海第二発電所の安全審査の対応、ケーブル防火対策の検討や原子炉建屋ブローアウトパネル閉止装置の開発などに取り組んできた。

これら経験を重ねてきた竹内氏は東海第二発電所の鋼製防護壁の不具合について、「皆さんにご心配をおかけしている。国の審査に真摯に対応していく」という。

安全性向上対策工事では、さまざまな工事を行っているが、ここではフィルタ付ベント設備の設置を紹介する。

福島第一原子力発電所では、地震後の津波の影響により全ての電源が失われ、発電所を守る機能が喪失。その後の事故の進展により発電所周辺へ放射性物質を放出することとなった。こうした事故を決して起こさないよう、新規制基準を踏まえてフィルタ付ベント設備を設置する。竹内氏は「地域の環境を守ることが第一」と話す。

東海第二発電所のフィルタ付ベント設備の概要
提供:日本原子力発電

原子炉格納容器内の温度や圧力の上昇による格納容器の破損を防止するために、既存の冷却設備に加えて、新たに代替循環冷却系を2系統設置し格納容器内を冷却することで、周辺への放射性物質の放出を回避または遅らせることができる。

それでも、原子炉格納容器内を冷却できなくなった場合は、格納容器が壊れないよう蒸気を外に逃がして圧力を下げることになるが、フィルタ付ベント設備を経由させることで周辺環境への放射性物質の放出を大幅に低減できる。

フィルタ付ベント設備は、発電所敷地内の地下に設置する。フィルタ装置は高さ約10m、直径約5mで、粒子状の放射性物質を1000分の1以下に低減する。


「現場の皆さん」への感謝を 助け合いの精神大切に

担務する工事管理センターでは、安全性向上対策工事に関わる工程や予算などの取りまとめや管理を指揮する。工事は地元企業、大手ゼネコンや大手メーカーなど幅広い企業が参画し、数千人規模で進む大型プロジェクトだ。安全を最優先とし、工事を円滑に進めるには、社員はもとより、協力会社とのコミュニケーションは欠かせない。

「安全対策工事は、大勢の方々の協力の下で成り立っている。当然さまざまな意見が飛び交うが、しっかり意見交換しながら対応したい」。そんな思いから、関係会社の幹部とは定期的に意見交換会などを開いている。「時に厳しいご意見をいただくこともあるが、ありがたく受け止めている」と話す。今夏には熱中症対策として東海第二発電所の幹部が昼食時、作業に携わる人々に手渡しで氷菓を配るイベントも行った。「少しでも感謝の気持ちを伝えていきたい」と助け合いの精神を大切に、日々の業務に取り組んでいる。

たけうち・きみひと 1967年神奈川県生まれ。92年東北大学大学院(原子核専攻)修士課程修了後、同年4月日本原子力発電入社。開発計画室一次系・主機設計GM、発電管理室管理GMなどを経て23年6月より現職。

【イニシャルニュース 】エネ庁幹部罵倒の過去 河野太郎氏の本音は?


エネ庁幹部罵倒の過去 河野太郎氏の本音は?

「じゃあ、北朝鮮のミサイル攻撃に無防備だと、原子力は。日本は、使用済み核燃料を捨てる場所も狭くてありませんと、全部書けよ!」「再エネ最優先と言っているのに、そんな恣意的な記載を認めるわけないだろうが。いい加減にしろよ!」―。

2021年8月24日、第6次エネルギー基本計画の素案を巡るオンライン会議の場で、説明する資源エネルギー庁の幹部X氏らに罵声を浴びせた河野太郎・規制改革担当相。それがここにきて一転、原子力政策への理解を口にし始めた。

去る7月31日、日本原子力発電の東海第二原発や日本原子力研究開発機構の高速実験炉・常陽を視察した河野氏は、記者団に対し「電力需要の急増に対応するため、原発の再稼働を含め、さまざまな技術を活用していく必要がある」と述べたのだ。

これを受け、大手メディアは一斉に次のような報道を展開した。〈河野太郎氏、電力は「原発再稼働しても足りない」〝脱原発〟を封印、支持拡大狙う〉(産経新聞)、〈河野氏、「脱原発」から転換、自民総裁選へ支持拡大狙う〉(日本経済新聞)、〈「脱原発」イメージ払拭へ、河野大臣原発視察などで現実的なエネルギー政策進める姿勢〉(テレ朝ニュース)―。

河野氏はパワハラ気質も封印か

いずれも、9月に行われる自民党総裁選への出馬をにらみ、支持層を拡大すべく持論の脱原発を封印してきたという内容だ。一部報道によれば、6月下旬の時点で、所属派閥の親分である麻生太郎・自民党副総裁との会食の席上、自らのエネルギー政策の修正を伝えたとみられている。

8月13日、岸田文雄首相が9月の総裁選に出馬しない意向を表明したことで、行方は混とんしてきた。永田町関係者Ⅹ氏が言う。

「河野首相誕生の可能性もそれなりに高まった格好だが、かつての暴言が物語るように、河野氏の本音は脱原発・核燃料サイクル反対だ。いくら総裁選前に表面を取り繕ったところで、いつか馬脚を現すだろう」

現在は、原子力推進を基軸とする第7次エネ基議論の真っ只中。もし首相となった暁には、冒頭のエネ庁関係者に謝罪してもらいたいところだ。


石丸氏の都知事選躍進 裏にエネベンチャーの影

東京都知事選で168万票を獲得し旋風を巻き起こした石丸伸二氏が、大物支援者から不興をかっている。電力業界の異端児で、再生可能エネルギーベンチャー企業の創業者Y氏が、「石丸は一人で168万票を獲ったと勘違いしている。底の浅さも露呈しており、先行きが不安だ」と公言しているのだ。

もともとは小池百合子都知事と親しく、自民党にも影響力を持つY氏が石丸氏を支援した経緯は、親交のあるドトールコーヒー創業者の鳥羽博道氏に協力を要請されたからだという。Y氏は「裸一貫で出てきた石丸氏のような挑戦者が政治には必要だと考えた。ソーシャルメディアを駆使した手法でこれまでの選挙に風穴を開けるのが目的だった」と語る。

Y氏はもともと大手通信事業者の社員だった。石丸氏と同じ40代で独立して通信ベンチャーを立ち上げた。今やその通信ベンチャーは古巣の通信事業者と肩を並べる一流企業に成長した。Y氏は「石丸氏は大学の後輩になるし、私と境遇が似ているところにシンパシーを感じた」とも話していたという。

都知事選では投票日の10日前に支援に入り、小池、蓮舫両氏の支援票を石丸氏に移させたというから、躍進の立役者といっても過言ではない。しかしそんなことはどこ吹く風と言わんばかりの石丸氏は、あるメディアで支援者のことを聞かれると「168万分の1に過ぎません」と語り、石丸構文がさく裂した。これを聞いたY氏をはじめ大物支援者は「図に乗りすぎだ」と怒り心頭だったという。

メディアへの露出が増えて、知名度も全国区になった石丸氏だが、今後の動向については依然謎のままだ。Y氏をはじめ支援者は次の一手を模索しているというが、石丸氏自身の底の浅さが露呈してしまい一時の勢いを失いつつある。恩をあだで返すような彼の人間力の欠如が、重要な支援者ですら石丸離れに傾かせているのかもしれない。

五井火力1号機が前倒し運開 昨年参画した九電に要注目


JERA、ENEOS、九州電力3社が参画する五井火力発電所1号機(LNG、千葉県市原市)が8月1日、リプレース計画を前倒しして営業運転を開始した。世界最高水準の発電効率を誇り、出力は78万kW。残る2、3号機も78万kWで、2024年11月、25年3月に順次営業運転を始める予定だ。

計画前倒しで営業運転を始めた五井火力1号機

同火力の運転・保守などを担う五井火力ユナイテッドジェネレーション(GIUG)の持ち分比率に応じ、3基計234万kWのうちJERAが140万4000kW、ENEOSが78万kW、九電が15万6000kWの電気を引き取る。

新しく導入した設備には、燃焼温度1650℃の高効率ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた最新鋭のGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)方式を採用。発電効率は約64%と建て替え前に比べ20%ほど向上した。水素混焼については、3基とも対応可能な設備を備えているものの、現時点で実施する予定はない。

リプレース計画は当初、JERA単独で進めていたが、18年にJXTGエネルギー(現ENEOS)、23年に九電が参画した。一方、九電に関しては元々、東京ガスと共同で19年9月に「千葉袖ヶ浦パワー」を設立し、最大200万kW級のLNG火力建設計画を進めていたが、22年6月に撤退を発表。そして翌23年10月に今度はJERAとの間で、エネルギー・脱炭素分野での包括的協業検討に関する覚書を締結、五井火力に参画した経緯がある。果たして、どんな展開を見せてくるのか、気になるところだ。

組織改善の取り組みを徹底 GXで求められる役割果たす


【巻頭インタビュー】秋吉 優/日本風力発電協会「JWPA」代表理事

再エネ主力化の要諦である風力発電業界が昨年、組織運営の在り方を問われる事態となった。

JWPAトップに組織改善の方向性や、脱炭素化に向けた導入拡大の課題認識などを聞いた。

あきよし・まさる 同志社大学法学部法律学科卒。1983年トーメン(現豊田通商)入社。電力事業本部などを経て2003年にユーラスエナジーホールディングスに転籍。23年4月から同社代表取締役副社長執行役員。24年2月からJWPA代表理事。

―洋上風力公募を巡る贈収賄疑惑を機に、政府審議会に参加できない状況が続きました。

秋吉 国民からの信頼を失う出来事であり、本来は脱炭素の実現に向け業界の代表として積極的に意見を発信すべきところ、その責務を果たせなかったことを重く受け止めています。昨秋の資源エネルギー庁からの行政指導で、法令遵守の徹底と組織運営の透明性確保を求められ、最優先でその対応に取り組みました。検証委員会を立ち上げ、問題点を洗い出して報告書をまとめ、提言の実施に向けた改革・改善プロジェクトチームも発足させました。特に、公募第一ラウンド後の協会としての意見表明の内容やまとめ方に問題があったと認識しており、議論の進め方や対外公表する際などのルールを定めました。こうした改善策を7月に同庁に報告し、協会の審議会への参加が再開されることになりました。

引き続き、今回作ったルールを遵守・実行し、透明性、中立性、公正性を高めた組織運営に最優先で取り組みます。会員や社会から信頼される組織を目指すだけでなく、業界の発展に資する活動に改めて注力します。


資材高騰で事業性変化 公募入札時との差の調整を

―協会からの脱退が相次ぐ中、外部では浮体式洋上風力技術研究組合や、人材育成の協議会などが発足しました。

秋吉 業界の発展に向け、これらの組織と当協会が目指す方向性は同じであると考えています。一方、会員企業の脱退が相次いだことについては、意見表明のプロセスに対する不信感を抱かれたことが要因の一つと受け止めています。幹部だけでなく、会員も公平公正な運営の在り方を理解し、特に競争法遵守に関しては、徹底していきます。

―再生可能エネルギー主力電源化に向け、協会では意欲的な将来ビジョンを策定しています。

秋吉 2050年に風力発電導入量140GW(1GW=100万kW)を目指し、その内訳として陸上40‌GW、洋上の着床式40‌GW、浮体式60‌GWというビジョンを23年に発表しました。特に洋上風力は再エネ海域利用法に基づく入札が第3ラウンドまで順調に進んでいますが、いくつか課題もあります。まず円安の影響もあり資材費が高騰し、落札した事業の経済性が悪化しています。政府に対して、入札時と発注時のコストの差を考慮した価格調整メカニズムの導入を求めています。

また、洋上風力のサプライチェーンに関して、産業界は40年までに国内調達比率を60%に引き上げる目標を掲げています。一部設備は国内で製造されていますが、大規模生産に向けた投資が簡単に進むわけではなく、政府が毎年1GWのペースで入札を進めている状況に追い付いていない状況です。

南海トラフ地震「臨時情報」 エネ業界で強まる警戒感


宮崎県沖の日向灘で8月8日に発生したマグニチュード7・1の地震を受けて、政府が初めて発表した南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)。1週間後に特別な注意の呼びかけは終了したが、大きな地震が発生するリスクは抱えたままだ。地域のインフラを支えるエネルギー業界には、臨時情報を機に防災面の備えに抜かりがないかを継続して確かめる課題が突き付けられている。

会見する南海トラフ地震検討会の代表(8月8日)
提供:朝日新聞社

エネ業界は安定供給と現場の安全確保に万全を期すため、BCP(事業継続計画)を徹底している。混乱する事態は見られなかったが、普段からの備えの重要性を再認識したようだ。

臨時情報の発出を受けて日本ガス協会は、各事業者などが影響を受けた際に迅速に連絡を受けるための窓口機能「情報収集体制」を継続して組成。大手電力で構成する送配電網協議会も地震の発生直後から連絡体制を強化した。また石油連盟は、サプライチェーンの維持と強化に向けて、設備と体制の両面で緊急時の対応力を磨いてきた。

内閣府によると、南海トラフ巨大地震で電気・ガスを含む各種ライフラインや交通網などの被害額が約100兆円に上るとの推計があり、エネインフラにもたらす影響も大きい。その後も神奈川県や茨城県で震度5弱を観測するなど各地が緊迫感に包まれる中、南海トラフ地震への警戒感が強まっている。

JERAは臨時情報に伴い「非常態勢」をとり、燃料運搬船との連絡体制や対応手順の再確認などを行った。備えを徹底する業界だが、予断を許さない状況がしばらく続きそうだ。

根拠となった第3条第3項 科学的な議論だったと言えるのか


【論点】敦賀2号機を巡る規制委判断を検証/奥村晃史・広島大学名誉教授

原子力規制庁は、敦賀2号機が設置許可基準規則に不適合と判断した。

この根拠となった第3条第3項に関わる今回の判断を検証する。

日本原子力発電・敦賀発電所2号機の新規制基準適合性に関わる審査を2015年から続けてきた原子力規制庁は、7月31日の原子力規制委員会において、設置許可基準規則に不適合とする審査結果を報告した。8月2日に開催された臨時の原子力規制委員会では、日本原電から追加調査を行って審査を継続することが要望されたが、規制委はこれを認めず、審査結果をまとめる方針が確認された。日本原電には再申請の途が残されているが、現状では敦賀発電所2号機の再稼働はできない。


議論の焦点となったK断層 原電の総合的な判断は妥当

不適合とされた理由は、2号機建屋の北約300mで見出されたK断層が原子炉建屋まで連続する可能性(連続性)と、K断層の最近12万〜13万年間の活動(活動性)が否定できないことから、将来変位を生ずる恐れが認められたことにある。その根拠となる設置許可基準規則第3条第3項は、「耐震重要施設は、変位が生ずる恐れがない地盤に設けなければならない」とされている。

原子炉建屋直下の破砕帯とK断層については、12年〜14年に原子力規制委員会が行った敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合でも議論され、今回と同様の結論が出ていた。この有識者会合の結論は、新規制基準適合性に関わる審査の前提とはならず、審査の中で検討が行われてきた。

東北電力東通原子力発電所と北陸電力志賀原子力発電所の敷地内破砕帯についても有識者会合は将来活動する可能性があることを結論したが、その結論は新規制基準適合性に関わる審査で否定され、再稼働を妨げる条件にならなかった。

日本原電はK断層の連続性と活動性を否定し将来変位を生ずる恐れはないことを主張するが、原子力規制庁の新基準適合性審査チームが連続性と活動性が認められる可能性を否定できないと結論づけ、規制委はこの結論により日本原電の主張が全面的に否定され、その判断は科学的で合理的だとしている。審査結果は7月31日開催の規制委の資料2にまとめられた。同資料を基にその妥当性を考えてみたい。

K断層の活動性に関わる議論の焦点は、断層によって変位を受けている③層と呼ばれる地層と③層を覆って変位を受けていない⑤層下部の年代推定にある。③層が12万〜13万年前より古く、⑤層下部が12万〜13万年前であれば、K断層は12万〜13万年間に活動しておらず、将来変位を生ずる恐れがないといえる。審査結果は⑤層下部が⑤層上部の堆積した10万年前前後に再堆積したことを否定できず、12万〜13万年前より新しい可能性があるとしている。一方③層から報告されている13・3万年(誤差0・9万年)より古いOSL(光ルミネッセンス)年代測定結果は、誤差範囲からみて③層が12万〜13万年前の地層である可能性を否定できないとしている。

D―1トレンチの地層断面図(イメージ)

地層の年代を推定するための個別のデータには火山灰層の再堆積の認定や、年代測定値の誤差のように、必ず不確かさが含まれている。科学的な年代推定は、不確かさをもつ多数のデータを合わせて検討し総合的に判断することにより実現できる。日本原電の審査資料には膨大なデータが取りまとめられ、規制基準に関わる活動性がないとする判断はそのデータに基づく総合的な判断として妥当である。

例えば、⑤層下部には12・7万年前の火山灰が含まれOSL年代は12・6万年(誤差0・5万年)前である。再堆積があった場合、この年代が再堆積の年代である。

③層と⑤層下部との間には顕著な侵食が起きており、寒冷で低海水準の時期に起きた侵食の開始は遅くとも13万年前で③層の堆積は13万年前以前である。12・7万年前の火山灰層はこの不整合面の直上に一次堆積している。③層を13・3万年(誤差0・9万年)より古いとする年代値は、OSL年代測定法による測定限界より古いことを現しており、誤差は年代の不確かさではない。


科学的な議論にならず 原電の主張を否定するため

このように、科学的・総合的な判断から導かれる地層の年代に対して、審査チームは一貫して個別データに含まれる正負の不確かさのどちらか一方だけをとって、活動性がある可能性を否定できないと結論づけている。これは科学的な議論ではなく、日本原電の主張を否定するための議論にすぎない。地質学に不可避な個別データに不確かさがあることを理由に、科学的・総合的な判断が否定されることを防ぐ方法はない。設置許可基準規則第3条第3項に関わる検討では、可能性が否定できない、として疑わしいものは危険とする判断が常態となっている。

敦賀発電所と断層の位置関係

現存する原子力重要施設は立地の際、施設下の断層や破砕帯の活動性を現行の規制基準に照らしては考慮していない。事前の調査で活断層がないことは確認されており、建設のために表土と表層の岩盤は取り除かれている。そのような既存施設に設置許可基準規則第3条第3項を適用して安全の証明を求めることは、事業者にとって非常に大きな負担となっている。

敦賀発電所2号機の審査では再稼働を許可しないことを目的に第3条第3項が利用されているように感じるのは筆者だけだろうか。

おくむら・こうじ 1956年滋賀県生まれ。東大文学部卒、同大学院理学系研究科博士課程修了。通商産業省工業技術院地質調査所研究員、広島大学文学部教授を歴任。24年から現職。原子力安全委員会専門委員.IAEA国際耐震安全センター科学委員などを務める。

海外で脱炭素の戦略的投資拡大 ドイツ・ベトナム両事業の最新事情


【中部電力】

中部電力は2021年度から30年度で4000億円投資し脱炭素化につながる事業を拡大する。

国内エネルギー事業と成長分野に位置付けるグローバル事業で利益ポートフォリオ1対1を目指す。

中部電力は、グローバル事業において、脱炭素につながる事業への戦略的投資を拡大し、欧州・アジアを中心とした脱炭素エネルギー企業を目指している。今回は、ベトナムにおける電気事業の橋頭堡と位置付ける再エネ会社、エネルギー業界のゲームチェンジャーと期待される地熱利用技術を用いたドイツで展開中のプロジェクトの二つを紹介する。

ベトナムのNho Que1水力発電所(3万24kW)


発電所の点検記録を整備 日越のDX技術交流に期待

ベトナムで出資するのは水力事業に取り組むビテクスコパワー社(ビテクスコ社)。同国最大規模の民間再エネ発電事業会社であり、ベトナム国内で29カ所の水力発電所と2カ所の太陽光発電所を運営・管理している。

海外の水力発電事業に初出資する理由は大きく三つある。第一に、ベトナムは人口増加と経済発展が著しく、今後も電力需要の拡大が期待できること。第二に、ASEAN諸国の中でも日射量や風況が良好なため、再エネ開発のポテンシャルが高いこと。第三に、ベトナム政府が再エネ比率を高めていく計画を打ち出すなど、再エネ分野の一層の成長が期待できるためだ。

中部電力は、設立以来70年以上にわたって培ってきた水力発電所の運転・保守に関する技術や知見を活用し、ビテクスコ社の水力発電所の運転効率化や安全性向上に貢献している。これにより、水力発電事業による安定収益を基盤にして、ベトナムの再エネ開発を推進し、ベトナムの成長性を取り込んでいく計画だ。

ビテクスコ社に運用保守エキスパートとして出向中の石原真輔副長は、中部電力の水力技術者として長いキャリアを有し、現在特に力を入れているのが、保守業務の基本となる点検記録の管理だ。

ビテクスコ社では、水力発電所の点検は行われてはいたものの、その記録を残し、将来の維持管理に役立てるという視点が十分ではなかった。そこで石原副長は、日本の水力発電所で活用してきた点検ノートを取り入れた。本来点検とはその場限りのものではなく、データを蓄積し、整理し、それらを活用することで、発電所のオーバーホールまでの時間を延ばし、維持コスト削減につながるものだということを発電所の技術者に伝えている。

言葉の壁も大きく立ちはだかる中、どうしたら理念を共有できるのか。石原副長は、粘り強くコミュニケーションを続けることが肝要だと考えている。

今後期待を寄せているのがベトナムと日本の技術交流だ。ビテクスコ社の水力発電所は一番古いものでも2009年式。したがって、どの発電所の機器も比較的新しいためデジタル化を進めやすく、これからDXが本格化する日本にとっては、ベトナムの技術が参考になることもあり得る。その点で、ベトナム人技術者、日本人技術者のお互いの研鑽が、国境を越えて、発電所の運転や保守のクオリティ向上につながるのではないかと期待している。