【電力事業の現場力】中国電力労働組合
安定供給を支え続けてきた火力発電所の休廃止が相次いでいる。
現場では最後まで「地元のご理解があってこそ」という姿勢が貫かれていた。
東日本大震災以降、原子力発電所の多くが停止する中で、安定供給を支えているのが火力発電所だ。しかし、高経年化や運用の変化 による設備トラブルは増え、日々の巡視が強化されている。
火力発電所の運転で重要なのは「異常に気付くこと」。いつもと違うことはないか、あらゆる部分にアンテナを張る。またトラブル発生後は早期復旧に向け、設備改修を最小限かつ短期間で終えるための検討など、限られた要員で日々の業務を行っている。
中国電力は電源の競争力強化のため、2020年1月に発表した経営ビジョンで島根原子力発電所2号機の早期再稼働や3号機の早期稼働、最新鋭の発電方式を採用した三隅発電所2号機の運開を掲げた。三隅2号機は、22年11月に運転を開始。一方、その裏では高経年化した火力発電所の休廃止が行われていた。
昨年1月には下松3号機(1・2号機はすでに廃止)、同年4月には水島2号機、今年1月には下関1・2号機を廃止。下松、下関は全号機がその役目を終えたことになる。また大崎発電所1―1号機は、11年12月から休止中だ。
発電所の廃止は、職場や地元企業などに与える影響が極めて大きく、関連業務では神経をとがらせる。最初に気を使ったのは情報管理だ。公式発表前に情報が先行し地元に動揺が広がらないよう、細心の注意を払いながら労使協議を進めた。
現場の組合員は長きにわたり「マイプラント」という高い誇りを持って働いてきた。高経年化した火力発電所の廃止は時代の趨勢とはいえ、経営側の「廃止」という判断に対しては苦渋の思いがあったに違いない。だが組合員は未来の中国電力を見据え、前向きに決定を受け入れた。
中国電力労働組合としては、働く「人」を最大限に慮り、就労意欲や安心感の維持を念頭に真摯に対応した。当該支部の労使協議は、廃止に向けた施策がスムーズに進むようにスケジュールを前倒して精力的に行った。円滑な廃止は、こうした組合員の姿勢と各支部の取り組みによって成し遂げられた。
進む安全対策工事(下関発電所)
工期を守る強い使命感 自信と誇りを胸に
廃止した発電所は1960~70年代に運開し、日本の高度経済成長を支えてきた。これだけの期間、発電事業を続けてこられたのは、地元との信頼関係のたまものだ。所在する地域にとって、 火力発電所は「シンボル」とも言える存在。地元の人々の思いもあり、下関発電所の高さ約200mの煙突は当面、その姿を残すという。
煙突は地元のシンボルとなっている(下関発電所)
三隅2号機の運開も一筋縄ではいかなかった。建設所・発電所に加え、請負者も工程や資機材ヤードの調整などで既設の1号機の運転に支障を来さないよう、昼夜を問わず努力を重ねた。また新型コロナウイルス禍での苦労もあった。地域の医療提供体制に限界がある中で、集団感染によって迷惑を掛けるわけにはいかない。発電所内では全入所者の体調確認に加え、濃厚接触者との動線を分けるなど対策を徹底した。
三隅発電所2号機の中央制御室
こうして中国電力の「最重要プロジェクト」である三隅2号機の運開は、計画通りに行われた。現在は島根原子力発電所2号機の「8月再稼働」に向け、強い使命感のもと安全対策工事が進む。
発電所の運営や休廃止に共通するのは「地元との共存共栄であり、地元のご理解があってこそ」という姿勢だ。これからも自信と誇りを胸に、地元と共に安定供給を支えていく。