【業界紙の目】黒羽美貴/ガスエネルギー新聞 編集部記者
本業の都市ガス事業に加え、社会課題解決や地域活性化に向けた新事業に挑む事業者が増えている。
魚類の陸上養殖やキャンプ場運営など、意外な取り組みが注目を集めている。
都市ガスの小売り全面自由化から8年が経つ中、都市ガス事業者は本業の枠を超えたさまざまな事業に挑戦している。その多くは、ガス事業と親和性の高いリフォーム事業や電力事業などだ。また、空き家の管理や買い物代行といった、人口減少や高齢化など地域課題に対応した新事業が組成されるケースも増えている。

都市ガス×陸上養殖拡大中 環境配慮型で挑戦
こうした事業以外にも、一見ガスとは関係がなさそうな魚類の陸上養殖を始めている事業者もいる。
東邦ガスは日本水産の協力のもと、2021年からLNGを海外から受け入れている知多緑浜工場(愛知県知多市)でトラウトサーモンの陸上養殖の実証実験を行っている。この養殖の特徴はLNGの未利用冷熱を使っていることだ。この基地では海水でマイナス162℃のLNGを気化している。LNGを温め、温度が下がったこの冷たい海水はこれまで利用されていなかったが、20度以上になると成育が難しくなるサーモンの養殖にぴったりということで、活用することになった。22年6月からは「知多クールサーモン」という名で、地元スーパーや自社ウェブサイトで販売している。東邦ガスでは養殖事業の本格運用に向け、今秋に大型水槽を完成させる予定で、今後水揚げ量を60tにまで増やす目標を掲げている。
海から離れた埼玉県の武州ガスでも、22年6月にウナギの陸上養殖を始めた。本社がある川越市はウナギ料理の名店が多く、その周辺地域では川魚料理の食文化が根付いているが、これまで県内ではウナギ養殖が行われていなかった。そこで同社では名物のウナギの地産地消に貢献するため、東松山市で養殖を開始した。県内企業と業務提携して、地下水を循環利用する独自のろ過システムを用いて排水量を最小限に抑え、システムの電力の一部を太陽光発電で賄い、環境に配慮した施設で養殖している。
昨年7月には、「武州うなぎ」という名で大手EC(電子商取引)モールで販売を開始。かば焼きや、それを刻んだ商品を冷凍状態で届け、ボイルなどすればすぐ食べられる。23年度は約4・2万尾を飼育し、約2・4万尾を出荷した。
同社では当初より、東松山産の養殖ウナギを使った食事を出す直営の飲食店も構想していた。そこで今年9月から11月に期間限定で、川越市内に武州うなぎを使った商品を出す飲食店を試験的に出店する。なお、同社が20年から取り組んでいる農業事業で栽培している地元米と武州うなぎを合わせて、武州ガスオリジナルの「うな丼」を作ることを目指すという。
実は農業事業も好調で、23年度のコメの収穫量は約41tに上り、8月中旬に完売した。今年度はさらに栽培面積を増やすそうだ。コメ不足が叫ばれる中、農業事業にも追い風が吹いているといえそうだ。
そして静岡ガスでは、今年11月にコンテナを利用した陸上養殖システムを使ってハタ科の高級魚・ヤイトハタと海ブドウの養殖を試験的に始める。場所は同社の静岡支社内(静岡市駿河区)だ。世界的に懸念される人口増によるタンパク質不足への解決策として、また地域への新たな食の提案を目指す。来夏には地元の飲食店やスーパーに出荷予定だという。試験養殖の結果や需要を探りながら、魚種の拡大や、設備の拡張を検討していく。エネルギーの有効活用の観点から、同社の発電所近くにこの養殖システムを設置して、熱源を発電所の排熱に切り替えることなども考えているという。






















