A WG委員の意見を踏まえ、概ね都市ガス業界の取り組みに沿った形での取りまとめになった。業界としては、e―メタン導入に伴うコスト増に対して水素やアンモニアと同等の支援を要望していて、当初はもう少し踏み込んだ議論を期待していたのだが、FITやFIPといった仕組みの詳細も含めて7月以降議論されることになるのだろう。 一つ残念な点を挙げれば、業界としてはファーストムーバー(先行投資者)への支援を書き込んでもらいたかったのだが、明示的にはGX移行債を活用した支援については記載されなかったことだ。事業者が2025年度にFID(最終投資決定)に踏み切るとなると時間がない。ガス市場整備室としては、持続性の高い仕組みの検討を進めたいようだが、やはり一から仕組みを考えると時間がかかるし、国民に新たな負担を求めるような制度を新設するのもハードルが高い。地方ガス向けには、バイオガスの普及がしっかりと盛り込まれたことは評価できる。
e―メタンは脱炭素社会の切り札となるか
e―メタンの社会実装が切り札に 移行期は天然ガス化も重要
B e―メタンの社会実装に向けた過程で地方ガス会社が貢献できることはなく、大手の取り組みが進展することを願うしかないし、現段階でそれだけを当てにした事業経営を進めるわけにもいかない。20、30年後に、やっぱり技術的に難しかったということもあり得るからね。地方ガス会社の中で、再エネをベースにした地域新電力事業に取り組む動きが出てきたのもそのためだ。自治体を含め、今がトランジション(移行)期であるという認識を持っている人はまずいない。トランジション期は天然ガス化を進めることが大事な取り組みであるにもかかわらず、一足飛びに脱炭素化の取り組みに移行しようと考えがちだ。 脱炭素先行地域でフィーチャーされるのは再エネ由来の電気だけで、現状ではガス会社はCNの取り組みでメインプレーヤーにはなれない。メタネーションが実現すれば都市ガス会社もそこにコミットできるようになるけど、うまくいかなかった場合にどのような形で地域社会にエネルギーの供給者として参画すればいいのか、非常に悩ましい。新電力ではなく、ガス会社としてCNに貢献したいのが各社の本音だよ。
C e―メタンだけでは、地方ガス会社がCN化に向けて主体的に取り組めることがあまりない。その点、WGの中間整理に、バイオメタン、特に国産が大事だというメッセージが盛り込まれたのは興味深い。地方ガス会社が地域活性化や脱炭素化への貢献、あるいはシュタットベルケ的なインフラ事業展開を目指すなら、自治体が処理に困っている廃棄物や下水汚泥などのエネルギー利用に注目すべき。鹿児島の日本ガスは、何年もかけて市が処理する生ごみの有効利用を実現し、これからも廃棄物などのエネルギー利用に取り組む目標を持っており、その理念は明確だ。