【マーケット情報/7月7日】原油上昇、供給逼迫感が強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。供給減少の見通しが広がり、買いが優勢となった。

サウジアラビアは、日量100万バレルの自主的追加減産を、8月まで延長すると発表。ロシアも8月に、輸出を日量50万バレル削減すると公表し、供給逼迫感を強めた。また、アルジェリアも8月に、日量2万バレルの減産を計画している。さらに、リビアでは、政情不安を背景に、一部生産と輸出が停止する可能性が台頭した。

米国の週間在庫、および戦略備蓄が減少したことも、油価に上昇圧力を加えた。また、米政府は、戦略備蓄の補充計画を継続すると表明。需給が一段と引き締まった。

一方、イランは、日量380万バレルまで生産が回復したと発表。ただ、油価への影響は限定的となった。


【7月7日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=73.86ドル(前週比3.22ドル高)、ブレント先物(ICE)=78.47ドル(前週比3.57ドル高)、オマーン先物(DME)=77.89ドル(前週比2.30ドル高)、ドバイ現物(Argus)=77.20ドル(前週比1.15ドル高)

最大6種類のガスを同時検知 船舶で採用の高性能・高耐久型


【理研計器】

世界中に石油やLNGなどを輸送するタンカー。危険物を積載するため、高度な保安管理が必要となる。その作業に、ガス検知器は必需品だ。

理研計器のポータブル型マルチガス検知器は、そうした過酷な作業現場で作業員の身を守るために使われている。このほど発売した、持ち運びやすさと安定感を両立した「GX―9000シリーズ」2機種は、従来から大幅に性能を向上させている。

従来は、検知したいガスや用途により四つの機種から選択して使い分けていた。今回、センサーを一新することで、これまで4種類に分かれていたシリーズを2種類に統合した。また、検知したいガスや用途に合わせて購入時にセンサーの組み合わせを選べるようになり、従来複数台のガス検知器が必要なケースも一台で賄えるようになった。

汎用タイプの「GX―9000」は、基本の4成分といわれる酸素、一酸化炭素(CO)、低濃度の硫化水素(H2S)、可燃性ガスに加えて、追加で2種類、合計6種類のガスを同時に検知できる。

ポータブル型マルチガス検知器「GX-9000」

もう一方の「GX―9000H」は、高濃度のH2Sを測定する場合に使用する。高濃度H2Sに対応するために、専用の配管を追加している。

同シリーズに搭載するセンサーは、超小型の「Rセンサー」と、高耐久の「Fセンサー」の2種類だ。GX―9000シリーズには各センサーのスロットがあり、これらを組み合わせると、測定できるガスの組み合わせは1000通りを超える。新型の両センサーは、性能だけではなく耐久性も向上。以前は1年だった保証期間も、最大3年に延長している。

同製品は極めてタフな構造だ。船の上は、潮風や波の揺れなど、不安定な状態で使用する場面も多く、防爆、防塵、防滴構造に加え、1・5m落下耐久を実現した。寒冷地から熱帯地域など環境の変化も大きいため、マイナス40~60℃と温度設計も幅広い。

営業技術課の杉山浩昭課長は、「大型タンク対応の強力なポンプで、最大45mの長距離でもガスの吸引が可能だ。LNGのパイプラインや消防の現場など、用途の幅は多岐にわたる」と説明する。


国内外の規格認証に適合 スマホで簡単データ管理も

それ以外にも、ブルートゥースでスマートフォンなどと通信が可能に。専用アプリを使って毎日の測定結果を簡単に保存でき、記録データの管理もしやすくなった。

「アンモニアや水素など、次世代の燃料にも対応できる製品。現在取得している防爆規格以外にも、国内外の船舶規格など多くの規格を取得する予定」と杉山課長は意気込む。理研計器は、ガスを扱う世界中の現場の安全を守る新製品を今後も投入していく。

ZEH普及は日本の最後尾 北海道の工務店の苦悩と未来


【業界紙の目】白井康永/北海道住宅新聞社代表取締役

省エネルギー住宅技術が日本一普及している北海道が、ZEH率は日本一遅れているという。

積雪寒冷地特有の難しさに苦悩する北海道が直面する課題を、一緒に整理していきたい。

住宅断熱の技術開発とその普及が日本で一番早かった北海道。1980年代に開発された暖かくて省エネルギーな住まい、高断熱・高気密住宅は、北海道内で地域差はあるものの、既に新築戸建て住宅で5割以上の普及率に達しているとされ、日本一寒い地域にもかかわらず、道民は日本で一番冬暖かい住宅に暮らしている。

その技術は、すぐに津軽海峡を渡って本州に伝わり、80年代後半には東北地方の一部の工務店に広まったものの普及は進まず、北海道を除く日本全体としては、30数年たった今でも高断熱・高気密住宅の普及が始まったといえる段階ではない。まだ普及前夜である。

ところが、住宅内で使うエネルギーを差引ゼロにする省エネ住宅、ネット・ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)は、北海道が日本で最も普及が遅れている。正確には沖縄に次ぐブービー賞だ。


高断熱・高気密で十分 冬発電しないPVに消極的

ZEHは、住宅内で使う暖(冷)房・給湯・照明家電などの消費エネルギーを減らした上で太陽光発電(PV)を搭載し、使った分のエネルギーを自家発電する家をいう。ZEHの普及率は北海道が8・2%で、沖縄の3・4%に次いで低い。普及率は低い順に沖縄、北海道、富山、秋田、石川、新潟の各県が続く。沖縄を除き全て日本海側の積雪地なのだ。

北海道では家の中で使うエネルギーの半分以上が暖房だ。その暖房エネルギーをより少なくする技術に優れているのに、なぜZEHは遅れるのか。実はPVの搭載住宅数が少ないのだ。その理由はいろいろあるが、一番の課題は冬季の降雪。雪が降るとPVパネルに雪がかぶさり発電しなくなる。晴れると落雪するが地面に落雪が積み重なり、場合によっては南面の窓をふさいでしまう。旭川市や富良野市といった極寒冷地になると外気温が低いためにパネルにかかった雪が落ちない。結果、冬は発電しにくい。

もっとも、北海道では屋根に積もる雪を落とさない無落雪屋根が主流なので、冬の初めに雪が降ったらそのまま春までパネルは雪の下なのだ。

冬の発電は少なく雪が積もるとゼロに

独自の省エネ住宅基準を定め、これまで高断熱・高気密住宅の普及に一役買ってきた北海道庁も、戸建住宅にPVを搭載する推進役にはなってこなかった。むしろやや後ろ向きだったと言える。

この間に、PVパネル搭載をセールスポイントの一つにして全国を席巻している住宅メーカーが道内でも受注棟数を伸ばしている。その会社は今や注文住宅棟数で道内のトップに立つと言われている。

2020年10月、当時の菅義偉首相が50年までに「カーボンニュートラル(CN)」を目指すことを国会で宣言した。それ以降、住宅を取り巻く政策が大きく動き出している。

北海道庁は住宅分野で独自の断熱基準「北方型住宅」を1988年に制定。以後、断熱・省エネ性能基準を数回にわたって強化してきた。「基準強化」の言葉の響きは窮屈な世の中をイメージするかもしれないが、断熱性能に関して道民の受け止めは、むしろ「先進的」なイメージを持つ人が多いだろう。そして今年、ゼロカーボンへ向けた新基準「北方型住宅ZERO」を制定・公開した。

他県では、国が定める断熱等性能等級やZEH基準をそのまま自治体基準とする例が多い中、北海道は独自基準を打ち出した。そこには、ゼロカーボン化の手法はPVだけではない、といった思いがにじむ。

公平な電力小売り競争へ 卸取引の長期契約促進


燃料調達価格の高騰や卸電力市場価格の上昇を背景に、赤字供給を余儀なくされた新電力が顧客を手放すなど、電力間競争の後退を否定できない状況が続いている。こうした中、資源エネルギー庁が、新電力による安定的な電力調達と、健全な競争環境確保に向けた対策に乗り出した。

特に新電力側が強く求めているのが、電源のほとんどを所有する大手電力会社による内外無差別な卸取引の徹底だ。大手電力は、入札形式やブローカー経由の取引などによりこの要請に対応しているが、契約期間が1年と短期で、転売禁止やエリア外への供給制限などの条件が競争制限的であるとの指摘もある。

5月30日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会でエネ庁事務局は、長期相対契約を締結しやすい環境整備や、転売を自由に行えるような仕組みづくりに向けた論点を提起した。

新電力、電源側双方の事業安定化に資する仕組みとなることが期待されるが、実効性を左右しそうなのが与信の審査基準だ。「厳しすぎると、長期契約ができず仕組みが形骸化しかねない」。新電力関係者はこう警鐘を鳴らす。

電力不祥事が残した宿題 体質と制度の改善急務


【論説室の窓】五郎丸 健一/朝日新聞 論説委員

相次ぐ電力大手の不祥事は、競争を促す改革への無理解とルール軽視の体質をあらわにした。

真摯な反省と再発防止が関係各社に求められるが、不備が露呈した制度の改善も急がれる。

電気料金の値上げが広がる中、大手電力会社の度重なる不祥事が社会に不信を広げた。カルテルと、新電力の顧客情報の漏洩・不正閲覧。いずれも、電力自由化の趣旨を踏みにじり、公正な競争を陰で骨抜きにする悪質な行為だ。

公益企業としての自覚やコンプライアンスの意識はあるのか。自由化前の旧態依然とした甘えやおごりが、経営層から現場にいたるまで染みついてはいないか。そんな疑念を抱かざるを得ない。

カルテルでは公正取引委員会が3月、中国、中部、九州電力の3社に課徴金納付・排除措置命令を出した。関西電力が3社とそれぞれ相手の区域内での営業活動を制限することなどで合意し、独占禁止法に違反したと認定した。

関電には、調査前に自主申告すると課徴金が免除される制度が適用された。それでも3社の課徴金額は、一事件として過去最高の約1000億円に達した。社会に与えた損失の大きさを物語る。

中部電と中国電が処分を不服とし、取り消しを求めて提訴する方針を表明するなど、決着にはさらに時間がかかる見込みだ。

ただ、関電自身も認めた事実関係を見れば、大手同士が互いの「縄張り」を荒らさないよう申し合わせ、値下げ競争の回避をはかっていたことになる。公取委によると、各社の話し合いには役員や部長級の幹部が出ていたという。顧客をないがしろにし、自社の利益を不当に追求する組織的な背信行為と言うほかない。

一方、昨年末にまず関電で見つかった不正閲覧の問題は、大手10社のうち7社に広がった。4月に経済産業省は業務改善命令などの処分を出した。

地域独占を認められている大手の送配電部門が、送電網を利用する新電力の顧客情報を外部に漏らすことは、電気事業法で禁じられている。公共インフラの中立性を保つための重要なルールだ。ところが、小売り部門の多数の社員らが情報を日常的に「のぞき見」していた。送配電部門を別会社化する「発送電分離」も2020年に実施される中で、不正が蔓延していたことになる。電力システム改革の根幹を揺るがす事態だ。


悪質さ際立つ関電 電事連も問われる

中でも関電の悪質さは際立つ。カルテルで営業抑制の方針を社長らが出る会議で決めていたのは衝撃的だ。不正閲覧では顧客情報を自社の営業活動にも使っていた。

関電は20年に、金品受領問題で経営陣の刷新に追い込まれた。その時、副社長から社長に昇格したのが、カルテルの実行役とされる森本孝氏だった。その後、「若返り」を理由にわずか2年で社長を退任したが、発表の場で関電首脳陣は、法令順守や企業統治の改革が進んだ、と強調していた。

その後、判明した事実を見れば、いかにも空々しい。反省と再発防止をいくら口にしても、深刻な不正が後を絶たない体質にメスを入れ、膿を出し切る覚悟を経営陣が行動で示さなければ、信頼は失われたままだろう。

大手の横並び・なれ合い意識も問われている。電気事業連合会の会合の前後にカルテルを話し合うケースもあったとして、公取委は電事連に改善を申し入れた。電事連に対し、「競争制限的な行為が誘発されやすい環境」との見方は経産省内にもある。新電力や発電会社など多数のプレーヤーが競争する時代に合った業界団体の姿を考える必要があるのではないか。

公取委から申し入れを受ける電事連の池辺和弘会長

カルテルが、ルールより営利を優先するゆがんだ姿勢やチェック機能の不全など、主に幹部層の問題なのに対し、不正閲覧の方は、営業部門などの現場に広がっていた点で根が深い。

システム上の情報遮断や機器の管理など「仕組み」のずさんさと、基本ルールや制度改革に対する「意識」の希薄さが重なった。それぞれ改善が必要だが、社員の意識改革にはとりわけ多くの努力と工夫が求められる。

CCS社会実装へ 先進的7事業を選定


発電所や工場などから排出されるCO2を回収し、貯留する「CCS」事業の社会実装に向け、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、モデル性のある「先進的CCS事業」として7件を選定した。2030年までに年間貯留量1300万tの確保を目指す。

選定されたのは、「苫小牧地域CCS(JAPEXなど)」「日本海側東北地方CCS(伊藤忠商事など)」「東新潟地域CCS(東北電力など)」「首都圏CCS(INPEXなど)「九州北部沖~西部置きCCS(ENEOSなど)」の国内貯留5件、「マレーシアマレー半島東海岸沖CCS(三井物産など)」「大洋州CCS(三菱商事など)」の海外での貯留を想定する2件。

CCSは、50年カーボンニュートラルを達成するためのソリューションの一つ。資源エネルギー庁はCO2の分離・回収から輸送、貯留までのバリューチェーン全体を一体的に支援することで、事業化を後押しする。合わせて30年の事業開始に向け、マーケットのルールを明確化するための事業法の早期制定を目指す方針だ。

【覆面ホンネ座談会】脱炭素時代にどう挑む!? ガス事業者が生きる道とは


テーマ:都市ガスのカーボンニュートラル対応

脱炭素社会を見据え、さまざまな課題に直面する都市ガス業界。e―メタンなどのイノベーションの加速が期待される一方、地方では再エネやバイオガスなど地域に密着したエネルギー供給の在り方が模索されている。

〈出席者〉 A大手都市ガス関係者  B地方都市ガス関係者  C報道関係者


―6月13日の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)ガス事業制度検討ワーキンググループ(WG)で、都市ガスのカーボンニュートラル(CN)化について、中間整理がまとまった。

A WG委員の意見を踏まえ、概ね都市ガス業界の取り組みに沿った形での取りまとめになった。業界としては、e―メタン導入に伴うコスト増に対して水素やアンモニアと同等の支援を要望していて、当初はもう少し踏み込んだ議論を期待していたのだが、FITやFIPといった仕組みの詳細も含めて7月以降議論されることになるのだろう。 一つ残念な点を挙げれば、業界としてはファーストムーバー(先行投資者)への支援を書き込んでもらいたかったのだが、明示的にはGX移行債を活用した支援については記載されなかったことだ。事業者が2025年度にFID(最終投資決定)に踏み切るとなると時間がない。ガス市場整備室としては、持続性の高い仕組みの検討を進めたいようだが、やはり一から仕組みを考えると時間がかかるし、国民に新たな負担を求めるような制度を新設するのもハードルが高い。地方ガス向けには、バイオガスの普及がしっかりと盛り込まれたことは評価できる。

e―メタンは脱炭素社会の切り札となるか

e―メタンの社会実装が切り札に 移行期は天然ガス化も重要

B e―メタンの社会実装に向けた過程で地方ガス会社が貢献できることはなく、大手の取り組みが進展することを願うしかないし、現段階でそれだけを当てにした事業経営を進めるわけにもいかない。20、30年後に、やっぱり技術的に難しかったということもあり得るからね。地方ガス会社の中で、再エネをベースにした地域新電力事業に取り組む動きが出てきたのもそのためだ。自治体を含め、今がトランジション(移行)期であるという認識を持っている人はまずいない。トランジション期は天然ガス化を進めることが大事な取り組みであるにもかかわらず、一足飛びに脱炭素化の取り組みに移行しようと考えがちだ。 脱炭素先行地域でフィーチャーされるのは再エネ由来の電気だけで、現状ではガス会社はCNの取り組みでメインプレーヤーにはなれない。メタネーションが実現すれば都市ガス会社もそこにコミットできるようになるけど、うまくいかなかった場合にどのような形で地域社会にエネルギーの供給者として参画すればいいのか、非常に悩ましい。新電力ではなく、ガス会社としてCNに貢献したいのが各社の本音だよ。

C e―メタンだけでは、地方ガス会社がCN化に向けて主体的に取り組めることがあまりない。その点、WGの中間整理に、バイオメタン、特に国産が大事だというメッセージが盛り込まれたのは興味深い。地方ガス会社が地域活性化や脱炭素化への貢献、あるいはシュタットベルケ的なインフラ事業展開を目指すなら、自治体が処理に困っている廃棄物や下水汚泥などのエネルギー利用に注目すべき。鹿児島の日本ガスは、何年もかけて市が処理する生ごみの有効利用を実現し、これからも廃棄物などのエネルギー利用に取り組む目標を持っており、その理念は明確だ。

水素に関して専用導管やローリーで利用するとしたのもポイント。ガス会社は、カロリーが天然ガスよりかなり低い水素を、既存ガス導管で利用するのを避けたいはずだ。50年前に大規模投資をしてLNG輸入をはじめたのはカロリーが高いから。当時急伸していた工業や住宅の需要に応えるためには選択肢がなかった。再び低カロリーのエネルギーに戻る選択は彼らにはないだろう。

地域と共存する再エネ開発 国内外の脱炭素事業をけん引


【レノバ】

木南陽介/レノバ代表取締役社長CEO

2000年の創業以来、環境課題の解決を目指してさまざまな事業開発に取り組むレノバ。

再エネ開発の要点と国内外の情勢に応じた新事業について、木南陽介社長に聞いた。


―再生可能エネルギー事業の方針について教えてください。

木南 再エネ開発は創業当時から構想していましたが、東日本大震災以降のエネルギー政策の転換を契機に、本格参入した形です。

当社初の太陽光発電は14年に1基目が運転を開始。これまでは大型を中心に開発してきましたが、最近は開発ポテンシャルや急速な需要の高まりを踏まえ、小規模分散型にかじを切りました。また16年にバイオマス発電所も運転を開始しており、来年にかけてさらに5カ所での運転開始を目指し、試運転や建設を進めています。

6月現在、建設中案件を含めた設備容量は、太陽光375MW(1MW=1000kW)、バイオマス445MW、陸上風力346MW、水力17MW、地熱2MW程度となります。


「再エネ+α」の価値提案 PPAで新たな強みを

―特に意識していることは。

木南 発電所の建設・運営だけでなく、地域の新たな産業創出など「再エネ+α」の価値を提案することです。再エネ+αを実現するには、まず地域ごとの歴史や文化に根差した「対話」を行わなければなりません。当社が上から目線で対峙するのではなく、「地域の方を上に置く」姿勢が大切です。対話を通じて知識差を埋め、その上で私たちが地域に対して貢献できる内容を提案します。

―最近では小売り電気事業者や需要家と再エネ電気を直接取引するフィジカルPPA(電力購入契約)、および電気は卸電力市場に供給し、別途環境価値を提供するバーチャルPPA(仮想電力供給契約)にも力を入れていますね。

木南 再エネ固定価格買い取り制度(FIT)の開始から10年が経過し、昨年4月には市場連動型のFIPがスタートしました。これを受け、当社は26年度3月期までにPPA全体(フィジカルおよびバーチャル)で合計300MWの積み上げを目指しています。これまでに東京ガス、エバーグリーン・マーケティングとそれぞれフィジカルPPAを締結し、東京ガスとの契約はすでに順次運転を開始しています。またバーチャルPPAに関しては、5月に村田製作所と締結しました。

PPA事業の迅速な拡大を可能にしたのは、当社の新旧の〝強み〟です。これまで当社は、環境・エネルギー分野の調査・コンサルティングから出発し、再エネの開発・運用を手掛けることで、エンジニアリングやファイナンス、リーガル、オペレーションの実績を積み上げ、強みとしてきました。さらに現在はPPAなど非FIT電力事業を通じて、「需要家開拓」という領域も強みの一つになりつつあります。

事業領域の拡大イメージ

水素戦略で高まる期待感 東京都も本気モードに


政府は6月6日、首相官邸で再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議を開き、「水素基本戦略」を6年ぶりに改定した。2040年までに水素供給量を足元の200万tから、現在の6倍にあたる年間1200万tとする目標を定め、官民合わせて15年間で15兆円規模の投資を呼び込む狙いがある。兵庫県立大学教授の嶺重温・水素エネルギー共同研究センター長は「水素関連技術で日本は世界に優位性を保っている。今回を機にさらに議論を進める必要がある」と、日本の水素戦略に期待感を示した。

小池百合子東京都知事も水素に本腰

国の動きに先駆け、水素の普及拡大に取り組むのは東京都だ。5月29日には「東京都エネルギー問題アドバイザリーボード」を発足。キヤノングローバル戦略研究所の今井尚哉研究主幹、国際大学の橘川武郎副学長、早稲田大学法学部の森本英香教授(元環境事務次官)ら6人が委員に選ばれ、電力需給問題の視点から水素エネルギーの活用を訴えた。「従来の再エネ原理主義路線とは一線を画す人選に驚いた。都の本気度が伝わってくる」(エネルギー関係者)

水素事業を巡っては、欧米で計画が滞るなど社会実装には課題山積の状況だが、草分けである日本の存在感を世界に示せるか。

【イニシャルニュース 】ニチガスに赤カード 競合業者は反転攻勢か


ニチガスに赤カード 競合業者は反転攻勢か

LPガス卸・販売大手のニチガスに、レッドカードが突き付けられた。消費者庁は5月25日、電気やガスの訪問営業の際、強引な勧誘や事実に反する説明など特定商取引法に違反する行為があったとして、ニチガスに対し一部業務停止命令を出した。具体的には、同日から8月24日までの3カ月間、電気やガスの訪問販売における契約の勧誘、申し込み、締結に関する業務を停止するよう命じたのだ。

消費者庁によると、今回の処分対象となったのは、ニチガスが業務委託する訪問販売業者(いわゆるブローカー)が行った「勧誘目的等の明示義務に違反する行為」など6件の営業行為だ。

これに対し、ニチガスはコンプライアンスを徹底する方針を示す一方、事実関係と処分内容については「見解の相違がある」として消費者庁と争う構えをちらつかせた。確かに6件の事例を巡っては、「訪問販売あるあるというか、誰しもが経験しているような勧誘方法もみられる。これで3カ月間の業務停止命令とは、処分が厳しすぎるのではないか」(エネルギー関係者)との声が聞こえている。

ともあれ、ニチガスへの業務停止処分で勢い付いているのが、首都圏のLPガス販売事業者だ。「これまで散々奪われてきた顧客を取り返す好機が来た。全力で営業攻勢を掛けていく」。埼玉県に拠点を構えるLPガス販売X社の幹部は、こう気炎を上げる。「切り替えられた需要家宅に消費者庁の公表資料を持っていって、『こんな事態になっていますよ』と周知して回るだけでも、効果がありそうだ」と意気込みを見せる。

ニチガスは法的措置に打って出るのか

かねてブローカーなどを活用した強固な営業力で、激しい顧客争奪戦を勝ち抜いてきたニチガス。今回の処分が、その潮目を変えることになるのだろうか。


立憲と維新が呉越同舟 電力高騰対策を提言

立憲民主党と日本維新の会は6月8日、電気料金高騰対策に関する提言を経済産業省に提出した。政府が行う電気代の激変緩和措置について、事業者による「中抜き」の懸念など問題点が多いと批判した上で、「エネルギー手当」と題した需要家への直接給付や、既存住宅の断熱化に対する補助金など4点の施策を提案している。

特にエネルギー手当については、現在の激変緩和措置が終了する10月から6カ月間、新たな対策として電力会社との契約形態に応じた一定額を需要家に直接支給することを盛り込んだ。具体的には、月額で低圧・電灯3千円、低圧・電力4千円、高圧5万円、特別高圧60億円に設定。今年度予算規模で計1・9兆円になると試算している。

「主張の合わない立憲さんとここまでよく擦り合わせができたと感心するよ」―。こう漏らすのは、日本維新の会に所属するO議員だ。両党が意見の隔たりが大きいエネルギー政策で協力したことを巡っては、霞が関でも驚きの声が上がったほど異色の提携。

提言をまとめた立憲民主党議員の一人は「これで野党としての存在感を示せれば」と意気盛んだが、O議員の考えは違う。「民主党系列お得意の国民支給で、お茶を濁すばかりの手法だ」と手厳しい。それでも立憲と維新が「呉越同舟」した理由は永田町界隈に吹く解散風に他ならない。

しかし結果的に、今国会での解散は見送られた。電力高騰対策を巡る野合は空振りに終わった格好だ。「維新には、エネルギー政策の正論で勝負してほしい」。電力関係者の声は届くか。

米国で新設原発稼働へ TMI事故後では初


1979年のスリーマイル島原発事故後としては初めて、米国で新設原発の営業運転が近づいている。

今回、臨界に達したのはサザン社がジョージア州で建設を進めてきたボーグル原発3号機。ウェスチングハウスのAP1000で、電源喪失時でも原子炉を自動で冷却できる「革新軽水炉」だ。同時期に建設を開始した4号機も7月に燃料を装填するという。

建設当時のボーグル原発
提供:朝日新聞社

サザンの子会社であるジョージア電力のキム・グリーン最高責任者(CEO)は、出力100%の達成を「エキサイティングなマイルストーン」と評し、4号機が稼働すれば国内第2位の発電容量となる。

しかし、ボーグル原発の稼働は6年以上遅れ、建設費の総額は当初予想の2倍以上となる約5兆円に膨れ上がった。原発建設の空白期間が長かったことが原因で、人材不足などが響いたという。

原発建設は人材・技術・サプライチェーンの維持に直結する。日本でも3・11以降、国内案件や海外への輸出が中止になったほか、一部企業が原子力事業から撤退。従事者も減少の一途をたどった。政府は次世代炉の開発・建設を掲げるが、着実に、スピード感を持っての推進が求められる。

「送配電の所有分離検討を」 政府からの宿題に業界反論


顧客情報の不正閲覧やカルテルなど大手電力会社で相次ぐ不祥事の再発防止策として、送配電部門の所有権分離など組織体制の見直しが、政府から大手電力への宿題として突き付けられた。

内閣府は6月16日に閣議決定された「規制改革実施計画」において、「電気事業者の組織の在り方の検討」と題する項目の中で、こんな内容を提起したのだ。

〈経済産業省は、電気事業者の組織の在り方について、新電力の顧客情報の情報漏えい・不正閲覧事案やカルテル事案等を踏まえつつ、2013年の電力システム改革報告書に基づき、次のような点について引き続き検討する〉〈旧一般電気事業者の送配電部門の所有権分離についてその必要性や妥当性、長所、短所を含めて検討する〉

これに対し、電気事業連合会の池辺和弘会長は同日の定例会見で、「こうした事案があったから所有権分離をすべきとは思っていない」と真っ向から反論。「問題は配電と営業の関係なので、送配電会社の所有権分離をする方向に話がいくことには少し疑問を感じる。ほかの方法で解決しようとしているので、同様の事案が再発することはない」との考えを示した。

所有権分離に反論する池辺・電事連会長(6月16日の定例会見)

さらに「(海外では)電気事業が国営で、それを送配電も含めて分離したという例はあるが、民営でやっていたものを所有権分離した例は知らない」「財産権の問題はあり得る」「所有権を分離したからうまくいったという例も承知していない」などと述べた。

所有権分離を巡っては、新電力からも「有事の際の安定供給体制に支障をきたしかねない」(通信系事業者)との慎重論が聞こえている。提示された検討の期限は今年度中。結論はいかに。

女川2号差し止め請求棄却の意義 「主張立証責任は住民側」に回帰


【識者の視点】森川久範/TMI総合法律事務所弁護士

避難計画の実行性を争点に住民側が求めた女川2号の運転差し止め請求を、仙台地裁が棄却した。

その隠れた論点として「主張立証責任は住民側」との原点回帰の判断についても注目すべきだ。

 女川原子力発電所2号機の運転再開を目指す東北電力に対し、宮城県石巻市の住民が人格権に基づく妨害予防請求として運転差し止めを求めた事件で、仙台地裁は5月24日、住民側の請求を退けた。判決では、宮城県と石巻市が作成した避難計画について、①実効性を欠いていることをもって直ちに2号機の差し止めを求めることができるか否か、②実効性を欠いているか否か―が争点とされ、これらの判断が主ではあった。ただこの判決では、実は避難計画とは別に重要な判断も示していた。

それは、民事差し止め訴訟の主張立証責任(主張立証に失敗したときに不利益を被ること)において、「差し止めを求める原告側において、人格権侵害の具体的危険の存在について主張立証すべき責任を負うこととなり、この点は原子炉の運転差し止め請求においても異なるところはない」と明確に判断した点である。

本誌2022年2月号「羅針盤」で触れたように、東日本大震災後、民事差し止め訴訟や民事仮処分の裁判において、事実上の主張立証責任を事業者側に負わせる判断が多かった。その中で21年3月の広島高裁と同年11月の広島地裁の民事仮処分(民事保全)についての決定が、具体的危険性の主張立証責任を住民側が負うと判断した意義は大きいと述べた。

本判決は、民事保全ではなく民事差し止め訴訟の主張立証責任において、原則どおり、人格権侵害を主張する住民側がその責任を負うとした。権利主張者が主張立証責任を負担する民事訴訟の原則回帰を推し進めるものであり、その意義は大きいといえる。


事故発生の具体的危険性 避難計画の実効性と関連なし

次に、避難計画に関する判断について検討する。

原子炉等規制法の設置許可基準規則には、原発事故発生時の避難計画に関わる規定はない。当該事故に関する避難計画は、災害対策基本法および原子力災害対策特別措置法において、国が示す防災基本計画および原子力災害対策指針に基づき、都道府県、市町村などが策定するとされている。

避難計画の策定と支援体制

避難計画に関する事項を含む緊急事態に対する準備などでの役割と責任は、先述の二つの法において、国、地方公共団体、原子力事業者らにそれぞれ配分されている。つまり、避難計画の策定自体は、住民の防災に関し基本的な責務を負う地方公共団体の役割であるが、その運用に当たっては専門的知見を有する国や原子力事業者らに関与を求め、実効性を担保している。

そして判決では、争点①避難計画が実効性を欠いていることをもって直ちに2号機の差し止めを求めることができるか否か、について次のような判断を示した。

原告らの主張は、2号機において放射性物質が異常に放出される事故の発生が前提となっているが、原告らは、2号機の運転再開によって放射性物質が異常に放出される事故が発生する危険につき、具体的な主張立証をしておらず、そのような事故が発生する具体的危険があると認めるに足りる証拠はない。そうすると、原告らの主張は前提を欠くものであって、仮に避難計画が実効性を欠くものであっても、原告らの人格権が違法に侵害される具体的危険があると認めることはできない―。

つまり、避難計画の実効性の判断以前に、2号機の稼働により放射性物質が異常に放出される事故が発生する具体的危険の主張立証がないから、「人格権侵害の具体的危険性」を認識できないとするもので、主張立証責任を原告が負う基本原則の論理的帰結と言える。

分散型リソースの運用会社を設立 市場取引で電力安定供給に貢献


【関西電力】

関西電力は分散型エネルギーリソースの市場運用を担う新会社を設立した。

電気事業やVPP事業で培った知見を生かし顧客の設備を活用、需給の安定化を図る。

今年4月、国内で初めて分散型リソース(DER)の市場運用に特化した新会社「E―Flow(イーフロー)」が誕生した。関西電力のソリューション本部がVPP(仮想発電所)のアグリゲーター事業で培ってきたノウハウや実績を生かし独立した合同会社で、7月1日から30人体制で事業を開始している。

DERを所有する顧客に代わり、電力、供給力、調整力の各市場で最適な取引により収益化を図る。関西エリアにとどまらず、全国で事業を展開する。2030年度までにさまざまなDERを活用し、市場取引量250万kW、300億円の売り上げが目標だ。

関電のVPP事業を担う専門部署が立ち上がったのは18年。DERを活用した調整力公募への入札から事業をスタートした。リソース規模が拡大する中、20年に供給力を取引する容量市場のオークションが開始。21年には調整力を取引する需給調整市場が開設されるなど、DERを活用できる市場整備が進んだ。こうした中、関電はオリックスと共同で、22年から紀の川蓄電所(和歌山県)の建設を開始。24年度に蓄電所事業に参入すると発表した。さらに再生可能エネルギーについては、22年にFIT(固定価格買い取り)制度からFIP(市場連動価格買い取り)制度に移り、今後は発電事業者が自ら発電計画の策定などを行うことが求められる仕組みになった。このように、電力の市場取引の活発化が新会社設立の契機になったわけだ。

三つの事業を柱 AIを活用し収益拡大

E―Flowは、①VPP、②系統用蓄電池、③再エネアグリゲーション―の3事業が柱だ。AIを搭載した分散型サービスプラットフォーム「K―VIPs+(ケービップスプラス)」を活用して、これらリソースの市場取引を行う。

①では、企業や自治体が所有する生産設備や蓄電池、自家発電設備などを束ね一括で管理・制御することで、DR(デマンドレスポンス)として活用し、VPPを構築する。全国のDERを運用して、K―VIPs+を通じて容量市場、電力卸取引所、需給調整市場で取引する。各リソースの特徴を把握し、最大限の活用を図るとともに、今後拡大が見込まれるEVなど、小規模リソースの活用も見据える。

②では、K―VIPs+を活用し、市場入札から発電計画の提出、蓄電池の充放電制御などを行う。過去の取引実績や制度動向、アグリゲーターとしての知見を学習させたAIが日々、収益が最大になるよう入札計画を策定する。また、約定結果に基づき蓄電池を自動制御する。K―VIPs+は市場要件を満たすため、時間前市場も活用しながら、蓄電池残量が適正な水準となるように調整する。

E―Flowの川口公一社長は、「約定内容と蓄電池の残量をAIが自ら考えて、追加的に市場で取引する。それぞれの蓄電池の活用範囲や劣化を鑑みた制約を踏まえてAIが考え、運用するのはこのプラットフォームが初めてだ」と胸を張る。

蓄電池事業部の平木真野花部長は機械学習のAIは何を学習させるかが肝だとし、「今は電力事業の変革期。制度も変わっていく。AIにはさまざまな市場変動ケースなどを学習させ、最適な取引の予測が可能となるようにしている。市場参入に向けて、過去の取引実績を踏まえながら、電力事業の知見を盛り込んでいけるのが強み」と自信を見せる。

難しいのは、蓄電池はメーカーの仕様によって特性が異なる点だ。また、地域によって電力市場の約定傾向も異なる。現在、蓄電池を適切に制御できるようにシステムの仕様調整を行い、運用開始に向けた準備を着々と進めている。

③では、電気事業で培った再エネ予測技術に基づき、K―VIPs+が日々発電計画を作成し、市場入札、計画提出などもサポートする。FIP制度への移行により、市場取引をした際、発電予測と実績に誤差が生じるとインバランス料金が発生する。E―Flowはこのインバランスのリスクを負うため、いかに正確に、天候によって変動する再エネの発電量予測を行うかが重要になる。今後はAIを活用しながら、予測精度の向上を目指していく。

AIを搭載する分散型サービスプラットフォーム「K-VIPs+」

制度変更にも迅速に対応 顧客が安定供給に貢献

現行の第6次エネルギー基本計画では再エネのさらなる拡大とともに、DERの活用が掲げられている。今後増加する多種多様なDERをいかに多くつなぎ、市場取引をはじめとした活用ができるかが事業の鍵を握る。制度の変更にも迅速な対応が必須だ。

川口社長は、この対応ができるのはVPP事業に取り組んできた5年間のノウハウが大きいと強調する。「関電はいち早くVPP事業に取り組み、このところ毎年のように改正が行われる制度を熟知しているからこそ、市場取引に特化した事業ができる」

DERを市場で有効活用させることは顧客の経済的なメリットだけでなく、顧客自身がカーボンニュートラルの実現や再エネのさらなる導入、ひいては電力安定供給に貢献できる。30年代以降、卒FIT電源が増加した際の安定的な電力運用への大きな一助となっていくだろう。

E―Flowは3本柱の事業に取り組みながら、将来的にはこれらの事業から得たデータを活用した事業や、地域と連携した事業なども見据えている。

(左から)金子勝課長、平木部長、川口社長、椿本雄陽氏

宮下・青森県知事が誕生 中間貯蔵で関電奇策の影響は


6月29日、前むつ市長の宮下宗一郎氏が青森県知事に就任した。去る4日の知事選では、候補者の小野寺晃彦・前青森市長との間で自民党が推薦を決められない保守分裂選挙となったが、結果は宮下氏の圧勝だった。

知事選では「青森新時代」を掲げて圧勝した
提供:朝日新聞社

六ヶ所再処理工場やむつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設など、原子力施設が集中立地する青森県。宮下氏はむつ市長時代、電力業界による中間貯蔵施設の共同利用案に強く反対していた。

その中間貯蔵を巡って、驚きのニュースが飛び込んできた。関西電力の森望社長が12日、福井県の杉本達治知事と面談。県内の原発で保管中の使用済みMOX燃料と使用済み燃料の一部を、核燃料サイクルの実証研究で使用するためフランスに搬出する〝奇策〟を明らかにしたのだ。関電は今年末に中間貯蔵施設の候補地確定期限を迎えるが、「福井県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」としている。

とはいえ、中間貯蔵施設の候補地は依然として未定で、今後も使用済み燃料は増え続ける。電気事業連合会の池辺和弘会長は6月16日の記者会見で、むつ施設の共同利用について「今回の実証研究とは全然違う問題」と述べ、実現可能性を検討したい考えに変わりはないことを強調した。この問題で、電力業界と宮下氏が再び対峙するのは避けられそうもない。

原子力業界関係者からは、宮下氏が市長時代に強く反対したのは「むつ市に筋を通さず、前知事に頼った関電への腹いせでは」との声も。果たして、立場が変わった宮下氏は態度を軟化させるのか。それとも、関電の奇策を受け、反発姿勢を強めるのか。攻防第二ラウンドの幕が開く。