再エネ規制シンポ中止 裏に自民有力議員の影
再エネの乱開発防止を訴える全国規模の住民団体、「全国再エネ問題連絡会」が3月15日に東京都内で予定していたシンポジウムが、土壇場で中止に追い込まれた。
このシンポジウムは「今、再エネ問題解決に必要な法改正は何か」をテーマに、経済産業省、農林水産省、国土交通省、環境省のほか、国会議員や地方議員、有識者らが参加。悪質事業者などによる乱開発に歯止めをかけるため、①再エネ固定価格買い取り制度(FIT)の改正、②都道府県知事の林地開発許可に関わる森林法の改正、③環境アセス法や地球温暖化対策法における罰則の強化―などを巡り幅広い議論を行う予定だった。しかし7日になり突如中止が決まったのだ。
同連絡会の共同代表を務める山口雅之氏は、「開催場所である衆議院第二議員会館の会議室が急きょ使えなくなったため」「政治の世界がいかに魑魅魍魎であるか体感させていただいた。心からお詫び申し上げます」「ようやく自分の限界を知るにいたりました」などとコメント。政治家による何らかの圧力が中止の背景にあることを言外ににおわせた。
再エネ事情に詳しい永田町筋によれば、自民党有力議員のF氏やK氏が水面下で動いた可能性があるという。「エネルギーの地産地消を推進する両氏は、再エネ普及拡大議連を主導する河野太郎グループや野党の再エネ勢力とせめぎ合っている。そんな中で、再エネ開発に待ったを掲げる再エネ連絡会の動きが目障りになったのかもしれない」
再エネ問題に揺れる自民党
いずれにしても、再エネ適正化政策がこれから本番を迎えようという矢先のシンポ中止劇。果たして、舞台裏で一体何があったのか、大いに気になるところだ。
保守分裂の青森知事選 混迷でも電力動けず
6月に投開票が行われる青森県知事選挙の行方が、原子力の先行きに影を落としそうだ。関西電力による使用済み核燃料の中間貯蔵施設の利用の問題があるためだ。青森市長の小野寺晃彦氏と、むつ市長を辞職した宮下宗一郎氏が出馬の意向だ。二人は共に自民党に推薦を求めていた。が、いったん小野寺氏でまとまりかけたものの、一本化できずに3月に自主投票を決めた。
小野寺氏は現職の三村申吾氏が強く支持する一方、宮下氏はネット配信などのパフォーマンスで知られる。混迷の様相を呈す中、下馬評では宮下氏がやや有利と伝わる。
東電と日本原電は中間貯蔵施設をむつ市で運営しているが、関電はそこに参加したい意向だ。関電は福井県と、県内の使用済み核燃料の処理方法を今年末までに決めると約束しており、その期限が迫る。
むつ市長時代の宮下氏は「なぜ関電が核のゴミを持ってくるのか」と批判を続けた。関電は三村知事、自民党E代議士らと共に受け入れの調整を続けていた。ところが宮下氏はこの二人と折り合いが悪い。宮下氏の行動には、関電の政治判断のミスと、その遺恨が背景にあると憶測された。
青森には原子力施設が集中する。電力会社は事業への政治的な介入を恐れ、どの選挙にも中立の立場だが、こと保守分裂の青森知事選では「一層、配慮せざるを得ない」(関係筋)。日本原燃にはS副社長、地元対応のO執行役員など関電出向組がいるが、何もできない状況だ。
ただし「宮下氏の批判は、三村さんに肩入れするなとの政治家としてのパフォーマンス。聡明な人なので利益が見えれば態度を変える」(同)との期待もある。しかし宮下氏の考えも選挙の先行きも不透明。電力・原子力関係者は、知事選の行方を、固唾を飲んで見守っている。
LPガス業界に衝撃 貸付配管で制度改正へ
資源エネルギー庁がついにLPガス業界長年の課題である「貸付配管問題」解決に向け、制度改正に着手した。エネ庁石油流通課は昨年末、業界の会合で改正について説明。そして3月2日に同庁が開いたワーキンググループで正式に論点を示した。屋内配管やガス機器などの費用は基本料金や従量料金と分離する、といった方向に見直す考え。
ただ、業界からは根強い反発の声が挙がる。エネ庁は昨年末から議論をスタートさせたかったところ、業界団体がWGのメンバーを選ぶのに時間がかかり、結局数カ月を要した。見直しを前向きに受け止めたのはT社などごくわずか。別のT社や、N社などの幹部は後ろ向きの発言をしており、こちらが多数派だ。
「エネ庁は取引の最適化と透明化を徹底させたいのだろうが、数十年前から議論が起きながら今日まで実施できなかった。不動産業者がこの商習慣を利用する面があるし、消費者団体も見直しを強く求めてこなかった」(業界関係者)
エネ庁は5月末までに3回ほどWGを開き決着させたい意向だが、どう落としどころを探るのか。
長年の商慣行に行政のメス
二つの再エネ議連 自民内でせめぎ合い?
いま自民党には、再生可能エネルギー事業を巡り二つの議連が存在している。
一つは、柴山昌彦元文部科学相が会長を務める「再生可能エネルギー普及拡大議連」(S議連)。小泉進次郎前環境相が会長代理、河野太郎内閣府特命担当相が顧問という顔ぶれで、「自民党内の脱原発派が揃う筋金入りの反大手電力議連」(エネルギー業界幹部)だ。
もう一つは、森山裕選挙対策委員長が会長を務める「国産再エネに関する次世代型技術の社会実装加速化議員連盟」(M議連)。こちらは岸田文雄首相、麻生太郎副総裁といった大物が発起人に名を連ね、2月に発足したばかりだ。再エネに加えて、原発も脱炭素電源として容認する方針を掲げており、柴山議連とはスタンスが大きく異なる。
「われわれはあんな恥ずかしい真似はしない」。そう言い切るのはM議連のH議員だ。S議連が昨年6月に洋上風力入札制度の見直しを求める要望書を経産省に出したことなどを受け、価格優先のルールがひっくり返されたことを批判する。議連事務局長の秋本真利議員を巡っては、同入札で落選した風力事業者から多額の政治献金を受けていた疑惑が取りざたされている。
M議連は、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電など次世代再エネを巡る技術育成や導入支援策を検討。5月ごろにも提言をまとめた上で、政府が6月に策定する経済財政運営と改革の基本方針に盛り込む構えだ。
一方の柴山会長は、3月の海外事業者ヒアリングの場で「入札ルールの変更で『後出しじゃんけんだ』と事実と異なる声も聞かれたが、今回のヒアリングでも日本の洋上風力市場は依然魅力的だと言われている」と述べ、党内の動きや報道にくぎを刺した。またS議連は、大手電力による顧客情報の不正閲覧問題の追及にも力を入れている。
「自民党には、一部事業者への利益誘導的な再エネ政策ではなく、国益をベースにバランスの取れた再エネ政策の検討を望みたい。原子力を含めた『S+3E』の原則さえ間違えなければ、両議連とも応援したいところだ」
大手ガス会社幹部の期待に、議連関係者はどう応えるか。
東電EP社長に長崎氏 小早川氏の次は誰?
東京電力エナジーパートナー(EP)の次期社長に、長崎桃子・東電ホールディングス(HD)常務執行役が決まった。4月1日付で就任する。長崎氏は慶大法学部卒業後、1992年に東電入社。2017~19年に東電EP子会社、テプコカスタマーサービス(TCS)の社長としてエリア外の法人営業展開に力を入れた。これが引き金となって西日本地域での安売り競争が激化し、中部、関西、中国、九州の大手電力4社による価格カルテルを誘発したのは、知る人ぞ知る話だ。
「TCSは昨今の収益悪化からEPの取次会社に格下げと一部で報じられた。そのEPはHDから計5000億円もの増資を受け、経営危機からの脱却を狙う。長崎氏の経営手腕に注目だ」 いずれにしても、業界の次なる関心事は、東電HDの社長人事だ。現社長の小早川智明氏は17年就任から丸6年を迎えるが、まだ59歳と若いこともあって今のところ交代の話は出ていない。「A氏か、Y氏か、T氏か。次の候補選びは難航しそうだ」(大手電力関係者)