6月上旬、世界最大のバイオエタノール生産国である米国を視察する機会を得た。ガソリン混合率の向上や炭素削減、さらには船舶への需要開拓に向けた動きを報告する。
「米国ではエタノールはガソリンより安く、消費者にとって安価な燃料だ」(農務省のジェフリー・オハラ・エネルギー政策・新用途室次長)、「E15はE10より1ガロン(1ガロン=約3.8ℓ)当たり最大30セント安い」(バイオ燃料の取引組合であるグロースエナジーのクリス・ブライリー・規制担当上級副社長)――。
建国250周年を目前に控えた6月上旬、米国バイオエタノール事情を視察するために訪れた先々で、こんなコメントが聞かれた。米国内ではバイオエタノールは世界情勢に左右されず価格優位性を保ち、混合率が高いほどむしろ安いという。ホルムズ危機で多くの国のエネルギー安全保障が脅かされている足元の状況とは隔世の感があった。


潤沢な原料供給で成長 船舶を新たなターゲットに
米国は、農家の所得向上と石油輸入依存からの脱却を目指し、2005年にガソリンへのバイオ燃料混合基準量を定める再生可能燃料混合基準制度(RFS)を導入して以降、産業育成に力を注いできた。現トランプ政権もこれを加速させている。
エタノール業界団体の再生可能燃料協会(RFA)や、グロースエナジーによると、24州に199のバイオ精製所があり、年間生産能力は185億ガロン。全国的に貯蔵・流通インフラが整備されている。16年には全米平均でエタノール混合率が10%に達し、E10(エタノール10%直接混合)ガソリンをほぼ全土で標準販売する。さらに01年以降製造された全ての小型車(推定2億8600万台)がE15に、2000万台以上のフレックス燃料車はE85 まで対応している。
こうした状況を支えるのが潤沢な原料供給だ。米国のトウモロコシの生産性は年々向上しており、世界平均が1エーカー(=約0.4ヘクタール)当たり60ブッシェルに対し、米国はその約3倍の同186ブッシェルに上る。
E15を巡っては大気中への揮発油成分放出といった環境面などで議論が続いていたが、最近、環境保護庁(EPA)がE15の夏季販売を解禁。現在35州・500拠点ほどで取り扱う。さらに通年販売に向けた法案が今年5月に下院を通過し、上院で議論が継続中だ。「これが実施されれば『10%の壁』を越え劇的に伸びるだろう」(RFAのエドワード・ハバード政府渉外担当副社長)と期待を寄せる。















