A 日本は経済政策をマクロ経済学に従って科学的に捉えることが本当に苦手だ。インフレと、(日本経済の需要と供給の差を示す)需給ギャップがプラスになろうとしている中、政府が物価高騰対策として講じた手立ては、総需要曲線を右側にシフトさせ物価高につながる政府支出ばかりだ。いま注力すべきは金融政策であり、政府は根本から間違えているが、そうした問題を国会でもあまり議論しない。まさに危機的な状況だ。
B エネルギー価格補助に巨額を投じることは、本当にもったいないお金の使い方だ。Aさんが言うように、今すべきことは金融緩和ではなく引き締めること。その逆の政策を続けているから、輸入コストプッシュ型の日本が物価高にあえいでいる。 しかも、国民が補助金のありがたみを感じるのは石油製品の価格が下がる導入直後だけで、原油輸入コストの変動が補助金の増減で相殺されて価格はフラットになる。一時、1ℓ当たり40数円も補助金が上乗せされていたにもかかわらず、小売りもユーザーもその意識は皆無だ。しかも各種価格補助金は概ね単位数量当たりの値下げであり、逆進性の問題も無視できない。
C 岸田首相がガソリン小売りのターゲット価格として175円を示したことも大きな問題だ。市場原理による公平な取引を根本的に崩した。戦後の統制価格以来、こうした対応は一度もなかった。第二次オイルショックで価格指導を行ったことはあったものの、具体的な価格には言及していないし、効果のある施策だった。そしてこの件もそうだが、一連のエネルギー価格補助金のやり方の変更は、何度か節目があったものの、政権外から見て一切議論なしに決められている。
B 予算編成の関係も踏まえれば、今年度に切り替わったタイミングでエグジットすることが望ましかった。
A 半世紀前の第一次オイルショックの際、田中角栄内閣は今とは逆に財政を引き締め、油代補助などのバラマキは行わなかった。当時は今より石油依存度が高く、国民生活へのインパクトはさらに大きかったが、省エネ促進と原子力利用にかじを切り、エネルギーの供給構造が抜本的に変わった。上流から下流まで一気通貫でエネルギー政策を担う資源エネルギー庁も設立。バブル経済までの日本の産業競争力と成長につながった。 翻って現在の世界情勢を踏まえれば、エネルギー価格高騰は一過性のものではない。各国は、以前からのカーボンニュートラル(CN)をベースに、さらなる外圧をてこにして、新たなエネルギーシステムを作り上げる競争を進めているのに、日本だけがあさっての方角を見ている。20~30年後に悲惨な結果をもたらさないか、憂慮している。