【特集1】迫られるエネ産業の構造転換 道のり険しく業界別に温度差


全てのエネルギー企業がカーボン実質ゼロに向けた具体的戦略を示すフェーズに入った。経営規模の大小や化石燃料依存度の軽重はあれ、どの企業も抜本的な事業転換を迫られている。

昨年10月の菅義偉首相の2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)宣言が、エネルギー政策上の重要な転換点となったことは間違いない。従前からうたわれてきた「経済と環境の好循環」を、ついに本格的に追求するフェーズに入った。程度の差はあれ、化石燃料利用をビジネスの柱としてきたエネルギー業界への温暖化ガス大幅削減の圧力は、パリ協定発効以降強まり続けてきた。それが首相宣言により、抜本的なモデル転換を業界に迫ることになった。

社会全体での実質ゼロへの転換は、かなりの難題となることは必至だ。エネルギー起源CO2排出量は、18年時点で10.6億t。30年のエネルギーミックスを達成してもなお9.3億tは排出する見通しだ。この水準から、どうしてもゼロにできない一部の領域では、植林やDACCS(直接大気CO2回収・貯留)などのネガティブエミッション技術も駆使し、全体で正味ゼロを目指さなければならない。

電力部門では、再生可能エネルギーや原子力、CO2回収前提の火力、水素・アンモニア発電といった、非化石電源の拡大をどう進めるかが課題だ。他方、産業部門(燃料利用・熱利用)では、脱炭素化された電力による電化、水素化、メタネーション(合成メタン)、合成燃料などの取り組みが求められていく。

こうした大きな絵を踏まえ、政府は50年実質ゼロに向けた民間の取り組みを後押しするため、昨年末にグリーン成長戦略を策定した。成長が期待される産業の14分野を選定し、それぞれ目標を設定した。エネルギー産業や関わりが深い分野では、洋上風力や燃料アンモニア、水素、原子力、自動車・蓄電池、炭素を資源として活用するカーボンリサイクルなどの産業がピックアップされている。

実現に向けては、政策ツールを総動員する。予算面では10年間で2兆円の基金を設立するほか、税制面では企業の投資促進などに向けた各種税制の創設、さらには規制改革やカーボンプライシング(炭素の価格付け、CP)なども検討する方針だ。

この戦略で公的資金に加え民間投資も呼び込み、30年には年90兆円、50年には190兆円もの経済効果が見込めるとしている。だが、これまでもCO2大幅削減に向けて幾つものイノベーション計画が立ち上がっては消え、その成果はあいまいという状況が繰り返されてきた。今回のグリーン成長戦略は、その二の舞いとなることを避けられるのか。

各業界をけん引するエネルギー企業からはビジョンがぽつぽつ示され始めたものの、大半はまだ模索の最中だ。特に化石燃料依存度が高い業界や中小企業にとっては、実質ゼロにソフトランディングできる対応を見いだせなければ、死活問題になりかねない。

エネルギー業界はそれぞれどんな絵を描き、実質ゼロを目指そうとしているのか。次ページからのレポートや、関係者へのアンケートを基に、その考えに迫る。

【特集1】「実質ゼロ」は夢物語なのか? 業界関係者が語る本音の話


2050年カーボンニュートラルへの対応という難題を突き付けられたエネルギー業界。業界に身を置く関係者は、これをどう受け止めるのか。緊急アンケートを実施した。

そもそも、エネルギー関係者は2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)の実現可能性を、どう考えているのだろうか。この問いに対し、電力業界の意見は半々に割れた。

実現可能との回答の大半は、原子力の活用が前提になると強調する。「火力の代替として、太陽光、風力、水力などの再エネ比率を上げ、さらに原発の新設および再稼働を行えば可能」、「理論上は可能だが、原子力の活用は不可欠。60年利用はもちろん、多少の新設も必要だ」と、原子力政策の前進が前提条件との指摘が相次いだ。

都市ガス業界の回答を見ると、「過去の技術の進展を考えれば、今後30年での実質ゼロ実現は可能だと思う」、「劇的な技術革新が必要だが、50年までにブレークスルーが起きる可能性もある」など、前向きな回答が多い印象だ。その一方で、都市ガスと同じく化石エネルギーの取り扱いが本業であるLPガス、石油の両業界からは、「業界として炭素由来の燃料を使用するため、業界単体での実質ゼロは難しい」(LPガス)など、懐疑的な意見が多い。中でも、「カーボンを販売して成り立っている業界として『ゼロ』は不可能」という石油業界からは、回答がほとんど返ってこなかった。石油業界がビジョンを描く難しさを物語っている。

自社設備が座礁資産化する懸念は大きい

具体的なビジョンについては、同じ業界内でも多種多様な意見が寄せられた。

「系統電源から分散型電源へと変化し、再エネに蓄電池がセットされて構築される世の中になる。そこにビジネスとしてどう入っていくのかを考えていかなければならない」(電力)、「kW時や㎥といった供給量を基盤とするビジネスを捨て、顧客を起点としたビジネスに変わること」(電力)、「都市ガス供給事業者から新しい価値の創造企業に生まれ変わることが必要。エネルギー供給では単に再エネに取り組むだけではなく、再エネ電気と再エネ熱を社会でうまく使えるようなシステム作りを他業界と取り組む必要がある」(都市ガス)、「実質ゼロ実現に向けたビジョンを持たないという選択肢はない」(LPガス)などなど、社の本業自体を変える節目になると捉える関係者が多い。

とはいえ、「まずもって政策的なロードマップの明示が先だ。(炭素を資源として活用する)カーボンリサイクル技術やCCS(CO2回収・貯留)などの技術の進捗に期待しながら、できる範囲内で進めていくしかない」(LPガス)と、今後の行方を見守るスタンスも散見された。

ビジネス変革を期待 投資負担は懸念材料に

では、大変革を伴う実質ゼロは、業界にとってどんなメリットが期待できるのか。この点については、多くの関係者が、ビジネスモデルの変革を挙げた。

「太陽光発電や蓄電池など、新たな分野を切り開いていける。また電気自動車(EV)などの次世代エネルギー車に移り変われば、需要拡大のチャンスにもなる」(電力)、「再エネ拡大、火力発電のゼロエミッション化などは今まで培ってきた経験・技術を生かせる取り組み。チャレンジによってこうした事業分野でのさらなる成長が見込める」(電力)、「再エネ系新電力として、主にデマンドサイドでのビジネスモデルを推進するための社会的な追い風が期待できる」(新電力)、「事業変革を促す大きなドライブとなる」(都市ガス)などだ。

一方、自由化市場の中で実質ゼロに取り組まざるを得ない状況に、消極的な意見が一定数あることも事実だ。「長期にわたり社が事業継続を図る上で、避けて通れない課題。実質ゼロへのチャレンジが顧客から選ばれる要素となり、生き残っていくための条件になっていく」(電力)、「取り組んでいることをPRしなければ、お客さまから選択されるエネルギーになり得ない。メリットを求めるというよりも、責務として対応すべき」(LPガス)といった率直な意見も挙がった。

やはり、長期にわたる投資の負担や、自社資産の座礁化などを懸念する声は根強い。「実質ゼロにチャレンジする過程で、研究費や設備投資などの相応の支出が必要になると認識。期待した効果が得られなかった場合には、事業継続が困難になる恐れもある」。電力関係者はこう指摘する。

上流関係者は「早期の実質ゼロ実現が可能となる説得力のある戦略を立て、社会・投資家などのステークホルダーに理解を得ることによって、企業として生き残る可能性が高まる。しかし、新領域の事業で本業と同様の経済的リターンを得られるかは不透明だ。企業価値を維持し、投資家の理解を得ながら事業ポートフォリオの組み換えができるのか、疑問が残るものの、選択肢はほかにない」と、苦しい胸の内を明かす。何かしらのインセンティブがなければ、業界そのものが潰れる可能性も。

東電EP売却の布石か 電力調達の契約見直しへ


東京電力エナジーパートナー(EP)が苦境だ。電力自由化の影響で顧客獲得の競争が激しく、販売量が大幅に低下し、収益悪化の一途をたどる。そんな中、東電EPは来年度から電力の調達先の選別を検討し始めた。総括原価方式時代から高い値段で調達しているJERAやJパワーなどの契約を見直す方向で調整しているという。高コスト体質からの脱却を図る目的らしいが、売却の布石では、との臆測も飛び交う。

ある業界関係者は「東電EPの収益悪化は著しく、銀行が入って細かいところまで指令を出しているらしい」と話す。特に地元である首都圏で顧客が新電力やほかのエネルギー会社の新規参入組に奪われた上に、採算度外視の安値攻勢をかけたのが裏目に出たというのだ。この関係者は「特にEPの100%子会社のテプコカスタマーサービスの経営状況がひどく、収益の一つである配電工事でさえも一部で銀行が待ったをかけている状態だ」と話す。

何かと売却話が絶えない東電EPだが、売却する前提として体質改善を図っているのではないかとの読みも一部では出始めた。

水野氏が経産省参与を退任 投資担当国連特使に就任へ


水野弘道氏が1月18日、経産省参与を退任した。水野氏は昨年末に国連の革新的ファイナンス・持続可能な投資担当特使に任命され、政府の役職との兼任が難しくなったため本人が申し出た。

水野氏は日本のESG(環境・社会・統治)投資普及の中心人物で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)退任後、米EVメーカーのテスラ社外取締役に加え、サステナブル投資分野の専門家として経産省に招かれていた。

他方、小泉進次郎環境相との距離の近さも有名だ。小泉氏の問題提起に端を発した石炭火力輸出方針の厳格化などに、水野氏の影響があったのではないか、と言われている。

22年1月からの2期目続投を目指すグテーレス国連事務総長は、今年に入ってもなお、気候変動問題について「国際社会の対応は不十分」と訴えている。そんなグテーレス氏の下で水野氏がどんな手腕を振るうのか。

今後、新ポジションで日本のエネルギー・環境政策にどう働きかけていくのかが注目されるが、エネルギー基本計画改定やカーボンプライシングの議論が予定されるだけに、環境重視のバイアスを一層強めるような誘導もあり得る。

ついにバイデン政権誕生 気候対策の有効性は不透明


ジョー・バイデン氏が1月20日、米国第46代大統領に就任した。バイデン新政権のエネルギー・環境政策では、パリ協定からの脱退や、オバマ政権下のクリーン・パワー・プラン(CPP)撤回など、「気候危機」に懐疑的だったトランプ前大統領とは真逆の政策を取ると見られている。

バイデン氏は就任初日に早速、パリ協定復帰の指示など複数の大統領令を発出。その関連で、カナダから米中西部に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」建設プロジェクトも停止した。ただ政策の実効性については、今後の動向を見守る必要がありそうだ。

気候変動政策を調整する新部署の責任者に起用される予定のジーナ・マッカーシー氏は、オバマ政権で環境保護局長官を務め、CPPを作った中心人物。今後、CPPのバージョンアップ版を策定すると見られるが、当時CPPの違憲性を巡る訴訟に決着がつかないまま、トランプ政権下で廃止となった。

さらにこの時より現在の状況は悪化しており、トランプ氏の置き土産で最高裁判事は保守派が多数を占めるため、訴訟となれば敗訴の可能性が高い。新政権の考えがどの程度実行できるかは、不透明な状況だ。

【覆面座談会】業界紙記者が語る 「カーボンゼロ」の実現可能性


テーマ:エネ業界のカーボンゼロ対応

エネルギー会社のカーボンニュートラル(実質ゼロ)への対応が注目されるが、業界ごと、あるいは同じ業界内でも受け止めはさまざまだ。業界紙記者がそれぞれの事情を代弁する。

〈出席者〉 A記者 B記者 C記者 D記者

成長戦略に盛り込まれた洋上風力や水素、EVなどへの期待は高まるが……

―電力ではJERAや関西電力が実質ゼロにコミットしたが、それに続く社がいない。

A 業界としてのまとまりは感じられない。大手電力会社は新しいチャレンジには及び腰のイメージがあるが、中三社は、実質ゼロに伴う電化推進をビジネスチャンスとして捉え、水素社会の実現やEV利活用の方向に動いている。電源についていえば、ガスタービンは水素混焼や水素専焼に改造できるので、LNG火力の比率が高いJERAは手を打ちやすいし、原子力が動いている関電も絵を描きやすいだろう。一方、石炭火力比率の高い電力会社は対応に頭を悩ませている。

―それに対し、日本ガス協会はいち早く、業界としての実質ゼロ宣言を行った。

B 2019年11月に東京ガスが実質ゼロに言及した衝撃は相当だった。大阪ガスは20年10月の「2050年に向けたガス事業の在り方研究会」で、中期経営計画に実質ゼロ目標を位置付けることを検討すると言及。その後ガス協会が広瀬道明会長のイニシアチブにより「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を発表した。東邦ガスや西部ガスも追従するだろうが、地方ガスには従業員数が1~2桁の社も多く、彼らに対応をどう促すかが課題だ。多くのガス会社は、LNGを自社調達する大手都市ガスや大手電力などから卸を受けている。全国で実質ゼロを達成できるかは、こうしたリソースを持つ者が、メタネーション(合成メタン)を柱としたソリューションをどれだけ提供できるかにかかっている。そこで30年かけて天然ガス転換を成し遂げた経験が生きるだろう。ただ、天然ガス化完了が遅かった社はわずか十数年で次の課題に直面し、その点は気の毒だ。

―石油業界は一昔前なら実質ゼロに大反対したはずだが、時代は変わったようだ。

C 石油需要のうち、電源用と輸送用燃料が急速に先細りしている。遅かれ早かれ対応を迫られると覚悟しており、各社首脳陣は比較的冷静に受け止めている。電源用については、最後に脚光が当たったのは東日本大震災直後の電力需給ひっ迫時。「平時から石油火力を使っていないと有事に供給できない」と業界は言い続けてきたが、設備容量は減る一方だ。輸送用は、車の燃費改善と車需要の減退で、脱ガソリンの方向性は明らか。ENEOS、出光ともに、燃料油需要は40年に17年比半減との見通しを示している。ただ、これは50年CO2 8割減が前提なので、前倒しされる可能性がある。覚悟はしつつも、実質ゼロを国策としてエネルギーの視点で議論していくならば、次期エネルギー基本計画では将来の石油の位置付けを明確にしてもらいたい。

―LPガス業界の受け止めはどうだろうか。

D 日本LPガス協会は昨年、グリーンLPガスに関する研究会を立ち上げ、課題の整理などに着手している。現状では都市ガス会社と石油元売りの動きも見つつ、方向性を示すことになる。しかし、元売り、卸、小売りで切迫感に差があると感じている。元売りは、エネルギー供給構造高度化法施行を見据えた時点からLPガスのバイオ化を検討してきたものの、コストがネックとなるだろう。それを今回の実質ゼロで仕切り直そうというスタンスだ。一方、小売りでも先進的な事業者は、電力事業参入や水素技術の活用などを考えているが、大半は元売りの動きを眺めている感じ。いざとなったら商材を変えれば良いわけだしね。

菅首相が施政方針演説で言及 「炭素価格付けを検討」の波紋


昨年のカーボンニュートラル(実質ゼロ)宣言に続き、菅義偉首相がカーボンプライシング(CP)にも言及した。1月18日に衆参両院本会議で行った施政方針演説において、実質ゼロに向けた新たな方針として、2035年までに新車販売で電動車100%を目指すことなどと併せ、「成長につながるカーボンプライシングに取り組む」と述べたのだ。

施政方針演説で、菅首相が新たな方針としてCPに言及した (提供:朝日新聞社)


首相は昨年末、梶山弘志経済産業相と小泉進次郎環境相にそれぞれCPの検討を指示。その直後から、小泉氏は「来年(21年)のうちに一定の取りまとめを得ることを目指したい」と意欲を示していた。環境省は専門チームを立ち上げ、2月にCPに関する小委員会を再開させる予定だ。

同省はこれまで、CPの議論は産業界とも丁寧に話し合い、細く長く議論を続ける方針を取ってきた。だが、小泉氏が成果をアピールできる次の玉としてCPに目を付け、早期の決着を求めていることで、省内では今後の進め方について意見が割れ始めている模様だ。

一方、経団連の中西宏明会長が「拒否するという方向で出発すべきではない」と語るなど、経済界も一部では「CPには断固反対」という、かつての姿勢を軟化させるような雰囲気も漂う。だが、あるエネルギー業界関係者は「官邸は本質的な勘違いをしているのではないか。コロナ対応だけでなくこの問題でも迷走すれば、サービス業から製造業まで産業総崩れになる。こんな状況下で成長につながるCPの制度設計が本当に可能なのか」と訴える。

国民負担の増加は不可避 環境省と経産省の着地点は

一部報道では、現在の地球温暖化対策税率のCO2t当たり289円の4倍、同1000円超という水準が一つの目安になるのではないかと指摘されている。だが、電気料金だけをみても固定価格買い取り制度(FIT)の賦課金に加え、再エネ主力化に向けた送配電網の増強コストが、今後国民にのしかかってくる。

「例えば、部門ごとにトータルの電気料金はいくらまで許容できるのかをまず整理し、そこからCPの水準を導き出すアプローチでなければ、議論は平行線のままだろう」(前出の関係者)

一方の経産省は、17年にまとめた長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書が議論の出発点となりそうだ。当時掲げていたのは実質ゼロではなく50年80%減目標だが、すでにパリ協定は発効済みの段階だ。

この報告書によると、日本はエネルギー諸税だけでもCO2t当たり約4000円と、炭素価格全体では国際的に高額な水準であり、追加的なCP導入は不要と結論付けた。また昨年の実質ゼロ宣言後も、ある経産省幹部は「CPには反対で、さらなる負担を経済界に求めるようなことはしない」と口にしている。  

日本経済の悪化に歯止めがかからない中で、増税につながりかねない政策に国民の理解が得られるとは考え難い。環境省と経産省が今後どのように落としどころを探っていくのか、注目される。

【特集2】再エネとの相互補完が不可欠 まずはアンモニア混焼を先行


インタビュー:奥田久栄/JERA取締役常務執行役員 経営企画本部長

JERAは将来ビジョンで、再エネとゼロエミ火力の相互補完が必要だと打ち出した。これは政府の方針とも合致する。経営企画本部長の奥田久栄氏に、その方策を聞いた。

――「ゼロエミ火力」の実装を進める上で、JERAが果たすべき役割についてどう考えますか。

奥田 グローバルでは、エネルギー市場は価格競争から脱炭素競争のステージに入ったと思います。そうした中、当社はさまざまなシミュレーションを行い、昨年、2050年ゼロエミッションに向けたロードマップを発表しました。最大のメッセージは、今後も3E(環境性、供給安定性、経済性)を実現するためには、再エネとゼロエミ火力の相互補完が不可欠だということ。また将来的には、ボイラー式では石炭もアンモニアも、ガスタービンでは水素もLNGも利用することになり、燃料源の多様化にもつながります。日本の火力設備の半分を保有する立場から、ゼロエミ火力の実装をグローバルにリードしていきたい。

 ポイントは三つあり、一つは、水素、アンモニアを発電で現実的に使えるようなレベルでのバリューチェーンの構築です。次にゼロエミ火力の仲間づくりを、国内外問わず進めます。そして最後がグローバル展開。再エネだけでのゼロエミ化が難しい東南アジア諸国などに提案し、ゼロエミ火力をスタンダード化していく考えです。

――具体的なスケジュールは。

奥田 先行するのはアンモニア混焼で、碧南火力の実証では、23~24年から20%混焼を開始し、30年までに本格運用に着手する予定です。30年代前半には保有石炭火力全体で混焼率20%を達成、さらに混焼率を拡大し、40年代の専焼化開始を目指します。最終的な発電コストは、現在のLNG火力並みを目指す考えです。

 一方、水素混焼はまだ技術的課題が多く、まずは実機での安定運転を確認し、水素キャリアを選定。30年代に本格運用を開始し、混焼率を拡大していく方針です。

アンモニア供給体制確立が鍵 水素キャリア選定も急務

――それぞれどのような課題を克服する必要がありますか。

奥田 アンモニアについては、発電設備での技術的ハードルはそれほどなく、脱硝装置での取り扱い実績もあります。問題は上流側で、現在日本では主に肥料用として年間消費量は100万t程度ですが、これは碧南の100万kW級2基の20%混焼で消費してしまうレベル。ガス産出国の(化石燃料由来の)ブルーアンモニアの生産や、燃料用のサプライチェーンをどの程度のスピードで確立できるかが問われます。

 水素については、まずは最適なキャリアの選定が大きな壁です。どの手法が低コストで大量生産できるのか、検討を進めていきます。

 また、発電効率や運用の柔軟性などへの影響については、アンモニア混焼での問題はないとみており、水素に関しては今後検証していきます。

――燃料輸送船の脱炭素対策についてはどうでしょう。

奥田 国際的に規制が強化されていることは承知していますが、100点満点のCO2対策を最初から目指すと一層のコストアップ要因となり、それでゼロエミ火力の需要が抑制されては意味がありません。「スマート・トランジション」を意識し、ゼロエミ火力の需要の確立が見えてきた段階で、船舶の低炭素化に取り組む考えです。

――今後の政策への要望は。

奥田 従来のエネルギー政策はサプライサイドへの補助に偏ってきましたが、その効果は一時的です。ゼロエミ火力の需要を創生し、CO2フリー、かつ調整力も提供できることに対して市場の中で価値が付かなければ、社会実装は難しい。ある程度のコストアップは避けられませんが、それでもゼロエミ火力の需要が生まれるような政策誘導を望みます。

【特集1】燃料調達の現場で何が起きたのか LNG・石油を襲う異常事態


昨春にLNGスポット価格は暴落したが、秋以降アジア市場では一転して歴史的高値となった。石油供給網の弱体化も浮き彫りに。電力不足問題を引き起こした燃料調達の異常事態に迫る。

「需要が急増したLNG火力向けに在庫が吸い取られている。燃料調達の現場で、これまでにない事態が起きている」―。ある都市ガス会社関係者は、乱高下した昨年のLNGの市場動向と、それに端を発した年末年始の電力需給ひっ迫について、こう語る。

資源エネルギー庁は1月19日の電力・ガス基本政策小委員会で、電力会社所有のLNG在庫の推移について、12月中旬以降大幅に低下したが、1月10日ごろが在庫下振れのピークで、12月上旬の水準までは戻っていないものの在庫量は回復傾向にある、と報告した。ただ、1月から2月にかけては都市ガスも需要期であり、今後再び厳しい寒波が日本列島を覆うことがあれば、電力だけでなく都市ガス供給にも影響が生じる可能性がある。

複合要因でアジアのLNG需給がタイトに


LNG生産設備でトラブル頻発 パナマ運河リスクの顕在化も

LNGスポット市場の中で異変が起きているのは、アジアだけだ。そもそもの前提として、スポット市場の規模が全体の1割程度しかないという事情はあるが、そこにさまざまな要因が絡み合い、ここ1年ほどで北東アジアのLNGスポット価格は乱高下を記録している。JKM(日本・韓国への持ち届け価格)は、コロナ禍に伴い昨年4月末には100万Btu(英国熱量単位)当たり2ドルを割り史上最低価格を付けたが、夏以降上昇に転じ、12月には10ドル台、年明けには20ドル水準となり、一時は30ドルの大台も突破した。

北東アジア向けLNG価格の推移 出典:S&P Global Plattsのデータをもとに経産省作成

もともと関係者の間では、コロナ禍でLNGプロジェクトへの投資が縮小、または後ろ倒しとなり、数年後に需給がタイトになる可能性が指摘されていた。しかしそれより前に、アジアのLNG市場が品薄状態となったのはなぜか。裏では、世界各地の生産設備でのトラブル頻発や、パナマ運河の大渋滞、中国や韓国のスポットの囲い込みといった事象が、同時多発的に起きていた。

環境省でCP議論再燃 排出権取引には違和感の声


コロナ禍で議論が中断していたカーボンプライシング(CP)に関する環境省の有識者会合が、1月から再開する。半年程度かけ議論を進める予定だ。小泉進次郎環境相は会見で「2021年の最大の目標はカーボンプライシングを前に進めること」と強調した。

経済産業省についても、電力や自動車産業での排出権取引を検討との一部報道があった。これに梶山弘志経産相は「個別の報道についての回答は差し控える」「成長戦略に資することのない制度を導入することはない」と説明した。

ただ、CPの中でも「排出権取引が名指しされたことには違和感を覚える」(エネルギー関係者)。カーボンニュートラル実現のためには基本的に排出は許容されず、炭素税などで財源を賄う手法しか成り立たないはずだからだ。また、20年に成立した改正エネルギー対策特別会計法では、勘定間の繰り入れを可能にしたが、この仕組みも炭素税でなければ生きてこない。

産業界では一部CP導入に前向きな声もあるが、既に地球温暖化対策税のほか、FITなど相応の負担を国民に課している以上、CPの費用対効果の見込みを示した上で俎上に載せることが必要だ。

LPガスの50年ビジョン模索 電気との共生がキーワード


【業界紙の目】古見純一郎/石油産業新聞社編集局長

菅義偉首相が所信表明演説において「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。その実現に向けてLPガス業界もスピード感を持った積極的な取り組みが求められている。

次期エネルギー基本計画を検討する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会は2020年11月17日の会合で、改めて「2050年カーボンニュートラル」を前提に議論を進めることを確認。資源・燃料分科会も、カーボンニュートラルに向けた資源・燃料政策について議論をスタートさせた。

供給構造高度化法(10年11月基本方針改定)では、特定エネルギー供給事業者にバイオ導入目標を定めたが、LPガスは技術的、経済的に実施不可能として規制枠外となった。だが、燃料製品供給事業者のうち石油ガスを製造、供給する場合は「安定供給並びにバイオガスの賦存量および経済性等の制約も留意しつつ、石油ガスにバイオガスから製造される燃料を混和して利用することにより非化石エネルギー源の利用に取り組むこと」とした。日本LPガス協会は、高度化法施行を契機にLPガスのバイオ化の検討を始めており、何もしてこなかったわけではない。

海外を見ると、バイオLPガスの世界生産は現在、年間約20万tと少ない。製品のほぼ全てがバイオプロパンであり、バイオオイルを水素化処理してバイオディーゼルを生成する際の副産物として生成される。WLPGA(世界LPガス協会)の見通しでは30年に1億t超の潜在性を秘めるとし、オランダのSHVエナジー社は、既存燃料にバイオLPガスを混合して利用することでCO2を削減し、環境意識の高まりなどを追い風に、バイオLPガスを取り扱い製品の軸に据えていく考えも示した。

一方、WLPGAのワーキンググループによると、「生産プロセスは現在限られており、ほかの環境対応燃料によりLPガス産業の存在意義が脅かされる地域も見られる」「バイオ燃料の原料は100%植物油で、米国や北欧で生産は拡大傾向であるものの、そこから得られるバイオLPガスは最大でも、世界のLPガス生産量のわずか2%にとどまるため、脱炭素化対策のアピールには物足りない」などの課題が出されている。

資燃分科会ではどんな政策を打ち出すのか

津波の危機を逃れた東海第二 さらなる安全性向上対策が進展中


【日本原子力発電】

東海第二発電所は、東日本大震災で津波が襲来するも、無事冷温停止に至ったという実績がある。現在、さらなる安全性強化に向けて工事が進む現場を、東工大の奈良林直特任教授が視察した。

2020年の暮れ、東京工業大学の奈良林直特任教授の視察に同行し、新規制基準に基づく安全性向上対策工事が進行中の東海第二発電所(茨城県東海村)を訪れた。東海第二の風景は以前とは一変し、敷地内のありとあらゆる場所で、防潮堤設置に向けた準備や地盤改良などの作業が進んでいた。建屋では耐震補強工事が始まり、敷地内のいたるところに足場が組まれ、圧迫感が伝わってくる。

建設時と同等かそれ以上の工事がそこかしこで繰り広げられている様子を眼前にし、安全性向上対策工事がどれほど大掛かりなものか、初めて実感することができた。

鋼管杭の直径は大人の身長を優に超える2.5m
東海第二を視察した奈良林氏

巨大な防潮堤建設へ 広範囲の地盤改良も実施

奈良林氏はまず、「必要な設備更新をしており、『老朽化プラント』ではなく『リニューアルプラント』。さらに安全性向上対策工事や、バックフィットへの対応が行われていることが重要だ」と強調。また、これらの工事の中身はサイトごとに少しずつ異なると指摘し、東海第二については、「太平洋側では津波への備えが特に重要になる。地盤改良をしながら大規模な防潮堤を設置するという、すさまじい工事を目の当たりにしたし、相当な深さの貯水槽も印象的だった」と語った。

新規制基準への対応では、原子炉設置変更許可、工事計画認可、20年間の運転期間延長認可の審査が、18年に終了。順次工事に取り掛かり、22年末までに終える予定だ。現在は、19年に申請したテロ対策の特定重大事故等対処施設の審査が進んでいる。

具体的な工事内容を見ると、特に大掛かりなのが防潮堤工事だ。東日本大震災の知見を踏まえ、標高最大20mの堤を、内陸の西側を除きぐるりと敷地内を巡るように設置し、全長1.7㎞に及ぶ見込みだ。直径約2.5mの鋼管杭を、地下60mの岩盤まで打ち込み、巨大な堤を支える。「国内のサイトでは最大径で、頑丈な分、大変な工事になる」(奈良林氏)。これを基礎にし、地上部を鉄筋コンクリートで覆っていく。

堤の設置ルートでは、同時に地盤改良を行う。表層にセメントを注入して一定の深さの層まで攪拌固化する手法や、水ガラス系の薬液をポンプで地下に圧入する手法を、地中深さに応じて使い分ける。水ガラス系の手法は、地下鉄の海底トンネルを掘削する際などに採用される技術だという。

ほかにも、干渉物撤去や森林伐採なども行う必要がある。このように複数の作業に同時進行で取り掛かるので、防潮堤設置のためにはかなりの広さの作業スペースを確保しなければならない。

【覆面座談会】2021年エネ業界を大胆予想「脱炭素化宣言」の重い宿題


テーマ:2021年のエネルギーニュース

2021年を迎えても、引き続きエネルギー業界の話題はカーボンニュートラル(実質ゼロ)に集中しそうだ。エネルギー基本計画の改定や気候変動政策の行方など、21年はどんなニュースが駆け巡るのか。

〈出席者〉 Aアナリスト B電力業界人 C都市ガス業界人 D石油業界人

2021年、エネルギー業界にとって明るいニュースは増えるのか

―欧州に続き、20年は中国や日本が相次いで「実質ゼロ」宣言を行い、さらに米国では民主党政権への交代がほぼ確実となった。国際的にも内政的にも、気候変動対策強化の機運がさらに高まっていくことになる。

A 米民主党は、実際の政権運営が公約とは全く違うことも多く、バイデン政権がどのような政策を取るかは、動き出してみないと分からない。ただ、世界の気候変動対策強化の流れが加速することは間違いなく、日本もCOP26(温暖化防止国際会議グラスゴー会合)に向けてさらなる対応を迫られるだろう。

 数年前と比べ政策は様変わりし、第6次エネ基の書きぶりは大きく変わるはずだ。ただ、やはり原子力の見通しは立たないままだ。これでは実質ゼロに向けて実現可能性が高い政策を立てることは難しい。エネ基が絵に描いた餅になる状況は今後も続くかもね。

B 実質ゼロへの道筋をエネルギーミックスにどう落とし込むのか、夏ごろには姿が見えてくるし、それを踏まえ、地球温暖化対策計画での30年のCO2削減目標引き上げについても議論が収れんしていく。

 再エネ比率は今の30年22~24%から、30~35%程度への引き上げがあり得ると思う。そうなれば火力は削り、原子力は20~22%をキープというのが一つの姿。ただ原子力比率をキープするだけでは、絵に描いた餅から脱却できない。いま政策的にポジティブな裏付けがあるのは再エネだけ。足元では原子力の再稼働を着実に進めるべきで、再稼働を目指すプラントが必要な投資を行えるよう、政策の後押しを明確に打ち出すことが重要だ。

 一方、新増設への道筋を付けることと引き換えに、30年の原子力比率を下げるべきという考えの人がいるが、順序が逆。新増設への支援は再稼働よりはるかに難しい。できるところから着実に取り組むべきだ。

A 明確にすべきは、運転期間の延長と(長期停止期間を運転期間に含めない)カウントストップ。そうなれば準備中のユニットが全て動き、投資もしやすくなる。経済産業省はその地ならしに一生懸命取り組んでいる。

C カウントストップはある意味投資がいらないし、自民党の委員会で原子力規制庁が、あらためて運転期間をどう規定するかは立法政策、と明言した。電力業界としてはカウントストップの議員立法に向けて動いてほしいところだろう。

B でも、野党が原発ゼロ法案を掲げている中、与党が原発推進につながる議員立法を提出することが、本当にできるだろうか。

―20年は放射性廃棄物の最終処分場選定にも動きがあった。

B 文献調査に北海道の2自治体が応募したが、多くの自治体が手を挙げていく中で、本命の候補地を大事にしながら、環境を整えていくことになるだろう。急いては事を仕損じる。ただ、NUMO(原子力発電環境整備機構)はもっと危機感を持つべきだ。

業界団体・企業が相次ぎ言及 「カーボンゼロ」の温度差鮮明に


エネルギー事業者は、投げられたボールをどう返すのか―。菅義偉首相の2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)宣言を受け、エネルギー関係の業界団体や各企業がそれぞれ言及する動きが出始めた。ただ、既に実装されている脱炭素電源という武器を持つ電力業界に対し、石油や都市ガス、LPガス業界は、事業の根幹である化石エネルギーの脱炭素化をこれから図らなければならず、温度差が鮮明になっている。

実質ゼロに向けたイノベーションを支える技術の筆頭として熱を帯びているのが水素関連の取り組みだ。エネルギーや自動車、金融など幅広い業界関係者でつくる水素バリューチェーン推進協議会は、20年12月7日に設立イベントを開催。社会実装プロジェクトの提案、ファンド創設、需要創出や規制緩和に関する政策提言などに取り組む方針を掲げた。

電力業界にとってハードルとなるのは火力の脱炭素化だが、JERAは菅首相の宣言に先立ち、実質ゼロに向けたビジョンを発表。アプローチの一つに「再エネとゼロエミッション火力の相互補完」を掲げ、火力では非効率石炭火力の停廃止、アンモニア混焼や水素混焼の実証に取り組む。小野田聡社長は11月下旬の会見でも「ゼロエミッション火力は今ある発電所を活用しながらCO2を減らし、(再エネの)変動部分も賄っていく。火力が持つ役割はなくならない」と、あらためて強調した。

水素バリューチェーン推進協議会設立イベントには梶山弘志経産相(右から3人目)も駆けつけた

ガス業界からは前向き発言も 業界全体では険しい道のり

反応が鈍い化石エネ業界にあって、日本ガス協会と東京ガスからは、それぞれ意欲的な発言が飛び出した。脱炭素化ビジョンを19年末に発表した東ガスの内田高史社長は、政府方針の50年よりも早く達成したいと強調。脱炭素化に欠かせないメタネーション(合成メタン)の経済性についても、再エネが安い国で作った水素を合成メタンとして運搬すれば既存の設備が活用でき、「今のLNGとそん色ない価格で調達できる」と展望を語った。

さらに驚きをもって受け止められたのが、広瀬道明・ガス協会会長の発言だ。あくまで個人的なイメージとしつつも、「40年までに 30~50%、50年までに95~100%(削減)の導入を目指したい」と明言したのだ。第6次エネルギー基本計画でも30年以降の指標が示されるのか不透明な中、踏み込んだ広瀬会長の発言が、業界内をざわつかせている。特に人・物・金に限りがある地方の中小ガス事業者が、脱炭素化に対応できるかは全くの未知数だ。

石油元売りや特約店、LPガス会社も、多くの難題を抱える。とはいえ、地方の需要家を支える中小エネルギー企業の取り組みなくして、日本全体でのカーボンニュートラルが実現する日は来ない。政府は、実質ゼロに向けた研究開発を支援する2兆円の基金の創設や、脱炭素化に向けた設備投資を対象とした投資促進税制の創設などの措置を講ずる方針だ。こうした政策が、まだビジョンを表明していない各社の動きを後押しすることにつながるのか。

エネルギー以外の成長分野確立目指す リフォーム提案をワンストップで


インタビュー:石井敏康/東京ガスリノベーション 社長


本誌 東京ガスグループの住宅関連業務の2社が合併し、7月に東京ガスリノベーションが設立されました。合併にはどんな狙いが。

石井 まず、合併前の東京ガスリビングエンジニアリングでは、既存集合住宅のガス機器のメンテナンスや給排気設備回りのサービス、トイレやキッチンなどの機器交換と、間取り変更を伴わない、リフォーム手前の業務を行ってきました。他方、もう1社の東京ガスリモデリングはリフォーム専業で、両社とも首都圏を中心としつつも、事業領域はすみ分けてきました。しかし、ニーズに対しワンストップで対応できる体制にすべきとの判断から、シナジーのある2社の統合に踏み切りました。

住宅に関わる社会的ニーズとして、レジリエンス(強靱化)や高齢化社会への対応、省エネ、空き家対策などがあります。また、今後は既築の市場が主戦場になると言われていますが、業界ではまだまだ新築に目が向きがちです。しかし「2050年カーボンニュートラル」を目指すなら、新築よりボリュームがある既築の省エネの深掘りが、一層重要になります。

リフォーム業界で伍していく上で、例えば住宅メーカー系は系列のリフォームには強いですが、当社はさまざまな系列での実績があります。もともとはエネルギー回りや配管修理から入り、お客さまとの関係性を培ってきました。その距離感を大事に、お客さまの声に徹底的に耳を傾け、ニーズを実現する提案を心掛けています。

快適な省エネ提案を意識 コロナ対応も重要課題に

本誌 特に企業のカーボンニュートラル対策が注目されています。

石井 東ガスグループ経営ビジョン「Compass 2030」でも強調しましたが、CO2大幅削減に対応する中で、エネルギー以外の業務でも勝負しなければグループの成長は望めません。当社では先述の課題を踏まえ、各地域のライフバルとも連携しつつ、既築住宅への生活回りのサービス全般を訴求していきます。

具体的には、電化やレジリエンスに対するニーズの高まりの中で、太陽光と蓄電池のセット販売の強化、集合住宅向けコージェネレーションシステムやエネファームをさらに活用するサービスに力を入れます。また、当社の強みを生かし、高齢者が住まいやすい、断熱を含めた省エネ住宅へのリフォーム提案にも取り組みたい。ただ、カーボンニュートラルは意識しながらも、それが一番の目標ではないと思っています。ネットゼロで資産価値を上げつつ、お客さまのアイデアや希望を実現するような提案を目指していきます。

本誌 そしてコロナ禍も重要なキーワードとなっています。

石井 マイナスの面としては、修理と違いリフォームを急ぐケースは少ないため、非接触を求める傾向が強まったことで、上期の業績は厳しいものとなりました。一方、家庭で過ごす時間が増え、ワーキングスペースの確保や巣ごもり需要、感染予防に効果的な非接触・除菌・換気といった新たな需要が拡大しています。このニーズを掘り起こし、いかに響く提案ができるかが、今後の業績を取り戻す上で重要になります。また、オンラインツールの活用は、社内業務の効率化と、お客さまの時間節約の両面にメリットがあると捉えており、最大限活用しています。

社員には新しいことに尻込みせず挑戦することを求めています。失敗してもその過程を共有できれば、社にとってプラスになります。今年の新卒社員は、50年には50歳過ぎ。彼らが将来も当社で活躍できるよう、今からどれだけ新しい仕事を作っていけるか、挑戦していく所存です。