インタビュー:滝波宏文/自民党参議院議員
閣議決定されたエネルギー基本計画は、再生可能エネルギーを重視し原子力発電を評価していない。滝波議員は危機感を抱き、「原子力のリプレースを含め、政策の見直しは欠かせない」と主張する。

―クリーンエネルギー戦略への期待は。
滝波 そもそも日本は資源がなく、海外とつながる電力系統もありません。一方、経済大国なので膨大な電力を要します。しかも、京都議定書を作った環境責任国です。
この日本のエネルギーを巡る高い制約条件の下、基本計画の作成ではS+3Eのうち一つのE(環境)だけではなく、全体をアップグレードすべきだと主張しました。しかし、環境だけがクローズアップされてしまった。再生可能エネルギーを最大限増やすのは当然ですが、本当は同様に原子力も最大限活用するとしなければいけませんでした。この点、残念ながら今回閣議決定された第六次エネルギー基本計画は「赤点」だと言わざるを得ません。答えが分かっているはずなのに、その答えが書ききれていない。クリーンエネルギー戦略は、残る二つのE(エネルギー安全保障、経済性)について、原子力のリプレースも含めて、基本計画の不足を補完する役割を持たせるべきだと考えています。
―原子力について問題意識は。
滝波 心配していることは、福島事故から10年が経ちましたが、原子力の足が止まり、世界に誇れるわが国の技術、人材が衰退の危機に瀕していることです。
さらに懸念しているのは、立地地域のことです。これまでは、リスクを負いながらも、安定安価な電力を大都会をはじめ消費地に送るという「誇りある国策への協力」が成り立っていました。それは、一つには安全性などが向上する最新鋭の発電所を造ってきたからです。既存の発電所が年数を経ていくだけで、「死んでいく技術」とただ何十年も向き合えと言われるのでは、「もうついていけない」と立地地域も思うでしょう。
―規制行政をどう考えますか。
滝波 私は財務省の出身です。元行政マンとして見て、大きな問題があると思っています。行政はデュープロセス(法の適正な手続き)に沿って、予見可能性などを確保しなければなりません。
例えば、原子力施設の審査の標準処理期間は2年間とされていますが、守られていません。新規制基準導入の直後はともかく、多くの審査の結果、ノウハウなどが蓄積され、本来ならば審査期間は2年に収束していくべきです。しかし、そういう姿勢が原子力規制委員会に見えません。
事業者に対し単にノーと言い続け責任を押し付けるだけでは、機能する規制行政とはいえません。さまざまなステークホルダーと対話を深め、どうやれば現実的、効率的に安全性を高めていけるかを追求していくのが本来の役目です。
来年、更田豊志委員長が任期を終えます。規制委の委員は国会の同意が必要なので、誰が委員長にふさわしいかも含め、より科学的、合理的、現実的にと、規制行政の刷新が必要だと考えています。
今後、運転延長、カウントストップの議論も本格化します。10年間を振り返り、スピード感を持って法改正も含めて規制委・規制庁の行政を見直していきます。