【一般財団法人 日本気象協会】
物流、点検、災害対応など今後の活用が期待されるドローン。現在はドローンパイロットが決められたエリアで安全を確認しながら目視飛行をするが、10年後には自動操縦で上空を飛び交う世界がやって来るともいわれる。
その未来になってもドローンの安全な運航に欠かせないのが、気象情報だ。
日本気象協会では、ドローンを利用した気象観測技術の開発と、ドローンが安全に飛行するための気象情報の提供の二つの事業を展開している。
ドローンの気象リスクは突風や強風、雨、雷、竜巻、霧、気温などが挙げられる。ドローンが飛行する地上から高さ約150mまでの情報が必要で、特に上空の風は飛行判断に重要だ。例えば、地上では風速2m/秒程度の風でも、山間部では頂上付近は風が増幅し、強風となることもあるのだ。
高層の風を測るのはゴム気球に測定器を取り付けて飛ばす「ラジオゾンデ観測」が長い間の主流だが、使い捨てのためコストが高いという難点があった。
同協会はこの課題の解決に、ドローンに気象センサーを取り付け、上空の風を測定する取り組みを2014年から始めた。17年には、ドローン運航を支援するドローン向け気象情報の開発に着手した。
上空の風の現況観測には、①環境気象センサーユニット、②ドップラーライダー、③スキャニングライダー―を活用する。
①の環境気象センサーユニットは、設置した場所の風向、風速、気温、湿度、雨、気圧など複数の気象要素を計測する。主にドローンの離発着地点で有用だ。鉄塔に取り付け、周辺の気象を監視することもできる。②は風力発電を建設する地点で、風車高さの風を調査するために使用する機器。これを応用し、鉄塔の点検時にドローンが飛行する上空の風を計測することもできる。③は、半径5~6㎞の広範囲の風速と風向を立体的に計測する。
「飛行経路または機体に設置した気象センサー、カメラなどにより気象状況の変化を把握」と飛行ルールで定められているほど、気象情報の把握は重要なのだ。
予測技術を融合 より安全な飛行のために
同協会は風の現況観測だけでなく、10分後、1時間後などの予測技術を持つ。流体力学に基づいた数値シミュレーションで、山間部では地形を用い、都市部では建物の高さや位置関係を用いて風の流れを計算する。この結果から、地上から上空まで詳細な3次元の風況を予測。画面上で可視化し、強風を回避するルートを探せる。
データは山間部では20~50mメッシュ、都市部では1~100mメッシュの細かさで表示され、より詳細に安全な運航ルートを探すことができる。
ゆくゆくは、ドローン運航管理システムで気象情報を一元的に活用できるインターフェースも提供する計画だ。
同協会の強みについて事業統括部の森康彰副部長は、「科学的な知識に基づいた、高精度な気象の観測、数値シミュレーション、データ分析から、これらを融合した気象情報の提供までができること」を挙げる。「遠くない将来、多くのドローンや空飛ぶクルマが飛び交う社会が現実のものとなったとき、私たちの気象情報が安全で効率的な飛行に活用されることを願っています。ドローンが都市部を飛ぶようになったときに、速やかに飛行の安全をサポートできるよう、ドローン用のビル風予測の研究も進めています」と、来るドローン社会に備えている。