<出席者>電力・原子力・ジャーナリスト・マスコミ業界関係者4人
原子力バックエンドが動きだしたが、原発立地県などの地方紙の見る目は厳しい。しかし、エネルギー報道では、地方紙ならではの記事が多くある。
―原子力のバックエンドが動きだそうとしている。日本原燃の六ヶ所再処理工場が原子力規制委員会の審査に「合格」し、高レベル放射性廃棄物の処分場選定も、文献調査に手を上げそうな自治体が出てきている。
電力 ようやく一歩、前に踏み出そうとしている。もっとも、これからが大変。マスコミの論調を見ても、使用済み燃料の再処理については、ほとんどの大手紙が否定的な書きぶりだ。
電力業界としては、原子力施設が立地する地元の県紙やブロック紙の論調が大切で、取り上げ方を注意深く見ている。やはり再処理事業については厳しい記事が目立っている。
マスコミ 再処理で地方紙、ブロック紙を見てみると、それぞれ書きぶりは微妙に違うけれど、やはりトーンは否定的なものが多い。原発立地県でなくても、例えば長崎新聞は、長崎に投下された原爆がプルトニウム型だっただけに、プルトニウムに拒否反応がある。六ヶ所工場の「審査合格」の記事で、原子力に否定的な勝田忠広明大教授のコメントを掲載していた。勝田氏は「国の政策として恥ずかしい」とまで言っていた。
ジャーナリスト 玄海原発が立地する佐賀新聞もサイクルには厳しい。前原子力規制委員長の田中俊一さんのインタビューを掲載している。田中さんは核燃サイクルに否定的で、必要性と技術の欠如、それに余剰プルトニウムの問題から、「サイクルは現実的に不可能」と言い切っている。初代規制委員長として田中さんの影響力は少なくないから、業界としては頭が痛い記事だった思う。
長崎新聞の厳しい視線 原爆5000発分は勉強不足
原子力 長崎新聞は、玄海原発でのプルサーマル実施にも厳しい視線を向けていた。被爆地・長崎のマスコミとして、プルトニウム利用に疑問を投げ掛けるのは、ある意味で当然だと思う。
ただ、例えば愛媛新聞は、「(日本は)既に46t、原爆5000発分に相当するプルトニウムを保有している」と社説で指摘している。確かにプルトニウムは国内外に46tあるが、「質」の点において、それらが全て核兵器の原料となることはない。
電力会社が持っているプルトニウムの中には、原爆の原料にふさわしいプルトニウム239のほかに、質量数が238、240、242など核拡散抵抗性が強いものも含まれている。そのことを理解していない。愛媛新聞に限らず大手紙も含めて、その点で勉強不足のマスコミが多い。
電力 保有しているプルトニウムが原爆の材料に転用することが難しいことは、非常に複雑で分かりにくい。これは丁寧に説明を繰り返していくしかない。
原子力 日本はIAEA(国際原子力機関)の保障措置の「優等生」と言われていて、六ヶ所工場には廃棄物中の極微量の核物質を測る装置もある。さらに再処理した後の最終製品は、核兵器に不向きなウラン・プルトニウム混合酸化物として取り出している。
とにかく、核物質の平和利用には気を使っている。でも、そういったことがマスコミに取り上げられることは、まずない。
ジャーナリスト それは、マスコミに期待する方が間違っていると思う。
―高レベル廃棄物の処分でも、北海道の寿都町長が文献調査の応募に前向きな姿勢を示した。
電力 高知県東洋町の田島裕起町長が文献調査に手を挙げてから13年経って、ようやく動きが出てきた。寿都町に続いて、北海道の神恵内村でも、商工会が応募検討を求めている。
いくつかほかの自治体でも、これから声が挙がると思う。最後は町長が辞職に追い込まれた東洋町の二の舞を繰り返さないように、静かに見守っていくしかない。
ジャーナリスト 原子力が嫌いな北海道新聞は、応募は容認できないだろうね。社説を見てみると、「財政と引き換えに安全性が疑問視される処分場の誘致に動くのは安易にすぎないか」とか、「いったん交付金をもらってしまえば、処分場建設へ国の働きかけが強まるだろう」とか、とにかく交付される20億円が目当ての応募だとしようとしている。
しかし、東洋町の田島町長と同じように、寿都町の片岡春雄町長も、原子力バックエンドのことをとてもよく勉強している。もっとも、メディアはそのことを伝えようとしない。
マスコミ 確かにコロナ不況もあり、過疎化が進む地方自治体の財政はどこも非常に厳しい。だけど、ただ単にカネが目的だとして、いずれはどこかに処分しなければならない高レベル廃棄物を「われわれの地域で処分はさせない」で突っぱねてしまうのは、あまりに無責任だろう。
地方紙ならではの記事 仙台市ガス局民営化を詳報
―原子力関連以外の報道で、地方紙の読みどころは。
ガス 地方のエネルギー関連施設などの動きは、やはり地方紙を見ないと分からない。地元の人たちが発電所や工場の建設などを、どう受け止めているか報道する記事は参考になる。仙台市ガス局の民営化でも、詳しく報道していたのは河北新報だった。
石油 地方で事故が起きた時は、地方紙の記事をまず探す。郡山市のLP爆発事故でも、東京の業界関係者は地方紙の報道に頼るしかなかった。
マスコミ 今、大手紙よりもヤフーニュースの方がよく読まれている。内容さえよければ、地方紙の記事がどんどん読まれるようになっていくよ。
―情報発信も「東京一極集中」は早く解消されるべきだね。









