A 政策立案の際には、経済産業省と産業界が交渉した上で行う形式が踏襲されているが、東日本大震災以降、電気事業政策だけが原子力発電の再稼働を人質に行政主導で制度改革を行う特殊な構図になってしまった。ある意味、頭でっかちな改革が行われやすい環境が現在の状況を生み出したと言えるが、最近の混乱の最大要因は、以前に比べて経産省資源エネルギー庁の人員が増えていないのにミッションだけが増えていることにある。
B 2016年の小売り全面自由化以降は、どちらかというと自由化政策よりも安定供給の立て直しの議論ばかりがされてきたと認識している。そういう意味で、12~15年の制度設計ワーキングの議論に課題があったと言わざるを得ない。電力システム改革専門委員会の報告書に基づく制度の詳細設計を議論する中で、果たして本当に安定供給面での考慮がなされていたのだろうか。電力システム改革という政策の負の側面をきちんと評価していたとはとても思えない。
C システム改革の三つの目的は数字に照らしてもクリアできていない。電力安定供給を含め、システム改革は失敗したと総括して然るべきだ。しかし、保坂伸エネ庁長官は昨年11月の電気新聞のインタビューで、自由化によって消費者が選べるメニューが増え、全体のコストが下がったと述べていた。誤解を恐れずに言えば、戯言だね。エネ庁トップがシステム改革は成功しているという認識のままなのであれば、安定供給議論を展開する土台がない。本音を聞いてみたいよ。
供給力確保の重要性が改めて問われている(写真は北海道電力苫東厚真火力)
再エネ導入と発電競争の問題 安定電源を削る発想の改革
―老朽火力の休廃止が進み、需給がひっ迫しやすい状況は改善しそうにない。
A 電力システム改革専門委員会が想定した通りに原発が再稼働できず、FIT(固定価格買い取り)制度により再生可能エネルギーの大量導入が進み、その上で電気料金を抑制しながら競争を促進せよというのが政府サイドの要請だ。制度改革の前提が損なわれているにもかかわらず、そこに力点を置いてしまっているばかりに、今も安定供給がおざなりになってしまっている。
B 再エネ導入のスピードを確実に見誤っていたことは間違いない。大手電力会社に市場への限界費用による玉出しを事実上強制するのであれば、新電力には相対契約を50%確保させるとか、もしくは少なくとも不当率相当分の電源を持つようにさせるとか、そういった規制が必要だったんじゃないかな。経産省は利益の先取りをさせてしまうような市場を設計して、一体何がしたかったのか。
C FITで再エネを入れ、かつ優先給電させながら、発電での競争の活性化というのは無理な話。昨年12月末の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委でも、太陽光や風力といった変動再エネは限界費用が低いから先にバイオマスや地熱に抑制をかけるという議論を相変わらずしている。安定電源優先稼働のマインドがないままでは、需給不安は続くだろう。
―火力の新設投資の必要性を誰もが認識しているはずだが。
C 石炭新設はダメだと環境アセスで位置付けたのがおかしい。23年以降立ち上がるJERAの横須賀火力など数基が最後になってしまうだろう。CO2フリーを奨励したいのであれば、炭素税を導入し、燃料種の設定も含め事業者の裁量に任せておけばよかった。電源不足を予想する事業者は新設に励んで、いくつかの電源は建っていた。電力自由化、競争は供給力が潤沢にある時のみ機能する。安定電源を削るような発想でしか制度改革が進んでいないのだから、今のような状況に追い込まれるのは当然だよ。
B 政策の目的が定まってないよね。
C 変動再エネを最大限導入するという点では一貫している。手段と目的の間のバランスが全く取れておらず、ただ盲目的に再エネ、しかも風力と太陽光という自立できない電源ばかりを導入では持続可能ではない。
コスモ石油は20年9月から同事業に参画。翌月には菅政権(当時)によるカーボンニュートラル宣言があり、これを契機として国内でもSAFへの注目とニーズが急速に高まっていった。21年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に当事業が採択され、また22年には国産SAF普及を目指す民間企業16社が有志団体「ACT FOR SKY」を設立するなど、業界を横断した取り組みも加速した。コスモ石油企画部の山本哲・次世代事業推進グループ長は「当社は燃料製造・供給者の立場として、燃料油精製のノウハウや安全・品質管理、製造・輸送インフラをSAFに活用できる」と話す。